糖尿病は、インシュリンの生成が阻害されて血液中のグルコースが異常に高くなる高血糖によって引き起こされる自己免疫疾患の一種で、基本的な種類としてはタイプ1型とタイプ2型の2種がある。
インシュリンは膵臓で生成されるが、1型の人の場合は体質的にインシュリン自体が生成されず、生きていくためにはインシュリン療法で外部から注入しなければならない。これに対して2型の人の場合は、体内で生成されるインシュリンの量が少ないために起こる。
2型の場合は食事療法だけで改善することも多く、1型に比較すれば深刻度は低い。しかし、糖尿病の期間が長くなると、失明や肝臓障害、神経障害、動脈硬化などを併発して死に至る。アメリカでは、心臓病、ガンに次いで、糖尿病が病死原因の3位になっている。
科学文献の検索では、臨床研究で大麻での糖尿病治療を扱ったものは見つからないが、臨床前研究では、わずかながら、カナビノイドが病気の進行を抑えて症状を緩和することを示唆しているものが見られる[1-2]。
最も最近の研究としては、自己免疫ジャーナルに掲載された論文で、マウスに1日5mgの非精神活性カナビノイドCBDを注射すると糖尿病の被患率が顕著に減少したと報告されている。論文によると、投与していない対照群のマウスでは86%が糖尿病になったのに対して、CBDを与えたマウスの発症率は30%に過ぎなかった[3]。また別の実験では、糖尿病になった対照群のマウスの発症が17週を中心に15~20週であったのに対して、CBD投与マウスの大多数(60%)が26週まで糖尿病になることはなかった[4]。
また、研究者たちは、CBDが炎症性サイトカイン(蛋白質)のINFガンマとTNFアルファの血漿濃度を著しく低下させ、侵入した白血球細胞が腫れて起こる深刻な膵臓炎を劇的に減らすことも見出している。論文では結論として、「この結果は、CBDが破壊的な膵臓炎の発症を遅らせ、マウスの炎症性サイトカインの生成を抑制して糖尿病被患率を下げていることを示している」 と書いている。
糖尿病の動物モデルを使った別の臨床前実験では、カナビノイドの別の効果も示されている。アメリカ病理学ジャーナルの2006年3月号に掲載されたバージニア医科大学の研究では、ラットにCBDを1~4週間投与したところ、糖尿性網膜症に対して著しい防御効果が示されている[5]。糖尿性網膜症は、網膜の酸素欠乏によって血液網膜関門が破壊されて起こる疾患で、労働年齢成人が失明する最大の原因になっている。
さらに、カナビノイドには糖尿病に伴う神経性の痛みに緩和効果のあることも示されている。2004年の神経科学レターに掲載された2組の研究では、対照群に比較して、大麻・レセプターのアゴニストを投与したマウスで、糖尿性触覚異痛症(皮膚の怪我などとは無関係を発症する)が軽減することが報告されている[6-7]。この発見は、「カナビノイドには、実験的に引き起こした糖尿性神経疼痛に対して治療効果のあることを示している。」
また、2001年の研究では、実験的にグルコース・レベルを引き上げ糖尿病モデル・マウスにTHCを与えたところ、対照群に比較してグルコース・レベルが下がって膵臓炎が減ったと報告している[8]。
糖尿病では1型も2型の被患率が着実に増加を続けているが、こうした結果は、糖尿病の治療にさらなるカナビノイド研究が有用なことを示している。
参考文献
[1] Croxford and Yamamura. 2005. Cannabinoids and the immune system: Potential for the treatment of inflammatory diseases. Journal of Neuroimmunology 166: 3-18.
[2] Lu et al. 2006. The cannabinergic system as a target for anti-inflammatory therapies. Current Topics in Medicinal Chemistry 13: 1401-1426.
[3] Weiss et al. 2006. Cannabidiol lowers incidence of diabetes in non-obese diabetic mice. Autoimmunity 39: 143-151.
[4] Ibid
[5] El-Remessy et al. 2006. Neuroprotective and blood-retinal barrier preserving effects of cannabidiol in experimental diabetes. American Journal of Pathology 168: 235-244.
[6] Dogrul et al. 2004. Cannabinoids block tactile allodynia in diabetic mice without attenuation of its antinociceptive effect. Neuroscience Letters 368: 82-86.
[7] Ulugol et al. 2004. The effect of WIN 55,212-2, a cannabinoid agonist, on tactile allodynia in diabetic rats. Neuroscience Letters 71: 167-170.
[8] Li et al. 2001. Examination of the immunosuppressive effect of delta-9-tetrahydrocannabinol in streptozotocin-induced autoimmune diabetes. International Immunopharmacology (Italy) 4: 699-712.
Source: NORML & NORML Foundation
Updated: Jan 17, 2008
Subj: Diabetes Mellitus
Author: Paul Armentano, Deputy Director
Web: http://www.norml.org/index.cfm?Group_ID=7005
【転載元】
カナビスの医学研究|糖尿病/カナビス・スタディハウス
(※THC注:転載元のカナビス・スタディハウスでは、解説などが頻繁にアップデートされています。最新の情報を確認するためにも、転載元のカナビス・スタディハウスにアクセスすることをお勧めします。)
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