NHKディレクターとの対話について、カナビス・スタディハウスのダウさんにお願いして批評して頂いた続編です。
読者には、NHK的な大麻バッシングの矛盾についてと同時に、どのような反論や問いかけが効果的かについて考察して頂き、実践に活かして頂ければと思います。
★ ★ ★
Q.最近のカナビスについてのトピックスになっていたような話で言えば、統合失調症の要因を抱えている、特に若者がカナビスを使うと、それが契機になって発症してしまうという研究もあるんですよね。
A.例えばそういう研究があるとしますよね、そういう方たちがカナビスを使ったときにですね、そういう方たちは今たくさんいらっしゃるじゃないですか、そいういう方たちがですね、簡単にいまカナビスに手を出せる状況になってしまっている、それはそれで問題だと私は思うんですけど、そいうふうには思われないですか?
●単なる印象論。「そういう方たちは今たくさんいる」のは嘘。
何故ならば、ここ20年でカナビスの使用率が高くなった国や地域でも、統合失調症全体の発症率は増えていないし、むしろ減ってきている。 また、カナビスの使用が統合失調症を引き起こすとすれば、カナビスの経験率が1.5%の日本よりも42%のアメリカ(WHO 国別カナビス経験者数割合)のほうが20倍も発症している可能性もあるが、そのようなことは起こっていない。
Q.思います。だからこそ、きちんと社会的に管理するべきだと私たちは主張してるのであって、野放しにしていいじゃないかっていう話をしているわけではないんですね。
A.じゃあ、管理をどうされれば、例えば統合失調の気質を持っている方が、カナビスを使わないで済むというふうにできるんですかね?自分では気付いていなくてもカナビスを使うと発症する可能性があるというお話ですよね?例えば合法化してですね、合法的に手に入るということで、カナビスに手を出す方がもっとたくさん出てくると思いますけれども、そういったことをどういう仕組みのなかで規制することが可能だと考えてますか?
●「例えば統合失調の気質を持っている方が、カナビスを使わないで済むというふうにできるんですかね?」
統合失調の気質を調べる方法については、質問項目を工夫したり、子供のころのビデオをチェックしたり、いろいろな研究も進んでいる。また、統合失調気質の人がカナビスを吸った場合にはいくつかの特徴がある。まだ十分によくわかっているとまでは言えないが、現在ある知識を活用することでもかなり役にたつ。
みんなでわいわい吸うよりも、一人で頻繁に使うようになる。多くの場合は、アルコールやタバコの使用率も非常に高い。普通の人がカナビスでパラノイドになっても数時間しか続かないが、統合失調気質の人の場合は48時間以上も持続する。カナビスを吸うには、少なくともとりあえずそのその時は調子が良くなると思うから吸うのだが、(そうでなければ吸わない)実際には調子が悪くなることも多い。これはカナビスの品種が適合していなかったり、摂取量が適切でないことによってもおこる。特に、低品質の効力の弱い、農薬などに汚染されたカナビスは危ない。
A.現状としては、日本ではそうなっているわけですね。そのなかで、私たちはカナビスが本当に深刻な害につながるものがあると思っているし、そういう取材実感があって、そういう番組を出しましたけれども、そういう歯止めがなくてカナビスがアルコールやタバコよりも害がなくて、害がないとは仰っていないと思いますけれども、害がないと受け取っているわけですよ、彼らは。そういう情報がネットも含め、先輩や後輩も含め、広く世間で流れているわけですよね。そのことが今すごくきっかけになっていると私たちは思ったんですね。
●「私たちはカナビスが本当に深刻な害につながるものがあると思っている」
具体的にどういう害なのか? どう深刻なのか?
「害がないと受け取っているわけですよ」
そう言われたりするのは、政府やマスコミが嘘をついていることが非常に大きな原因になっている。
アメリカで禁止された当時は「カナビスを吸うと殺人鬼になる」と言われた。でも、本当のことを知った若者たちのなかには、そのコントラストで『まったく害がない」と主張する人も出てきた。これは、政府と対峙しようとする以上、少しぐらい過激になってもむしろ当然のことだ。
だが、当時のピッピーたちは、ドラッグが体質的に合わない人がいることを知っていたので、セットとセッティングの重要さを強調していた。また、カナビスを回すときにも、パスしても自然に受け入れられている。アルコールは無理やり飲ませられるが、今の日本の若者たちがそのようにカナビスを使っているとすれば、カナビス文化が未熟なだけ。
Q.ですから、本当は正しい、薬学的に正しい知識を教育しなくちゃいけませんよね。それが基本ですよね、本来。
A.そうだと思いますよ。それは、私たちは、一時的に使ってすぐ完全に廃人になるとかいうものではないかもしれないけれども、使う量とか、個人差はあるにしても、人によってはすごく深刻なケースに陥ってしまう現状もあるということは確かだと思っているんです。ですからそのことをちゃんと伝えないと、本当に気軽に手を出して、常習性はないかもしれないけれども、大学を退学になってしまったりとか、そういう子を生み出してしまっているというのは、すごく問題があると思っているんです。
●「完全な廃人」?
とはどのような人のことを想定しているのか?
「ですからそのことをちゃんと伝えないと」
NHKは、個人の印象論ばかりで、きちんとしたことは伝えていない。
Q.でもそれを生み出しているのは、カナビスではなくて、逮捕するっていう薬物乱用防止政策のあり方と、報道ですよ。
A.だから、そこは今、みなさんは変えようと思っていらっしゃるんだと思いますけど、私たちは少なくともカナビスを合法化して好きなときにタバコを吸えるように吸えるっていう状況を生み出してしまったらですね、それは未成年とか成年とか関係なくですよ、そういう状況になってしまったら、違法ではなくても、少なくとも今よりカナビスで深刻な害、それこそ廃人のようにまで陥ってしまう人が、今よりもどっと増えるということは確かだと思うんです。
●「カナビスで深刻な害、それこそ廃人のようにまで陥ってしまう人が、今よりも どっと増えるということは確か」
カナビスで廃人? どんな人を想定しているのか? 何が「確か」なのか?
確かならば、具体的に指摘できるはず。具体的に指摘せよ。
生涯経験率が42%のアメリカ、あるいは20%のオランダと、1.5%の日本では具体的に、廃人数がどう違うのか?
A.私たちの取材スタンスのことで申し上げると、当人たちもいい面があったと言ってますし、こんなにいいものはないと、別にアルコールのように二日酔いになるわけでもないし、というようなことは仰るんですよ。でも結果的には、もちろん全員じゃないですけれども、私たちが取材した方たちのなかには、大量に使い続けるようになって、長い間、何年も続けるようになって、廃人のようになってしまったという方に何人もお会いしてお話を聞いたんですね。
Q.カナビスだけでですか?
A.そうですね。カナビスしか使ってないという方たちでした。
●アルコールやタバコの使用状況についてはちゃんと聞いているのか?
「廃人」のようになったとは具体的にどのような状態なのか?
カナビスは今もやっているのか、それともどのタイミングでやめたのか?
どのような種類のカナビスをどのような頻度でつかっていたのか?
Q.ですから、それは先ほどお話したように、もともと精神的な疾患を抱えていたということもありえるわけですよ。
A.まあ、ありえるかもしれないですね。
Q.そうですよね。
A.でもそれはないだろうと思ってます。
Q.思ってらっしゃるだけですよね?
A.ご本人たちもそう仰ってますし、先ほどもお話したように、私たちとしては取材をして、綿密にお話を聞いて、そのなかでご紹介することしかできないですから、そこをお伝えしたいと思ったわけです。
●統合失調症には病識なない場合もあるので、患者の話だけを一方的に信用できない。
また、取材に答えているという状況はバイアスがかかっている。つまり、自分の今の状況をカナビスのせいにすることで、家族や自分自身への冷たい視線をかわせるという期待が感じられる。
イギリスのタブロイドや、本人が出演しているテレビでは、家族や友人なども加わって口を揃えるのが普通で、疑問をはさむ精神科医などが出てくることや、詳細なデータが示されることはまずない。
カナビスが統合失調症を引き起こす原因(因果関係)になるとすれば、次のようなことが示される必要がある。
1.カナビスの使用と統合失調症の発症の間に正の相関関係がある。つまり、統合失調症になった人がカナビスを使っていた。
2.カナビス使用前には統合失調症が発症していない、あるいはその予兆が認められない。
3.自己治療で症状を緩和するためにカナビスを使っている疑似関係を排除できる。
しかし、NHKが示しているのは1のみで、あとは印象論。2と3の証明はない。
Q.でもその一方には、科学者たちの大量の研究、ちゃんとエビデンスもある研究が出てるんですよね、そのような研究とは全く衝突しますよね、取材されたお話とは。
A.そうですね。
Q.そうすると、そうなっちゃった人たちもいるよ、ということを伝えるのと同時にですね、そうなってしまった可能性としては、もともと精神的な疾病の要素を抱えてたとか、海外ではこういった研究レポートが出ているとか、そういうことも伝えないと、頭ごなしにカナビスを使っているとこういうことになってしまうゾという脅しにしかならないと思うんですよ。報道としても公平さとか公正さを欠くんじゃないでしょうか?
A.私たちは、カナビスはやるべきじゃないものだと思って今回作ってますから。いろんな事象はあると思うんですね、こういう側面とか、こういう側面もあるとか、いろんな声があると思いますけど、ただ、今回は、カナビスはやるべきじゃないというスタンスに立って、正直言いますと、番組をそういうふうに作りましたので、私たちはそういうメッセージを伝えたいと思って。みなさんは、そうではないというメッセージを伝えようと思って、カナビス取締法の変革センターのホームページ、そういう団体で、情報発信をされてらっしゃると思いますけれども。私たちはそうではないんじゃないかっていうメッセージを出したいと思って、そういう番組を作ったということです。
●「今回は、カナビスはやるべきじゃないというスタンスに立って、正直言いますと、番組をそういうふうに作りました」
それはそれでいいのだが、だからといって、嘘をついたり、科学的研究を無視したり、単なるスタッフの印象論だけで作ってもよいことにはならない。そこには、正義のためならば嘘も許されるという了解がある。われわれは、これこそが最大の問題だと思っている。
Q.そうすると、それ以外の情報は敢えて報道しなかったということなわけですね?
A.そうですね。
Q.そうすると、番組のスタンスとして公平さを求めるという・・
A.公平さというのはいろいろあると思いますけれども、カナビスの話に限らずですよ、いろんな話を取り上げるときに、切り口をどうするかとか、どういうメッセージを伝えるかとか、我々は作業として番組では伝えてるわけですね。全てを網羅して、こんな意見もあります、こんな意見もあります、こんな意見もあります、という番組もあると思いますし、こういう意見を言う人たちもいますよ、という番組もあると思うんですよね、一方だけ取り上げるという。それは番組の作り方としてはいろいろな形があると思いますけれども、少なくとも今回のクローズアップ現代という番組では、カナビスには害としてこういう一面もあって、今こういうふうに社会的に問題になっているということを、私たちは伝えようと思ったということなんで。そこはみなさんとはスタンスは違うんだと思うん で、こういうふうにご意見を頂いているんだと思うんですけれども。
Q.今回の取材ではカナビスを使っている若者たち何人くらいに取材をされたんですか?
A.私が直接お会いしたのは10人弱ですけど、3人のディレクターがそれぞれ何人か取材をしていると思います。
Q.トータルで何人くらいですか?
A.それはちょっと分からないですね。それぞれ個別ではなくて、施設とかそういうところにもお話を伺っているので、たくさん見てきた方のお話を聞きながらというなかで、我々としては信憑性があると思っています。
Q.広川さんが取材された10人というは、施設に入っている方ですか?
A.施設に入ってたりとか、あと、施設に入ってなくて、今も使い続けてる人とか、それはいろいろですね。
●カナビスを使っている人の絶対的多数は、施設に入所したりしていない。その絶対的多数にはロクな取材もしないで、特定の状況下にある人だけを取材する。このようなスタンスからな真実などは見えてこない。
カナビスは吸わなくてもいいから、オランダの、特に地方の地元民しかこないようなコーヒーショップに何軒か行って、何日かお客の様子を半日づつ観察するだけでもいい。
そんなことすらできないのであれば、ジャーナリストの看板を下ろすべきではないか。
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以上、電話取材での問いかけの稚拙さを晒すようなものだが、NHK的大麻バッシングへの反論に際し、大麻擁護論の側から反問する場合の留意点などが共有できればと考え、ダウさんに批評して頂いた。
ダウさんの指摘にもあったように、この番組はNHKと水谷修氏の個人的な印象論を拡大解釈したに過ぎない内容だ。大麻の医学的・薬学的・社会学的な事実を一切確認もせず、大麻は怖いという政治的なメッセージを国民に流布するために制作されたものに過ぎない。大麻の事実を知る者も少なくない現在、このような偏向報道は、NHKの信用・信頼を失うことにしかならないだろう。
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