「チャリファナ青春旅行記」 司麻
まえがき
序章 学生時代
・サイクリング部入部
どこかに出掛けることが大好きな私は、中学では、撮影に行くって名目でいろいろ出掛けられる写真部に、高校では山岳部に所属し、大学ではサイクリング部に入部した。
大学に入って先ずやることといえば、飲み会。学内の掲示板には「イッキ飲みはやめましょう」のポスターが貼られていたが、そんなんおかまいなしに、「イッキ!イッキ!」の大コール。伝統の「お酒の消えるマジック」なんてのもあり、「このカップにはお酒が入ってます。ハンカチで隠すと…(その間に一気に飲み干す)…はい!お酒が消えました!」なんてやっていた。
入部当初は、「え~、こんな飲み方、ヤバイんじゃないの…」と怖気づいていた私も、上級生になると、飲むわ飲ませるわ、相当無茶するように。仲間内の言葉で「あなたの知らない世界」ってのがありまして、これは酔っ払って記憶をなくしたとき、自分は何をやらかしたか聞かされるもので、某TV番組よりもよほど恐ろしい。
音楽系サークルの中には、大麻やLSDの使用者もいたらしいけど、体育会系にはそういうドラッグは縁がなく、ひたすら飲んでいた学生時代だった。
おっと、飲みの話ばかりになってしまったが、サイクリングの活動としては、月に一度、日帰り~1泊で、夏休み、春休みには7~10日の合宿を行い、キャンプ用品を自転車に積み込んで、日本全国いろいろなところを走った。よく「北海道とかまで走っていくの?」って聞かれるのだが、それは自由。例えば集合は旭川駅とかにして、都内(大学所在地)から走って行ってもいいし、自転車を分解・梱包して電車で行ってもいいし、フェリーでもいいという具合。
こういう旅は本当に楽しく、部の活動より、もっとスケールが大きく、自由な旅をしたいなぁと漠然と思っているころ、学生サイクリング連盟の行事で、世界一周した人の講演を聴き、その人の著書を読んでいるうちに、「オレもチャリで世界一周したい!」という気持ちが高まってきたのだった。
・マレー半島縦断
どうしても海外に行ってみたい気持ちを抑えられなくなり、大学3年の春休み、部の春合宿はサボってバンコク→シンガポールのマレー半島縦断の旅を計画。その前ぐらいに、「深夜特急」のTVドラマが放映された影響もあるだろう。
こうして、初海外タイ・バンコクへフライト。夜の到着だったので、到着した夜は空港のロビーで寝て、翌朝、自転車を組み立て、売店で市内地図を買い、カオサン通りへ。今はカオサンのプッシャーも、厳しくなって無闇には声をかけなくなったみたいだけど、当時の私は大麻オーラが出ていなかったのか、'97年当時でも、私にはプッシャーから声がかからなかった。
後々分かってきたのだが、プッシャーの吸う人と吸わない人を見分ける目はかなり正確らしい。この数年後には、いたる所で、プッシャーから声がかかるように…。
初海外で、いろいろな意味で真面目だった私は、1日、バンコク市内を観光してから、マレーシアに向かって南下を始めた。大麻とか買わなかったし、ナナプラザとかも行かなかったし…今から思うと、我ながら笑っちゃうよ。
バンコクの道路は、今思うとインドよりはマシなものの、かなり混沌としていて、市内を抜けるには一苦労したが、郊外に出れば、道幅も広く、なかなか快適な道。しかも、所々にガソリンスタンド兼コンビニ、食堂もあり、困ることはなかった。いざとなったら、そういうところで泊めてもらおうと思っていたけど、1日走れば、安宿のある町にたどり着け、野宿や自炊の必要は全くなかった。
タイ南部の都市HatYaiを抜け、いよいよマレーシアとの国境。「電波少年で見た、陸路国境越えだぜ~!」とテンションは上がる。立派な建物があったので、そこで何か手続きするのかと思ったら、そこは単に免税店だった。その先にイミグレ、税関が。手続きとかよく分かってなかったけど、悪徳役人がいるようなところではなく、スムーズに通過。しかし、えっ銀行ないの!?国境で両替できると思っていた私は、マレーシアの通貨を1円も持っていないのである。「閉まる前に銀行行かなきゃ~!」と、そこからダッシュで、マレーシア最初の町、アロースターへ。ここでT/Cを両替でき、マレーシアリンギットを得ることができた。次からは海外ATMで使えるカード持とう。
タイもマレーシアも似たような国かと思っていたら、けっこう違う。イスラム教徒が多く、スカーフを被った女性の姿が目立ち、私が大好きな屋台・露店がない。と、なんと屋台禁止の標識が。屋台は、フードコーナーみたいな所定の場所でしか営業できないようだ。ほとんどの人が英語を話せ、タイでは「ヌーン、ソーン…」ってタイ語の数字とか覚えたのだが、マレーシアでは英語で通じる。近代化が進んでいるのだが、私には、タイの混沌とした街の方が肌に合っていて、何かつまらなくなった気がする。
次はシンガポールに向かって、マレーシアもひたすら南下し、マラッカへ。TVドラマ「深夜特急」で、主人公が「マラッカの夕日」をやたら見たがっていたので、宿にチェックインしてから、絶好の夕日ポイントを探し、マラッカを彷徨う。ん~、まぁキレイだけど、それほど特筆するほどでも・・・
さて、いよいよシンガポールである。シンガポールはマレー半島先端にある島国で、江ノ島のように、橋でマレーシアとつながっている。マレーシア側の料金所みたいな小屋で、地元のバイクに乗ったオッサンたちは、定期券みたいなものを見せて、どんどん通過している。私もつられて、パスポートに何もチェックを受けないで通ってしまったら、シンガポール側で、「マレーシアの出国手続きしてないじゃない」っていわれてしまった。何~!さっきの料金所みたいなところが、イミグレだったのか~!仕方なくまたそこまで戻り、出国スタンプをもらって、シンガポールへ。今度は無事入国できた。シンガポールの入国カードの裏には、「ドラッグの持ち込みは死刑だ」なんてことが書かれていた。ヘロイン売りまくって、何人もの人生を台無しにしたのなら死刑も納得できるが、大麻でも死刑になるんか?
さて、シンガポール、つまらん!ただの小奇麗な港町。別に家から近くの、みなとみらいと変わらん!とりあえず1泊して考えようと思ったら、宿も高い。公園でどうしようか考えた私は、港に行き、シンガポールから30分で行ける、インドネシア領バタム島に渡った。シンガポールからの金持ち観光客向けの施設も目立つが、庶民的でのどかなところも多く、なかなか居心地が良い。帰国便までの数日間、そこで過ごすことに決めた。宿の従業員とも仲良くなり、彼が夜勤の従業員と交代すると、飲みに行ったりしていた。「カラオケバー」に連れて行ってもらうと、キャバクラじゃん!しかも、女の子と奥の別室に行けたり、お持ち帰りも出来るそうな。
しかし、ここでも大麻の話は出てこなかった。今思うと、のどかでキレイな海、まさに吸ってボヘ~っとするには最高のところなのだが。
こうして、シンガポールからの帰国便が出る前日までバタム島で過ごし、1ヶ月の旅を終えて帰国したのだった。
次号・台湾編に続く
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