「ダメ。ゼッタイ。」の(財)麻薬・覚せい剤乱用防止センターを管掌する厚労省医薬食品局監視指導麻薬対策課の秋篠氏から、過日問い合わせた件で連絡があった。
秋篠氏も同センターに連絡し、もう一度よく原本を探して欲しいと要請したところ、出てきたそうだ。しかし、コピーしかないという。で、この原本のコピーが根拠ですと秋篠氏は言い張る。
秋篠氏は、どのような論文を根拠に使うかはセンター及び当局の判断だという。それはそうだろう。しかし、この冊子は論文ではない。現在、大麻に関するさまざまな研究結果はネット上にも公開されているし、邦訳されたものもある。それらには誰によるどんな研究かが示されている。なぜそのような根拠の明白なデータを使わないのか。
「ダメ。ゼッタイ。」サイトには大麻の具体的な害として「心拍数が50%も増加し、これが原因となって脳細胞の細胞膜を傷つけるため、さまざまな脳障害、意識障害、幻覚・妄想、記憶力の低下などをを引き起こします。また、顕著な知的障害がみられます。 」と書いてある。このような数値、及び記述の元となる研究の出典、根拠を示して欲しいというと、根拠はその英文だと言う。私が聞いているのは、その英文の記述にあるデータの根拠、いつどこで誰が行った研究の結果なのか、である。が、それは分らないという。それが分らないのでは根拠が明らかになったことにはならないではないか。納得しかねるので研究自体の出典を再度調べてもらうことになった。
「薬物乱用防止教育指導者読本」には翻訳文だけでなく、「薬物乱用による健康障害」という章があり、筆者は「医療法人せのがわ Konuma記念広島薬物依存研究所所長 小沼杏坪」とある。そこに「大麻が心身に及ぼす影響」について書かれている。
その冒頭。
大麻はその幻覚剤としての作用を肯定的にとらえる人達により多くの書物が出され、その<無害論>や<法による規制の違法性>が主張されているが、専門家の目からみれば決して無害ではなく、特に大麻精神病を呈した患者では、その影響は甚大なのである。
大麻の「有害性」は、逮捕勾留や実刑までがあり得るほどの厳罰で規制すべきなのかどうか。問われているのはそのことである。小沼氏は次のようにも書いている。
精神に及ぼす作用は大麻を使用する時点での、<セット(set)>と<セッティング(setting)>によって異なる。セットとは吸引の際の使用者の内的環境条件、すなわち身体的条件や心構えをいい、セッティングとは吸引の際、どういう場所で、どんな仲間と一緒かなどの外的環境条件をいう。同一個人でも、使用時の環境によっては陶酔的な快感を伴う体験(good trip)を得ることもあれば、不安感、恐怖感、抑うつなど不快な体験(bad trip)を持つこともある。従って、自己使用のための所持を大目に見る米国で使用するのと、厳しく規制している日本で使用するのでは、他の条件がすべて同じでも、大麻の作用は当然異なると思われる。
(中略)
グッド・トリップでは、ゆったりした気分となり、多幸感・陶酔感を感じ、時にはごくありふれた物事が無性にこっけいで、笑い出すと止まらないこともある。このように大麻では陽気になることが多いが、状況によっては、バッド・トリップとなり、錯覚・幻覚、不安感・恐怖感を伴う妄想が発現し、異常な興奮・錯乱状態を呈する強い反応が見られることもある。
セットとセッティングが大切であることに言及しているのは現実的であり適切だと思うし、小沼氏指摘の通り、厳しい規制こそがバッド・トリップを招いている側面がある。また、大麻では陽気になることが多い。しかし、この件は「ダメ。ゼッタイ。」ホームページに記載が見当たらない。私が見落としているのだろうか。それとも、都合の悪い情報はセンターが意図的に割愛しているのだろうか。
小沼氏のいう「錯覚・幻覚」は何を根拠に言っているのだろう。違うクスリと間違えていないだろうか。「錯乱状態」という表現は大袈裟だと思うが、特に大麻初心者の場合、バッドになって不安感や恐怖感に襲われるケースはあると思う。それはある種の通過儀礼のようなものだと私は思うが、セットとセッティングが大切であることや、バッドのことについて、注意を喚起することには賛成である。しかし、これも「ダメ。ゼッタイ。」ホームページには見当たらない。
「ダメ。ゼッタイ。」ホームページの「大麻について」に、「現在では世界のほとんどで麻薬として規制され、所持しているだけでも死刑や無期懲役となる場合もあるほどです」と書かれているが、「自己使用のための所持を大目に見る米国」については触れられていない。
大麻の個人使用を大目に見るアメリカの薬物標本の説明書を訳して載せるだけでなく、日本国民に向けた情報としては、小沼氏が指摘するような日本独自の弊害についても公平に掲載すべきではないだろうか。
小沼氏指摘のように、大麻が全くの「無害」ではないことに私は同意する。しかしそのうえで、せめて米国程度(デンバー?)の規制で良いではないか、何も個人的に大麻を持っていたくらいで逮捕投獄し、解雇や家庭崩壊や実刑や時には自殺者まで出してしまうような厳罰で臨む必要はないじゃないか、という点について、小沼氏にぜひご意見を聞いてみたいものである。アルコールと比べてどうなのだろう。
「ダメ。ゼッタイ。」ホームページにある「所持しているだけでも死刑や無期懲役」の国とは、具体的にどこなのか。海外旅行に出る邦人のためにも確かな情報は有用だろう。具体的にどこの国が死刑で、どこの国が無期懲役なのか、去る15日に同センターに問い合わせ、糸井専務理事から回答を頂くことになっている。
ネットでさらっと見たところ、シンガポールは500g以上の所持は死刑だそうだ。オーストラリア人が実際に死刑を執行された事件もあった。しかし、シンガポールはオーラルセックスさえ犯罪としている国である。秋篠氏や糸井専務理事はそれでもいいのだろうか。私は断固反対である。
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