筋緊張異常症(ジストニア)は、異常な筋肉の緊張と痛みを伴った無意識の筋肉収縮に特徴づけられる神経運動障害で、パーキンソン病と振戦に次いで3番目に多い運動障害となっている。北アメリカでは30万人以上が苦しんでいるといわれている。
最近の科学文献で筋緊張異常症に大麻やカナビノイドを使った報告としては、数は少ないもののいくつかのケース・スタディと臨床前研究が見つかる。
痛みと症状管理ジャーナルの2002年7月号には、42才の慢性痛患者が大麻の喫煙で筋緊張異常症の症状が改善されたというケース・スタディが掲載されている。研究者たちは、0から10までの数値を書いた連続スケールを使って、患者の主観による痛みをスケール化したところ、大麻の喫煙後ではスコアは9から0に急減し、患者は以後の48時間は鎮痛剤を求めることもなかった、と報告している。「今日まで行われた他のどのような治療でも、このような劇的な改善が得られた例はない」 と書いている[1]。
次のケース・スタディは、運動障害ジャーナルの2004年8月号に掲載されたアルゼンチンの研究者たちによるもので、銅代謝障害による遺伝性疾患のウィルソン病で筋緊張異常を起こした25才の独身患者に大麻を吸引させたところ、「著しい臨床改善」があったと報告している[2]。
また、同じ2004年には、ドイツのハノーバー医科大学の研究者チームが、ミュージシャン特有の筋緊張異常を起こした38才のプロのピアニストに、単回投与試験で5mgのTHCを投与したところ、プラセボよりも治療に改善が見られたと報告している[3]。
カナビノイド治療を行う以前には、標準的な医薬品が効かずに聴衆の前ではもはや演奏できなくなっていたが、患者の筋緊張異常を起こした手には、THC治療によって 「明らかに運動制御の改善」 が見られ、「THC投与の2時間後には、治療前には弾くことのできなかったテクニックを要求される楽曲を演奏できるようになった。・・・この結果は、THC摂取が筋緊張異常の症状を著しく改善することを示したエビデンスと言える」 と研究者たちは書いている。
だが、こうした結果に相反する研究もある。2002年の行われた経口型合成カナビノイドであるナビロン(セサメット、1錠のTHCは1mg) を使った実験では、15人の全身および局所筋緊張異常患者の症状には目立った軽減は見られなかった[4]。しかし、研究者たちはこの結果に対して、服用量に問題があり、増やせばもっと違う結果が出てくるかもしれないと推測を加えている。
また、最近の臨床前研究としては少なくとも1件の動物実験が行われている。実験では、合成カナビノイドと高服用量の非精神活性カナビノイド CBD (カナビジオール)の双方で、動物の筋緊張異症の進行が抑制されている[5]。さらに、1980年代や90年代の科学文献においても、若干ながら人間[6] および動物[7] の筋緊張異症にカナビノイドを使った研究が見られる。
これらの研究から、この分野における大麻およびカナビノイドを使ったさらなる大規模な臨床試験には、十分な可能性が見込まれる。
参考文献
[1] Chatterjee et al. 2002. A dramatic response to inhaled cannabis in a woman with central thalamic pain and dystonia. The Journal of Pain and Symptom Management 24: 4-6.
[2] Roca et al. 2004. Cannabis sativa and dystonia secondary to Wilson’s disease. Movement Disorders 20: 113-115.
[3] Jabusch et al. 2004. Delta-9-tetrahydrocannabinol improves motor control in a patient with musician’s dystonia (PDF). Movement Disorders 19: 990-991.
[4] Fox et al. 2002. Randomised, double-blind, placebo-controlled trial to assess the potential of cannabinoid receptor stimulation in the treatment of dystonia. Movement Disorders 17: 145-149.
[5] Richter et al. 2002. Effects of pharmacological manipulations of cannabinoid receptors on severe dystonia in a genetic model of paroxysmal dyskinesia. European Journal of Pharmacology 454: 145-151. [6] Consroe et al. 1986. Open label evaluation of cannabidiol in dystonic movement disorders. International Journal of Neuroscience 30: 277-282. [7] Richter et al. 1994. (+)-WIN 55212-2, a novel cannabinoid agonist, exerts antidystonic effects in mutant dystonic hamsters. European Journal of Pharmacology 264: 371-377.
Source: NORML & NORML Foundation
Updated: Jan 17, 2008
Subj: Dystonia
Author: Paul Armentano, Deputy Director
Web: http://www.norml.org/index.cfm?Group_ID=7006
【転載元】
カナビスの医学研究 | 筋緊張異常症(ジストニア)/カナビス・スタディハウス
(※THC注:転載元のカナビス・スタディハウスでは、解説などが頻繁にアップデートされています。最新の情報を確認するためにも、転載元のカナビス・スタディハウスにアクセスすることをお勧めします。)
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