昨年12月以来のNHKによる大麻に関する偏向報道について、以下の通りBPOに「意見と要望」をメール便の速達で提出しました。BPOには休み明けに電話し、対応についての確認を取りたいと思います。
BPO放送倫理検証委員会御中
2009年12月25日
大麻取締法変革センター
代表 白坂 和彦
http://asayake.jp/
info@asayake.jp
住所・電話番号
NHKによる一連の大麻関連番組に関する意見と要望
2007年の秋、大学ラグビー部の学生が寮で大麻を栽培していた事件を契機に、マスコミは横並びで「大麻汚染」という表現を用い、大々的に報道を繰り返し続けた。しかし、それらの報道では、大麻の医学的・薬学的な検証や、海外における大麻を取り巻く社会的現実を、冷静に、公正に伝えるものは、私の知る限り見られなかった。
なかでも、NHKは、中高生向けに制作した「大麻の怖さ知っていますか?」という教材番組を、現在もインターネット上に公開し続けている。
以下、NHKがこれまで放送した大麻関連番組について検証し、問題点を指摘する。また、同時に、NHKは大麻について医学的・薬学的・社会学的な事実に基づいた番組を改めて制作し、大麻を擁護する立場からの見解も公正・公平に扱った放送を行うよう、BPOとしてNHKに勧告するよう求める。
1.クローズアップ現代『"大麻汚染"を食い止めろ』(2008年12月3日放送)
この番組では、夜回り先生として知られる水谷修氏をゲストに招き、若者に広がる大麻について、その有害性や背景が論じられた。しかし、水谷氏は、海外の研究機関によって否定されている、あるいは証明されてもいない「大麻1回1回の使用が脳を壊す」という意味不明な説明をした。また、水谷氏は、大麻を刑事罰の対象とするのではなく、規制と課税によって社会的に管理する合法化論の主張に対し、「パカなことを言っている」と一方的に侮蔑する言辞を弄している。大麻合法化論者不在の放送で、このような暴言を吐くことは、対立する見解がある場合は双方を紹介するよう定めた放送法にも違反し、極めて不公平である。
この番組を制作した広川ディレクターによると、番組制作にあたり、私が主宰する「大麻取締法変革センター」のウェブサイトを含め、大麻合法化論の主張についてもインターネット上の情報を参照したとのことだ。しかし、番組内では、その主張や論拠が紹介されることはなかった。つまり、番組制作者は、対立する見解があることを承知のうえで、それを紹介することもせず、一方的に「バカなこと」という暴言を水谷氏に吐かせているのである。
また、水谷氏が言う、大麻1回の使用で「脳が壊れる」という珍説には、何ら医学的な根拠もなく、水谷氏の主観的感想(思い込み)でしかないことを、広川ディレクターは私の電話質問で認めている。水谷氏に対しても、どのような根拠に基づいているのか説明を求めるメールを送付したが、回答はなかった。
水谷氏は根拠も示さず、大麻の使用が「脳を壊す」と言うが、海外における近年の医学的研究は、正反対の知見を示している。インターネット上にも最近の科学的知見が無数にあるが、2003年に邦訳が出版された「マリファナの科学(築地書館)」のなかで、大麻に関する研究の総括を行ったイギリス下院科学技術特別委員会の顧問を務めた著者、レスリー・L・アイヴァーセン博士は次のように述べている。
「(大麻が)人間の脳に長期的損傷をもたらすという証拠はない。」p.203
「これまで世界各地で専門家による数々の調査が行われ、そのほとんどのケースで大麻が並はずれて安全な薬物であるとの結論に達している。」p.273
「大麻の長期的使用は肉体的・精神的・道徳的な退行につながらず、継続的に使用した場合でも何ら永続的な有害効果は認められない。」p.276
大麻と脳に関する研究では、以下のようなレポートも公表されている。
2005年に、ハーバード大学医学部の研究チームが磁気共鳴画像分析を使い、大麻の長期かつヘビーなユーザー(喫煙回数平均2万100回)22人と、26人の非喫煙者の脳の対照研究を行っているが、両者の画像には目立った違いはなかった。「このことは、大麻の使用が脳の全体あるいは特定の海馬に構造変化を起こすことはないという最近の文献の結論と一致している」 と研究者たちは結論づけている。
Lack of hippocampal volume change in long-term heavy cannabis users.
PubMed
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15804878
同様の結果は 2006年のニューヨーク大学の研究でも示されている。
A preliminary DTI study showing no brain structural change associated with adolescent cannabis use
Harm Reduction Journal
http://www.harmreductionjournal.com/content/3/1/17
また、2005年10月には、大麻が脳を破壊するどころか、脳の海馬領域で新生ニューロン神経細胞の増殖が促進されたことまで報告されている。この研究を行ったのはカナダ・サスカトゥーン大学の研究テームで、合成カンナビノイドをラットに投与したところ、神経細胞が新生されて不安やうつ的な振る舞いが大幅に減ることを見出している。
Cannabinoids promote embryonic and adult hippocampus neurogenesis and produce anxiolytic- and antidepressant-like effects
Journal of Clinical Investigation
http://www.jci.org/articles/view/25509/version/1
大麻の医学的研究については、上記の詳細も含め、カナビス・スタディハウスが質量ともに充実した情報を公開しているのでご参照頂きたい。
●カナビス・スタディハウス:http://www.cannabis-studyhouse.com/
根拠もなく、大麻を1回でも使用すると脳が壊れるとか、大麻合法論を「バカなことを言っている」などと、公共の電波を使って言い放つ水谷修氏には、説明と謝罪を求める。
2.10min.ボックス「大麻の怖さ知っていますか?」(2008年6月6日放送:現在もネットで公開中)
番組ウェブサイト:http://www.nhk.or.jp/10min/seikatsu/ja/frame.html?0&09&49
この番組は、中高生向けに制作された教育教材である。番組冒頭、大麻を栽培していた大学生の自宅に麻薬取締官が家宅捜索に入る場面が流れる。NHKは「大麻の怖さ」として、まず始めに、麻薬取締官が家宅捜索に入る点を挙げている。言うまでもなく、これは大麻自体の「怖さ」ではなく、大麻の法的規制のあり方から派生する「怖さ」である。正確に言うなら、これは「大麻の怖さ」ではなく、「大麻取締法の怖さ」であり、「麻薬取締官の怖さ」である。
続いて番組は、薬物依存からの脱却と回復を目的とする民間施設、日本ダルク群馬アウェイクニングハウスを紹介している。そこには、約30名の入所者がいることが紹介され、2名に対するインタビューが取り上げられ、薬物依存の「怖さ」が語られる。
しかし、この施設の施設長に私が確認したところ、入所者約30名には、大麻で依存症に陥った者はなく、インタビューが紹介された2名についても大麻だけで薬物依存になったのではないとのことだった。施設長の説明によれば、むしろ多くの者はリタリンなどの処方薬によって重篤な依存症になったのだという。
つまり、この施設に入所している者たちは、大麻が原因で依存症になったのではない。ところが、番組では一切そのような説明はなく、あたかも「大麻の怖さ」であるかのように編集されている。しかも、この番組を制作した担当者は、当該施設の入所者には、インタビューした2名を含め、大麻だけで依存症になった者がいない事実を取材段階で認識していたという。この番組は、「大麻の怖さ」を強調・誇張するという意図のもとで、事実を歪曲して制作されたのである。
この番組では、「大麻の怖さ」を証明する実験として、上記施設に続き、ラット(ダイコクネズミ)の実験が紹介されている。「ラットに大量の大麻を与えると、普段はおとなしいラットが仲間を襲う」というナレーションとともに映像が紹介されている。
しかし、番組を制作した担当者に確認したところ、襲っているのはラット(ダイコクネズミ)であり、襲われているのはマウス(ハツカネズミ)であるとのことだ。つまり、これは別種のネズミなのであり、ラットがマウスを襲ったのは異常行動でもなんでもなく、単なる捕食行動ではないのか。
このネズミの実験を受けるかたちで、番組には国立精神・神経センターの薬物依存研究部部長、和田清氏が登場し、次のように解説している。
『大麻はタバコよりは害が少ないんだという方がいたり、あるいはそういう報道がされることがあるんですが、何をもってそういうことを言うのか、その根拠というものは、実は私たちから見ますといっさい分かりません。どこにもその根拠がありません。』
しかし、大麻がアルコールやタバコほど有害ではないという調査結果は、海外の権威ある研究機関によって報告されている。その幾つかを以下に示す。
●米国国立薬物乱用研究所(NIDA)
反大麻研究の中心である米国国立薬物乱用研究所(NIDA)のジャック・ヘニングフィールド博士による評価でさえ、どの項目を見ても大麻はアルコールよりも深刻度は少ない。
Jack E. Henningfield, PhD for NIDA, Reported by Philip J. Hilts, New York Times, Aug. 2, 1994 "Is Nicotine Addictive? It Depends on Whose Criteria You Use."
http://drugwarfacts.org/addictiv.htm
●英下院科学技術特別委員会
2006年7月、イギリス下院科学技術特別委員会は、国の現行のドラッグ分類に対し、科学的な観点から、アルコールなど合法的なドラッグを含む20種類のリクレーショナル・ドラッグの再評価を行った。委員会はこの研究をベースに、アルコールを最も害のあるドラッグ分類(A分類)に区分するように政府に提言している。また、委員会の評価では、大麻は害の少ない部類に属している。以下の表はランセット2007年3月号に掲載された同研究論文のものである。
※現在、大麻の区分はBに戻されているが、これはCに据え置くよう勧告したドラッグ乱用問題諮問委員会(ACMD)の答申を無視した政治的な判断によるもので、科学的な判断によるものではなかった。同委員会の議長を務めるデイビッド・ナット教授は、大麻はアルコールより害が少ないという、科学的根拠に基づいた持論を展開し、この10月に委員を解任された。このような科学的知見の表明に対し、政治的な理由で解任することに抗議し、さらに4名の科学者たちが同委員会を辞任し、イギリスでは現在も論争が続いている。翻って我が日本には、このように科学者としての良心に従い、政府に抗議する学者はほとんど見当たらない。
●IOM報告
1999年3月、全米科学アカデミー医学研究所(IOM)は、連邦議会に対し、大麻の臨床研究と医療使用を認めるように求めた勧告を盛り込んだ報告書を提出している。そのなかで、大麻の依存性については次のように書かれている。
「確かに、動物実験ではカンナビノイドの依存性が発生することや、禁断症状も観察されているが、他の薬物の依存性や禁断症状に比較すれはいずれも穏やかなものであることが明らかになっている。」 p.35
「大麻やTHCに禁断症状が現れることには疑問の余地はないが、アルコールやヘロインの身体的禁断症状に比べれば穏やかで僅かなものに過ぎない。」 p.89,90
「他の大半の薬物に比べれば・・・大麻ユーザーの依存性は比較的稀にしか起こらない。」 p.94
「依存性を起こす大麻ユーザーはごく少数で・・・依存性が現れたとしても、大麻を単独で使っている場合は、コカインの乱用や大麻とアルコールなどを併用した場合ほど深刻なものにはならない。」 p.96,97
「要約すれば、大麻ユーザーが依存性に陥ることは余りないが、一部の人たちはそうなることもある。しかし、それでもアルコールやニコチンなどのユーザーほど多くはなく、大麻の依存性は他の薬物の依存性ほど深刻なものになることはない。」 p.98
Marijuana and Medicine: Assessing the Science Base (1999)
Institute of Medicine (IOM)
http://www.nap.edu/openbook.php?record_id=6376
薬物依存の専門家である和田氏が、大麻にはアルコールやタバコほど害がないという、上述した権威ある公的機関の調査報告をご存知ないとは考えにくい。その点を何度もメールや電話で和田氏に問い合わせたが、回答はない。
和田氏は、「大麻の怖さ知っていますか?」のなかで、さらに次のように述べている。
『私たちは仕事柄、薬物依存に陥った人たちを見ております。そういう人たちと話をしてますと、そういう方が100人いた場合、100人とも、最初は自分は薬物依存になるとは思わなかったと、だから1回目をやってみたんだと、みんなそう言います。ところがですね、100人が100人とも薬物依存になってるんですね。』
薬物依存に陥った人を100人集めてみたら、100人とも薬物依存だった?「100人の日本人を集めてみたら100人とも日本人だった」とか、「リンゴを100個集めてみたら100個ともリンゴだった」。そう言っているに過ぎないではないか。いくら中高生向けの番組とはいえ、このような言葉のトリック(トートロジー)で「大麻の怖さ」を説明したのでは、あまりにも公正さや正確さを欠き、NHKや説明者の信用と信頼を損なうばかりである。
また、本番組が指摘する大麻の有害性について、出展と根拠を示すよう、制作担当部署に問い合わせたが、「参考文献については個別に回答していない、ご自身で調べて下さい」とのことだった。私は「大麻の怖さ」を勉強するために参考文献を訊ねたのではない。本番組が何を根拠に大麻の有害性を断じたのか、その根拠を質したのである。この点について再質問したところ、なんと、NHKは、私たちの団体(大麻取締法変革センター)からの質問には回答しないという、およそ受信料を取って経営している公正中立を旨とする報道機関とは思えない、信じ難いほど傲慢で横柄な対応だった。
以上の通り、「大麻の怖さ知っていますか?」という教育番組は、徹頭徹尾、支離滅裂であり、「大麻の怖さ」を無理にでもでっち上げるため、情報の改竄と偏向と捏造によって構成されているに過ぎない。このような事実に基づかない教育番組を見た子どもたちが、大麻を経験し、この番組のウソを知り、だったら本当は覚せい剤もたいしたことがないのでは ?という誤った認識に陥る危険性すらある。「大麻の怖さ知っていますか?」という「教育」番組は、子どもたちにとって、より危険な薬物へのゲートウェイとなりかねない危険性すら孕んでいる。
3.追跡AtoZ なぜ市民が大麻を(2009年9月12日放送)
この番組は、「なぜ市民が大麻」と題しながら、番組の冒頭に流れるのは、大麻とは関係のない酒井法子さんと押尾学の映像である。そして、番組本編の冒頭では、上記の「大麻の怖さ知っていますか?」と同様に、大麻を栽培していた大学生の自宅に麻薬取締官が家宅捜索に入る場面だ。ここでもNHKは「大麻の怖さ」として、麻薬取締官による家宅捜索を挙げているのである。いったい、いつからNHKは麻薬取締部の広報を担当するようになったのだろう。
番組は、大麻の種が流通している現状と、大麻を栽培する一般市民が、従来の違法薬物の流通経路であった暴力団を介さずに、市民相互に大麻のやりとりをしている点を問題視している。
大麻がどのように危険で有害なのかという、最も肝心な点についは、1997年に世界保健機関(WHO)が非公式に公表した大麻に関するレポートから、「学習障害」「記憶力の低下」「人格の変容」「知覚の変化」を取り出して紹介している。しかし、WHOによるこの大麻レポートが指摘する上述の危険性は、いずれも短期的な影響として書かれているものであり、大麻の酔いが覚めてしまえば消失するものだ。同じような影響はアルコールの摂取によっても生じるが、覚めてしまえば残らないのと同じ性質のものである。だが、NHKはこれを短期的な影響であると説明せず、あたかも大麻による後遺症として影響が残るかのように報じている。
さらに言えば、WHOによる97年の大麻レポートには、大麻の医学的な効果として、癌の疼痛緩和、多発性硬化症の症状緩和、HIVによる食欲不振の改善など、さまざまな疾病への有効性が書かれているにも関わらず、NHKは一切これらの情報には触れていない。大麻の急性的な影響として書かれている僅かな危険性のみを恣意的・意図的に取り出して、あたかも大麻には悪い面しかないかのような報道を行っているのだ。
WHOによる97年のレポート以降、大麻(あるいはカンナビノイド)に関する研究は、世界各地の研究期間によって進められ、実にめざましいほどの進展が見られる。それにも関わらず、なぜNHKは97年のWHO報告という古い情報を放送に使ったのか。
この番組を制作した江刺ディレクターに聞いたところ、大麻の有害性についてさまざまな情報を探してみたが、これだと言えるものがなかなか見つけられなかったのだと吐露している。なんのことはない、大麻の有害性を示す医学的な情報を探したものの見当たらず、WHOの97年報告を利用したと言うのだ。
また、私の質問書に対するNHK報道部の回答によると、WHOによる97年の大麻報告は、国連機関が公表したものとして、本年3月の国連麻薬委員会における決議でも言及されているので採用したとのことだった。しかし、日本政府が提出したその決議では、この97年の大麻情報をアップデートするよう求めてもいるのだ。つまり、その後、世界各国の研究機関によって、大麻に関する医学的知見が飛躍的に進歩しており、WHOの97年レポートが陳腐化していることを示唆している。
いずれにせよ、NHKは大麻の医学的な有効性などについて一切触れることなく、ひたすら大麻を有害なものとして位置づけ、その意図に沿った情報だけを集め、場合によっては事実を捻じ曲げてまで、「大麻汚染」報道を展開してきたのである。
この番組のゲストには、BPOの委員を務める吉岡忍氏がゲスト・コメンテーターとして出演している。そして、番組の締め括りに、若者に大麻が広まる社会的な背景として、将来に希望が持てないなどいった、安易で安直でステレオタイプな一般論が語られたのである。
4.大麻を巡る世界的な現状
日本では、NHKを含むマスコミが、何ら医学的な検証をすることもなく、むしろ医学的な検証を避けるかのように、大麻を危険な薬物だと決め付け、「大麻汚染」報道を繰り返している。そこには、そもそも個人的に使用する大麻の所持や栽培を、懲役刑という厳罰で取り締まることの妥当性を検証しようとする姿勢は微塵もない。確かに大麻は国連麻薬単一条約で規制されている薬物ではあるが、それは主に違法薬物を営利目的で売る犯罪についての対応が求められているのであり、個人的に使用する大麻をどのように扱うかは、批准国の裁量に委ねられている。まして、単一条約は、大麻の医療的な使用を規制するよう求めてはいない。
近年、大麻がさまざまな疾病に効果があることは、海外の多数の研究機関が報告している。アメリカでは13州が大麻の医療利用を合法化しており、同じく13州が大麻の個人的使用を非犯罪化している。
現在のところ、アメリカ連邦政府は大麻の医療使用を認めておらず、ブッシュ政権までは、大麻の医療的な使用を合法化した州の患者やディスペンサリーを摘発してきた。しかし、オバマ政権になり、州で合法化されている大麻の医療利用に関しては、連邦政府は介入しないと司法長官が言明し、連邦政府の検察当局もその方針を明確にした。現在も多くの州議会で大麻の医療使用について検討されており、カリフォルニアでは医療目的に限らず、個人の大麻使用については罰則ではなく、一定の条件を定めて課税し、社会的に管理する法案が審議されている。
つい最近では、全米医師会(AMA)が、大麻を医薬品の価値なしと位置づけた連邦法よる分類を見直すよう決議している。
日本では、一般的に、アメリカは大麻に寛容だと思われているが、実際にはアメリカ連邦政府こそ大麻の弾圧を世界に輸出してきた。そのアメリカですら、大麻の医療的な使用や、個人的な使用について、マスコミは賛否両論を紹介し、識者を招いて議論している。
中南米のほとんどの国では大麻の少量所持など事実上刑事罰の対象ではないし、欧州も同様だ。ロシアでも個人使用目的の少量の大麻所持は非犯罪化されている。日本では3名の力士が大麻の所持や使用を理由に解雇されたが、彼らの母国では、少量の大麻を持っていたことなど犯罪ではないのだ。
日本のマスコミは、少量の大麻所持を、まるで凶悪事件でも起きたかの如く報道するが、海外のメディアは、そのような日本のマスコミの報道そのものを奇異なものとして記事に世界に配信している。以下に私自身が取材を受けたAFP配信の記事を挙げておく。
●Sumo: Russian wrestler expelled over marijuana/TOKYO, Aug 21, 2008
http://asayake.jp/modules/report/index.php?page=article&storyid=792
一昨年、BPOの委員を務めていた斉藤次郎氏が大麻所持で逮捕され、その事件について一般市民から寄せられたコメントがBPOのサイトに紹介されている。大麻を常習していたという斉藤氏のこれまでの判断は正常だったのか、など、大麻の事実を知る者からすると、苦々しく失笑するほかないが、大麻の医学的な事実をまったく検証もせずに、大麻を無条件に悪として報道するマスコミこそが、このような誤った認識を国民に与え続けているのである。産経新聞の報道(2007.11.5)によれば、斉藤氏は、裁判で大麻について次のように述べたそうだ。
「大麻には意識の拡張作用があり、心を豊かにする。自分や周りを深く知るために役立つ」
前掲書「マリファナの科学」のなかで、レスリー・L・アイヴァーセン博士は次のように述べている。
「陶酔の最初の段階では知的連想が速まり、これが一般にユーモア感覚の鋭敏化というかたちで反映される。」p.91
「芸術作品に対する新たな洞察力や眼識力については、しばしば報告されるところである。・・・これが20世紀初頭に米国のジャズ演奏家の間でマリファナが流行した原因となったことは明らかである。」p.93
「マリファナはその使用者をリラックスさせ、気持ちを落ち着かせるが、アルコールはときとして攻撃的で暴力的な行動を引き起こす。」p.109
「大麻は多くの人たちにとって、何世紀もの間、民話や民間療法に根づいてきた自然療法・薬草療法として、付加的な魅力を備えている。・・・大麻がもたらしたメリットを語る人たちのしばしば感動的な報告は抗いがたい力をもっている。これ以上、いったい何が必要なのだろうか。」p.153
「これまで世界各地で専門家による数々の調査が行われ、そのほとんどのケースで大麻が並はずれて安全な薬物であるとの結論に達している。」p.273
「研究者は次のような結論に達している。大麻の長期的使用は肉体的・精神的・道徳的な退行につながらず、継続的に使用した場合でも何ら永続的な有害効果は認められない。」p.276
「娯楽目的での大麻の吸引には有害なケースもあるが、コカインやアルコール、タバコほど危険なものではない。」
NHKをはじめとするわが国のマスコミによる大麻報道は、あまりにも偏向しており、公正さを欠き、誤った知識と認識を視聴者国民に与え続ける「大本営発表」に陥っているのである。
このような状況は、大麻の医療的な可能性が海外で認識され、現実に普及し、さまざまな疾病に苦しむ多くの患者たちが大麻の医療的使用によって苦痛を緩和していることを見れば、わが国における大麻の医療的利用という観点からも、将来に大きな禍根を残すものと断ぜざるを得ない。
5.結論
上に見てきた通り、NHKは、海外の研究機関が報告している大麻の医学的知見を参照・検証することなく、大麻の有害性を誇張・捏造し、一方的な「大麻汚染」報道を繰り返してきた。それはあたかも、NHKが麻薬取締部や警察の広報機関であるかの如くであった。財団法人麻薬・覚せい剤乱用防止センターといった天下り法人や厚労省などが、国民に周知している大麻情報は、15年以上前のアメリカ製薬物標本レプリカの説明書を翻訳したものに過ぎない。「ダメゼッタイ」の大麻情報には医学的な根拠がないことを天下り専務理事も認めている。報道機関は、そのような事実をこそ問題視すべきではないのか。
また、少量の大麻所持や栽培といった事件を実名報道し、逮捕された学生や若者の将来を奪ってしまう過剰な制裁的報道に問題はないのか、万引きという窃盗にすら罰金刑があるのに、誰にも迷惑すらかけていない少量の大麻所持や栽培を、懲役刑という厳罰で取り締まる政策のあり方は正しいのか、等々、国民から受信料を取って運営しているNHKには、公正で冷静な報道を行う責務があるのではないか。
上述した3つの番組には、そのような視点が欠片もなく、麻薬取締部の提灯持ちとしか言えない内容であり、対立する見解の双方を伝えておらず、著しく偏向している。
NHKは、大麻の医学的有効性や、薬学的特性、法的規制のあり方などについて、海外の研究や社会状況にも取材し、国内における対立する意見も公平に取り扱い、改めて大麻関連番組を制作し、放送すべきである。でなければ、「日本偏向協会」に名称を改めて頂きたい。
以上、要望する。
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