歴史
大麻草は、少なくとも3,000年前から医療目的で使用されている(1-5)。西洋医学には、1840年代、英国の東インド会社の社員としてインドで勤務中にその薬効成分に気づいた外科医、W.B.オショーネシーによって初めて採り入れられ、鎮痛作用、抗炎作用、けいれん緩和作用、抗けいれん作用が報告されたため、その使用が奨励された。
1937年、米国財務省によってマリファナ課税法案が提案された。これは、大麻草の医療目的の使用については1オンスにつき1ドル、娯楽目的の使用については1オンスにつき100 ドルを課税するというものである。この法律に反対したのは主にアメリカの医師たちであった。米国医師会はマリファナ課税法制定に反対した。なぜならこの法律は医師に、大麻を処方するためには特別税を支払うこと、大麻調達には特別な発注書を用いること、業務上の大麻の使用について別途記録を残すことを義務づけたためである。さらに米国医師会は、大麻に常習性があるということを示す客観的な証拠が不在であり、この法案が通過すれば、大麻の医薬品としての価値のその後の研究を妨げることになると考えていた(6)。1942年、大麻は米国薬局方から削除された。大麻が有害であるという懸念が後を絶たなかったためである(2, 3)。
1951年、ボッグス法が米国議会を通過した。これは大麻を麻薬の一つと位置づけた初めての法律である。1970年には規制物質法が制定され、マリファナはスケジュールI というカテゴリーの薬物として分類された。このカテゴリーに分類された薬物は、一般に認められた医療効果を持たないとされる。スケジュールIに属する薬物には他に、ヘロイン、LSD、メスカリン、メタカロン、そしてガンマ.ヒドロキシ酪酸などがある。
医薬品としての用途はないとされたにもかかわらず、大麻は、1978年に設置された治験新薬の特別使用許可制度のもと、個別審査を前提としてアメリカ政府から患者に供給された。この制度を通じた供給は1992年に中止された(1-4)。2010年、米国退役軍人省は、医療大麻が合法とされる州に住む患者がマリファナを使用することを許可している。
大麻草の精神活性成分の主たるものはデルタ-9-テトラヒドロカンナビノール(THC)であることがわかっている。1986年、合成デルタ-9-THCをゴマ油に溶かした、一般にドロナビノールと呼ばれるものが、化学療法にともなう吐き気や嘔吐を抑える治療のために認可された。臨床試験の結果は、ドロナビノールは他の鎮痛薬と同等かそれ以上の効果があることを示した(7)。ドロナビノールはまた1980年代後半に、エイズ患者の体重増加を促す効果が研究され、臨床試験の結果、患者は食欲の増加を報告したものの、有意の体重増加は見られなかった(8, 9)。
20年ほど前から、カンナビノイドの神経生物学的側面の分析が行われるようになった(10-13)。カンナビノイドの受容体として最初に薬理学的に同定されたCB1は、1988年に脳内で発見された。2番目のカンナビノイド受容体は1993年に同定された。CB2が最も集中して存在しているのはB細胞およびナチュラルキラー細胞であり、このことは、免疫力に何らかの役割を果たしていることを示唆している。内因性カンナビノイド(エンドカンナビノイド)の存在も同定され、鎮痛、運動の制御、摂食行動、記憶に関係があると思われる(11)。
参考資料
1. Abel EL: Marihuana, The First Twelve Thousand Years. New York: Plenum Press, 1980. Also available online. Last accessed March 30, 2011.
2. Joy JE, Watson SJ, Benson JA, eds.: Marijuana and Medicine: Assessing the Science Base. Washington,DC: National Academy Press, 1999. Also available online. Last accessed March 30, 2011.
3. Mack A, Joy J: Marijuana As Medicine The Science Beyond the Controversy. Washington, DC: National Academy Press, 2001. Also available online. Last accessed March 30, 2011.
4. Booth M: Cannabis: A History. New York, NY: St Martin's Press, 2003.
5. Russo EB, Jiang HE, Li X, et al.: Phytochemical and genetic analyses of ancient cannabis from Central Asia. J Exp Bot 59 (15): 4171-82, 2008. [PUBMED Abstract]
6. Schaffer Library of Drug Policy.: The Marihuana Tax Act of 1937: Taxation of Marihuana. Washington, DC: House of Representatives, Committee on Ways and Means, 1937. Available online. Last accessed March 30, 2011.
7. Sallan SE, Zinberg NE, Frei E 3rd: Antiemetic effect of delta-9-tetrahydrocannabinol in patients receiving cancer chemotherapy. N Engl J Med 293 (16): 795-7, 1975. [PUBMED Abstract]
8. Gorter R, Seefried M, Volberding P: Dronabinol effects on weight in patients with HIV infection. AIDS 6 (1):127, 1992. [PUBMED Abstract]
9. Beal JE, Olson R, Laubenstein L, et al.: Dronabinol as a treatment for anorexia associated with weight loss in patients with AIDS. J Pain Symptom Manage 10 (2): 89-97, 1995. [PUBMED Abstract]
10. Devane WA, Dysarz FA 3rd, Johnson MR, et al.: Determination and characterization of a cannabinoid receptor in rat brain. Mol Pharmacol 34 (5): 605-13, 1988. [PUBMED Abstract]
11. Devane WA, Hanus L, Breuer A, et al.: Isolation and structure of a brain constituent that binds to the cannabinoid receptor. Science 258 (5090): 1946-9, 1992. [PUBMED Abstract]
12. Pertwee RG: Pharmacology of cannabinoid CB1 and CB2 receptors. Pharmacol Ther 74 (2): 129-80, 1997. [PUBMED Abstract]
13. Felder CC, Glass M: Cannabinoid receptors and their endogenous agonists. Annu Rev Pharmacol Toxicol 38: 179-200, 1998. [PUBMED Abstract]
[翻訳元ページ]
http://www.cancer.gov/cancertopics/pdq/cam/cannabis/healthprofessional/page3
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