副作用
カンナビノイド
カンナビノイドの薬物安全性プロフィールは好ましいものである(1-4)。オピオイド受容体とは異なり、カンナビノイド受容体は脳幹の呼吸を制御する部分には存在しない。したがって、呼吸抑制によって死に至る過量摂取は起こらない。
カンナビノイド受容体は中枢神経系のみでなく身体中の組織に存在するので、副作用としては、頻脈、血圧低下、結膜充血、気管支拡張、筋肉弛緩、胃腸運動の低下などがある。
カンナビノイドは常習性薬物であると考える者もいるが、カンナビノイドが依存症を引き起こす可能性は、他の処方薬あるいは麻薬のそれよりもかなり低い(4)。脳はカンナビノイドに対して耐性を発現する。
禁断症状には、興奮、不眠、脳波障害を伴う不眠症、情動不安、体熱感、またまれに吐き気や筋けいれんなども見られるが、こうした症状は、アヘンやベンゾジアゼピンの禁断症状に比べて穏やかであり、通常は数日で消える。
一般的に使用される他の薬物と違い、カンナビノイドは脂肪組織に貯蔵され、ゆっくりと排出される(半減期は1-3日)ため、たとえカンナビノイドの摂取を突然止めても、血漿濃度が急激に下降して、激しい、あるいは急激な禁断症状や薬物への渇望を引き起こすことはない。
大麻
大麻の臨床試験においては、副作用としてしばしば陶酔感が挙げられる(1, 2)。
15才から49才の男性64,855名を対象とした、ある後ろ向きコホート研究では、被験者は煙草とマリファナの使用経験にしたがってコホートに分けられた。どちらも使用したことがない/大麻のみ吸ったことがある/煙草だけ吸ったことがある/煙草と大麻の両方を吸ったことがあるという4グループである(5)。追跡調査の期間中に、どちらも使用したことがない者のうちの2名が肺癌と診断された。煙草のみ、あるいは大麻に加えて煙草を喫煙した者が肺癌に罹る危険性は10倍であった。マリファナのみを吸ったことがある者の追跡調査では、肺癌の発症は見られなかった。
肺癌患者611名を対象とした患者対照研究では、少量の大麻を習慣的に使用することは、肺癌あるいはその他の上部気道・消化器癌発症の危険性の上昇とは関連がなかった(6)。対面インタビューでは、統一された質問票を使って、マリファナ使用に関する情報が収集された。これには、「ジョイント・イヤー」という単位が使用されたが、1ジョイント・イヤーは、マリファナの巻きたばこを一日1本、1年間吸った量に相当する。その結果、マリファナを30年あるいはそれ以上の期間使用した場合、喉頭癌を除き、粗分析が行われたすべての癌について明らかな関連が見られたものの、煙草の喫煙を含むいくつかの交絡因子の影響を除いた場合には、明らかな関連は認められなかった(6)。
さらに、18才以上でマリファナを喫煙する者の、前癌状態あるいは悪性の肺の病巣について査定した研究19例を評価した系統的レビューの結果、煙草使用の影響を除くと、これらの観察研究からは、マリファナの吸引と肺癌の間に統計的に有意な関連性は見られなかった(7)。
参考資料
1. Adams IB, Martin BR: Cannabis: pharmacology and toxicology in animals and humans. Addiction 91 (11):1585-614, 1996. [PUBMED Abstract]
2. Grotenhermen F, Russo E, eds.: Cannabis and Cannabinoids: Pharmacology, Toxicology, and Therapeutic Potential. Binghamton, NY: The Haworth Press, 2002.
3. Sutton IR, Daeninck P: Cannabinoids in the management of intractable chemotherapy-induced nausea and vomiting and cancer-related pain. J Support Oncol 4 (10): 531-5, 2006 Nov-Dec. [PUBMED Abstract]
4. Guzman M: Cannabinoids: potential anticancer agents. Nat Rev Cancer 3 (10): 745-55, 2003. [PUBMEDAbstract]
5. Sidney S, Quesenberry CP Jr, Friedman GD, et al.: Marijuana use and cancer incidence (California, United States). Cancer Causes Control 8 (5): 722-8, 1997. [PUBMED Abstract]
6. Hashibe M, Morgenstern H, Cui Y, et al.: Marijuana use and the risk of lung and upper aerodigestive tract cancers: results of a population-based case-control study. Cancer Epidemiol Biomarkers Prev 15 (10):1829-34, 2006. [PUBMED Abstract]
7. Mehra R, Moore BA, Crothers K, et al.: The association between marijuana smoking and lung cancer: a systematic review. Arch Intern Med 166 (13): 1359-67, 2006. [PUBMED Abstract]
http://www.cancer.gov/cancertopics/pdq/cam/cannabis/healthprofessional/page6
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