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逮捕された人たちの話 > マナリ亭茶楽助
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新連載!初めてインドでもって逮捕された時の事 その1
マナリ亭茶楽助 : 投稿者 : THC編集部 投稿日時: 2012-06-15


その頃オールドマナリには「ラスタカフェ」と言うカフェテリアがあり日本人Tさんが経営していた。経営といってもTさんにしてみれば趣味の域であった様に思える。かなり好きな様にやっていて人から頼まれるとレイブパーティーのオーガナイズも手掛けていた。

この当時は多くの外国人旅行者がここで買ったチャラスを国外に持ち出す、という事をしていて俺もその一人であった。

2003年8月23日、俺はマナリからデリーまで直行便のツーリストバスではなく途中停車しながらデリーに向かうローカルバスに乗った。何故、運賃はそれ程変わらずむしろもっと時間のかかるローカルバスを選んだかとゆーと、ポリスのチェックを危惧しての事だ。マナリ市を出た辺りにバジョーラチェックポストという処でツーリストバスに乗っていて“チャラスを持っていそうな者”がチェックされる確率が高い(俺のみた目はどーもチャラス吸いに見えるらしい。バジョーラで何度もチェックされていた)、故にローカルバスを選んだ訳だが・・・ナルコティックポリス(麻薬取締官)にマークされてしまえば何の意味も無い。

両脚の脛に計360gのチャラスを巻き付けた俺はローカルバスの前方の席に座った。その方が他の乗客から俺の動向をチェックしずらいって事だ。しかし俺よりも更に前に席を陣取って座っていたインド人が居たのだがその時の俺はそれ程気に止める事もなかった。何度もいろんな方法でチャラスを運んでいた俺は全然緊張感は無かった。程良くヘロインが効いていたのもそれに一役買っていた。

チェックポストのバジョーラを何事もなく通過した時、俺はつい気が抜けて隣に座る知人と握手してしまった。(ヤッタ!って感じで)その時前方に座っていた私服のインド人が何度となく俺を見ていた事には後で気がついたのだが。彼はナルコティックポリスだったのだ。

バスがクルディストリクトを抜けてマンディディストリクトに入った時に最初にある警察署、オートポリスステーションの前でバスが停車すると、前方から4人後方から4人のお巡りが、真っ直ぐ俺を目指して乗り込んでくる。先程俺の前方に座って俺を何度も見ていたインド人がお巡りらを先導して。俺を指差し「こいつだ」と説明。お巡りはすぐさま俺の両足の脛からチャラスを発見する。バスから引き摺り降ろされ地面に押さえつけられる。俺はあえなく御用。

警察署内に連れ込まれる。俺を逮捕する時は興奮していたお巡り達とも段々と打ち解けていった。冗談交じりでヘラヘラと笑っていらあ。

暫くすると、もう一人逮捕されたインド人が入って来た。窃盗の罪だという。俺はされる事はなかったが、彼は分厚いゴム板で尻や足をビッタンビッタンとスラップされている。彼は既に涙目だ。お巡りは

「お前の友達だ、仲良くしろ」という。

この警察署には留置場は無く寝る時はお巡りの詰所でお巡り達と一緒に寝る。構造上、逃げようと思えば逃げれるので俺は右手に手錠を掛けてもう片方をベットの足に掛け床で寝る事になった。インド製の古いタイプの手錠はU字型をしており絞めると手首がキリキリと痛む。手錠のアソビはまるで無い。少しも力を入れれない。痛い。
寝る前にお巡りが言う。

「お前は明日、ジェイルに入るんだよ」

本当だろうか?何となく現実感が無い。

ー入所ー
刑務所の冷たい鉄扉を開けると

「ハーロージャパニー!!」

異常にハイテンションのサドゥー(インドの遊行者)の様な格好の男がハグしてきやがる。俺の見た目が此処では相当に珍しいのであろう、大勢の囚人達が好奇心丸出しで俺を取り囲む。

この「サブジェイルマンディ」は収容人数が70人程、大部屋が二つと6人部屋一つ、中庭の中に更に塀に囲まれた場所がありそれは女性房になる。

(サブジェイルマンディ 茶楽助が入所した日に偶然撮られた記念写真 +クリックで拡大)

 

外国人はというとネパール人が数人とチベット人が一人、他は俺だけだ。マンディはインド国内でも外国人はかなり少なくとてもローカル臭いマイナーな場所である。英語を解す輩はかなり少ない。

俺が入れられたルームNo.2は縦長の部屋で20m程あり人々は二列になり向かい合って寝る。30人程の大ドミトリーである。

入所に際し渡された物は毛布が5枚とステンレス製の皿とカップ。
冷たいコンクリートの上に二つ折りにした毛布を敷いて自分の寝床を作る。180X70cmのスペース。新入り程TV(白黒、観れるのはチャンネル二つだけ)から遠くトイレシャワーに近い。見渡すとズラリと色黒の濃い顔立ちの人達。泣きたくなる。

ジェイルの中にだって英語を解する者は殆どいない。この時の俺はヒンディー語はおろか英語だって申し訳程度だった。

いくらか英語を話せるチベット人のジミーが俺の通訳を買って出てくれた。先程俺に歓迎の抱擁を行ったサドゥーはメンタルプロブレムであると事も無げに説明してくれた。彼は俺の斜向かいに寝ていて終始ニコニコと俺を観察している。~後に俺はインドの他のジェイルにも入ったのだがサドゥーであってもたまーにチャラスケースでもって逮捕されるらしい。多くはないが~

このジェイルの8割の囚人はチャラスケースだという。最高のカウンティティは1号室のチャンドラ・ネギの108kg(煩悩の数と一緒)だ。俺の360gとは文字通り桁が違う。

ー入所後にさっそくー
自分の寝床をfixするとさっそく隣に座った男がチャラスのジョイントをご馳走してくれた。ここではインド製のタバコのビリーの中身を抜いてチャラスを混ぜ入れ直して吸うのが一般的なようだ。これはこれでナカナカ旨いモノである。

どの様にチャラスを入手するのかとジミーに問うとマンディローカルが裁判所に出廷した際に持ち込んで来る物を買えるという。刑務官も売っているし裁判所にて弁護士がくれる場合もある。刑務所内は現金の所持が許されていない。裁判所に出廷する時は現金所持が許されるのでそれをコッソリ所内に持ち込んで来てそれでチャラスを買う。(2009年からはそれもできなくなった。囚人は一切現金を所持できなくなった)それと所内で週一回、買い物をオーダーできる。支払いはデポジットから金を引かれる。この品物でチャラスを買う事もできる。いずれにせよこのマンディではチャラスが安い。勿論、マナリやパールバティの物よりクオリティーは落ちるが。当時で1トラ(約10g)で100~200ルピー(300~600円)程度だ。マナリであれば安くとも400ルピーはする。ツーリストプライスって事もある。(2003年当時)

ー配給ー
食事は9時と17時半の2回、それにチャイを7時と15時に給される。
カレーの入った寸胴をガンガンガンと叩き動物園の餌の時間の様な食事配給の合図。
中庭に一列に並ぶ。刑務所の中と言えどココはインドの特にローカル色の強いマンディ、横入りする輩は当然いる。この横入りする輩には日本人の道徳観は通用しない。「急がねば貰い損ねるかもしれない、急げ急げ!」との興奮感のが強いようだ。それを注意する者もいない。

配給食は量は多いが不味い。そこで俺や一部の者は買っておいたトマトとタマネギを刻み勝手にキッチンで炒めて作り直して頂く。

夕食後にはこのカレーと紙みたいにペラペラのチャパティが7枚。ブランチ(朝食&昼食)には不味い豆カレーと冷めた米飯が給される。

ここにいる間は肉も卵も口にする事は無かった。完全なる印度的菜食主義であったのだがそれも悪くは無かった。

ー所内での移動許容範囲ー
7時から18時までの間、女性房を除く全ての房は開放されており好きな時に好きな場所に行ける。点呼も18時に一回だけである。ここのマンディという場所柄、それに8割はチャラスケースという事もありインド中のジェイルにあってかなり平和で穏やかな場所であった。

18時に房の扉が閉じられてからはコソコソせずにチャラスを吸ったり何かを作ったりとかなり自由にできる。俺は私物のMDプレイヤー(2003年当時だよ)を持ち込んで音楽を聞いたりしていた。他の囚人達は兎に角貧しく学歴も無く、MDプレイヤーを見るのも初めての輩ばかりだった。

ある日空き缶を切り配線を継ないで自作の電熱コイルを作った者がいたのでそれで夜中にコーヒーを作っていただいた。

ー刑務官の一言ー
ある日、ビリーを開いてビリージョイントを作っていた時の事、そこに刑務官がいきなり現れ「何をしているんだ?」と問う。俺は「ビリーが壊れたのだ」と答えると「そーか…いいか、俺の目の前でバング(チャラス)を吸っていたらそれは許さんが、俺の見てない処でお前が何をしていようと俺には解らない、解ったか!」とだけ言って行ってしまった。

つまりは黙認って事だ。HP州にはお巡りであろうともにチャラスを吸う輩はかなり多い。生まれた時からすぐ近くに沢山生えている物である。チャラスを吸うだけであれば誰にも何の迷惑も掛からないとゆー事やチャラスの効能も、よーく理解している。何処かの国の様にコレは麻薬だ!人生を破滅させる!などの洗脳も受けてもいない。酒やヘロインとは別物、用途によっては薬としての利用価値があるとユー事も先進諸国よりももっと認識しており使用している。今でもオールドマナリや他の村では歯痛や腹痛、子供の疳の虫などに利用されている。村内に薬局店がない村などざらにある。

余談だが、ある時このジェイルにヘロインの酷い禁断症状の男が入所してきた。傍目にも相当に苦しそうである。ドクターはこの男 に定期的にチャラスを与えた。男は寛解したという。

続く

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