昨年暮れ、友人の英国人が逮捕されるかもしれないと相談がありました。その顛末を相談者のKさんにまとめてもらったので掲載します。英国大使館の対応に好感を持つ人も多いのではないでしょうか。
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これは2006年12月、友人に起きた大麻所持で逮捕される一歩手前の事件について、どなたかの参考になればと思いまとめたものです。Eは40代後半の英国人の男性で、日本には10年以上滞在していました。
1. 救急車
その日、彼は1年ぶりに自宅で友人と大麻を喫煙しました。その大麻は友人が持ってきたそうです。次の日の夜、同じ大麻の残り(ジョイント一本分)を一人で吸い床について30分ほどが経過したところに急に具合が悪くなってしまい、救急車を呼ぶことになってしまいました。胃にガスが溜まり、喉と口が極限状態なまでに乾いて舌も動かせなかっていたと彼は話します。
Eはとりあえずトイレに駆け込み、ビニール袋を破いて残っていた大麻を全て流しました。そして救急車を呼びました。最初は間違えて119番ではなく110番してしまうほど、動転していたようです。119番には外で待っておくように言われたため、半そでで真冬の夜中に30分間も待ちました。Eの大麻喫煙暦は長く、強い品種の経験も、多くの量の経験もあったにもかかわらず、このようなことは初めてのことでした。
救急車が到着してから、戸締りをお願いしようと鍵を渡すとなんと大きなバッズが付着していたのです。トイレに処分している時に強く握り締めすぎたせいだったのでしようか。
救急隊員(以下Qとする)「これは大麻じゃないの?」(袋に入れようとする)
E「何のこと?よく見えない。」
Q「これだよ」(目の前に差し出す)
E「これは夕飯に食べたバジルの残りだー!」(最後の力を振り絞ってこれを奪ってすぐに飲み込む)
Q「あぁー!」
救急隊員らは相当気を悪くしたようで、そこから尋問が始まりました。
Q「日本で自らこのような悪いことをするやつは助けないよ。」
E「バジルハ違反デスカ、バカヤロウ!クタバレ!」
詳しくは後述しますが、ここで救急隊員は新たなる「証拠」を探しにEの家へ勝手に上がりこみました。
Q「大麻吸ったね?」
E「足つったつってる」
Q「あなたのような人を助けるために私たちはいないんですよ」
以上の会話が無限に「繰り返される」ような体験だったようです。
病院に空きがなかったのか、ただ救急隊員が「懲らしめる」ために救急車を動かさなかったのか、30分間程度そこから動きませんでした。体温は34度まで下がっていて、危険な状態だったようです。
救急車が走り出してからは、救急車の中では通常の手順のようで簡単な質問を繰り返しされたようです。「あなたの名前は何ですか?」、「今日は何月何日ですか?」などです。本人はこれがとてもシュールリアリスティックに感じられ、実際にそれが何度も聞かれていることになかなか気づきませんでした。
2. 病院
ある私立大学病院にやっと搬送されると点滴や注射などを受けるとすぐに具合はよくなり、お医者さんと二人で話すことになりました。
お医者さんは「救急車の隊員はあなたが大麻を吸ったと言っています。私には本当のことを言っても秘密は守りますから教えてください。」というので、事実を告げたようです。
「医者には守秘義務があるので教えても大丈夫ですが、救急隊員にはこういうことは教えてはいけません」、「今回はおそらく安全ではない肥料や農薬が原因なのではないか」といったコメントをもらったようです。
その後警察が面会を求めてきました。救急隊員が通報したのだと思われます。
刑事が二人だったようです。部屋の外だったのではっきりとは聞こえなかったようですが、「いえ、それは本人の同意がないことには・・・」とお医者さんが話しているのが聞こえたといいます。看護婦さんは「私も××県警が大嫌いだから安心して!とりあえず面会して適当なことを言えばいいわ」と言ってくれました。なので面会することになりました。
刑事(以下Kとする)「救急隊員が大麻を吸ったと言っていますが、本当ですか?」
E「いいえ、大麻なんか吸ってませんよ。サルビア(Salviadivinorum)を吸いました。」
K「それ違法でしょ?」
E「違法じゃありませんよ!なんなら見せてもいいですよ。」
K「何でそんなもの吸ったの?」
E「今失業中でしかも離婚調停中で、ストレス解消に吸いました」
K「あ、そう。日本語うまいね」
E「いえ、まだちんぷんかんぷんですよ」
以上のような内容だったようです。その後少しだけ偽った名前を教えると刑事らは引き返していきました。看護婦さんには「いい感じだったと思うよ!」と言ってもらえました。
その後尿を採取され、しばらくするとお医者さんが賞状のようなものを持ってきました。よく読めなかったようですが、でかでかとTHCと書かれていました。「非常に値が高いですね」などといわれたようです。この時点では食べたバッズが効いてきたのか、楽しくなってきて、
E「あ、合格ですか?」
医者「はい、合格です(笑)」
などとおしゃべりをしたようです。その後、朝まで見回りに来る看護婦さんたちとおしゃべりしながら過ごしてから自宅へ帰されました。
3. 自宅
自宅へ戻ってすぐに異変に気づきました。台所に置いてあったクラートム(Mitragyna SpEcioSa)の乾燥葉数枚がまるごと消えていたのです。おそらく警察へ渡そうとしていた大麻のバッズを食べられたので、救急隊員が家へ浸入して盗んだのだと思われます。ただこれを大麻だと勘違いしたのはむしろ不幸中の幸いだったかもしれません。
この時点で自分へ連絡があり、昨晩の事件について知らされたので、「無料で相談に乗ってくれる人たちのウェブサイトを知っているから相談してみる!」とTHCに相談させてもらいました。
その日、Eはとりあえず英国大使館へ相談をしました。医者にすでに大麻を吸ったことを告げたにも関わらず尿検査を同意なく勝手にされたこと(医療と無関係なのでは?)、救急隊員の行動のことなどを相談しました。
担当「実際大麻は使用しましたか?」
E「はい、使用しました」
担当「悪い子ですね。しかし協力します。とりあえず病院には同意なく受けさせた検査結果を破棄するように要請しておきます」
と、非常に協力的だったようです。これは国籍によって大きく対応が異なるところだと思います。
4. 21日間
THCの方と相談する中で「大麻には使用罪がない」が気をつける必要があることなど、たくさんアドバイスをいただきました。
事件から22日間は比較的平穏でしたが起こったことといえば、病院へ同意のない検査をされたことに対する抗議文をファックス(大使館にも同内容のものを送付)したことと、英国大使館の検査結果の破棄の病院への要請は断られ、公式な返答は「一週間後」にするとの返事だったことくらいです。後は当然ですが部屋をくまなく掃除しました。
5. 家宅捜査
22日目の朝9時ごろ突然警察は来ました。10分くらい居留守を使いましたが延々とドアを叩き続けるのでしかたなく「アサカラナンダウルセーナー!」とドアを出ると、「大麻取締法に関する通報を受けたので捜査させていただきます」といわれ、捜査令状を見せられたのでとりあえずリビングに5人をあげました。刑事1人、捜査員3人、通訳1人で、全員作業服を着て歩いてきたようです。
まず刑事は「使用罪はありませんのでご安心ください」と自ら事前に断ってきました。
E「何で大麻は使用罪がないんですかねー?」
刑事「さぁ、覚せい剤とは違うからだと思います。私たちは大麻のことをそんな問題だと思っていないんです。覚せい剤をする人は強盗や殺人を犯しますからね」
それから「煙草吸っていいですか?灰皿を貸してもらえますか?問題にならないのを(笑)」といわれたので、灰皿がなかったので皿をだしたようです。
「問題のない灰皿はないんですね(笑)」と言われました。
また「いやぁ、綺麗に掃除された家ですね(笑)」とも皮肉を言われたようです。
次に「大麻の検査結果を病院に要請しましたが断られてしまいましたので私たちは結果を知りません」と刑事はいいます。
Eはとぼけて「え?私は大麻の尿検査なんて受けていませんよ?何でそんなこと知ってるんですか?」と聞き返すと慌てて「いえ、念のためです」と少し外れた返事だったようです。
そこで捜査が始まったようなのですが、Eは「××県警は証拠を捏造するで有名だから5人全員私が見えるところでだけ捜査してください」というと「そんなことしませんよ(笑)」といわれ、それからEの案内で部屋を全部まわり始めました。
しかしまじめに探している様子はまったくなく、指でものをつついてどかす程度で、タンスをひとつ開く以上のことをせずにすべての部屋を10分でまわったようです。
E「冷蔵庫の中はみないんですか?」
捜査員(以下Sとする)「え、なんでですか?」
E「大麻する人は冷蔵庫に保管しておくんじゃないですかね・・・」
S「あ、そうですね。」
刑事「この北京原人が!」
などと和気藹々な雰囲気だったようです。
そこで冷蔵庫にサルビアの葉が見つかったので、それの写真を撮られたようです。Eの顔の写真も撮られました。
その他には趣味で栽培している様々な植物の写真を撮られたことくらいです。最後に「通報を受けることがなければこれで私たちからお伺いすることは二度とありませんのでご安心ください。これからはビールが酒にしてくださいね」と言い残して帰りました。
6. 最後に
Eの考えでは、英国大使館が尿検査の件で何度も病院に電話してくれたことで、警察も儀礼的に捜索をするだけで済んだと思われます。根拠としては明らかにまじめに捜索しなかったことと、尿検査をしたかどうかわかるはずないのに結果をもらってないと発言したことなどだと思います。
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Re: ある英国人の危機一髪 | 0 | 3154 | 0 | 0.00 | 2012-2-28 19:12 匿名 |