さゆりさんの妹・祐美さん(23歳)の件、公判レポートの掲載が途切れていましたが、5月1日に結審しました。弁護方針や提出する証拠などについて、THCとしても意見を伝え、ささやかながら協力してきましたが、状況は厳しいようです。
祐美さんは、昨年7月、ベルギーから成田に帰国した際、大麻密輸入(大麻6kg)の現行犯容疑で逮捕されました。取調べの当初から、中身については知らなかったと祐美さんは供述しています。
祐美さんが持ち込んでしまった大麻はフルーツなどの缶詰12缶の中に入っており、その缶詰は、祐美さんの彼氏であるナイジェリア人の男・チャーリーから現地で預かったものだと祐美さんは供述しています。それまでも何度か、祐美さんは、チャーリーに依頼され、携帯電話の輸入の仕事を手伝うつもりで、ヨーロッパに出かけています。
昨年、大学を卒業したばかりの祐美さんは、内定していた会社に勤めるのではなく、彼に誘われて、彼の貿易の仕事を手伝う仕事を選択しました。彼女としては彼の仕事を手伝っているつもりだったのです。ナイジェリア人のチャーリーと知りあったのは、学生時代、クラブでのことでした。
祐美さんは、チャーリーから、仕事の内容は携帯電話関連の貿易の仕事だと聞かされていました。日本で調達するより安く買えると説明されていたのです。
そのナイジェリア人・チャーリーとクラブで知り合ってから、祐美さんとしては、恋人という関係として、チャーリーと付き合っていました。チャーリーもそのような態度で祐美さんに接していたそうです。祐美さん自身はタバコも吸わず、成田の税関で逮捕されるまで大麻を見たこともなかったそうです。
昨年の7月、ベルギーから帰国して逮捕された際、祐美さんは一人でしたが、現地ではチャーリーも一緒におり、祐美さんに荷物を預けたチャーリーは後から帰国することになっていました。これまでも祐美さんは同じように缶詰を持って帰国したことがあり、また、チャーリーがナイジェリア料理の店で友人たちにその缶詰を安く分けている様子を見たこともあったので、中身が大麻であるなどと疑いもしなかったのです。
祐美さんに缶詰を持たせたチャーリーは、帰国した祐美さんからの連絡が途絶えたため、自分は帰国しませんでした。
祐美さんが使っていたパソコンからチャーリーのメールアドレスを知った姉のさゆりさんは、事件のことには触れず、なぜ帰国してこないのか、荷物が何か知っていたのか、など、チャーリーとメールのやりとりを始めました。
チャーリーからの返信は、彼女は今どうなっているのか、彼女を愛している、彼女のことが心配だ、日本に帰りたいけれどもお金がない、など、祐美さんの身の上に異変が起きたことを察知した内容でした。
チャーリーのメールには、日本の銀行口座にはお金があるものの、海外でそれを引き出すことができないので、飛行機のチケット代を送金してくれればすぐにでも日本に帰国する、と書いてありました。そのようなメールがしつこくチャーリーから送られてきました。
さゆりさんは、妹の祐美さんの逮捕から間もないころ、チャーリーが祐美さんに有利な証言をしてくれることに一縷の望みを抱き、日本円で20万円を彼に送金しました。しかし、チャーリーは帰って来ませんでした。そしてその後も、なんだかんだと口実をつけてはお金を送ってくれとさゆりさんにメールしてきています。
当初、祐美さんが逮捕されたことについては、チャーリーへのメールで触れなかったさゆりさんですが、裁判が始まり、状況が好転しないので、荷物の中身について知っていたのかというメールをさゆりさんはチャーリーに送りました。さゆりさんは缶詰の中身が大麻だったことには触れていないにも関わらず、チャーリーからの返信には、「どんな種類のドラッグだったのか?」と書かれていました。中身が大麻であったことをさゆりさんが返信すると、チャーリーからの返信には、缶詰はチャーリーのものではなく、友人から預かったもので、チャーリー自身も中身については知らず、その友人が事情を知っていると書かれていました。
ではその友人だという男と連絡をとりたいので名前と連絡先を教えるようにとさゆりさんはメールしましたが、チャーリーからの返信には、その友人は事件のことで、地元の警察に出頭し、戻ってきていないなどと書かれていました。
そして、チャーリーの友人だと名乗る者から、チャーリー自身も地元警察に捕まってしまい、弁護士に相談しているというメールが送られてきました。
それではその弁護士の名前と事務所の住所を教えるようにというメールをさゆりさんは送りましたが、返信はありませんでした。
公判のさなか、祐美さんは、弁護士から、チャーリーがすでに日本人女性と結婚していることを知らされました。祐美さんは、留置場で、弁護士に教えられるまで、チャーリーが既婚者であることを知りませんでした。
公判では、当局に都合よく書かれた調書が読み上げられ、祐美さんが、そんなことを言ってはいないという意味を込め、首を強く横に振る場面もあったそうです。傍聴したさゆりさんによると、午前中に開かれたその公判で、古田浩裁判官は、昼メシでも気になるのか、さっさと終わらせたい素振りが丸見えだったとのこと。
5月1日、検察の論告求刑は、懲役7年罰金150万円でした。
結審直後の面会で、さゆりさんも、祐美さんも、涙が止まらなかったそうです。
弁護士によると、状況はとても厳しく、実刑判決の可能性が極めて高いので、控訴するなら早急に準備を始めた方が良いとのこと。控訴審は東京に移るので、弁護士も別の人に依頼するよう勧められたそうです。
判決公判は5月30日、千葉地裁で開かれます。実刑判決に備え、さゆりさんたち家族は控訴審に向けた準備を始めています。
さゆりさんは、弁護士費用などを稼ぐため、仕事を一つ増やしました。
THCは、共に戦います。
*文中、さゆりさんと祐美さんは仮名、チャーリーは本名です。
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