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逮捕された人たちの話 > 祐美さん(大麻密輸の冤罪)
控訴趣意書(8)/結論
祐美さん(大麻密輸の冤罪) : 投稿者 : 白坂@THC主宰 投稿日時: 2007-11-24

(10)結論
以上検討したように、原判決の認定手法には非常に大きな問題がある。判決が掲げる情況証拠によって、木村祐美さんが缶詰の中身が大麻であったことを知っていたと合理的な疑問を入れない程度に証明されていると考えることは不可能である。

3 情況証拠の検討

原判決が掲げる以外の情況証拠を見てみよう。
木村さんは真面目一辺倒のうぶな女子大生であり、男性経験に乏しい。彼女は、黒人音楽に興味があり、英語が話したくてクラブに出入するようなタイプの女子大生だったのである。そして、「オフィサー」 の意味もわからず、クラブに出入する外人と接触した。
「ラブ・コネクション」のカモを探している不良外人にとって、これ以上にイージーなゲームはなかったであろう。

チャールズは木村さんを徹底的に騙していた。
アメリカ生まれのアメリカ人で、ニューヨークに病気の父親がいるとうのは嘘である。
軍籍――人事の仕事をする米軍のオフィサー――も嘘。独身で結婚したことがないも嘘。彼にはれっきとした日本人の妻がいる。であるにもかかわらず、木村さんは逮捕されて事実を弁護士から聞かされるまでチャールズは独身だと思っていた。彼女は心底チャールズを愛していたのである。
彼の「除隊」後の仕事――東京駅近くにオフィスがある「プレクストン」という会社でSEをしている――も真っ赤な嘘である。

このように嘘で固めたチャールズが、缶詰の中身についてだけ本当の話しをするなどということがありえるわけはない。
ベルギーの会社から携帯電話を買うという話も、オンボード・クーリエの話も、全て、木村さんを騙して「運び屋」に仕立てるための嘘だったのである。

木村さんは、一生懸命に就職活動をしていた。そうして、ようやく、彼女は希望の会社に就職が内定していたのである。
幼いころからの夢が実現しようとしていたのである。その彼女が、「薬物の運び屋」をやるために内定を断るなどということがありえるだろうか。絶対にない。

彼女は産学協同プロジェクトの懸賞論文に全精力を捧げたのである。その彼女がようやく手にした物流会社の総合職の地位をどうして、大麻密売人の手下という地位と交換するだろうか。絶対にありえない話である。

彼女は、ごく親しい友人やゼミの恩師に、せっかく内定した会社を断って「友人とビジネスをはじめた」「輸入業をしている」と報告している(甲56・「英文メール訳文作成報告書」29、335、381頁)。これこそ彼女の真意を物語るものであろう。彼女は自分の夢をさらにステップアップするために、就職を蹴ってチャールズの手伝いをすることを決断したのである。

ところで、携帯電話を輸入するビジネスは実在する。木村さんの原審における説明は次のようなものである――外国の携帯電話はプリペイド式になっていて、先払いして使う;中にチップが入っていてそれを差し込んで使う(記録74頁)。これはチャールズが彼女にした説明であるが、間違ってはいない。日本以外の国の携帯電話はキャリアー(電話会社)に登録したSIMカード を入れ替えることで全ての機種を使うことが出来る。だから、ユーザーはキャリアーに依存することなく機種を変えることができる。電話機の販売がビジネスとして成り立つのである 。実際に、木村さんは最初の海外旅行の際に上海でチャールズが携帯電話を20個も買うのを見た。彼が「携帯電話を海外で買い付けて輸入するビジネスをしている」という説明を彼女が信じたとしても無理はない。

彼女はオランダやベルギーに行くことを秘密にしていない。友人らに話したりメールで知らせたりしている(甲56・205、462頁)。もしも彼女が大麻の運び屋であるという自覚をしているのであれば、これはありえないことである。

木村さんは、チャールズに頼まれて、オランダやベルギーと日本との間を繰返し往復したが、それによって何らの利益も得ていない。もしも毎回時価2000万円以上の大麻が運ばれたのだとすれば、木村さんはチャールズから莫大な報酬を得ていたはずであり、そうでなければそのような仕事を繰り返すことはありえない。

BROOK STONE横浜の家賃をチャールズが支払っていたが、これは2人で住むための部屋であり、チャールズが家賃を支払うというのは自然なことである。チャールズはこの家のことを「私たちの家」("our house")と言っていた(甲56・「英文メール訳文作成報告書」499頁)。搬入したベッドも大きなダブルベッドであった(被告人質問・記録108頁)。

4 結論

このように、本件の情況証拠は、彼女が騙されていたこと、「ラブ・コネクション」の魔の手にさらわれた被害者だったことを示している。

原審は、曖昧で多義的な「間接事実」を恣意的に取り上げ、一面的な解釈を施して、本来被害者であるはずの木村祐美さんを大麻密輸組織の一員と認定し、重罰を科した。

原判決が一刻も早く破棄されて、彼女が本来いるべき場所に戻ることを弁護人は心の底から願う。

第Ⅱ 事実誤認及び法令適用の誤り

原判決は、木村祐美さんが逮捕当時に所持していた現金2万円と123ユーロ12セントを没収するとの判決を言渡した。その根拠として、原判決は「国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法の特例等に関する法律」11条1項1号を掲げた。同号は「薬物犯罪収益」の没収を定める規定である。
しかし、木村祐美さんが逮捕当時所持していたこれらの現金が「薬物犯罪収益」であることを認めるに足りる証拠は存在しない。

原判決は証拠によらずにこの現金を薬物犯罪収益であると認定し同号を適用したが、これは事実誤認かつ法令適用の誤りである。

以上



以上、高野弁護士による控訴趣意書である。これを、東京高裁(裁判長裁判官・池田修、裁判官・吉井隆平、兒島光夫)は公判初日に即日棄却した。信じがたい暴挙である。いったい何のための裁判なのか。
祐美さんは現在上告中である。

優秀な妹を誇りに思い、学費を支援してきた姉のさゆりさんは、最低の糞男・チャールズに殺意すら感じている。

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