二、大学での生活
大学に入るうえで、親には一切頼らず全て自分で賄うことは前提条件でありました。貧しい経済事情にもかかわらず、私に高校まで卒業させてくれた両親に恩返しできるよう、また、私よりも年下の妹・弟がお金がないせいで学校に行けないことがないようにと、絶対に国公立の大学に入るつもりで決めていました。
色々な大学について調べていくうちに、実家の栃木に近く、休暇時に行き来のできる関東で、大学寮があり、その寮に卒業までの4年間住ませてもらえる大学が条件として絞られていきました。加えて、将来働くうえで役立つ、経済・経営といった実地の学問を学べるところとして、横浜市立大学は、まさに私の希望する条件にぴったり合っていました。
そうして高校3年時の実験の結果、合格することができ、寮も審査の結果、入寮を許可されて無事大学へと通へる下地ができました。学費・住居の面から考慮して、長年心の中で温めてきた夢が、このとき一つ叶いました。1日も早く、両親を楽にしてあげたいと、この時さらに強く願うと共に、少しでも社会貢献できる大人になりたいと思いました。
こうして、平成14年4月から横浜市立大学商学部経営学科に通い始めました。大学では、二つの奨学金を授与・貸与されていました。一つは、日本育英基金の無利子の控訴を貸与され、もう一つは城南信用金庫という五反田に本店のある金融機関に設立された小原白梅育英基金であり、奨学生として返済不要の奨学金を4年間、卒業まで授与せていただきました。
当基金は、私設の機関として設立され、日本では有数の育英機関として名前を知られており、厳しい選考がありました。応募資格は高校時の平均成績が5点満点の中で4.5以上といった、成績の最低基準があり、所属大学は一流大学として指名された大学に在籍する学生に限るという厳格な規定と審査がありました。ゆえに、奨学生となった者は東京大学や一橋大学などの将来を有望視された学生たちであり、基金の理念として掲げられた日本や世界に貢献する志を抱いた苦学生でした。
私が経営学科を選択したのは就職活動する際に活かせるためにという、将来を見据えての決定でした。経営者として起業して、社会貢献をしたいと思ったからであり、女性の活躍できる企業・組織づくりに少しでも参加したいという夢と、アメリカの実業家・慈善家であるロックフェラーやビル・ゲイツなどに代表される経営者たちのようになりたいという目標があったからでありました。加えて、グローバルな視野で学びたいという思いから、コースもインターナショナルビジネスコースに進路を決めました。
2年の後期になると、ゼミを選択することになりました。2年の前期から講義でマーケティングを受講したことが契機となって、マーケティングに関心が高まり、より深く、広く知りたいと思いました。経営学科の中でマーケティングのゼミは一つしかなく、1・2を争う人気がありました。ゼミ志望の用紙を提出し選考・面接で、ゼミ生として入ることを許可してもらい、高い倍率からゼミ生となることができることとなりました。
ゼミでは、消費者心理学、ブランド論を中心としたマーケティング全般について学習しました。3年生時には神奈川県の主催する産学連携プログラムの一環で懸賞論文に参加しました。この論文は県内の企業と大学が合同で行う形式をとっており、企業の課題・問題、例えば、新規事業提案や業務改善に対して学生側からの提言をするものでした。半年以上かけて、もう一人のゼミ生と論文を作成することになり、リサーチのために一般の人に向けてアンケートを実施し、分析にかけたり、実際にさまざまな場所へ赴いて情報収集を行い、完成したものをもとにパワーポイントを作って、企業の方の前でプレゼンテーションを行い、応募の結果、優秀賞を受賞しました。この年、ゼミの成績も優をもらいました。
また、大学生活の中で、1年生時は空手のサークルに入りました。2年生時以降は寮生活に慣れるに伴って、寮が日常の中でさらに大きな比重を占めるようになり、加えてゼミが開始したので、寮とゼミが第一優先になりました。学校のある時期は文字どおりゼミ一色となる状態でした。長期休暇に入ると、合宿を行い、連日徹夜でケーススタディを行ったりし、分析を行い、ディベートをし、プレゼンテーションのためのパワーポイントを作ったりする熱心なゼミでした。私もゼミ生も皆積極的にゼミ活動に参加していました。
そして、生活費のために、アルバイトをしました。それは同時に社会勉強でもありました。将来の仕事に活かすために幅広い職業を経験したいと思っていたので、ガソリンスタンドでの営業巡りをしたり、リゾートホテルでのフレンチレストランのウェイトレス、日本料理店のウェイトレス、百貨店の配送に関するクレーム処理、スーパーマーケットの中でのお中元・お歳暮、催事担当、テレマーケティング会社での受発信オペレーター、塾講師等として働きました。
同時に、通っている大学の女子寮である”萌生寮”も生活のなかで家族のような役割を果たすようになってきました。寮生が私に与えた影響も大きく、先輩は姉のような存在でした。
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