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逮捕された人たちの話 > 祐美さん(大麻密輸の冤罪)
控訴審判決文
祐美さん(大麻密輸の冤罪) : 投稿者 : 白坂@THC主宰 投稿日時: 2007-12-07

祐美さんの控訴審判決文です。長いので簡単に言うと、「祐美さんの言ってることは信用できないし、利用されていたのかもしれないけど、惚れた男のために大麻の密輸を手伝うこともあるかもしれないから、有罪にする」という内容です。
控訴審の初めての期日に、即日棄却。本当に祐美さんが嘘をついているのかどうか、審理もせずに。祐美さんが缶詰の中身を知っていた証拠は何もないのだ。疑わしきは実刑。懲役5年。控訴審の初日にこのような判決を言い渡すとは、裁判官池田修吉井隆平兒島光夫は、初めから審理などする気がなかったということだ。こんな裁判に何の意味があるだろう。もし、裁判員制度がこのような事案にも適用されて、祐美さんの言葉を普通の市民が聞き、確認すれば、こんなデタラメで滅茶苦茶な棄却の仕方はあり得なかったのではないだろうか。





平成19年10月30日宣告 裁判所書記官 古川輝一
平成19年(う)第1594号

判 決

本籍****
住居*****
会社員 木村祐美
昭和58年*月*日生

上記の者に対する大麻取締法違反、関税法違反被告事件について、平成19年5月30日千葉地方裁判所が言い渡した判決に対し、被告人から控訴の申立があったので、当裁判所は、検察官鈴鹿寛出席の上審理し、次のとおり判決する。

主 文

本件控訴を棄却する。
当審における未決勾留日数90日を、原判決の懲役刑に算入する。

理 由

本件控訴の趣意は、弁護人高野隆作成の控訴趣意書に記載されたとおりであるから、これを引用する

第1 事実誤認の主張について
論旨は、原判決は、被告人が氏名不詳者らと共謀の上、営利の目的で、缶詰に収納された大麻をスーツケースに隠匿して本邦に輸入した(関税法違反の点は未遂)旨認定したが、被告人は交際相手のンナディ・チャールズ・チュクメワカと称する外国人男性(以下「チャールズ」という。)から頼まれて、缶詰に大麻が隠匿されているとは知らずに本邦内に持ち込んだものであるから、原判決は、事実誤認しているというのである。

そこで検討すると原判決が掲げる証拠を総合すれば、所論指摘の点も含め、原判決の事実を優に認めることができ、原判決が「事実認定の補足説明」において説示するところも是認することができる。以下、説明する。

1 本件の客観的な経緯等について
関係証拠によれば、次のとおり認められる。
被告人は、平成17年11月から平成18年4月にかけて5回にわたり、いずれも千葉県成田市所在の成田国際空港からウィーンを経てベルギーに渡航し、数日程度の滞在を経て、本邦に帰国した。同年7月16日にも成田国際空港からウィーンを経てベルギー等に渡航して、同月20日(現地時間)、ブリュッセル・ナショナル空港でオーストリア航空第352便に搭乗に当たり、黒色ソフトスーツケースを機内預託手荷物として運送委託した。同日(現地時間)、ウィーン・シュベヒャート国際空港で、オーストリア航空第51便に乗り換え、同月21日午前8時27分ころ、成田国際空港に到着して、スーツケースを受け取り、同日午前8時48分ころ、同空港内東京税関成田税関支署第1旅客ターミナルビル南棟旅具検査場等で、財務事務官天野賢一や大泉誠也らから携行品検査を受けた。
携行品検査の結果、スーツケース内には、缶詰の6個ずつが入ったビニール袋2袋が収納されており、それらの缶詰の中には、いずれも黄色ないし透明ビニールラップ等で包まれ、茶色粘着テープを巻いて円柱状に形を整えられた質量489.74gから500.86gの12個の大麻草の塊(合計5948.87g)が入っていた。

2 携行品検査の状況
天野および大泉の原審公判証言等の関係証拠によれば、次のとおり認められる。
被告人は、旅具検査場免税検査台において、天野からの質問に対して、渡航の目的は観光であり、税関に申告する品物や他人から預かった荷物はないと答えた。被告人が短期間に頻繁にヨーロッパに渡航していることに不審を抱いた天野からスーツケースを開けることについて了解を求められてこれに応じ、スーツケース内の缶詰について尋ねられると、ベルギーで買ったと答えた。缶詰のラベルが雑であることなどに不審を抱いた天野から検査を引き継いだ大泉らからも同様の質問を受けたが、缶詰はベルギーのスーパーで0.75ユーロで買ったものであり、預かったものではなく、申告しょうよう板に記載されているような日本に持ち込めないものは持っていないと答えた。また、大泉からフルーツの缶詰なのに液体が入っていないなどと指摘され、本当に自分で買ったものか確認されても、やはり自分で買ったものであると答えた。エックス線検査装置の前に移動して、エックス線検査を行った画像を見せられ、その画像が不自然であると指摘されたが、分からないと答えた。大泉から缶詰を開けて検査することについて了解を求められ、これに応じて旅具検査場検査室に移り、本当に預かった物やもらった物はないかと再び質問を受けても、やはりないと答えた。大泉が缶詰を1個開けると、茶色粘着テープを書かれた物が入っており、においがしたので、、これは何かなどと問われたが、分からないと答えた。本当に預かった物は無いのかとまた尋ねられて、ようやく自分で買った物もあるが、他の物は預かった物であると答え、誰から預かったのかと問われると、余り面識のない外国人で黒人の友達からオランダで預かったと応じ、自分で買った物はどれかとの問いには、未開封の缶詰を1つ指差した。缶詰に入っていた物について更に問われると、オランダではソフトドラッグは合法だと聞いている旨答え、例えば何かとの問いには、大麻とかと答えた。現行犯逮捕する旨告げられた際は、うなずいて逮捕に応じた。

天野および大泉の原審公判証言は、いずれも職務として行った携行品検査の状況について具体的に述べたものであり、本件直後に作成された報告書等の客観的な証拠に裏付けられているし、事態の推移に応じた自然な内容であるから、十分に信用できる。これに反する被告人の供述は、天野らの証言と対比して信用できない。

3 検討
以上の客観的な経緯等や携行品検査の状況、特に、被告人が携行品検査の際に、他人から預かった物はない、缶詰はベルギーのスーパーで買ったなどと虚偽の説明をして携行品を検査されることを避けようとし、缶詰が開けられた後は、その中身について知らなかったという簡単な弁明をすることなく、かえって中身を知っていたかのような応答をして逮捕に応じたことに加え、平成17年11月から平成18年4月にかけて5回にわたり、被告人がチャールズから頼まれてベルギーに渡航し、いずれも際も、同人やその知人から頼まれて本邦内に本件の缶詰と同様の形状の缶詰を持ち帰っている(乙10、16)ほか、同年3月のベルギーへの渡航の前日にチャールズから重いバッグを運んで行ったり来たりすることについて感謝する内容のメールを受け取ったり、同年5月ころ、チャールズから頼まれて、その知人に缶詰を渡したり、缶詰の処分についてチャールズとメールを交わしていたこと(甲56等)などを併せ考えると、被告人は、チャールズから頼まれて、ベルギーから大麻を本邦に持ち込むことを企図して同国に渡航し、大麻が隠匿されていることを知りながら缶詰を本邦に持ち込んだものと認められる。そして、これらの事情、特に本件大麻の量、持ち込みの経緯、態様等によれば、被告人は、営利の目的で上記犯行に及んだものと認めることができる。

これに対して、被告人は、自分がベルギーから日本に戻る際にオーストリア航空の航空機に搭乗することにより、その機内旅客手荷物の枠を利用して、チャールズが携帯電話を輸入するビジネスを行っていたことから、同人に頼まれて本件の渡航に及んだものであり、同人と缶詰の譲渡等について話し合ったことはなく、チャールズから預かった本件の缶詰に大麻が隠匿されているとは知らなかったが、携行品検査の際には、検査を早く済ませるために、缶詰は自分で買ったものであると答えたなどと供述している。しかしながら、そもそも携帯電話の輸入のために、取引の主体でもない被告人が1年足らずの間に6回もベルギーに渡航していたという供述内容自体不自然であるし、被告人が供述する航空貨物輸送サービスは、いわゆるオンボード・クーリエといわれるサービスのこととうかがわれるところ、オーストリア航空の日本路線ではそのようなサービスを提供していない(甲60)。

また、被告人自身、商品の携帯電話を見たことはなく(乙15、22)、被告人が携帯電話の代金送金したという(乙19.22等)送金先が携帯電話の輸入元の会社等ではなくホテル等であった(甲39)のも不自然である。これらに加えて、上記認定のような本件の客観的経緯等や携行品検査の際の被告人の言動、チャールズとの間で交わされたメールの内容等に照らすと、上記認定に反する被告人の供述は不自然であって信用できない。

4 所論に対する判断
所論は、原判決の認定した事実に種々の評価を加えるほか、それらの事実を総合しても、被告人が大麻の存在を認識していたことを推認できないと主張する。すなわち(1)被告人は、携行品検査において、缶詰から内容物が取り出されるまで、うろたえたり悲しんだりする様子は一切なかったのであるから、携行品検査の際の被告人の言動を根拠として、被告人が缶詰内に大麻が入っていたと推認する原判断は常識に反する、(2)原判決は、被告人には、缶詰から予想外の物が出てきて驚愕している様子がなかったから、被告人は缶詰内に大麻が入っていることを認識していたと推認しているが、意外な出来事に出合った時の人の反応は千差万別であるから、原判決の推認は誤っているし、とっさに缶詰のうちの1つが自分の物であると述べた被告人の言動は、むしろ被告人が驚愕して精神的に混乱していたことを示しているし、(3)被告人が財務事務官から缶詰の中身について尋ねられて、大麻と答えた経緯をみると、財務事務官から推測を尋ねられて答えたもので、被告人自身が最初から缶詰の中身を知っていて答えたものでないことは明らかである、(4)原判決は、被告人が本件の前の5回の渡航の際に缶詰を持ち帰っていることから、被告人が缶詰の中身を知っていたと推認しているが、5回の渡航の際に持ち帰った缶詰の中身が大麻であるという証拠は存在しないのであるから、このような推認は許されない、(5)原判決は、チャールズから被告人宛のメールによって、チャールズが被告人に対して、被告人が大麻の運び屋や缶詰の運搬を行ったことを感謝していたことや、被告人がチャールズに缶詰の譲渡について意見を述べていたことなどを認定しているが、メールの内容に照らして、原認定には誤りがある、(6)被告人は、希望していた物流会社から総合職の内定を得ていたのに、これを断って大麻の運び屋を行うなどということはあり得ないから、被告人はチャールズに騙されて大麻の運びをさせられていたことは明らかであるというのである。

しかし、(1)についてみると、原判決は、携行品検査の際の被告人の言動について、虚偽の説明をしたことや缶詰が開けられた後に中身を知っていたかのような応答したことなどを含めその全体を推認の根拠としているのであるから、うろたえたり悲しんだりする様子があったか否かのみを問題とするのは適切ではない。所論指摘の点については、天野が「被告人がはあっと大きいため息をつき、その際目に少し涙をにじませていた。」と証言しているところであるが、仮に所論指摘のように被告人にうろたえたり悲しんだりする様子がなかったとしても、その余の被告人の携行品検査時の言動や前記のような被告人の渡航歴、チャールズとのメールの内容等に照らし、被告人が大麻の隠匿を認識していたとの認定を左右するものではない。(2)についてみると、確かに、予期に反する出来事に対する人間の反応は千差万別である。しかし、被告人は、携行品検査の当初から、缶詰は自分の物であると何度も言っていたのに、その缶詰から不審な物が発見されたのであるから、何らかの合理的な説明をしなければ嫌疑を免れない立場にあると分かったはずである。それにもかかわらず、被告人は、驚いた様子を見せず、中身を知らなかったことを弁明することもないまま逮捕に応じているのであって、この一連の言動は、やはり被告人が缶詰の中身について知っていたことを推認させる事情であることは否定できない。被告人は、缶詰の中に自分が買ったものもあると述べているが、それまでに何度も預かった物はないか聞かれながら、缶詰は自分で買った物であり預かったものではないと答えていたのであり、それまでの発言が全部うそであると認めることができずに、そのように発言してしまったとみることができるから、被告人が大麻を認識していたとの推認を妨げる事情とはいえない。(3)についてみると、確かに、被告人は、大泉から缶詰の中身は何だと思うかと質問されて、大麻と答えたものである(41丁)。しかし、質問に対してとはいえ、被告人は、「オランダではソフトドラッグは合法だと聞いている。」と答え、さらに「例えばなんですか。」と質問されると、「大麻とか。」と答えているのであるから、これら一連の経緯の中で被告人が上記のような発言をしたことは、缶詰の中身を知っていたことを推認させる事情であるということができる。(4)、(5)についてみると、確かに、被告人が本件に先立って本邦内に持ち帰った缶詰に大麻が隠匿されていたことを示す直接的な証拠は存しない。また、関係証拠(甲56)によれば、被告人はチャールズから[1]平成18年3月21日に「君は、私の仕事をとてもやりやすくしてくれたよ。大きいバッグを運んで行ったり来たりするのは楽ではないよね。」という感謝のメール(1324丁)を、[2]同年5月2日には「私の友達にそのジュース2缶を渡すために、明日の午後7時ころ、池袋へ行ってくれませんか?桃のがいい。」(1419丁)という依頼のメールを、[3]同月20日には「今日はアドバイスありがとう。私は君と電話する前にあのことについて考えていたんだ。私はあの男に、残りの缶を安い値段で渡す約束をした、ということをね。彼と話をしたとき、彼は私に、君がまだその缶を彼に渡せるかと聞いてきて、私はなんと答えたらいいのか分からなかったよ。もし君が可能なら、明日午後7時ころ彼が戻る前にそれを渡したいんだ。」(1441丁)という感謝と依頼のメールをそれぞれ受け取っているが、これらのメールにも大麻という言葉は直接用いられていない。しかし、被告人は、チャールズから依頼されて、1年もたたない短期間に6回もベルギーに渡航し、その都度本件で押収された缶詰と同様の形状の缶詰を本邦内に持ち帰っており、[1]のメールはその渡航の前日に受け取ったものであるが、その渡航目的に関する供述は信用できず、缶詰の持ち帰り以外に、被告人がチャールズから依頼されて、1年足らずの間に6回もベルギーと日本を往復する理由は見当たらない。そして、被告人がベルギーへの渡航の都度ただのフルーツ等の缶詰を毎回持ち帰っていたとか、フルーツ等の缶詰を安い値段で譲渡することなどを交際相手の男性からメールで依頼されるというのは不自然である。実際、上記のとおり、被告人は、携行品検査の際、缶詰の中身を知らなかったという簡単な弁明をすることなく逮捕に応じる一方で、缶詰の中身を知っていたかのような発言をしている。そうすると、被告人がベルギーへの渡航の際に持ち帰っていた缶詰には大麻が隠匿されており[1]のメールは被告人が大麻の隠匿された缶詰を持ち運ぶことについて感謝する内容のメールであって[2]と[3]のメールは、大麻が隠匿された缶詰の譲渡や運搬等を内容とするものと推認されるから、被告人は、本件渡航の際にも、大麻が隠匿されていることを知って缶詰を本邦内に持ち込んだと認められる。[6]についてみると、被告人は、チャールズに利用された面は否定できないものの、同人と親密に交際しており、そのような関係にある者のためであれば、本件のような犯行に関与することも考えられないことではないから、と所論指摘の事情は上記3の判断を揺るがすものではない。所論はいずれも採用できない。

5 小括
以上によれば、原判決に事実の誤認はなく、論旨は理由がない。

第2 事実誤認および法令適用の誤りの主張について
論旨は、原判決は、国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律(以下「麻薬特例法」という。)11条1項1号に基づき、被告人が所持していた現金2万円および123ユーロ12セントを没収したが、上記の現金が薬物犯罪収益であることを示す証拠は存しないから、原判決は、事実誤認し、法令の適用を誤っているといのである。
そこで検討すると、被告人の検察官調書(乙23)等の証拠によれば、被告人は、チャールズから、本件の渡航を依頼されて、航空券の代金として約19万円を受け取ったほか、現地での滞在費として10万円を受け取ったこと、本件で検挙された際、被告人が所持していた現金のうちに万円および123ユーロ12セントは、チャールズから滞在費として受け取った10万円の残金であったことが認められる。このような現金授受の経緯に加え、第1で認定した本件犯行の経緯等を併せ考慮すると、被告人が所持していた現金は、薬物犯罪の共犯者間において、犯罪行為の用に供しようとする現金と、受交付者に対する薬物犯罪の犯罪行為の報酬の趣旨に当る現金とが、その割合を明示されることなく一括して交付された後、犯罪遂行のためにその一部が費消された残金であり、押収時点においてもなお、犯行の完遂等のために用いられることが予定されていたものと認められる。そして、受交付者において薬物犯罪の犯罪行為を遂行するために費消したうえ、その残額を同行為の報酬として取得することとして、共犯者から交付を受けて犯人が所有する現金については、麻薬特例法11条1項および刑法19条1項2号により、その全額を没収することが可能であると解べきである(最高裁平成13年(あ)第1683号平成15年4月11日第2小法廷判決・刑集57巻4号403頁)から、これらの現金を麻薬特例法11条1項1号及び刑法19条1項2号により没収した原判決には事実の誤認も法令適用の誤りも存しない。論旨は理由がない。

第3 結論
よって、刑訴法396条により本件控訴を棄却することとし、当審における未決勾留日数の算入につき刑法21条を適用して、主文のとおり判決する。

平成19年10月30日
東京高等裁判所第6刑事部
裁判長裁判官 池田修
裁判官 吉井隆平
裁判官 兒島光夫

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