１１月１５日にTBSの報道特集NEXTで、「独占！あの大学でも大麻が 内偵半年ついに逮捕へ “汚染源”にも突入」という内容の放送があった。

この特集の前に放送された「子供を守る新制度　スタート直前に批判続々」という特集では、産科医療補償制度について検証され、推進する厚労省の担当官僚や、反対する現場の産科医の見解が紹介され、問題点が鋭く指摘されていた。来年から実施されるというこの制度には、特集のタイトルにもある通り、医療現場からの批判が相次いでいるようだ。「厚労省の天下り組織が潤うだけ」との危惧も指摘されている。

ところが、「大麻汚染」の特集では、同じ厚労省が管掌する大麻取締法や、天下り財団法人が国民に周知している大麻情報に何ら医学的根拠がなく、むしろ現在は海外の研究機関によって否定されている内容に満ちていることについての言及は一切なかった。政府の薬物乱用防止政策についての検証も全くなく、「大麻＝悪」という先験的な発想で構成されていた。
この大麻特集の感想を一言で言うと、「麻薬取締官活躍物語」といったところだ。それはまるで政府インターネットテレビで流されている「麻薬取締官」の続きのようでしかなかった。

「内偵半年」で逮捕された「種屋」は、２００３年から延べ２１００人に大麻の種を売り、３２００万円を売り上げていたそうだ。２００３年といえば私自身が麻薬取締官に捕まった年だ。その後、私は大麻の社会的な扱いを制度化するよう求め、身銭を切って活動してきた。そしてこの間、この種屋はボロ儲けを続け、この種屋から種を買って栽培したり所持したことで捕まった者たちからの相談にも私は対応してきた。
私は、種を買って捕まった末端の大麻愛好者には同情するが、この種屋には全く同情も共感も連帯感も感じないし、顧客リストを全てパソコンに保存したあったというのだから、バカ野郎と罵りたくなる。
私たちに、これまでに何度か、捕まりそうだという相談が種屋からあった。聞くと暴利を貪っていたりする。それでいて、その後の経過の連絡もなく、活動に協力しようという者は全くいなかった。
私たちは、大麻が無秩序に社会に拡散することを肯定しているのではなく、制度を作って社会的に管理すべきだと主張している。高校生にまで大麻栽培が広がっている現状は、現在の薬物政策が失敗していることを示している。
売って儲けることしか考えていない者たちは、大麻の流通が社会的に管理されてしまうと、儲けることができなくなる。だから制度化（＝合法化）には興味がないのだろう。禁酒法があるからアル・カポネは大儲けができるのだ。

この番組の特集では、麻薬取締官の大活躍が宣伝されていただけで、なぜ大麻がいけないのか、どのような害があるのかといった点については何も触れられていない。特集の最後に、アナウンサーの久保田智子ちゃんが、捕まった学生たちを評して「罪の意識が薄い」と定型句の感想を述べ、それを受けた田丸美寿々ちゃんが「大麻は他の薬物の入り口になることがあります」と、これまた既に数多くの研究が否定している踏み石論を披露していた。
昨今、多くの学生たちや社会人たちが大麻の所持や栽培で逮捕されているが、「誰でもよかった」というおぞましい凶行に及んだ者は一人もいない。誰かに危害を加えたこともなく、騒音おばさんのような迷惑すらかけていない。万引きのように明らかに被害者がいる窃盗罪にすら罰金刑があるのに、どこにも、誰にも、危害どころか迷惑すらかけていない大麻の所持や栽培は最低刑が懲役なのだ。
誰にも被害や危害どころか迷惑すらかけていないのに、マスコミは顔写真まで晒して実名報道し、そのことで逮捕が大学や勤務先に知られ、退学や解雇になっている。被害は大麻取締法と、マスコミ報道によって生じている。たかが大麻を少量所持していたり、栽培していただけのことが、人生の基盤をぶち壊されるような罪なのか。

キャスターの田丸さんは、「大麻は他の薬物の入り口になる」と言うが、それは大麻が他のハードドラッグと同じブラック・マーケットで扱われているからだ。
田丸さんに、「じゃ、他の薬物の入り口にならないようにすればいいんじゃないの？」と、突っ込みを入れたくなった。

大麻の何が問題なのか。厚労省の天下り財団法人が国民に周知教育している大麻情報は正しいのか。薬物乱用防止政策はこのままで良いのか。欧州の政策はどうなっているのか。今度はそれを特集してほしい。

※この感想はTBSにもメールで伝えました。

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