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質問と対話 > NHKの大麻報道との対話 > 「大麻汚染」を食い止めろ
「大麻汚染」報道を食い止めろ
「大麻汚染」を食い止めろ : 投稿者 : 白坂@THC主宰 投稿日時: 2008-12-09

12月3日、NHKクローズアップ現代で、「大麻汚染を食い止めろ」という内容の放送があった。

同番組のウェブによると、その内容は以下のようなものだ。

12月3日(水)放送“大麻汚染”を食い止めろ

現役の大学生が大麻の所持や栽培で逮捕される事件が相次いでいる。警察庁によると、今年上半期だけで1686件、過去最悪だった去年1年間の3282件を上回るペースだ。逮捕者に共通するのは、罪の意識の希薄さ。「一緒に大麻をやると絆が深まる」などとサークルや先輩後輩のネットワークの中で、汚染が急速に拡がっているという。栽培キットや関連雑誌が堂々と販売され、種はインターネットで簡単に入手出来るため、暴力団などの密売組織と接触するリスクがないという事情も背景にある。一方、大麻を売る側もごく普通の若者で罪の意識は薄い。大麻営利目的栽培と所持で懲役3年執行猶予5年の判決を受けた香川県の29歳の男は借金を抱えたフリーター。先週、大麻栽培ほう助の容疑で逮捕された品川区の34歳の男は、元ウェブデザイナーだった。オランダからインターネットを使って輸入した大麻種子を自分のHPを通じて5年間で2100人に売り、3200万円を売り上げていた。覚醒剤への入り口と言われる大麻、若者に拡がる大麻汚染の実態を追う。(NO.2669)

スタジオゲスト:水谷 修さん(花園大学客員教授)

この番組の内容について、THC読者のしらたまさんがメールでNHKに問い合わせた。

 

1 番組内の「大麻がゲートウェイドラッグ」「精神依存性が強い」等、ここ数年で発表されている学術的な論文の内容と異なる発言について、情報源はどこなのか。
尚、現在「麻薬・覚せい剤乱用防止センター」HPにおいて公開されている大麻の情報に関して根拠が無いことがわかっています。

近年の論文の例
カナビスはゲートウエイ・ドラッグ
カナビスの中毒性と依存性 程度は低く、害削減は容易
麻薬・覚せい剤乱用防止センターについて

2 番組の構成として厚生施設に3年通っている男性を紹介していたが、この3年というのは番組内における「大麻は身体的依存が低い」ということに矛盾している。大麻以外に通う理由があったのではないか?
もしそうならあたかも大麻のせいで施設に通っているような映し方に問題は無いのか。

3 何か問題があったと判断した場合、今後訂正などの予定はあるのか

字数制限の関係上、失礼な言葉遣いになってしまい申し訳ございません。
回答の形式について、可能ならばメールでの回答を希望させていただきます。
「クローズアップ現代」は大変魅力的な番組だと感じています。
今後とも宜しくお願いします。

しらたまさんの問い合わせに対し、NHKからメールで次のような回答があった。

いつもNHKの番組やニュースをご覧いただき、ありがとうございます。
この度は、番組への問い合わせを頂きありがとうございます。
番組の内容について、いくつかご質問を頂きましたのでお答えいたします。

まず、「大麻がゲートウェイドラッグである」「精神依存性が高い」等の情報源についてですが、私達は今回の番組を制作する上で、大麻を使用したことがあるという多くの人物に取材を行いました。その中には、大麻以外の薬物を全く使用したことがないという人もいましたが、一方で、大麻を使ったことで罪悪感がなくなり、覚醒剤など他の薬物を使用するようになったという経験も多く聞きました。

また、日本ダルクなどのリハビリ施設のスタッフの方からも「大麻を手始めに、他のハードドラッグに手を出してしまったケースは多々あり、大麻がハードドラッグへの入り口になっている」という話をお聞きしました。

そうした取材実感と関係者の証言を元に、「覚醒剤などの強い麻薬への入り口になるとも言われる大麻」という表現を番組内で使いました。

また、「精神依存性が強い」という点についても同様で、取材者の話やスタジオゲストの水谷修さんが数多く見てきた大麻使用者の実態を元にご紹介したものです。

また、リハビリ施設に3年いる男性についてですが、この男性は長年大麻を吸い続 けた結果、大麻なしでは無気力になり生活もままならない状況で施設に入りました。
3年もの間、施設に入っている理由のひとつは、一人になると、再び大麻に手を出 してしまうからです。

また、現在、物忘れが激しくいわゆる健忘症のような症状があり、社会復帰が難しくなっています。男性はその原因も大麻乱用以外には考えられないと言っています。
施設に入っている理由は人により様々ですが、一番は精神的に薬物をやめられない状況が続いているからです。
ご紹介した施設は身体的な依存症を克服するためだけの施設ではありません。

私達は、若者の間にこれだけ大麻が蔓延している状況に危機感を感じ、今回の番組を制作しました。
大麻を使った全ての人が身体的・精神的に深刻な状況に追い込まれるとは限らないのかもしれません。使用頻度や個人差もあるとは思います。

しかし、一方で深刻な状況に陥っている人が数多くいるのも現状です。今なお、気軽な気持ちで大麻に手を出す人は後を絶ちません。私達はその状況が少しでも変わって欲しいと願っています。

番組の主旨をご理解いいただき、今後ともNHKの番組へのご意見等頂ければ幸いです。
この度はありがとうございました。

「クローズアップ現代」担当
NHK視聴者コールセンター』

大麻をきっかけに、他のハードドラッグに手を出す者がいることは、現象として実際にあるだろうと思うし、そのような例は私自身も知っている。だが、それは大麻の薬理的な性質によるものではなく、大麻と他のハードドラッグが同じブラックマーケットで売られているからである。
NHKが「若者の間にこれだけ大麻が蔓延している状況に危機感を感じ」、問題提起としての番組を作ることは理解できる。だが、大麻の何がいけないのか、大麻の医学的・薬学的な事実はどうなのか、薬物乱用防止政策はどうなっているのか、といった基礎的なファクターの検証が致命的に欠けている。その一方で、大麻を一度でも使うと脳に障害をもたらすといった、医学的な根拠もない珍説・奇説、言い換えれば法螺話というか、ホラー話で飯を食っている反薬物版稲川淳二、水谷修の言説だけをクローズアップすることは、報道の公正さを著しく損なう。

「大麻汚染を食い止めろ」を放送するにあたって、大麻の薬学的な事実など、海外の文献を参照したのだろうか。水谷氏が番組中で言った、大麻を1度でも使えば脳に障害をもたらすといった点について、医学的な根拠を確認したのか。多々疑問が残るので、NHKの同番組担当者に電話取材したが、ご不在だったので、折り返し連絡を頂くことになった。
(この項つづく)

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