カナビノイドの研究の歴史

カナサット製薬
「カナビノイドとエンドカナビノイド・システム」

アメリカをはじめとする多くの国では、カナビスに対する政治や社会の偏見が根強く、カナビノイドの研究は時代後れの規制や考え方で妨害を受けてきた。それに加え、リクレーショナルなカナビス使用の是非についての論争が問題をさらに複雑なものにしてきた。その結果、カナビスに治療効果のあることを示す多数の科学的証拠があるにもかかわらず、医療カナビスやカナビノイドについては余り知られることもなく誤解されてきた。

しかし、最近の20年間で科学的な発見が加速し、治療の困難な疾病に対して、カナビスやカナビノイドの医療的に応用しようとする試みに再び関心が集まるようになってきた。この分野における重要な医学的発見には次のようなものがある。

  • 1964年: THCの発見。およそ1世紀に及ぶ多数の科学者たちの研究を経て、イスラエルのヘブライ大学でΔ9テトラヒドロカナビノール(THC)が、カナビスの精神活性のほとんどを引き起こす物質であることが明らかにされた。

  • 1964-2003年: 他の天然カナビノイドの発見が相継いだ。ここ数十年の間にカナビスの植物のなかに400以上の化学物質が発見されたが、そのうちの約60種類がユニークなカナビノイドで、治療効果を持っている可能性がある。

  • 1980年代後半: 人体の中に2種類の異なるカナビノイド・レセプターが発見された。CB1レセプターは主に神経やその周辺で見つかり、CB2レセプターは免疫システムの中に見つかった。

  • 1990年代初頭: 内因性のカナビノイドの発見。内因性のカナビノイド(エンドカナビノイド)は人体内で刺激に反応して自然に生成されるカナビノイドで、CB1及びCB2レセプターと結び付いて、痛みの調整、記憶機能、免疫システムに作用する。アナンダミドと2-AGの2種類のエンドカナビノイドの作用については多くの研究が行われている。

  • 2001年中頃: カナビノイド逆向き信号伝達経路の発見。逆向き信号伝達経路はそれまで知られていなかった神経伝達経路で、シナプス前細胞にあるCB1レセプターが自身の存在する細胞を抑制して、シナプスに放出されるセロトニンやドーパミン、ノルエピネフリン、エピネフリンなどの神経伝達物質の量を減少させたり調整したりする。これを応用すれば、異常興奮して痛みを引き起こしている神経細胞に対して、カナビノイドを使うことでその刺激を調整したり、遮断することができる。

新発見が続いた結果、現在では、エンドカナビノイドには痛みや不安、食欲、嘔吐や吐き気を調整する役割があることが広く知られるようになった。こうした様々な効果の存在は、歴史的にカナビスが何故幅広い症状の治療に使われてきたかを説明してくれる。現在では、体内のこのカナビノイド・レセプター・システムに介在する新薬の研究開発にますます拍車がかかっている。