THCが肺ガンの成長を抑える

Source: Drkoop.com
Pub date: April 17, 2007
Subj: Marijuana Compound May Fight Lung Cancer
Author: Amanda Gardner, HealthDay Reporter
http://www.ukcia.org/news/shownewsarticle.php?articleid=12451


カナビスの喫煙が決して肺に良いわけではないが、カナビスに含まれる活性成分が肺ガンとの闘いに役に立つ可能性のあることが新しい研究で示された。

ハーバード大学の研究チームは、試験管およびマウスを使った実験で、THCが一般的な肺ガンの腫瘍の成長を半減させ、転移拡大する能力を抑えることを見出した。

「THCには、一部のガン細胞株に抑制効果があるようだ」 とニューヨーク市レノックスヒル病院の肺疾患専門家、レン・ホロビッツ博士 (この研究には加わっていない) は説明している。

研究者たちによると、THCは、特に攻撃的な非小肺ガン細胞の成長・拡大を促す分子である上皮細胞増殖因子(EGF)を寄せ付けないように働いてガンに対抗すると言う。「ガン細胞上のEGFレセプターにTHCが引き寄せられて、EGFの吸着を妨害してガンの成長を抑えるのではないか」 とホロビッツ博士は語っている。

しかしながら、この研究はまだ予備実験の段階に過ぎず、注意を促す外部専門家もいる。

アメリカ肺協会の医局主任であるノーマン・エーデルマン博士は、「実験室で行われた興味深い研究ですが、十分な動物実験を実施して、結果に再現性があるかどうか、明白な毒性作用がないかどうかを確かめる必要があります」 と指摘する一方で、「THCと似た化合物が人間の体内で生成されることが知られていますし、重大な問題も引き起こしませんので、この結果には少なからぬ興味を掻き立てられます」 とも語っている。

この研究の発表は、ロスアンジェルスで開催中のアメリカ癌研究学会(AACR)の年次カンファレンスで行われた。

肺ガンは、世界で最も死亡者の多いガンだが、肺腫瘍に過大に作られたEGFレセプターが異常に活発化して、化学療法もあまり効果が上がらない。

これまでも、カナビスの主要な活性成分であるTHCには、ガン腫瘍の成長を抑制させる働きがあることが知られていたが、肺ガンに対する作用に関する専門情報は非常に限られていた。

今回の研究によって、人間から取り出した肺腫瘍の肺ガン株上に、カナビノイド・レセプターのCB1とCB2が生成されることが初めて確認された。

体内で自然に生成されるエンドカナビノイドは、カナビノイド・レセプターに結合して、痛み、不安、炎症を軽減させる効果を発揮する。

実験では、人間の肺ガン細胞を埋め込まれたマウスに標準的な量のTHCを注射し、3週間後に腫瘍の大きさを調べたところ、THCを注射していない対照群に比較して腫瘍が約50%も小さくなっていることが見出された。

ホロビッツ博士は、以前から、1960年代に多量のカナビスを吸っていた世代に肺ガンの世代特出が見られないことを不思議に思っていたが、この結果がその疑問に対する答なのかもしれないと語っている。

「世代特出が見られない理由として、THCが肺ガン細胞を抑制するというのは、非常に興味深く驚異的に思えます。カナビスにタバコを混ぜて吸っていた人には当てはまらないかもしれませんが、カナビスの喫煙が肺ガンを抑えるというのはとても皮肉な結果だと言えます。」

カナビスが肺ガンを起こさないことは以前の疫学調査から何度も指摘されていたが、今回の研究は、それを細胞レベルで確認したもので、やはりカナビノイド・レセプターが関係していた。このところ、カナビノイド・レセプターを通じたカナビノイドの治癒効果についての発表が相次いでいるが、エンドカナビノイドシステムに関する分子レベルの研究がますます本格化してきていることを示している。

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