カナダの調査

医師の医療カナビス知識は患者から

Source: Ottawa Sun
Pub date: 12 Jan 2008
Docs get their pot info from patients
Author:Christina Spencer, Natinal Bureau
http://cannazine.co.uk/content/view/3379/1582/


カナダ保健省の依頼で実施された研究で、医療カナビスの使用をすすめた医師が、カナビスに対する臨床知識が乏しく、治療計画を作成に当たっては患者の経験に大きく依存していることが分かった。

この研究はモントリオールにある研究所(Les Etudes de Marche Createc)が、医師たちに詳細なインタビューをした結果のまとめたもので、「医師たちの医療カナビスの知識は、大半が患者の経験による証言から得たもの」 であると結論付けている。

「この方法は、医師と患者の境界が不鮮明で、ほとんどが科学的エビデンスによる情報にもとづいた従来の医学手法とは全く異なっている。」

「多くの医師が、患者と医師の間の境界が曖昧になっていくことに懸念を示している。」

この研究では、カナダ国内でカナビスを治療に使ったことのある917人の医師の中から、30人のホームドクターとスペシャリストが選らばれて長時間の電話インタビューが行われた。調査期間は2007年の3月から6月で、結果は最近政府のウエブサイトに掲載された。


全体とすれば、ポジティブな反応

全体とすれば、カナビスはリスクの高い薬だという見方はされていない。報告書では、「大多数の医師は、医療的に見てネガティブな影響よりもポジティブな効果のほうが勝っているという意見で一致している。また、処方医薬品である麻酔薬のような乱用の害があるのではないという懸念も少なくないが、医師たちは、カナビスには麻酔薬のような生理的中毒性が見られないという点でも一致している」 と書いている。

しかし、カナダでは、カナビスは認定された医療使用以外の所持・栽培・販売は違法になっていることもあって知識を得る機会が少なく、医師たちはこの薬についてもっとたくさんのことを知る必要があるとも感じている。

一部の医師たちは、医療カナビスに対する政府の取扱いに不満で述べているが、大半の医師たちは、政府の官僚主義に比較すれば、「毎日の服用量に関して患者の経験と判断におおくを頼らねばならない」 という問題のほうが大きいという見方をしている。

医療カナビスを使いたいと思っている患者にアドバイスしなければならない医師にとっては、カナビスに関して使われている用語の曖昧さが悩みの一つになっている。

一応カナダ保健省では1日の最大使用量を5グラムと設定しているが、実際には 「パフ」 とか 「ジョイント」 といっても服用量を計る単位にはならない。従って、医師たちにとっては結局のところ、「最も経験に裏打ちされた服用量の情報源は患者」 ということになる。

また中には、医療カナビスを処方したことを知られるのを恐れている医師もいる。「望ましくない患者が殺到する」 懸念とともに、医療コミュニティに根強く残っているカナビスの悪評で職業的・社会的にネガティブな影響を受けかねないからだという。


薬局での販売は安全で効率的

カナダ保健省の医療カナビスは薬局で販売されているが、インタビューではどの医師も安全で実効性のある配布方法だと答えている。

カナダ保健省では、次の7種類の疾患と病状に対して医療カナビスの使用を認可している。
  • 多発性硬化症: 激しい痛みと筋肉けいれんの症状緩和
  • 脊髄損傷: 激しい痛みと筋肉けいれんの症状緩和
  • 脊髄疾患: 激しい痛みと持続性の筋肉けいれんの症状緩和
  • 癌: 激しい痛み、悪液質、無食欲、体重減少、激しい吐き気の治療
  • HIV/エイズ: 激しい痛み、悪液質、無食欲、体重減少、激しい吐き気の治療
  • 重度の関節炎: 激しい痛みの治療
  • てんかん: 発作の治療

カナダの認定医療カナビス患者数 (2007年10月現在)
  • 2261人が、医療使用目的でカナビスを所持する許可を持っている。
  • 1256人の医師が、これらの患者を世話している。
  • 1581人が、医療目的でカナビス栽培生産する許可を受けている。

2007年12月2日のサンフランシスコ・クロニクルで、スタンフォード医科大学精神科のキース・ハンフリー教授は、医師がカナビスを医薬品としては受け入れることはないだろう という論評を書いている。その主な理由として、(1)タバコの喫煙による害への懸念が喫煙による医薬品の受け入れを躊躇させること、(2)服用量の管理が難しいことの2点を上げている。

しかし、(1)の懸念は、科学的な事実よりも先入観念による恐怖感がもとになっている。カナビスでは肺がんや気腫にならないことが示されており、またバポライザーを使うことで喫煙による害をほとんど除去できる。

(2)については、実際にはユーザー自身が調整できるので何ら不都合はなく、また、これも ボルケーノ・バポライザー を利用すれば、決った濃度の蒸気を作ることができるので毎回同じ量を服用することなら簡単にできる。さらに、カナビスをクッキーや チョコレート にして食べたり、カナビス・メディカル・ティー にして飲めば、喫煙の害もなくいつも一定の服用量が得られる。

実際に医師がカナビスを使いたがらないのは、ハンフリー教授の言うような理由などではなく、この記事にもあるように医師にカナビスの知識がないことが最大の原因になっている。医師はカナビスに関する教育は何も受けていないし、違法薬物を試せば失職する恐れもあるわけで実経験もなく、また普通はカナビス・コミュミティと付き合いもないので、カナビスの知識がなくても何ら不思議ではない。

また、カナビスは従来の医薬品の範疇にはおさまらないような多くの特徴と可能性をもっており、そもそも従来の枠組みに押し込もうとすることに無理がある。この点では既成の観念にとらわれない患者の方がまともな判断ができるのかもしれない。

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