ドラッグ合法化を主張する

リバタリアン経済学者ジェフリー・ミロン


ハーバード大学経済学部ジェフリー・ミロン教授
Media Credit: Kim Perley


Source: Brown Daily Herald Campus News
Pub date: September 25, 2008
Economist speaks against 'just say no'
Author: Sarah Husk
http://media.www.browndailyherald.com/media/storage/paper472/news/2008/09/25/
CampusNews/Economist.Speaks.Against.just.Say.No-3451974.shtml


現在の学生たちは、アメリカ政府のドラッグ戦争の「教化プログラム」(Above the Influence)のテレビ・コマーシャルで散々「Just Say No」を吹き込まれてきたが、23日(火曜日)にロードアイランド州のブラウン大学リスト・オーディトリアムに集まった学生たちは、政府のそうしたキャンペーンが全くナンセンスであると主張する経済学の教授の話に聞き入った。

彼はハーバード大学経済学部のジェフリー・ミロン教授で、歯に衣を着せずにものをいうリバタリアンとして知られている。また、ドラッグの合法化を強固に主張する擁護者としての顔も持っている。そもそも彼のような存在は疎んじられる傾向にあるので、戸惑っている様子の聴衆に向かって「風変わりな感覚」の持ち主に見えますかと問いかけると、学生たちは一様に頷いていた。

まずミロン教授が行ったことは、ドラッグ政策におけるリベラルとリバタリアンの違いについて詳しく説明することだった。リベラル派は非犯罪化による利益をベースにしているが、これに対して、リバタリアン派の主張はドラッグを完全に合法化することを基本に据えていると言う。

リベラル派の人たちは、「ドラッグを使う人の権利を守ることに熱心」ではあるが、売っている人たちを守るために市場を合法化することには興味を示さない。しかし、リバタリアンにとっては、その主張が 「一方的に偏っていて論理的でもない」 と映ると言う。

「非犯罪化は、問題を取り除こうとしているわけではないのです。たとえ非犯罪化されたとしても、品質のコントロールの問題や市民の自由に対する侵害、ドラッグ・ディラー間の暴力的な緊張は、実質的にそのままは残ったままなのです。」

これに対して、リバタリアンは 「例外なくすべてのドラッグ」 を合法化すべきたと考えているのだと説明する。しかし、ドラッグの販売・購入・使用に対するほとんどの法的制限には反対するものの、「カナビスを歯磨き粉のように合法化することは実際的ではない」 と釘を刺すのも忘れてはいない。

また、リベラル派は、ドラッグを使うことを躊躇わせるように重い「悪行税」を課すことを主張するが、リバタリアンはそのやり方には懐疑的だ。ミロン教授は、ドラッグが社会に対してネガティブな影響を持っているからという理由なのであれば、論理的に言っても、風邪薬から昨晩のテレビの番組まで同じことが当てはまるはずだと指摘する。

年齢制限や広告の倫理的制限といった面についても、どちらも非犯罪化を口当たりよくするための主張で、「人は好きなようにして、その結果は自ら引き受けるべきだ」 というリバタリアンの見方とは違うと主張する。

そうした意味で、ミロン教授は、ドラッグの使用がミステリーに包まれているが、その大本は政府が、大間抜けに見えてしまうほどまでにドラッグの使用について誇張に誇張を重ねてきた帰結なのだと説明している。

また、教授は、ドラッグを合法化すれば、カジュアルなユーザーや実験的に試してみようとする人が増えるのはほぼ間違いないだろうとも言っている。「もしコカインが合法化されたのなら、私も試してみたいと思う。そして、過去85年から95年にわたる騒ぎは一体なんだったのか知りたいですから。」

しかしながら、ミロン教授は、周囲からは自分の見方が極端過ぎて、すぐに政治家たちの関心を引きつけることがないことも承知している。「ドラッグにソフトな政治家は票を取れませんから。それが、アメリカの政治の表舞台にこの問題が上ったことはこれまでにない理由なのです。」

とわ言っても、アメリカに比較すれば、非犯罪化にもっと踏み込んでいる国もあるし、合法化が議論されている国すらあると指摘している。そうした例として、教授は、ヨーロップのオランダやスペインの他にも、規模は小さいもののカナダやラテンアメリカなどの国を上げている。だが、話がドラッグ禁止法のことになると、「いつもアメリカが最も極端な位置に鎮座しているのです。」

今回の講義のスポンサーグループの一つにもなっている 「センシブルなドラッグ政策と求める学生の会」(SSDP) のベン・メスベルガー代表は、グループには 「新しい考え方や見方が本当に必要になってきている」 と言う。

「ある特定のグループの人たちだけがドラッグの合法化を主導しているのではないことに気づくことが重要なのです。その意味で今回の講義は、2つのサイドから議論を組み立てるのに役立ったと思います。」 

メスベルガー代表を手伝ったグレゴリー・アンダーソンも、「みんなの中に新しい問題意識が持ち込まれたと思う」 と話している。

今回の講義のスポンサーには、SSDPの他にもブラウン・スペクテーターとブラウン大学共和党が加わっている。

ジェフリー・ミロン教授は、2005年6月2日、「カナビス禁止法の財政面からの考察」 というレポートを発表し、カナビス禁止法を廃止して、カナビスにアルコールと同様の課税による規制を導入した場合、取締りの経費の節減と税収入の増加で毎年100〜140億ドルの財源が生まれるという試算を行ったことでも知られている。

このレポートに対しては、ノーベル経済学賞の受賞者で保守派の重鎮ミルトン・フリードマンを中心に、さらに2人のノーベル賞受賞者と500人を超える著名な経済学者が支持を表明し、「カナビス禁止法に対するオープンで率直な議論」 を促す公開書簡を連名でブッシュ大統領、連邦議会、知事、州議会に送っている。「われわれは、このような議論を通じて、カナビスを合法化して他の商品と同様に課税・規制した社会体制が好ましいという結論になると確信している。」

レポート全文と署名リスト:
The Budgetary Implications of Marijuana Prohibition
An Open Letter to the President, Congress, Governors, and State Legislatures

カナビス禁止法は失敗、最近の有力レポートがすべて同意見  (2005.7)
カナビス禁止法は金食い虫、経済、個人,社会への悪影響  (2005.6.3)

リバタリアンのドラッグに対する見方:
アメリカ連邦政府はドラッグ戦争を放棄すべきとき、ボブ・バー・リバタリアン党大統領候補  (2008.9.18)
ミルトン・フリードマン インタビュー、ドラッグ禁止法 と ドラッグ戦争  (2008.7.31)

Jeffrey Miron on CNN discussing Marijuana Legalization  (YouTube)