カナダ連邦控訴審判決

政府の医療カナビス独占を認めず

Source: Ottawa Citizen
Pub date: 28 Oct 2008
Canada Court OKs medical marijuana market
Author: Jordana Huber, Canwest News Service
http://www.canada.com/ottawacitizen/news/story.html?
id=034c29fc-e0de-4d62-b8b7-bdc5cfae031a



判決は病に苦しむ人たちの勝利

カナダの医療カナビス認定患者は、自分または特定ケアギバーが栽培するのではなければ、連邦政府が独占供給するカナビス購入しなければならない規則になっているが、27日(月)に行われたカナダ連邦控訴審で、ライセンスを受けた栽培者からもカナビスを購入することを認める判決が下された。

現在の保健省の医療カナビス・プログラムでは、一人の栽培者がカナビスを提供できる患者数が一人に制限されているために供給源の確保が難しくなっているが、2008年1月に行われた連邦地裁は、栽培者側の人数制限を憲法違反で不必要なものだとする判決を下していた。

これに対して政府側は、栽培者の対象人数を複数以上認めると管理しきれない供給源が出現する恐れがあると主張して連邦控訴審に控訴して争っていた。だが、今回の連邦控訴審判決では、政府側の主張を退けて、医療カナビス患者側の勝利となった。

この裁判の弁護士の一人であり、170年の歴史を誇るオスグード・ホール・ロースクールの教授でもあるアラン・ヤング氏は、「この判決は、病に苦しむ人たちの勝利を意味しています」 と語っている。

「いまこそカナダ保健省は、医療カナビス・プログラムが多くの患者のために作られたものであり、自分たちもその一部を担っているのだということをきちんと認識すべき時なのです。医療カナビスを必要としている患者の邪魔をするのではなく、患者の必要性に応えるべきです。今回の判決がそのシグナルとして伝わることを願っています。」


質の悪く選択肢もないカナダ政府のカナビス

カナダの医療カナビス利用規則(MMAR)では、認定患者は自分のカナビスを自身で栽培するか、他の患者に供給していない特定のケアギバーに栽培を依頼することは可能になっているが、それ以外はマニトバ州プレイリープランツ・システムが供給するカナダ政府公認のカナビスを購入しなければならないことになっている。

しかしこれに対して、政府のカナビスは品質が悪いうえに種類の選択肢もないとして、30人の患者グループが別の供給源を選択できるようにすべきだとして今回の裁判を起こした。

彼らは、カラセル・ハーベスト・サプライから医療カナビスを購入できるように求めているが、現在の規則では、栽培者は一人以上の患者に供給できないように制限されているために不可能な状態になっている。

1月に行われた下級裁に判決 では、2000人あまりの登録認定患者の中で、実際に政府のカナビスを購入している人は20%もいないとして、患者の要求に対応できていないと指摘している。


裁判所に拒絶された政府側の言い分

これに対して、政府側司法省のシーン・ゴーデッド弁護士は、政府のカナビスに問題があり患者をブラックマーケットで買うように仕向けていると統計の数字だけで結論することはできないと反論している。彼によれば、医療カナビス患者たちが代替供給源を求めているのには他にもいろいろな理由があると言う。

さらに、ゴーデッド弁護士は3人の裁判官に対して、もし栽培者に一人以上の患者の供給を認めれば 「セーフガードのない産業」 に発展し、カナビスの不適切な使用リスクを増やして、状況を悪化させる恐れがあると訴えている。

また彼は、政府側が、一人以上の患者にカナビスを供給する栽培者に対する新しいガイドラインとセーフガードを作成するためにもっと時間が必要だと訴えた。しかし、裁判ではその要請は拒絶された。


臨機応変な対応が必要

患者側の弁護士であるヤング氏は、複数の患者たちから指名された栽培者については、保健省も臨機応変に評価して対応すべきたと主張している。

また、政府側は、栽培者が対応可能な人数制限を2人とか3人とかに変更した規則を持ち出してきて、再び裁判に訴えてくる可能性もあるとも言う。

「彼らは、1600人の栽培者をコントロールするほうが、30箇所程度と予想される大規模栽培者をコントロールすることよりも容易なので、栽培者を集約することには反対だと言うのです。しかしこの主張は全く筋の通っていません。当然のことながら、栽培を集中して行っている数の少ない栽培場を監視するほうがずっと容易です。」

2003年のオンタリオ控訴審でも、保健省の一人制限が実質的に患者の路上での購入を強要しているという判決が出されたが、政府側は数ヶ月後に同じ政策を復帰させることを無理強いしたために、現在の裁判にまで発展することになった。


病気と「コンパティブル」なカナビスの品種

医療カナビス患者で活動家としても知られているアリソン・ミュルデンさんは、多発性硬化症と顔の神経障害を緩和させるために毎日30本以上のジョイントを吸っているが、自分の症状に適合した品種のカナビスを入手するために常時ストリートでの購入を続けている。

カナビスには成分の異なった多様な品種があるが、保健省の供給するカナビスは一種類しかない。ミュルデンさんは、今では自分の病気と「コンパティブル」なカナビスの品種が分かっているので、自分には合わない政府のカナビスは買わないと言う。

「究極的には、われわれは皆おなじものを望んでいますが、それは自由であることです。自由とは、他人の直接の迷惑にならない限り、政府の介入や手前勝手な道徳を押し付けてくる連中の説教などで邪魔されずに、自分の望んでいることができるということです。」

今回の判決で重要なことの一つには、医療カナビスの国による独占体制を認めなかった点にある。

国連の 単一条約 では、28条で医療目的のすべてのカナビスは政府機関がコントロールすることを強制しているが、その体制ではカナビスの特徴である品種と効果の多様性を引き出すことが出来ないことが今回の裁判でも認める結果になった。

この点については、オランダ最高裁 も9月に、多発性硬化症患者が政府の医療カナビスではなく、自分に適合したカナビスを自分で栽培することを認める判決を下している。

今後カナビスに対する多様性の認識が当たり前になっていくと、単一条約が内包している不合理がますます顕在化してくると思われる。

また、今回のグループでの要求については、少し形を変えれば カナビス・ソーシャル・クラブ の狙いと運営の仕方が同じになる点でも注目される。

カナダ連邦地裁、政府の医療カナビス栽培制限を認めず  (2008.1.11)

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カナダの医療カナビス年表