カナダ最高裁

政府の医療カナビス独占体制を

終結させる判決

Source: The Vancouver Sun
Pub date: April 23rd, 2009
Top court ends government pot monopoly
Author: Janice Tibbetts, Canwest News Service
http://www.vancouversun.com/news/
court+ends+government+monopoly/1526487/story.html


カナダ最高裁判所は昨年出された連邦控訴審の判決を支持し、 政府の医療カナビス独占体制が終結することになった。この判決は、病気の治療のためにカナビスを使うことが認められている患者側の勝利となった。

争点となっていたのは、認定患者に医療カナビスを供給するケアギバーが一人の患者しか相手にできないように規制されていることで、昨年10月控訴審では、ライセンスを受けた栽培者が複数の患者のカナビスを栽培する権利を認める判決を下していた。

政府司法省はこの判決を不服として最高裁に控訴していたが、今回、最高裁の3人の裁判官は政府側の控訴理由の聴取を拒否し、控訴審判決が確定した。

控訴審では、政府側は、もし裁判所が連邦の規制を緩める判決を下せば業者は規制撤廃にまで踏み込んでくると主張したが一蹴されている。今回の最高裁では、聴取の拒否理由については明らかにされていないが、これは明示することなく実質的に控訴審判決を支持する方策を取っためだと考えられる。

現在の連邦政府の医療カナビス規制では、患者は自分でカナビスを栽培できない場合には、自分専任のケアギバーを指定して栽培してもらうか、あるいは政府がマニトバ州で独占的に栽培している医療カナビスを入手するしか認められていない。

しかし、ケアギバーは患者一人だけにしか供給できないために確保が難しく、栽培技術についても熟知しているとは限らない。また、政府の供給しているカナビスは評判が悪く、効力が弱いとみなされている。これに対して患者グループは、自分たちのカナビスを栽培してくれる指定業者に複数患者への供給を認めるように規制を緩めるように求めていた。

カナダでは現在医療目的でカナビスを使うことが認められている患者は約2000人いるが、下級審によれば、政府から供給を受けている患者は20%しかいない。

今回の判決で重要なことの一つには、医療カナビスの国による独占体制を認めなかった点にある。

控訴審では、政府側は、もし栽培者に一人以上の患者の供給を認めれば  「セーフガードのない産業」 に発展し、カナビスの不適切な使用リスクを増やして状況を悪化させる恐れがあると訴えているが、この主張は、医療目的のすべてのカナビスは政府機関がコントロールすることを強制している国連の 単一条約 の趣旨に添った主張でもある。

しかし、最高裁が政府の独占を認めない判決を下したことは、実質的に単一条約が崩壊しつつあることを象徴している。

特に、カナビスの場合は、モルヒネなどと違って成分も多数ある上に、品種ごとに成分構成が多様で、多様な薬効が得られるという特徴がある。しかし、独占体制では多様な種類のカナビスを供給することは難しく、さらには、摂取方法も多様で供給には高度な知識も要求される。

こうしたカナビスの多様性に対する認識が当たり前になっていくと、今後、単一条約が内包している不合理がますます顕在化してくると思われる。

カナダ連邦控訴審判決 政府の医療カナビス独占を認めず (2008.10.28)
カナダ連邦地裁、政府の医療カナビス栽培制限を認めず  (2008.1.11)

混迷するカナダの医療カナビス  (2008.2.27)
医療カナビスの合法使用プログラムに不熱心なカナダ政府  (2007.5.10)
カナダの医療カナビス年表