9月14日に厚労省麻薬対策課に取材した内容

Posted by しら on 2009年9月30日 under 厚労省と天下り法人への取材録 | Be the First to Comment

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9月14日、厚労省監視指導・麻薬対策課の安田課長補佐に電話取材した録音をボランティアのまさるさんに書き起こしてもらったので掲載します。
伺った話のなかで、特に以下の2点については、建設的な意味を見出せる内容だろうと思います。

(1)今年3月の国連麻薬委員会で日本政府が提出して採択された決議、「不正目的のための大麻種子の使用に関するあらゆる側面の探求(Exploration of all aspects related to the use of cannabis seeds for illicit purposes)」(以降「大麻の種子に関する決議」と略)には、1997年以降アップデートされていない世界保健機関の大麻レポート「Cannabis : a health perspective and research agenda」を、最新の国際的な知見に基づいたデータに更新するよう求める内容が含まれていること。また、この問題については、今後も国連に問いかけを行うこと。
(※「大麻種子に関する決議」は安田氏が英語で起案したので、日本語の文書はないそうです。現在ボランティアに翻訳してもらっているので、仕上がり次第アップします。また、この決議文と、厚労省が依拠している大麻の有害性に関する情報、WHOが97年に公表した上述のレポートについて、日本国民向けに、日本語で公開するよう、要望書を提出します。)

(2)現在、我が国の公的大麻情報として(財)麻薬・覚せい剤乱用防止センター(ダメセン)が周知している情報は、15年以上前のアメリカ製薬物標本レプリカの説明書を翻訳しただけのもので、医学的根拠も示せないも内容となっているが、安田課長補佐も情報を改める必要は認識しており、ダメセンとも連絡を取って対応を協議していること。

ご多忙のところ、丁寧にご説明を頂き、安田氏に感謝申し上げます。

以下、「Q」が白坂、「A」が安田課長補佐です。


Q.お忙しい所すいません、大麻取締法変革センターの白坂です。お世話になっております。

A.あ、どうも。こちらこそ。

Q.ちょっといくつか教えていただきたいんですけども・・・

A.わかることでしたら。

【単一条約と医療大麻/国内の大麻研究】

Q.9月の7日から9日にですね、「第44回日本アルコール・薬物医学会総会」っていうのがありまして、それに安田課長補佐がお出でなってたとお伺いしたんですけれでも、その中で大麻の緩和ケアに関する利用が話題になったって言うことで・・・

A.緩和ケア?

Q.終末医療や癌の疼痛緩和とかですね、医療的な目的で大麻を使うことが話題になった時に、安田課長補佐の発言として「アタマから絶対ダメだっていう話ではなくて、単一条約の改正が望ましいのではないか」ということだったとお聞きしたんでけどれども。

A.いや、私そういうことは言ってないと思いますけどね。

Q.あ、そうですか?

A.ただ、ご承知の通り、単一条約の改正というのかなぁ、改正という話よりも、大麻は1961年の国連の単一条約で規制されていますよね。それで単一条約の趣旨とは、医療上の目的、あるいは研究上の目的をきちんと達成させることを目的としていて、それ以外のことは取締りの対象にしてますよね。だから、「もし大麻に有用性なものがあるとすれば、各国で共有していくなりのきちっとした仕組を考えなければいけませんよね」という言い方はしましたけど。

Q.あ~なるほど。その様なおっしゃり方だったんですね。

A.だから、今の状態で「改正」だって言っても、何をどう改正するのかということを言ったつもりではなくて、「麻薬」と言われているものは人類の共有の資産ですから、この資産を皆でどういう風に共有していくかってことを考えなくてはいけなくて、だから、特定のきちんとした情報があるんであれば、それを皆さんでどう共有して、そして国際的に皆さんできちんと共有していく方法を検討すべきではないのか、っていう言い方をしたんですよ。

Q.あ、そういうことですか。単一条約の中では、医療的な利用は禁止されてませんよね。国が一元的に管理しなさいって書かれていますけども。

A.ただ、問題は、それをどういう風に行っていくかは各国の判断と、その持っている情報は、各国が例えばINCBだとか国際機関を通じて皆さんで共有しましょうと言っているので、今はその趣旨でやっているわけですから、私はその様なことを言わせて頂いたんです。

Q.国際的な場で、国際的な知識としてきちっと(情報を)共有する場を設けて、そこで国際的な中で検討するべきだというような・・・

A.というような形にするのが、本来的にこの議論をしていくには重要ではないですかと言わせて頂いたわけで。

Q.なるほど。ただ他の各国、アメリカでももう14州目がこの秋にもっていう話になってますけど・・・

A.何がですか?

Q.州レベルでは医療大麻が合法化される流れになってますよね?

A. それはよくわからないですけれども、少なくても連邦レベルではそういうことになってないですよね。

Q.ただ連邦レベルでも、ブッシュ政権からオバマに変わって、ブッシュ政権の時は連邦政府が州のディスペンサリーに介入して潰しにかかってましてけど、そのような取り締まりも一切しなくなりましとよね?

A.そこはわからないですね。そこは少なくとも、彼等自身が明確に言っているわけではないですから。

Q.いや、報道官もそういうふうに話してますけど。

A.それは取締りを停止するっていう話だけであって、取締りを停止するイコール認めるっていうことではないと思いますよ。

Q.連邦政府として認めるっていうことにはなってないということでしょうか。

A.うん。それにもう一つ、過去に・・2005年だったか2007年だったかなぁ、ちょっとうろ覚えで申し訳なんですが、その時に、確か連邦の最高裁か何かで・・・なんだったかなぁ、たしか大麻の使用だったかな、・・・覚えてないなぁ。ちょっと正確に調べなければいけませんけども、確か連邦法レベルと連邦の最高裁のレベルで、大麻をそのまま認めるっていう話ではなかったんで、今アメリカが言っている話、イコール大麻を認めるという話では、ちょっとそれは繋がらないと思いますよ。

Q.えっと、まぁ州レベルで認めているという話をしたんですけども・・・

A.だから州で認めているということとアメリカが認めているということでは、国として認めているという話では別ですからね。

Q.連邦政府として弾圧はやめるっていうレベルで、連邦政府レベルで法改正したことではないっていうことは理解しているんですけども。それと後、カナダとかオランダとかスペインもそうですしベルギーでもそうですし、医療的にはもう使われていますよね。

A.だから使われてる、イコール、だからそれがなんなんですか、ということなんです。

Q.国際的な機関の中で、もちろんそういった情報の共有とか研究がされるのが望ましいですけども、必ずしも国際機関が認めていないから日本は使えないっていうことにはならないんじゃないかと認識しているんですが。

A.とは言いつつも我々は国際的に動いている所といかに調和していくかっていうことがございますので、ですからその意味では、他の国が認めているから日本だって認めるべきだっていうのがイコールってわけじゃないし。

Q.認めるべきかどうかっていうことの検討を始めたり、例えば大麻の医学的なあるいは薬学的な研究は認めるとかですね、今は合成カンナビノイドの研究しかオッケー出してないっていう状況ですよね?

A.少なくとも大麻研究者って言われている免許はありますよね。大麻研究者っていう免許の中で、動物を使った実験とかは認めているわけですけれども。

Q.それは、大麻から抽出した物を使った研究を認めてるということですか?

A.人に対しての研究っていうのは、大麻取締法第4条で禁止されていますので、人に対しては使えないんですよ。ですから少なくとも、前にも白坂さんにご説明室したけど、そこの中に含まれている、例えばTHCだとかカンナビノイドだとかの有用な成分については、それを合成して単一な物質として使うことに関しては、麻薬及び向精神薬取締法の中で、麻薬研究者として、研究はできる形にはなっているわけですよね。

Q.ということですよね。要は、麻向法の扱いの麻薬取扱者免許の中で、合成のTHCなりCBDなりを抽出して研究してるってことですよね?

A.はい。合成したものをですね。

Q.で、大麻そのものを使った動物実験レベルの研究っていうのは認められて無いってことなんですよね?

A.いや、大麻の抽出物を使った動物実験は認めていますよ、認めているというか、大麻研究者免許でできますよ。

Q.実際に大麻研究者免許でそういった研究をされてるケースは国内であるんでしょうか?

A.さぁ、それは知りませんね。誰がどういう研究をしているかをひとつひとつ調べているわけではないんでわかりませんが、少なくとも人に対して医薬品として施用したりとか施用を受けることは禁止していますけども、それ以外の研究は別に禁止しているわけではありませんから。

Q.あぁそうですか。あの昨年ですねぇ、産業特区の関係で沖縄の製薬メーカーが大麻の薬学的な研究をしたいっていうことで申請をしたら厚生労働省に蹴られたっていう話がありまして・・・

A.それは私どもは知らないな。研究者の免許ってこれは都道府県が与えるんじゃないですか?

Q.いや産業特区の関係だったんで直接厚生労働省と経済産業省の扱いになってたと思うんですけれども

A.それ沖縄じゃなくて北海道じゃないですか?

Q.北海道は・・・えっ産業大麻じゃなくてですか?

A.産業大麻というのか、特区申請で私が記憶しているは、北海道は覚えてますけど沖縄は覚えてませんが。

Q.そうですか?私もちょっと申請に関わった人から沖縄の製薬メーカーの話を聞いたんですが。北海道の方も厚生労働省に蹴られたっていう話を聞いたんですけど。

A.蹴ったっていうか、今の大麻栽培者の中でできるんじゃないんですか、ということのなかで、私どもはお答えさせていただいたわけであって、別に蹴ったとかなんとかって・・・

Q.いやぁ、あの0.3パーセント以下のTHC濃度のものでも突然変異しちゃったりするからっていう風な・・・PDFで厚労省のサイトにもその経過が出てましたけれども。まぁ北海道が今、北海道独自の特区のようなもので、北見でやってるっていうのは私も承知してるんですけども・・・。そうですか、そうすると動物実験だとかっていうレベルに関しては、大麻研究者免許でも特に厚生労働省としてむやみに免許を出さない方針にしてるっていうことではないわけですか?

A.ないですよ。ただ問題は研究者が本当にそういう研究なんですかっていうところは、たぶん都道府県の中でチェックするんでしょうね。

Q.なるほどね。そういうことですか。わかりました。

【大麻に関する知見をまとめるよう日本としてもWHOに要請】

Q.それとですね、大麻を医療的に使いたいっていう話が国内でもちょっと出てきてるかと思うんですけども、厚生労働省の立場としては、大麻でなければダメな理由がないと、他に薬や治療法やらがあるんではないかっていうお話をされてるってことなんですが、患者側の立場として言えば、なんで大麻じゃダメなの?っていう理由がわからないっていう声を聞くんですけれども。

A.それは、大麻の有用性がはっきりしないからですよ。

Q.それは国際的に国際機関で認められてないってことでしょうか?

A.ええ、それも合わせてです。

Q.そうすると、大麻の有用性が例えば、大麻の医学的な研究がされているのは、もちろん国連機関よりも民間などの各国のいろいろな研究機関が研究報告を出していますよね。そういったものについても検討していただく余地としては、あると考えてもよろしいでしょうか?

A.そういうのは、いろんな立場の人達がいるので、私どもからしてみると、やっぱりこれはWHOなんかでまた再検討する予定でいますから、その中でどういう風に検討していくかってことに依存するんじゃないですかね。

Q.WHOでまた大麻の医学的な研究がなされる?

A.そういうことで、今年の3月の国連決議の中で、国連側からWHOに要請していますよ。

Q.あ、そうですか。それは、今具体的にはどういった段階にあるとかっていうのは?

A.いやぁ、それはわからないですね。ただ、近いうちにまた、この話どうなっているですかね?っていうのは、まぁ私共からしてみましても動かなければ意味がないので、だからそういう議論はどうなっているのか確認するつもりではいますけど。

Q.あ、そうですか。是非是非お願いしますよ本当に。

A.だからこういう話っていうのは我々からすると、どこどこにも新しいデータがありますと言っても、いろんなデータがある中で、きちっとした形で評価していかないとこの議論っていうのはダメなんだろうなという気がしてるんですよね。

Q.そうなんですよね。ですから是非、医学的なベースで検討していただきたいなと思っています。

A. 医学的なベースって言った時にですよ、各国の中ではやっぱりそれぞれの各国の色々な人達がいるわけですし、各国の評価を基にしてどう判断するかっていうのは、そこは違うだろっていう意見もあるんですけれども、こういう議論っていうのは、こういう問題があるからこそ、本当は中立的な所の中で、きちっと皆で、ブライテストがちゃんと集まった中で議論すべきだと私は思っていますので、そういう中で、白坂さんもご存知通り、今年の「大麻の種子の決議」の中で、実はシラーっとですね、そういう文言をちゃんと中に入れてですね、きちっと評価して欲しいと入れてあるわけでございますので、だから我々からしてみると、そういう議論はきちんとするべきで、きちんと議論していくための素地は本当は作っていかなければならないと思っているし、そういう中でやっていくべきだと考えているんですよ。

Q.その辺は安田課長補佐の方が、その文言を入れたっていう感じなんですか?

A.そうですよ。

Q.警察庁なんかだと、もう取り締まることしか考えて無いというスタンスなので。

A.我々の立場も、今の段階では取り締まる立場ですけども。

Q.もちろんそうですけれども。

A.取り締まる立場ですが、取り締まる立場でありながらも、他の国においてもですね、要は、「どうしようか」というところがあったんで、だから国連の中でああいう決議がまとまったわけですよ。だから、その意味では日本が主張したとしても、他の国がサポートしなければああいう決議っていうのは通りませんので。だから他の国でも同じような意識を持っている国はあるわけですよ。まぁそれはそれで措いといて、それとは別に、今の中でのひとつの問題は、どういう風に大麻の健康影響を評価していくかということは、大きなポイントとしてあるわけですから、少なくとも中立的なものとしてあるのがこれしかないのであれば、少なくともこれが97年以降動いてないのであれば、ちゃんと動かしてアップデートする議論をしていかなければ、この話っていつまで経っても問題は解決しないと思っているんですよ。

Q.なるほど、わかりました。

【政策の方向性・ハームリダクション】

Q.それとですね、ちょっと話変わりますけど、12日にNHKで「なぜ市民が大麻を」っていう番組が・・

A.ありましたね。

Q.あ、ご覧になりました?

A.観ましたよ。

Q.で、あの番組のサイトにですね、『厚生労働省の麻薬捜査チーム通称「麻薬Gメン」は今年に入って捜査方針を大転換 摘発のターゲットを従来の暴力団などから一般市民にシフトした』って出ているんですけども、それは事実なんでしょうか?

A.なんて言うのかなぁ。これはシフトしたかどうかっていうよりも、クリスタルシーズっていう去年大麻の種を売ってた人達が逮捕されて、それによってですね、買ってた人達がいるわけでして、それを淡々と追っていったというだけに過ぎないんですよ。それが見方として、一般市民の方へもいったと言えなくもないし、我々からしてみると今までも行ってきたところに対して、それを大麻について、またこれを強化していったっていう形に過ぎないんですけどね。

Q.クリスタルシーズだけじゃなくて、他にも大麻の種を売って儲けてた人達が結構捕まってますよね?

A.警察が行ったところと我々が行ったところがありましてね、少なくても今まで裁判になった件が4件ある内、2件は警察が行って1件が我々だけで行って、もう1件は警察と厚生労働省の麻薬取締部で共同してやってるんですよ。

Q.種の販売に関してですか?

A.種の販売に関しては。だからそれぞれ販売者を突き詰めると、それだけ誰に売ったかはわかりますから、それを放っておくのかという議論になった時に、放っておくわけにはいかんでしょっていう話なんですよ。

Q.それでローラー作戦を敷いてるわけですね。

A.ローラー作戦っていうわけじゃないんだけど・・

Q.いや、軒並み入ってますよね。うちにもしょっちゅう「クリスタルシーズから種買ったらガサ入られた」とかっていう話なんかもよく聞くので。

A.それだけじゃなくて大麻の種子を売ってる人達は、今の我々からすればこれは不正栽培の幇助にあたるわけでございますので、これを取り締まっていくってことは一つの重要性があると思っていますけどね。

Q.2009年のworld drug reportでですね、アントニオ・コスタさんが営利目的でやっているような組織犯罪的なところは徹底的に取締りを強化するべきだけど、個人レベルの使用者は病として保健衛生の観点から捉えるべきじゃないかっていう話をされてますよねぇ。

A.それは議論の余地があるところですねぇ。それはコスタ自身がヨーロッパ寄りだからそういうふうに言うんでしょう。実際彼が言っていることに関しては各国ともに全ての国がそれに賛同したわけじゃないですよ。

Q.ただEUなんかヨーロッパはそういった流れで実際に政策化されてますよね。

A.EUだから、EUの観点でやっているからですよね。だから、EUの観点がイコール世界的なスタンダードだっていうわけではないってことですよ。

Q.もちろん日本はそうじゃないし、アメリカもそうじゃないってことはわかっているんですけれども。その日本の政策に関しては、やっぱり厚生労働省がどういった方向でっていうのを取りまとめているんでしょうか?

A.ん?と言いますと?ちょっと今のわかりずらかったですね。もう少し具体的に言ってもらった方がいいかもしれません。

Q.あ、すみません。例えば、ハームリダクションと非寛容政策ってありますよね。日本は、外務省にも聞きましたけど、非寛容政策を採用していると。で、それをハームリダクションの視点をもっと取り込む方向で、例えばダルクみたいな民間の施設に対する支援をしていくとか、そっちに力を入れて、末端の使用者に関しては刑事罰ではなくて、医療的なケアを重点的にしていくとかですね、そういった政策もあり得るかと思うんですけれども、そういった政策そのものについてっていうのは、どの辺のレベルで・・・

A.あのね、今言っている話っていうのは、色んな省庁が関わっている案件なんですよ。で今出てきた「ハームリダクション」っていう言葉なんですけどね、「ハームリダクション」って言われるもの自身に実は定義がないんですよ、世界的に。で、世界的に定義がなくて、ハームリダクションって言わてるものの中には、UNAIDSが提唱している9つの利用法っていうか治療法っていうかまぁ9つの方法があって、その9つの方法が大体ハームリダクションって言っているところの中で、各国が「まぁ大体そうかな、どうかな」って言っているところであって、その言葉を使って、結局何でもかんでも薬物が起こすものは全て、そのハームをなんでも広げてしまうっていう考えと、そうじゃなくてきちんと制限されたところの中でやるんだろうっていう話と、整理されていないということがあるんですよ。それでよく言われているのは、さっき言ったUNAIDSの話だけど、UNAIDSの中で9つの方法がある中、日本国内で認めてないのは2つだけであって、7つの方法は日本国内で既に導入してやっているんですよ。だから我々からしてみるとハームリダクションっていうものに対しての考え方の中では、国内の政策の中に少しは取り入れてるわけなんだけど、問題はそこの中で我々の趣旨として合わないところについては、おかしいでしょ、っていう話を主張しておかないといけないんですよね。

Q.どの辺が合わないと考えておられるんですか?

A.えっとねぇ、注射針交換プログラムと代替療法って言われている問題です。

Q.なるほど。

A.注射針交換っていうことは、要するに注射針交換を認めるってことは、世の中に覚醒剤などの薬物乱用者を認めるっていうことと一緒になってしまうから、それはおかしいでしょっていう話なんですよ。それともう一つは、代替療法っていうのはヘロインとかの人達が主なんだけど。

Q.メサドンの配布とかですね?

A.うん、メサドンの配布なんだけど、メサドンの配布って結局はこの人を、そのヘロインからメサドンに代えているだけで、結局は本当にそれは緩和させてるんですかっていう話があって、そういうところの問題があるんで、我々はその2つについてはちょっとおかしいんじゃないかっていうことを言っているわけですよ。ハームリダクションの考え方で、エイズなどの感染症関係のことで取り入れているところもあって。その意味ではハームリダクションがイコール駄目なんだって言っているつもりはないんですよ。わかります?
Q.わかります。

A.それで、その次に、さっき言ったような、依存者に対しては治療するべきでしょうっていう話は、薬物を持っていた薬物乱用者を捕まえた時に、どの様な制度でその人達を更生させていくのかっていう話になってくるので、この議論っていうのは必ずしも、私どもは取り締まりの観点でやっているわけですけども、今度は法務省でやっている刑罰をどういうふうに与えていくのかっていう議論だとか、それと合わせてその人達をどうやって社会に取り込んでいくのかっていう議論になるんで、なかなか私どものやっている取り締まりの観点だけでは済まない話になってくるんですね。

Q.もっとトータルな政策として考えていかないといけないってことですね。

A.おっしゃるとおり。だから一番簡単なのは、警察と取り締まってしまえば簡単なんだけど、そこから・・・変な言い方だけど、実際やってしまった人達に対して次はどうするかって議論は、その人達を社会の中でどういうふうに位置づけるかっていう議論と合わしてやっていかないといけないから、そうなってくると我々の仕事から手を離れて他のところでやらざるを得なくなってくる案件なんですよ。だからこれは厚生労働省だけの案件じゃないんですよ。刑罰をどういうふうに与えるのかとか、社会に取り込む時にどういうシステムでやっていくのかは、それは我々の省庁も関わっているのは事実だけど、我々だけが意思決定主体であるわけではないんですよ。

Q.それはわかります。

【(財)麻薬・覚せい剤乱用防止センターの薬物情報について】

Q.で、前もお話しましたけど、厚労省が管轄している各違法薬物の有害性についての情報ですけど、これが相変わらず「ダメ、ゼッタイ」のホームページには、本当にもう古い情報のまま放置されてますし、

A.去年もこれねぇ、白坂さんとお話した時に「これ何とかしましょうよ」って言われましたんで、一応私の方で乱用防止センターと「これ、どう改善できるのか検討しましょうよ」っていう話をしててですね、だからこの話はこっちとしては申し訳ないんですけど、忘れてるつもりはないですし、仕事はちゃんとしようと思ってますよ。

Q.是非お願いします。まず一番大事なのは何と言っても正しい知識を国民に周知教育していくこと・・・

A.正しい知識っていっても何を基準にするかっていう議論は出てくるから、何を基準にするかって時に、さっきのWHOの話じゃないけど、将来的に国際的に皆さんで共有できるレベルってどこですかってなると、やっぱりどっかで中立的なそういう報告なり検討なりを行うのが一番妥当なわけですよ。ですからさっきの話になるんですけどね。

Q.現在のレベルで、前に安田さんがお話になってた97年のWHOのレポートですよね、今の「ダメ、ゼッタイ」ホームページの情報はそれ以前に作られてるんですよね。統計データなんかは違いますけど、薬物情報としては他のドラッグも含めてですけど、アメリカから輸入した標本の説明書を翻訳しただけなんですよ。

A.それは聞いてます。

Q.本当にそのものなんですよ。それだといくらなんでも若い人が読んでも全然信憑性がないでしょってことなんで、この問題がすごく大きいと思うんですよ。

A.えぇ。ですから前もお話しました通り、確かにそういう問題点は承知してますので、それは改善していきたいと思っていますよ。

Q.是非お願いします。

【薬物依存症者に必要なのは逮捕より治療では?】

Q.それともう一つ、覚醒剤の乱用者が、今酒井法子さんがすごく騒がれちゃってますけど、本当に覚醒剤の場合は症状が進行すると意識が錯乱して刃物を振り回すところまでいってしまいますので、そうなる前にやっぱり本人が病院にかかれる体制が必要だと思うんですよね。

A.ただ問題は、病院にかかる前に本人が出てくるかどうか、あるいは家族がそういう意識を持っていただかなければ駄目なんですよ。

Q.いや、それは私も直接聞いて知ってますけどね、逮捕が怖くて病院にいけないっていう人がいるんですよ。

A.うぅ~ん。それは、ずれてるなぁ。そこは何ともいいようがないですね。

Q.ですから逮捕されちゃうのが怖くて病院にいけなくて、結局どんどん進んでおかしくなっちゃって、第三者にまで危害が及んでしまうってことも実際に起きていますので、これは政策的に招いてる悲劇だと思うんですよ。ですから、まず自分がまずいなと思ったら病院でちゃんと診てもらえたりとか、そういったところも、ただ取り締まる取り締まるっていうだけだと、その辺の問題っていうのは解決しないと思うんですよねぇ。

A.う~ん、ちょっと失礼ですけど、我々は取り締まりだけをやっているわけではなくて、そういう人達をいかに治していくかってことも役目としてあるわけですから。

Q.いやぁ弱いでしょう。私も前にお話を聞いて、保健所の担当者向けに配布してる小冊子なんかも頂いて拝見しましたけれども、こういうことをもっと強く打ち出して予算もつけてやっていただきたいと思ったんですが・・・

A.ただねぇ、もしそういう話をするんでしたら・・僕じゃないんですよね。逃げるわけじゃないけども。

Q.(笑)はい。

A.ただここのところは我々はできる限り円滑にするようなことをやるけれども、もし今白坂さんが主張しているような話を言うんであれば、窓口がちょっと違うんで・・・とは言いつつも我々からしてみると、こういう問題だって全く無視して、そういう人達を捕まえたら関係ないよって思っているわけでもないんですよ。だからできる限りそういうところの繋がりをどう作っていくかとかですね、どういうふうにそういう人達を上手くできる様にするかってことも頭の中に加味しながらですね、政策を作っているつもりではいるんですよ。

Q.わかりました。

【「大麻の種子」に関する決議の意義】

Q.政権交代も起きたことだし、是非安田さんには出世していただいて(笑)、いい薬物行政、いい厚生労働行政をお願いしたいと思ってますので、お役人は優秀な人達が集まっているわけですから、ぜひ国民の本当の幸せに繋がるような政策をお願いします。

A.(笑)いやいやこちらこそ。あの一番最初に言いましたWHOの話ですけどね、あれは我々もかなり気にしていましてね、そういうところできちんと皆さんで議論していって、その結果を皆さんで受け入れながら、次のステップとして何をやっていくか、そこの中で駄目であれば少し考えてまた次に向かって検討していかなきゃいけないんだけど、そういうところをきちんと作っていくことが今まで何もなかったから、それをまず作ったんでね、それをまずきちんと動かしていくことだろうなぁと私ども思いますよ。

Q.なるほど。私もちょっと上っ面しか読んでなかったんで・・

A.よ~く読んでみてください。

Q.わかりました。今頃国際機関で種の規制って話を持ち出してどうすんだよって思ったんですけど、そういう思いも入ってたわけなんですね。

A.あの決議はね、よ~く読んでみると、すごい色んなことを考えられた決議なんですよ。よ~く読むと。

Q.なるほど。わかりました。

A.だから是非ですね、なんと言うのかなぁ、種だけ何とかだっていうよりも、まず、種はどういうものなんですかってことを、誰も分からないじゃないですかってことから始まっているので、それを各国でどういうふうに見ますかっていう話があって、そしてそこの中で一貫して大麻の安全性や有用性をどうするかっていう話があるんで、それを是非よ~読んで欲しいんですよ。

Q.ヨーロッパで種はビジネスになってますもんね。

A.ただ私が知っている限りではヨーロッパ各国の政府も種についてはやっぱりかなり悩んでますよ。条約上は規制対象になっていないですけども、実際に中には依存性成分が高いものにですね、それを本当に認めていいのかってことは各国政府なりに悩んでますよ。だからある程度整備できるような、種自身がどうかってことが分かれば今の状態は変わるかもしれませんよ。

Q.そうですかねぇ。いい方向に・・・。規制管理は必要だと思っていますので、むやみに駄目よっていうだけじゃなくて、っていうふうに私達の立場としては考えているんですけどね。

A.うん。まぁいずれにしてもですね、ここのところはまだ技術的な問題も解決しないといけないですし、安全性の問題もあるし、それをどうするかっていうことを各国で協力しながら何ができるかっていうことを考えることでしょうね。そういうとこの中で変わっていくんでしょう。どういうふうになっていくかは私もよくわかりませんが。

Q.わかりました。・・・すいません。お忙しいとこ有難うございました。またよろしくお願いします。

A.いや、こちらこそ。ではまたよろしく。

Q.ありがとうございました。

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