刑罰による大麻規制は取締当局による自作自演だった
桂 川 直 文
・大麻を有害とする証拠などどこにも存在しなかった
従来の大麻裁判では大麻使用の当否など論議されることなく、法律の条文だけを理由に量刑が科せられ、被告人が法廷で大麻の真実を述べようものなら反省の意識がないとされて刑が重くなりました。したがって被告人は「大麻は害悪があり二度と手にしない」と虚偽の証言をし、過去の判例に照らして判決が下されて公判は形式的に終了しました。
今日まで我が国では大麻取締法違反容疑で検挙されたものは、実質的に公正な裁判が受けられない状態だったのです。
私の裁判も例外ではなく、大麻取締法の不当性を主張し、取締当局を非難したため、一審では大麻の有害性を「公知の事実である」と断定されて、昨年4月14日大阪地裁にて米山正明裁判官から懲役5年という実刑判決が下されました。
私は一審判決を不服として大阪高裁に控訴し、大阪の金井塚康弘弁護士に加えて東京の丸井英弘弁護士を選任し、弁護団を構成して控訴審を闘ってきました。弁護人による控訴趣意書が奏効して、控訴審では異例の三回にわたる被告人証言をすることができました。
また弁護士の強い主張により、裁判官の勧告で検察側が大麻を有害とする証拠資料を提出したことは、問答無用だった一審からすれば大きく前進したものといえます。
ところが、この4つの文献資料からなる検察提出の証拠はとんでもないシロモノでした。
第一の資料がなんと厚生労働省外郭団体、財団法人「麻薬・覚せい剤乱用防止センター」ホームページ、いわゆる「ダメ。ゼッタイ。」ホームページの抜粋だったのです。
以前から、このホームページの内容があまりにもデタラメであることから、私を支援してくれているカンナビストの会員が、記述にある大麻摂取を原因とする心身の異常(脳障害、生殖機能障害)について厚生労働省に情報公開請求を行い「行政文書不開示決定通知書」が昨年4月、交付されました。その理由は「開示請求に係る行政文書を保有していないため」というものでした。我が国には大麻摂取を原因とする疾病など一つもないことが判明していたのです。
この事実はすでに第一回公判で弁護側から明らかにされ「行政文書不開示決定通知書」は証拠採用されていました。にも拘らず、出典が明記されておらず、その真偽を確かめようもない単なる主張を、検察は大麻を有害なものとする第一の証拠資料として提出してきたのです。しかも、弁護側の「ダメ。ゼッタイ。」ホームページ管理者の証人申請が検察側の不同意により却下となってしまいました。
その他の検察提出資料もすべて、大麻を取り締まる側の人物や組織の手によるもので、大麻を悪いものとする前提のもとに書かれたものでした。カンナビストの会員の検証によれば、検察資料の中にも、原本には大麻を肯定的に記述した部分があったのですが、検察は意図的にそのような部分を削除して裁判に提出するという悪質さでした。
そして驚くべきは、「捜査報告書」と題する大阪高等検察庁検察官検事 藤田義清 から大阪高等検察庁刑事部長 清水治 あての、この大麻を有害なものとする資料の日付けが平成16年9月28日だったことです。
国民に7年もの懲役刑を求刑する重大事犯(私の場合)にもかかわらず、その根拠となる確固たる証拠資料がここに至るまで検察の手許に無かったことになります。
・麻薬取締官の行為は憲法第15条第2項(すべて公務員は全体の奉仕者であって、一部の奉仕者では無い)に明確に違反している
私を逮捕した厚生労働省の麻薬取締官(通称マトリ)は、大麻の無害性を国民の誰よりも認識しており、海外の大麻事情にも通じています。私を担当した近畿厚生局麻薬取締部の下宮捜査官は、取り調べ開始にあたって「大麻は酒、タバコと同列である」と宣言しました。さらにマトリ達は、その経験上、大麻を好む人達の大半は普通に職業を持ち、真面目に納税している一般の国民であることも承知しています。
私は取り調べの過程において何度も、現行の大麻規制の在り方を非難しましたが、マトリ達の返答はいつもオウム返しのように「我々は法に従って仕事をしている」でした。しかし、罪の無い人を捕縛し、その社会生活を破壊するようなことが仕事なのでしょうか。
厚生労働省の役人として、大麻が酒、タバコ以上に害が無いことを認識しているなら、その事実を検察や裁判所に、そしてマスコミを通じて広く国民に知らせる義務がある筈です。
マトリ達は公僕としての本来の仕事を放棄して、あろうことか、大麻の真実を社会に知らしめている大麻自由化運動を組織的犯罪行為とみなし、私をその主魁と認定して、私の友人知人達を次々と逮捕投獄してきました。
すべての捜査と取り調べが終了して、当所マトリ達が描いていた、大麻解放を隠れ蓑にした日本最大の大麻密売組織という構図は自らの妄想だったことが判明しました。
取り調べの最後に登場した近畿麻薬の幹部は「我々にとって今回の事件は非常に特殊なケースでした。あなたの行為を裁判所がどう判断するかとても興味があり注目しています」と言い放ちました。従って私は絶対に引き下がる訳にいきません。とことん最後まで闘って、取締当局こそ犯罪者であることを証明します。
・大麻無害の証拠をこれ以上求められれば役人達に大麻を吸ってもらうしかない
昨年11月24日の第3回公判で控訴審での私の証言は終了しました。傍聴していた支援者からの手紙によると、皆 私の発言に満足していたとのことで安堵しました。3回にわたって決定的なことを述べましたが、それでも語り尽くせない点がありましたので公判後、陳述書として裁判所に提出しました。
情報化時代の今日、私が何回も法廷で話さなくても、裁判官達は大麻の無害性くらいうすうす知っている筈です。しかし、30年以上にわたりこんなことで何万人もの国民を牢屋に入れてきたのですから、役所のメンツや同僚、先輩への配慮からも、役人達はそう簡単に大麻容認にしないでしょう。だから私は1年半も拘置所に座り、公判であーでもないこーでもないと検察とやりあい、夥しい証拠書類を積み上げているのです。いわば私の裁判は一つの儀式であり、日本が精神的先進国になるための通過儀礼のようなものなのです。
もはや検察は公判を維持することができなくなっています。訳の分からない、トンチンカンな被告人質問に終始し、まるで要領を得ませんでした。
一審の公判検事には大麻吸煙について「トリップを求めていたのか?快感を得ようとしていたのか?」と質問され困ってしまいました。
控訴審では検察資料を示され「大麻にはこのような害悪があることをどう思うか?」と訊かれ、私は「それはかなり古い資料だと思います」と答えました。つぎに「LSDをやったことがあるか?」と訊かれ、「あります」と答えました。検事の質問はたったのそれだけでした。
弁護側は大麻取締法違憲の証拠、大麻使用の無害性有益性の証拠を考えられる限り、すべて提出し、私は真実を忌憚なく証言しました。これ以上大麻無害の証拠を積み上げるとするなら、検察官や裁判官に大麻を吸ってもらうしかないと思います。
現在、全国の支援者から沢山の励ましの手紙を戴いており、まだ返事を差し上げていない方々に、とりあえずサイト上で御礼申し上げます。
また私の減刑嘆願のため署名された多勢の皆様にも厚く御礼申し上げます。
本当にありごとうございました。
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