衆議院の公明党政務調査会に電話して、医療担当の方にお話を伺った。
公明党のサイトには、「政策・実績」というコーナーがあり、「青年政策 Komei ユース・ポリシー2005(PDF:39KB) 【2005年5月12日発表】」というPDFファイルが公開されている。そのなかで「薬物乱用防止対策」について次のように書かれている。
(2) 薬物乱用防止対策を強化
近年増加傾向にある青少年の薬物(脱法ドラッグを含む)乱用を防止するため、乱用による危険性を周知する資料の作成等、予防啓発活動を推進するとともに、薬物販売・密売等の取締り体制をさらに強化する。また、「薬物乱用防止教室」のさらなる普及に取り組む。
ここには「薬物乱用防止対策」として、教育と取り締まり強化に関しては書かれているが、薬物依存に陥ってしまった人への対策はないようなので、その点について公明党がどう考えているのかを訊いた。
Q.中毒になってしまった人へのサポートに関する記述がないようですが、ケアについてどうお考えでしょうか?
A.最近、若者の大麻の話が出てきていますが、それより前から薬物乱用防止対策については、結構うちの党でやっていまして、キャラバンカーなど、啓発活動を中心にやっていこうというところを進めてきたんですね。それと、基本的には入口を強化してやってきたことには間違いないですが、いま実際に中毒になってしまって、社会復帰をめざしていく、いわばケア・サポートなどもありますから、そういった取り組みをされているNPO法人などからいろいろとヒアリングをさせてもらってまして、もちろん、医療機関に行って頂ける方は行って頂いたほうがいいと思いますが、まず、相談を受けて頂けるようなところに援助すべきだろうと、そういったところに充分な施策をやっていく必要があるだろうということで、うちの党としては発信してきました。
Q.現在の日本政府の方針は、ゼロ・トレランスで、取り締まり一辺倒で、ケアなどに関しては、ダルクのような民間におんぶにだっこのような現状だと思いますが。
A.私たちもダルクにお話を聞きに行きましたが、これは大麻の問題よりも前の、脱法ドラッグが出たときに、うちの党でもプロジェクト・チームを作ってやってきたのですが、あの時にもいわゆるケアという観点から聞いたのですが、うまくいくときもあれば、うまくいかないときもある、ある意味で当然ですが、元中毒者という立場の方に看て頂くということも大切だと思いますし、医療として提供すべきことも必要だろうと、両方とも重厚にしていくことが大切じゃないかということが、あのとき議論になった点でした。 取り締まりを強化するほうに力を入れるのか、もしくはまさに、社会復帰に力を入れていくのか、というところを問われると、なかなか正直、難しいところがあるんですが。取り締まりを強化しなければ広がってしまうというところもありましたから、両輪として、両方とも力を入れていくべきだろうというのが、あの時の議論だったんですね。
今の大麻の摘発の問題に関しては、うちの党としても去年の11月に総理に申し入れも行いましたが、基本的にはどうしても防止策というところに力を置くべきだということで提案をしているというのは間違いなくて、中毒の方へのケアというところは入っていないんですけれども、基本的には私たちはそういった議論も進めてきていましたから、そういったことで進めているということです。
Q.ぜひケアの観点もマニフェストに入れて頂きたいのですが。中毒者には刑事罰よりも治療をという視点で。
A.非常に大事な視点ですし、私たちも議論になっているところなので。ただ、どういった治療が必要かという点に関しては、専門分野の方たちによって、正直、意見も分かれてしまっているようなところがありまして、私たちも一本に絞り込むことが難しいところがありまして。ですから、そういったサポート体制・相談体制、医療と、両面で、国としてできることは、そこにしっかり予算を吐くということですから、そこに関してはやっていこうと。そのうえで、今、厚労省にも研究事業をやらせてますので、どういうサポート、ケアが必要なのか、研究の結果で、これが有効だというところをしっかりと取り組みを進めていくということが大事だろうと。そういう研究をいまやってもらっていますから、そこを見て、私たちも具体的に、そこは日本ではいまそういった体制ができていないから、やっていくことが必要だと、取り組みをさせて頂こうと思っているのですが、今の段階では、そういう状況なんです。
Q.厚労省の天下り法人がダメゼッタイとして、薬物情報を発信していますけど、アレ、医学的な根拠のないものなんですね。それは天下りの渡りの専務理事も、厚労省の麻薬対策課の情報係長も、情報が古くて見直す必要がある、医学的根拠はないと認めているんです。それなのに、各薬物の医学的な事実を検証することなく、種の規制強化だとか、使用罪を導入しようというのはどうなんでしょうか?青少年、未成年者の信用を失うことにしかならないのではないでしょうか?
A.確かに、使用罪といったことには議論が必要だと思っていて、すぐに言える状況ではないですし、これはあくまで罰則になりますから、あくまで慎重にやらなければならないところがあると思います。薬物乱用防止センターについては、私たちも、よくキャラバンカーとか、学校に配布してもらうパンフレット等で、いろいろ指導はしているんですが。
Q.その中身が問題ですよね?
A.そうなんですよね、そこはあると思います。ご意見としてはしっかり伺いましたので、こういう意見があったけどどうなんだろうということは、センターのほうにやらせて頂こうと思います。
Q.あ!そうですか?ぜひお願いします。
A.はい。実はですね、私たちもセンターには何回も視察に行ったりはしていますので。キャラバンカーもうちの党が何台も増やしてきている背景がありますから、問題はその中身の問題ということはありますから。
Q.そーなんですよ。そういった教育は必要だと思いますけど、例えば大麻については、WHOでも否定しているようなことがヘーキで書いてあったりですね、それで大麻で大騒ぎして、本当に学生がちょっと大麻を持っていただけで、逮捕して、退学処分にして、若者の人生を丸ごと潰してしまわなければならないほどのことなのか、というところに私たちは疑問を感じていまして、むしろちゃんと社会的に管理するとこが必要ではないかという立場なんですよ。
A.ゲートウェイ・ドラッグとしての問題もありますから。
Q.それも実は海外の科学者たちには否定されてるんですよ、日本では言われてますけど、大麻がゲートウェイになっているのは、違法薬物を売る者たちが他のドラッグ、覚醒剤と一緒に売ったりしているからであって、社会的に大麻がゲートウェイになってしまっているんだと思うんですよ。アメリカのIMOでもそのように報告してるんですよね。
A.科学的に言えば、確かにリンクはないかもしれませんが、現状としてゲートウェイ・ドラッグになってしまっているので、社会的には。
Q.それはなぜか、ということですよね、問題は。
A.確かに、そういったこともあると思いますから、私たちとしては、両方ともダブルでやっていく時期が今なんだろうという感触なんですよ。ですから、社会構造をしっかり変えていくということをやりつつ、現状としては、今、大麻が次のドラッグに移ってしまっていることも何らかの対策を練っていかなければいけないだろうと。
Q.どういった対策が必要かということですよね、厳罰に走るのか、もう一度、各薬物の医学的事実を検証して、その危険性に応じて規制をかけるのか。
A.まず、大麻事犯をしっかり検証したうえでですね、一番大事なのは、もちろん不正輸入だとか、入手しやすくなってしまっている状況をまず変えないといけないと思っていますから、その辺はしっかり法改正も含めて検討すべきだろうと。ただ、使用についての罰則という面では、まだうちの党としては何も発信していることはないですけれども。まず、事犯を研究したうえで判断しないとと思っていますけれども。
Q.各薬物の事犯に対する社会的な研究と同時にですね、まず各薬物そのものの医学的な研究が必要だと思うんですよ。いまは厚労省は薬学的な研究すら認めていない状況ですからね、製薬メーカーが大麻の薬学的、医学的な研究をしたいと申請しても、厚労省が認めないという状況ですから。アメリカなんかでも、大麻の医療効果が明らかになってきているのに、日本では研究すら禁止して。いったい、薬学的な研究すら認めないというのは、どういうことなのかと。
A.私たちも癌対策をやるにあたって、いわゆる緩和ケアというのが大事だろうと、痛みを取るということに主軸を置こうということで癌対策基本法を作りましたが、その際にもモルヒネの使用の件でもですね、当初、厚生労働省は反発をしたわけなんですよ。
Q.へぇー
A.やはり、その使用方法とか、日本社会のなかで、モルヒネという薬に対する概念というのもありますから、一概にポンとやるのはどうなんだろうと思うところはあるんですけれども、そこは必要度に応じて、しっかりした拡充をするところは拡充していかないと、役所はなかなか動かないなというところはあるんだと思います。
Q.モルヒネなどは、ダメゼッタイのセンターでも、医療的な使用については、先進国でも日本は少ないから、もっとちゃんと理解しましょうというスタンスになってますよね。モルヒネに関する知識は、一昔前に、恐ろしい麻薬だという知識が国民的に教育されたので、誤解している人も未だに多いと思うんですけど。
A.そこは私たちもモルヒネについては、党として医療現場でアンケートを取ったりしたんですけど、なかなか医療現場でもちゃんとした麻酔効果が分かってないんです。みんな中毒症状になってしまうんじゃないかと。ちゃんと使えばそういう症状はないので。ですから、そのような基本的な情報というのが、なかなかないと思うんですよね。ただ、それが逆に入手しやすくなって一般社会に広まってしまうというのは、それは問題だと思うんでけれども。(笑)
Q.それはそうですね。それはまた医療とは別の話ですもんね。
A.その辺が役所なんかはごちゃ混ぜになっていて、恐れているんだと思うんですね。ですから、そこはちゃんと使用目的とか、管理とか、しっかりと見たうえで、やれるものはやっていくことが大切だと思ってるんです。
Q.大麻に関しても、海外では癌の疼痛緩和作用があるということで合法的に使われているんですよね。
A.なるほど。
Q.それなのに、日本では大麻を恐ろしい麻薬だということで、マスコミも走ってしまっていますので、モルヒネと同じ道を辿るのかと心配してるんです。ですから、まず、先ほどの麻薬防止センターに、大麻などの薬物の情報は医学的に正しいものなのかということについて、その辺もぜひ、いませっかく公明党さんは政権与党にいて発言力もあるでしょうから、しっかり言って頂けるとありがたいかなと思いますけど。
A.ええ、その辺もしっかり見させて頂いたうえで、やっていきたいと思っています。
Q.そうですね、ぜひお願い致します。どうもお忙しいところをありがとうございました。よろしくお願い致します。
正直に言って、公明党はアンケートに回答して頂けなかったので、もっとぞんざいな対応をするかという先入観をもって電話をした。しかし、政務調査会のご担当は、とても丁寧な対応をして下さった。当記事の冒頭に引用した公明党の「薬物乱用防止対策」には、薬物中毒に陥った人へのケアの視点が欠落しているが、政調レベルではその点についても考慮されていることを知ることができた。
最初、公明党本部に電話をし、担当の方と話をしたのだが、その時は、あまりこの問題について考えられていない印象を受けた。が、もっと詳しい政策論を聞きたいと言ったところ、衆院の政調に電話するよう言われ、かけ直した。
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