麻生しげる
来月の11月、2期目の当選を目指す民主党のバラク・オバマ大統領と、初当選を目指す共和党率いるミット・ロムニー氏が対決する。
この選挙、アメリカの1920年代の大恐慌以来の圧迫された経済問題(アメリカ経済の低迷、高失業率等)の解決に焦点が絞られている感があるものの、だからといって、膨大なる財産をもち、財界、企業社会にどっぷり浸かって来たロムニー氏がとりわけ優勢という訳でもない。
ロムニー氏は高額所得者や大手企業の税金を安くすることによって、中流階級も結果的に潤うという、風が吹けば桶屋が儲かる的な没論理でもって選挙に挑んでいる。といって、オバマ氏のキャンペーンも2008年の大統領就任時の勢いはどこへやら、イマイチ盛り上がりに欠けている。さては核軍縮やアフガン撤退の口約束や医療大麻に手を出さない、との公約を守らなかったツケが回ってきたか。まあ、アメリカの民意なんて勝手なもので、ビンラディン氏を問答無用で殺害した彼を高く評価するものも多い。いずれにしても、同氏にノーベル平和賞を与えたスエーデンの決定は些かフライングではなかったか。
オバマ氏は核兵器を一新するとの方針を明らかにしたばかりでなく、(無爆発)核実験を相変わらず続けている。大手ギャラップ社などの調査機関の類推をみると、オバマ氏が州別で平均僅か5%程度のリードを保っている模様である。±3%の誤差があるというのだから、接戦と言えよう。しかも、コロラド州のデンバー大学で行われた大統領候補弁論大会(プレジデンシャル・ディベート)はロムニー氏の圧勝で終わった、というのがアメリカのマスコミの一致した見解である。そして、ロムニー氏は次のような言葉で弁論大会を締めくくった。
「私はアメリカを世界一強い国家として維持する用意がある。(オバマ氏提案の)軍縮は絶対に許さない。むしろ、アメリカの軍部を強化し、アメリカや同盟国の国益を守る為に強いアメリカを再び構築する用意がある」
そして同氏はオバマケアと呼ばれるオバマ大統領立案の社会医療保障制度を撤廃すると約束した。オバマ氏は弁論大会の全体にわたってロムニー氏のペースに巻かれたようだ。まあ、タカ派の候補としてはどっちもどっちと言えるが、マリファナは兎も角、コーヒーすら罰当たりであると考えるモルモン教徒のロムニー氏が現在のオバマ氏以上に医療大麻の弾圧を計ることは間違いないであろう。いずれにしても、選挙を控えた両氏は医療大麻問題や嗜好大麻問題に言及することを避けている。それほどに、アメリカの世論は揺れているのだ。
つづく
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