2-衆-厚生委員会-8号 昭和23年06月12日
昭和二十三年六月十二日(土曜日)
午後一時十二分開議
出席委員
委員長 山崎 岩男君
理事 有田 二郎君 理事 田中 松月君
理事 武田 キヨ君 理事 徳田 球一君
井上 知治君 近藤 鶴代君
村上 清治君 武藤運十郎君
師岡 榮一君 最上 英子君
野本 品吉君 松本 眞一君
齋藤 晃君 寺崎 覺君
榊原 亨君
出席國務大臣
厚 生 大 臣 竹田 儀一君
國 務 大 臣 野溝 勝君
出席政府委員
厚生事務官 久下 勝次君
委員外の出席者
專門調査員 川井 章知君
―――――――――――――
六月十日
大麻取締法案(内閣提出)(第一一四号)
理容師法特例法(内閣送付)(予閣第七号)
性病予防法案(内閣送付)(予閣第八号)
予防接種法案(内閣送付)(予閣第九号)
同月十一日
厚生年金保險法等の一部を改正する法律案(内閣提出)(第一三一号)
の審査を本委員会に付託された。
―――――――――――――
本日の会議に付した事件
藥事法案(内閣提出)(第八八号)
大麻取締法案(内閣提出)(第一一四号)
性病予防法案(内閣送付)(予閣第八号)
予防接種法案(内閣送付)(予閣第九号)
医療制度に関する件
―――――――――――――
○山崎委員長 ただいまより会議を開きます。
本日の議題であります藥事法案、麻藥取締法案及び民生委員法案をしばらく後回しにいたしまして、日程を追加して、今回新たに本委員会に審査のために付託されました大麻取締法案、及び予備審査のために付託されました性病予防法案及び予防接種法案を議題といたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○山崎委員長 御異議がなければ、大麻取締法案、性病予防法案及び予防接種法案を一括議題に供します。まず審査に先立ちまして政府側より提案理由の説明を求めます。竹田國務大臣。
○竹田國務大臣 ただいま議題となりました大麻取締法案について御説明いたします。
大麻草に含まれている樹脂等は麻藥と同樣な害毒をもつているので、從來は麻藥として取締つてまいつたのでありますが、大麻草を栽培している者は大体が農業に從事しているのでありまして、今回提出されています麻藥取締法案の取締の対象たる医師、歯科医師、藥剤師等は、職業の分野がはなはだしく異つています関係上、別個な法律を制定いたしまして、これが取締の完璧を期する所存であり、本法案を提出する理由と相なつております。本法案の構成といたしましては、総則、免許、大麻取扱者、監督、雜則、罰則の六章及び附則からなつておるのでありまして、全條分は二十三條であります。
次にこの法案の骨子といたしまするところを説明いたします。まず、大麻の不正取引及び不正使用を防ぐため、大麻を取扱う者はこれを免許制とし、この免許を受けた者以外の者は、大麻を取扱うことを禁止しておるのであります。
次に大麻の取引を要式行為とし、また大麻取扱者に記張義務及び報告義務を課して大麻の移動の責任を明らかにしたのであります。勅令第五百四十二号に基く大麻取締規則を廃止したのであります。
以上大麻取締法案の骨子につき、大要の御説明を申し上げたのでありますが、何とぞ御審議の上速やかに可決せられんことを切望いたします。
以下は「性病予法案」。面白いのでオマケ。
次に性病予法案の提案理由を説明いたしたいと思います。
わが國における性病の蔓延状態は戰前すでに憂慮すべきものがあつたのでありますが、戰時中より戰後にかけての社会的混乱は、世道徳の紊乱というおもしろからざる風潮を生し、加うるに急激な経済的変動のために、徳義心が忘却されがちとなりつつあることは、性病予防止まことに憂うべき状態と申さねばなりません。
政府は終戰後ただちに花柳病予防法特例を制定し、業態者に対しては一層嚴格なる規定を加え、かつ一般患者に対しても医師の届出、治療の励行等を規定して性病予防の措置を講じたのであります。しかしながらその後公娼は廃止せられまして、文化國家としてわが國は一進歩を画したのでありますが、これ伴いまして從來の法律が、その主たる対象といたしまして業態者なる概念はこれを一擲する必要を生じ、ここに性病予防についての根本的対策の確立と、徹底的実施とが要望せらるるに至つたわけであります。政府といたしましても、この間の事情に対処して性病の徹底的な予防及び治療を行い、公衆衞生の増進及び向上をはかり、健全なる國家建設の必要を痛感いたしましたので、廣く諸外國の立法例を参考とし、從來の花柳病予防法及び特例を綜合致しまして、この法案を提案するに至つて次第であります。
次にこの法案の内容の大体を申し上げますと、第一に、性病の徹底的な治療及び予防は、國及び地方公共團体並びに個人の義務とし、これに医師の協力義務を併せ規定しております。
第二は、性病の取扱につきましては、急性傳染病とほぼ同樣の取扱として、医師の届出制度をとり、治療も都道府縣知事の監督下に、医師及び患者に徹底的治療を義務づけ、必要に應じましては患者に対し強制入院させる措置を講じ得るよう規定したのであります。
第三に、從いまして感染原の発見追求を行う規定を設け、患者についてたれから病氣をもらつたか、たれにうつしたかといういわゆる接触者調査を行い得ることにしたのであります。
第四に、性病の対象範囲の拡大に伴いまして、業態者の定期の健康診断を廃止しましたが、賣淫常習の疑の著しい者に対しては、強制健康診断を命じ得ることを規定し、公娼廃止後憂慮せられていましたこの方面の性病傳播を防止することが出來るようにしました。
第五は、都道府縣知事は性病蔓延の著しい場合においては、その治療及び予防のため特に必要があると認めたときには、強力な予防措置を講ずることができるのでありますが、これはその実施を愼重にするために特に厚生大臣の承認を必要とすることにしております。以上に述べました都道府縣知事の健康診断命令は、もしそれが濫用されることになりますと、基本的人権蹂躙を招くおそれがありますので、特に本法においては、知事の命令が違法であると考えたときは、裁判所に命令の取消の訴えを提起することができるようにしたことであります。
第六は、性病は子孫にまで害を及ぼすものでありますので、婚姻、姙娠の場合におきまして、健康診断を受けることを規定しまして、その予防をはかつております。
第七は性病予防施設に関しまして從來診療所、病院がありますが、今後ともその整備拡充を期しようとするものであります。
以上がこの法案の骨子でありますが、何とぞ御審議の上速やかに可決せられんことを希望いたします。
なおただいま議題となりました予防接種法案について提案の理由を説明いたします。
わが國の傳染病発生の趨勢は戰爭末期より逐増の傾向にありましたが、終戰後の社会的混乱は、昭和二十年、二十一年と引続き傳染病の爆発的発生と蔓延を惹起いたしました。加うるに戰爭によります疲弊、特に衞生施設、医藥品の不足等惡條件を伴いまして、まことに憂慮すべき状態にあつたのでありますが、さいわいに連合國諸國の強力なる援助を得、國民の協力と関係当局の努力の結果、昨年に至りましてようやく終熄を見たのであります。かくのごとき傳染病の流行は、他の文明諸國に対しましても一大恥辱と申さねばなりませんし、また個人的にも、國家的にも、その浪費は莫大でありまして、再建途上のわが國としまして、有形無形の支障を生じましたことも明かであります。
しかしながら昨年におきまする患者の発生の激減、加うるにかの大水害に傳染病発生のなかつたことは、諸國に賞讃の声を生じましたことも事実であります。その原因としていろいろ考えられますが、その一として、從來小規模に行われていました予防接種を昨年度廣く実施いたしましたことも効果があつたことは疑いありません。
政府としてただいま傳染病対策に関しては、一層考究を続け、萬全を期すべく努力いたしておりますが、このたび長年実施され、その効果をあげてまいりました種痘法に実施方法を参酌いたしまして、痘瘡に限らず傳染のおそれのある疾病に対して学界において、免疫の効果を確認されておりまする免疫原による予防接種を全面的に実施いたすこととし、もつて疾病予防の完璧をはからんとするものであります。これによりまして、國民をこれら採病の災厄から免れしめ、その発生によります浪費を防止し、全國民が安んじて國家再建に邁進でき得ることを期し、もつて國民福祉の向上、文化國家の建設に資せんとするものでありまして、これが今回この法案を提案するに至つた理由であります。
次にこの法案の内容の大体を申し上げます。
第一に、定期の予防接種を行うものは、痘瘡、ジフテリア、腸チフス、パラチフス、百日せき、結核であり、臨時に行うものは以外の疾病のほか、発疹チフス、ペスト、コレラ、猩紅熱、インフルエンザ及びワイル病としたことであります。
第二に、予防接種を行う義務を市町村長とし、市町村長は保健所長の指示を受けて、これを行うこととしたことであります。
第三に、厚生大臣は必要であると認めるときは都道府縣知事に命じて臨時に予防接種を行わせることができることとしたのであります。
第四に都道府縣知事も疾病蔓延防止のため必要があると認めるときは、同じく臨時に予防接種を行い、または市町村長に行わせることができるようにしたことであります。
第五に、予防接種を受けた者に対して証明書を交付し、市町村においても台帳を作成し、これが記録を明瞭ならしめ、実施の確実を期したことであります。
以上がこの法案の骨子でありますが、何とぞ愼重御審議の上速やかに可決せられんことを希望いたします。
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