第10回公判で行われた長野県警科学捜査研究所の湯本弥助氏に対する証人訊問です。
検察官
まず,証人の経歴等ですけれども,証人は現在長野県警察本部刑事部科学捜査研究所の職員ですね。
はい。
証人の鑑定人としての経歴について述べてください。
昭和56年4月に長野県警の科学捜査研究所に配属されて以来,現在に至るまで、鑑定を行っております。
専門分野は何になりますか。化学です。
具体的にはどのような鑑定を行われていますか。
大麻鑑定を初め,覚醒剤,シンナー,アルコール,それから一酸化炭素等の薬物の鑑定と,工業製品である繊維の鑑定を行っております。
証人のこれまでの大麻の鑑定の件数,経歴はどのようなものですか。
配属して以来,鑑定書の作成数は数百件に上ると思います。
証人は,平成25年9月29日から30日にかけて被告人方から発見された大麻について,鑑定嘱託書に基づいて鑑定を行っていますね。
はい。
鑑定については,大麻様の植物については2つ行っていますね。
はい。
(甲)証拠番号5及び(甲)証拠番号19の各鑑定嘱託書謄本を示す
甲第5号証,第1448号と記載のある鑑定嘱託書です。甲第19号証,第1460号の鑑定嘱託書です。証人が鑑定を行った2つの鑑定ですけれどち,今示した甲第5号証,甲第19号証の鑑定嘱託書に基づいて行ったということで間違いありませんか。
はい,そうです。
証人は,これらの鑑定結果について鑑定書を作成していますね。
はい。
(甲)証拠番号6及び(甲)証拠番号20の各鑑定書を示す
甲第6号証を示します。科研第1732号と記載のあるものです。甲第20号証,科研第1767号と記載のある鑑定書を示します。まず,甲第6号証についてですが,2枚目に湯本弥助と署名があり,湯本という印鑑が押され,各ペジに害ljり印がされていますが,これは証人がしたものですか。
はい。
これは,証人が作成した鑑定書ですか。
はい,そうです。
続いて,甲第20号証ですが,4枚目に湯本弥助という署名があり,湯本という印が押され,各ペジが湯本の印で割り印されていますが,これは証人がしたものですか。
はい,そうです。
この鑑定書は,証人が作成したものですか。
はい。
この2通の鑑定書は,証人が先ほど証言された平成25年9月29日から30日にかけて被告人方において押収された大麻について鑑定を行った際に作成をした鑑定書ということで間違いありませんね。
はい。
では,さきに示した甲第6号証,鑑定嘱託書の番号でいうと1448号の鑑定書についてお聞きします。この鑑定は,令状に基づいて行ったものでしたね。
はい,そうです。
鑑定資料としては,どのようなものがありましたか。
プラスチックの容器に入った植物片です。
(甲)証拠番号6(鑑定書)添付の写真1及び2を示す
今証言された鑑定した大麻は,こちらの写真1'2のもので間違いありませんか。
はい,そうです。
この大麻について鑑定を行った手順について簡単に説明をしてください。
大麻の特徴であります剛毛があるかどうかということと,大麻成分が含有されているかという鑑定を行いました。
それぞれ手順としてはどのようなものがありましたか。
剛毛を観察するには,実体顕微鏡で観察し,大麻特有の剛毛があるかを観察しました。また,大麻成分につきましては,資料から大麻の成分を抽出し,それを薄層クロマトグラフィという手法とガスクロマトグラフィ質量分析という2つの手法により大麻成分を検出しました。
薄層クロマトグラフィ,ガスクロマトグラフィ質量分析は,それぞれどのような目的,どのような手順で行うものですか。
薄層クロマトグラフィは,大量のものを一度に検査できる方法ですけども,特異性にはやや欠ける検査法です。また,ガスクロマトグラフィ質量分析は,1回の分析時間がかかりますけども,大麻成分を特異的に検出できる方法です。
この鑑定資料について重量の測定は行いましたか。
行いました。
証人は,その測定した重量であるとか,薄層クロマトグラフィー,ガスクロマトグラフィーによって得た結果であるとか,外観検査の結果得た結果についてメモをするなどしていましたか。
重量測定につきましては,嘱託書の裏面に測定した重量を記載しました。また,薄層クロマトグラフィにつきましては,特に検出された成分だけ嘱託書の裏面に記載しました。それから,質量分析計の結果につきましては,データを印字しまして嘱託書と一緒に保存しました。
外観から剛毛の有無を判断するというふうに証言されていましたが,剛毛の有無についてはメモしていましたか。
しました。
この鑑定の結果は,どのような内容が得られましたか。
資料は,大麻であると認められました。
続いて,2つ目の鑑定,鑑定嘱託書の番号でいうと1460号のものについてお聞きします。こちらの鑑定も令状に基づいて行ったものでしたか。
はい,そうです。
鑑定資料としては,どのようなものがありましたか。
資料は,1番から8番までありまして,1番は主に種でして,種の中に細かい植物片がありましたので,実体顕微鏡を用いまして剛毛を探しましたが,剛毛を見つけることはできませんでした。その植物片について大麻成分を抽出しまして,薄層クロマトグラフィとガスクロマトグラフィ質量分析により分析を行いましたところ,大麻成分のカンナピジオールの成分を検出しました。資料2につきましては,ほぼ大麻の枝と思われるもので,そこのところに一部葉っぱ様のものが残っていましたので,それを実体顕微鏡で観察しましたところ,大麻特有の剛毛が認められ,成分の検査を行いましたところ,大麻成分のテトラヒドロカンナビノールを検出したので,資料2は大麻と認めました。資料3,資料4は種が大部分だったんですが,中に植物片がありまして,その植物片を観察しましたところ,大麻特有の剛毛が認められ,大麻成分の検査をしましたところテトラヒドロカンナビノールの含有を認めたので,資料3,4の種以外のものにつきましては大麻と認めました。資料5につきましては3一部種が入っている植物片で,大麻特有の剛毛が認められ,さらに大麻成分のテトラヒドロカンナピノールを検出しましたので,種以外のものは大麻と認めました。資料6,資料7につきましては,茎が一部残っていたんですが,植物の根がほとんどでして,顕微鏡で観察しましたが,大麻特有の剛毛は認められませんでした。また,大麻成分を抽出して検査しましたが,大麻成分は検出されませんでしたので,大麻とは認められませんでした。資料8は植物で,枯れてはいましたが,大麻特有の剛毛が認められ,また大麻成分のテトラヒドロカンナビノールの含有を認めましたので,資料8は大麻と認めました。
(甲)証拠番号20(鑑定書)添付の写真1ないし12を示す
今証言された資料I,種子ですけれども,こちらに間違いありませんか。
はい。
先ほど証言された資料2ですけれども,こちらに間違いありませんか。
はい。
続いて,資料3,4ですけれども,こちらに間違いありませんか。
はい。
資料5ですけれども,写真6,7のもので間違いありませんか。
はい。
続いて,資料6ですけれども3写真8,9のもので間違いありませんか。
はい。
続いて,資料7ですが,写真10, 11のもので間違いありませんか。
はい。
資料8ですけれども,写真12のもので間違いありませんか。
はい。
写真の番号を言いそびれてしまったので,冒頭のものを確認しますが,資料1は写真1で間違いありませんね。
はい。
資料2は写真2,3のものですね。
はい。
資料3は写真4のもの,資料4は写真5のもので間違いありませんね。
はい。
今の証言の中に少しありましたけれども,鑑定の手順やメモをした内容については1448号について証言された内容と同じですか。
はい。
では,鑑定書の作成状況についてお聞きしますけれども,まず1448号のものについては9月30日付けで鑑定嘱託があり,鑑定書の作成日付は平成25年10月15日になっていますが,この日に作成したということで間違いありませんか。
はい。そうです。
鑑定を行ったのは,鑑定嘱託のあった9月30日でよろしいですか。
はい。
9月30日に鑑定に着手をして,実際に鑑定書をつくった10月15日まで2週間程度の日にちがありますけれども,鑑定書はどのようにして作成をしましたか。
鑑定書は,ほかの鑑定もありましたので,すぐには作成できず,メモとしてとっているものを参考にして鑑定書を作成しました。
この鑑定書には,証人がメモをしていた内容をもとにして記憶のとおり正確に記載をしましたか。
はい。
この鑑定書の記載内容について,後から読んで確認したことはありましたか。
あります。
証人の記憶と違う,不正確な記載というものはありましたか。
ありません。
続いて,後の鑑定嘱託書の番号でいう1460号のものについて聞きます。こちらは,10月10日付けで鑑定嘱託がありましたけれども,この日に鑑定に着手をしたということでよろしいですか。
はい。
鑑定書の作成は,平成25年10月31日付けになっていますが,こちらの鑑定書はどのようにして作成しましたか。記憶とメモに基づいて,鑑定後その日付で作成しました。
記憶とメモに基づいて,実際の結果と同様の正確なものを記載されていますか。
はい。
この鑑定書についても後から読んで確認をしたということはありましたか。
あります。
内容について証人の記憶やメモと記載の違う不正確なものというものはありましたか。
ありません。
弁護人
大麻の茎とそれ以外の部分の区別とはどのようにしているんでしょうか。説明いただけますか。
茎は今回なかったと,1460号で嘱託された資料の6番,7番に一部それらしき,根から上の部分に一部あったかもしれませんけども,根から出てきて真っすぐ伸びているのが茎です。
葉と茎の境目というのは,どうやって区別されていますか。
植物であれば明確にわかるんですけれども,切り離したものにつきましては明確にはわからないと思います。
先ほど検察官から示された甲第20号証,刑発1460号による鑑定書のほうですね。その資料8は,鉢についたままの状態だったと思いますが,そうすると根から茎,茎から分かれる小枝から先は,基本的に葉になるんですか。
専門的なことはちょっと。葉も細かく分かれているんで,枝から分かれた手のひら状のものは葉と考えています。
裁判官
念のための確認をいたしますと,先ほどの甲第19号証の鑑定資料の中にある2番の植物の茎というのがあるんですが,これに関連して先ほど証人は大麻の枝様のものがあり,少し葉が残っていて云々と,結果的に大麻の成分を確認されたという趣旨のことを話しておられましたが,例えば葉以外の茎から大麻の成分が出るかどうかというところの確認はしていないんですね。
分けては行っていません。
それで,いわゆる茎というのは,大麻取締法で違法とされている大麻の中には含まれているんですか。
法律では成熟した茎と記載しであると思います。今回のものは,それには当たらないと思います。
そうすると,成熟している茎には今回の茎は当たらないから,今回の茎から大麻の成分がもし出てくれば,当然その大麻取締法で違法とされている大麻に含まれると,こういう理解でよろしかったですか。
はい。
(湯本弥助氏に対する証人尋問了)
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