論戦 マリファナ賛否
毎日新聞 1979年(昭和54年)6月8日 22面
「マリファナはコーヒーより安全」と唱えるアメリカの薬理学者、アンドリュー・ワイル博士が、大麻取締法違反事件の裁判の証人として出廷するため来日したのを機会に、薬理学者、法学者らが大麻解禁の賛否をたたかわせる「大麻の有害性をめぐる学術討論会」が7日夕、東京千代田区の日仏会館で開かれた。
安全論のパネラーはワイル博士のほか小林司=上智大教授(精神薬理学)、有害論は植木昭和=九大教授(薬理学)。また渥美東洋=中央大法学部教授(刑法)がわが国の取り締まり法規について、関 元=毎日新聞編集委員がアメリカのマリファナ対策の実情について報告した。
この討論会は、マリファナの“市民権獲得”を主張する側が主催したものだが、日本で、マリファナについて賛否双方の専門学者らによる公開討論が行われたのは初めてという。
ワイル博士は「酒やタバコと比べマリファナが有害とはいえない。アメリカの政府機関も膨大な金を投じてマリファナのアラ探しをしたが、その報告書には“人を刑務所に送れるほど悪い”とは書かれていない」と述べた。小林教授も、アメリカの文献をもとに無害説を展開。一方、植木教授は「ネズミを使った実験によると、攻撃的になるものや、うつ病のような状態になるものがある。またカタレプシー(一定の動作をしたまま動かなくなること)を起こしやすい。害は徹底的に研究すべきだ」と反論した。
【補足】
アンドリュー・ワイル氏について:
ワイル氏は、薬用植物、心身相関、統合医学における第一人者。
現在はアリゾナ大学健康科学センターの教授であり、統合医学・代替医療(CAM)の権威として高名。今なお世界中で活躍している。ベストセラーとなったものも含め多数の著書をもつ。
文中に紹介されている著書は、『ナチュラル・マインド ドラッグと意識に対する新しい見方』アンドルー・ワイル著 名谷一郎訳 草思社 1977年発行。
(特に著書など検索される際には、「アンドリュー」でなく「アンドルー」としないと見つからない可能性があります。)
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