学校現場でのマリファナの害を誇大に強調した教育は、その実際の効果を既に体験している生徒の大半からは失笑を買うだけで、教師や政府の伝える情報をプロパガンダとしてしか受け取ることはない。
そのため教育機関や政府は、若者にドラッグに対する信頼すべき情報のリソースとはみなされず、そまた9年生のアルコールやその他の麻薬の使用動機は、その大半が「どんなものか知りたかったから」(52.3%)「楽しむため」(50.1%)「うさばらし」(46.7%)「友達がやっていたから」(50.1%)などの通常の娯楽とほぼ変わらない動機が占めており、予防プログラムが前提とする性格的問題のカテゴリーに入ると思われる、「やることがないから、倦怠、退屈」など比較的問題があると考えられる使用動機は25.6%にとどまっている[7]。
そもそもアルコールを含め、ハードドラッグの使用やリスクの高いドラッグの使用パターンを実践している者は、社会環境や家庭環境に起因した社会的、精神的問題を抱えている者であり、彼らの問題解決にはドラッグの危険性の認知教育やLSTではほとんど効果はなく、より総合的な社会福祉や心理カウンセリングなどの対応が行わなければならない。
またこの調査から明らかとなった使用状況では、いわゆる友人からの圧力という要因はほとんどみられず、生徒が彼ら自身の判断で自発的(spontaneous)にドラッグの使用を行うモデルが優勢であった[8]。
またイギリスで行われた調査でも、この友達からの圧力という使用動機はほとんど認められず、「自己責任のもとで、自分自身で麻薬の使用の決断を行っている」若者が大半を占めていると結論されており、LSTプログラムが前提とするモデルが実際の若者の使用状況とは必ずしも一致していないことが明らかとなっている[9]。
むしろここで認められるのは、一種の対人関係における個人主義(do-your-own-thing ethic)であり、アルコールを含め、友人からすすめられたドラッグの使用を拒否しても、それが友人関係に影響を与えることは実際にはほとんど認められていない[10]。
むしろ先進国で顕著な個人主義の考え方の下では、仲間からのドラッグの使用の強要などといった、本人が設定したリミットを超えるリスクテイクは彼らの信条によって拒否されることが一般的である。
ではなぜ他に問題行動を起こさない中流階級の若者達の間で、麻薬の使用が通常の娯楽やレジャーとして広がりをみせてきているのであろうか。
ここには多様な社会的要因が影響していることは間違いないが、非合法麻薬の使用のノーマライゼーション化の理由の一つとして社会学者のパーカーらが注目しているのは、彼らを取り巻く近年の社会、経済状況、特に労働状況の変化である。
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[7] Ibid., p.87.
[8] Ibid., p.85.
[9] Parker, H., Aldridge, J., Measham, F. (1998) Illegal Leisure: The Normalization of Adolescent Recreational Drug Use, New York and London; Routledge, P.161.
[10] Skager, Rodney "On Reinventing Drug Education for Adolescents", in The Reconsider Quarterly Winter 2001-2002 Vol. 1, No.4, p,16.
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