しかしメタドンプログラムにもいくつかの批判と問題点がある。まずメタドンはその禁断症状がヘロインよりも激しいという欠点を持つ。ゆえにメタドンプログラムは長期間に渡って行われ、徐々に使用量を減らす漸減方式が一般的である。
アメリカ精神医学学会(APA)によれば、メタドンメインテナンスの治療には、多くの中毒者が最低でも2年、多くは5年から10年を要しており、中には糖尿病患者のインシュリンと同様に生涯メタドンを継続使用する場合も少なくない[26]。
このことから、メタドンのメインテナンス治療も身体的依存性があるという点で、何らヘロイン中毒と変わらないのではないかという批判が生まれる。確かにメタドンを使用する中毒者は完全なアブスティナンスの状態にはなく、メタドンに依存した生活を送っている。ただしメタドンはヘロインほどの多幸感をもたらさないため、使用者にヘロインのような現実解離効果を引き起こすことはない。
また一般に鬱や不眠症などの精神的症状に対して処方薬が継続的に使用されている現状からすれば、同じく禁断症状を抑えるためのメタドンの使用が道徳的非難にさらされることには一定の社会的バイアスが働いていると思われる。
むしろメタドン治療も様々な精神病への処置と同様、投薬で症状を押さえることはできても問題の本質的解決とはならないという認識こそが重要である。
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[26] American Psychiatric Association(1993)Methadone Maintenance Treatment Position Statement, APA Document Reference No.930005, p.3.
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