大麻には使用罪はないのに「使用容疑でも調べる」と書かれた産経記事の件の続報です。
事件を担当する刑事も「そのような報道発表はしていない」と言っているのに、「大麻には使用罪がある」「法律にそう書いてある」として、産経は訂正要求を拒み、私はその法解釈の誤りを指摘し、再度の確認と訂正を求めました。それに対する回答が産経新聞大阪本社読者サービスからありました。以下、ご担当の弁。
「昨日の結果をご連絡いたします。これはですね、実は産経独自の取材ではないということが分かったんですよ。通信社の記事だということが分かりましたので、お宅様のおっしゃることの判断ということはですね、産経の記者が独自に取材したものではありませんので、産経としての判断はできかねるわけなんですよ。」
「・・・これは産経の記事ではないんですか?」
「産経の記者が書いたものではないということなんですね。通信社が送ってきたものをそのまま掲載しているということになるわけなんですよ。」
「それは産経の判断で掲載してるんじゃないんですか?」
「掲載ということはもちろん、掲載の判断でもちろん責任はありますけれども・・」
「そうですよね?産経の記事として出てるんですもんねえ」
「で、その載った記事についてのですね、判断というのは出稿元の判断ということになりますので、産経の判断ではなくて出稿元の判断ということになりますから、こちらとしての判断はできかねますので、直接通信社のほうに言って頂くということになっちゃうんですけれども。」
「通信社?」
「共同通信が送ってきたものになりますから、、」
「共同通信が使用容疑でも調べるという記事を出してるんですか?」
「あのー、共同通信が送ってきているものを載せているわけですので、お宅様のご言い分
についての判断というのは、出稿元の共同通信しかできないということになりますので、直接共同通信のほうにお尋ねになって頂きたいんですけれども。」
「これは産経の記事で出てるものですよね?編集権は産経にあるわけですよね?産経の記事として出してるんですから、公開している責任は産経にあるわけですよね?」
「掲載責任はもちろんありますけれども、元の記事は通信社が送っておりますので。」
「通信社が配信した記事をどう掲載するかは編集権のある産経の責任じゃありませんか?」
「編集と言いますか、掲載はそのまま掲載しておりますのでね。こちらの新聞社としてはどうすることもできませんので、お宅様の言い分、その他のあれは直接通信社のほうにやって頂くということにこちらとしてはしましたので。」
「これは産経の記事で出てるんですよ?編集権、掲載している責任は産経にあるんじゃないんですか?」
「もちろん掲載ということでは産経に載っておりますけれども、産経独自の取材で書いたものではありませんので。」
「それはそちらの内部の都合であって、産経の記事として出てるんですから産経に編集権と掲載の責任はあるわけでしょう?」
「あの、そういうふうに直接通信社のほうにお尋ねになって頂くということに決めましたので。」
「決めましたのでって(苦笑)、これは修正しないということですか?」
「通信社のほうに直接お話して頂いて・・」
「通信社の話じゃなくて、産経のウェブに出てるんですから産経の責任でしょ?」
「それはもちろん掲載の責任はありますけど・・」
「そうでしょ?その掲載の責任ということについてはどうお考えなんですか?」
「いやそこまでいきません、もっと前の出稿で関わってくるわけですから、出稿元の判断で。」
「出稿元は出稿元として、これは産経ニュースとして出てるんですよ?」
「いえ、ですから、それは出稿元の判断で、こちらは対応させて頂くと、こういうことになりましたので。」
「・・・・ご自分で仰っていておかしいとお感じになりませんか?」
「いえ、そういうふうに決めさせて頂きましたので。そういうふうにやって頂きたいんですけどね。」
「やって頂きたいって・・・産経の記事として出ているのだから、それは産経がやることでしょう?出稿元がどこだかなんてこれには書いてありませんよ。共同通信の記事として出てるんでしたら、もちろん共同に修正を要請しますけど、これ、産経ニュースとして、産経のウェブに出てるんですよ?」
「ウェブの場合は産経ウェブということでねえ、もちろん出ておりますけれども」
「そうですよ。産経ニュースとして出てるんですよ?誤りなんですよ?明らかに。」
「ですからその誤りなんかの判断というのは、元でないと、こちらはできませんので、直接やって頂くということになろうかと思います。」
「通信社から情報は買ってるんでしょうけど、それをどう扱うかは産経の責任でしょ?だから産経ニュースとして出てるんでしょう?」
「ですから、元の判断というのはこちらでは、新聞社としてはできませんので、やりませんので。」
「じゃ、嘘でも何でも出しちゃうんですか?で、私たちが取材したんじゃないから知りませんということですか?」
「知りませんということではなしに、元のその判断というのは、こちらで独自に取材したものではありませんので、判断はできかねます、ということでございます。」
「だって、明らかに誤ってるんだから、訂正して下さいよ。」
「明らかに誤っているという判断もこちらではできませんのでね。」
「それをするのが産経新聞という新聞社の仕事じゃないですか?」
「それはお宅様がいろいろ運動をやっておられて、そういうお考えを持っておられて・・・」
「お考えの話じゃないんですよ。事実かどうかの話なんですよ、これは。産経新聞の記事として出ている記事に誤りがあるから、事実誤認であるから、産経新聞に指摘してるんです。」
「事実誤認であるかも含めて、それはお宅様のご意見ですので、その判断については出稿元でないとできかねます、ということなんです。」
「共同通信に責任があるということですか?」
「ええ、もちろん、共同通信が送ってきてるものですから。」
「じゃ、これはそちらには責任はないと?産経新聞としては、共同通信から買った情報をただ垂れ流しているだけだから、うちらには責任はないと?」
「共同通信さんの判断で、明らかに誤りであったという判断をされれば、その場合はですね、それを受けまして訂正云々というのは、そのあとの判断ということになりますので、こちらのほうで独自の判断というのはできかねますので。」
「ああそうですか。じゃもう、買って載せてるだけですよってことなわけですね?」
「はい。よろしくお願いします。」
産経新聞は、自社のウェブで、産経ニュースとして掲載している記事が事実かどうか、自分たちでは判断できないそうだ。だめだこりゃ。昨日は、大麻取締法には使用罪がある、法律にそう書いてある、だから訂正しないと言っていたのだが。だめだこりゃ。どげんかせんといかん。
共同通信に電話した。東京のメディア局デスクに事情を説明したところ、ウェブは東京で出しているが、この原稿は山口支局から大阪社会部を通して出ているとのことで、大阪社会部の電話番号を聞き、大阪社会部のご担当に説明したところ、調べて連絡を頂くことになった。折り返しの電話で、この記事は福岡支社から出ているので、そちらの担当からご連絡を頂けるように手配して下さるとのこと。で、福岡支社の社会部デスクから電話を頂いた。まずちょっと驚いた。
「東京や大阪と回ってしまったようで、お手数をおかけして申し訳ありませんでした。」
面倒な話で嫌がるかな、という憶測をしていたので、その丁寧さに安堵した。話の内容も伝わっているようだった。
産経の記事を見て電話したこと、所轄の刑事によると「使用容疑で調べる」という発表はしていないことなどを説明した。共同通信福岡支社の社会部デスクは、率直に表現の不適切さを認めて言った。
「白坂さんの仰る通りでして、若干、記者の無知もありましてね、私たち新聞記者は、警察の副署長が広報担当者でして、副署長と取材上のやりとりをQ&Aのようなことをするんですけれども、その際に、逮捕容疑は所持だということで、当然吸っていたと見て調べるんですよね、まあそうだよね、というような副署長とのやりとりがあったらしいんですよ。そのなかで使用容疑でも調べる、吸っていたかどうか、という文脈で書いているんですけれども、仰るように誤解を招く表現になってしまったということなんですね。」
なるほど。経緯は分かった。そりゃまあ新聞記者は法律家ではないのだから、全ての法律に精通しているのではないだろう。大麻取締法違反事件を受任しておきながら、大麻に使用罪がないことを知らない弁護士だっている。
共同通信福岡社会部のデスクによると、こういった配信記事は、加盟各社はそのまま掲載することになっているので、記事自体の責任は共同通信にあるとのこと。責任逃れをしようという気配が全くない、すがすがしいほど明快な説明だった。私は記事の訂正を求めた。共同通信社会部デスクは、その場で修正内容を示した。
「今、原稿を見ている限りではですね、この『使用容疑でも調べる』というのを、『使用容疑でも』というのを削除しようと思います、デスクとしては。で、『長府署は自分で使用するために所持していたとみて調べる』と。」
その場でスパっと修正文を言ってくれるとは思っていなかったので、またちょっと驚いた。
「ほう、すっきりですね~」
「ええ、まあちょっと筆が滑ってるくだりでもありますんでね。誤解を招く部分でもありますので。」
それからの共同通信の対応は早かった。まず、データベース上の記事を修正して頂けることになった。で、ウェブを担当する東京にも連絡し、産経にも一報して頂くことになった。産経に一報して頂いたことを確認したいと言うと、また連絡を頂けることにもなった。数時間で改めて電話を頂いた。
「先ほどの件なんですけれども、申し上げましたように『使用容疑でも』というくだりを削除しまして、共同通信のデータベース、社内向けのものと、外部向けがあるんですけれども、両方とも修正する措置を取りました。」
「あ、そうですか、ありがとうございます。」
「いえいえそんな、すいません。ありがとうございますっていう話ではありません。それで、共同通信の加盟社向けにウェブの担当部門が東京にありましてね、そちらからはこの記事、産経なんか見ますとまだ見えるような状態でしたので、この記事そのものを、全体を削除して下さいというお願いを出しました。それで、そのお願いが通じたのか、産経のウェブはもう削除されてまして、当該のニュースは見れなくなりました。共同通信のその記事の記録はその部分が直っている状態になりました。」
「あ、そうですか、お手数おかけしました。ありがとうございました。」
「いえいえ、お教え頂きまして、こちらこそありがとうございました。」
産経の対応には、まるで厚労省麻薬対策課や天下り法人麻薬防止センターと同じ質の責任逃れを感じたが、共同通信の素早くて適切な対応には、情報が生ものとして扱われている手際の鮮やかさを感じた。
「使用容疑でも調べる」産経ニュースの記事は削除されました。
当該記事URL
http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/071222/crm0712221749011-n1.htm
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