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フロッガー医師の検証 > 近年の医学的大麻研究
医薬品としての大麻の有用性
近年の医学的大麻研究 : 投稿者 : フロッガー 投稿日時: 2008-02-05

[はじめに]
大麻取締法では、大麻の医薬品としての施行を禁止している。
大麻取締法第四条で、「大麻から製造された医薬品を施用し、又は施用のため交付すること。」「大麻から製造された医薬品の施用を受けること。」を禁止している(1)。

1987年に厚生省依存性薬物情報研究班がまとめた報告で、「マリファナの薬効はきわめて不安定で一定の効果が期待できない」と述べている(2)。
このことから、大麻取締法制定時に、治療薬として有用でない、と判断しこのような項目を加えたものと思われる。

しかし、近年大麻の医薬品としての有用性が再評価され(多発性硬化症・HIV・癌の症状緩和など)、カナダ・オランダ・ドイツ・オーストラリア・イスラエル・米国のいくつかの州などで医療大麻の使用が可能となっている(3)。

我が国が大麻の医薬品としての使用を禁止していることは、世界の常識からかけ離れた、患者の治療の権利を著しく侵害する行為である。

[本文]
1.大麻の薬理作用
大麻にはカンナビノイドと呼ばれる薬理作用を持つ物質が含まれている。最も効果のある物質はデルタ-9-テトラヒドロカンナビノール(THC)で、その他にカンナビノール(CBN)、カンナビジオール(CBD)などがある。CBDには向精神作用が無い。

カンナビノイドは細胞表面に存在するカンナビノイド受容体を介して作用し、カンナビノイド受容体にはCB1とCB2という2種類が同定されている。人の体内でカンナビノイド様の作用を持つ内因性カンナビノイドが存在し、2-arachidonyl-glycerolとanandamideが同定されている。
CB1は主に神経細胞に存在し、CB2は免疫細胞などに存在することが知られている。医薬品としての大麻の効果は主にCB1を介したものと考えられる(22-23)。

大麻の作用する受容体や内因性カンナビノイドについての研究が進み、大麻製剤の創薬の可能性が広がってきており、我が国においても今後研究が必要な分野であると考える。

2.多発性硬化症
大麻は多発性硬化症の症状緩和に効果がある。特に痙縮(神経の障害により起こる筋肉のこわばり)、痛み・排尿障害・睡眠障害に効果がある。

1997年の報告では、英国と米国の多発性硬化症患者に対してアンケートを行い、およそ30%の患者が多発性硬化症の症状緩和があると回答した(4)。

2003年、英国で630人の多発性硬化症患者に対して多施設共同のランダム化試験が行われ、大麻抽出物と大麻の主成分である(THC)の経口投与が多発性硬化症の疼痛に効果があると報告された。大麻抽出物で61%、THCで60%の患者が疼痛の軽減を申告した(5)。

2005年、リバプール大学のグループが、大麻抽出物の口腔内スプレーについてのランダム化試験を行い、多発性硬化症の痛みと睡眠障害に効果があると報告している(6)。

頻尿などの排尿障害に効果があるという報告もある(7)。
その他にも数多くの論文が報告されている(8-12)。

多発性硬化症の痙縮や疼痛は、患者のQOL(Quality of life:生命の質)を著しく損ない、また有効な薬剤が少なく、大麻製剤は患者にとって非常に有用である。また英国やカナダの患者団体も大麻の使用を推奨している。

3.HIV/AIDS
大麻はHIV(人免疫不全ウイルス)患者の症状緩和に効果がある。特に、HIV感染および抗ウイルス療法に伴う食欲低下や吐き気、またHIVによる末梢神経障害に対して効果がある。

北米ではHIV患者の3分の1以上が症状緩和の為に大麻を使用しているというデータがある(13-16)。
患者の多くは、食欲低下、不安、痛み、抑うつ、吐気に効果があると回答している。

2007年、コロンビア大学の研究グループは、大麻およびTHC製剤のプラセボ対象試験を行い、大麻とTHC製剤の使用でHIV患者の食欲増強と体重増加を認め、大麻で睡眠障害の改善を認めた(17)。

2007年、San Francisco General Hospitalとカリフォルニア大学のPain Clinical Research Centerの研究グループは、HIVに関連する痛みを伴う末梢神経障害(HIV-associated sensory neuropathy: HIV-SN))に対する大麻喫煙の効果について報告し、大麻喫煙で日常の痛みが平均34%程度軽減し、痛みが30%以上軽減した患者は全体の52%であった(18)。

また、大麻により免疫細胞であるCD4、CD8 T細胞の数が減少したり、免疫機能が低下したりと言った、重篤な副作用はない(19-21)。

HIV感染は抗ウイルス薬の多剤併用療法で長期の生存が可能となってきた。しかし、抗ウイルス薬の中断により、速やかに薬剤耐性ウイルスが出現してくることが知られており、厳格な内服の継続が必要である。副作用のため内服を中断してしまうことは、患者の生命にかかわる。大麻製剤は抗ウイルス薬の副作用を軽減することが明らかであり、HIV患者にとって非常に有用かつ必要な薬剤である。

4.癌
大麻は、抗癌剤の副作用による吐き気、癌患者の食欲低下、疼痛に効果がある(22-23)。
1970年代から80年代にかけて、抗がん剤の制吐剤として、大麻製剤の試験が行われ、効果が確認された(24-26)。
近年、大麻製剤よりも効果がある選択的5-HT3拮抗薬が開発されたため、あまり用いられることは無いが、選択的5-HT3拮抗薬の効果が無い場合に付加的に用いることは有用であると思われる。

大麻に食欲増進作用があることは広く知られているが、癌患者に対しても少数例での検討されており、食欲低下に効果あったとする報告がある(27-28)。
癌患者では、癌の末期の消耗や抗癌剤の副作用の為に食欲が低下することが良くある。食事が出来ないことは患者のQOLを著しく損なうことから、 大麻製剤は有用な薬剤である可能性が高い。

幾つかの臨床研究で、通常の治療で効果が無い癌の痛みに対してカンナビノイドが効果あったとする報告がある(29-31)。
慢性疼痛に対する研究で、THCやCannabidiolが侵害受容性疼痛よりも神経障害性疼痛に対して効果があった(32)ことから、癌の疼痛においても神経障害性疼痛に対して特に効果がある可能性が高い。
神経障害性疼痛は、モルヒネなどのアヘン製剤を含む各種鎮痛剤で効果が出にくい。このような疼痛に対し大麻製剤が有用な薬剤である可能性があり、実際に現在米国で臨床試験を行っている(33)。
大麻が実験室レベルであるが、いくつかのがん細胞株に対して障害性を持つと言う報告がある(34-35)。
グリオーマに対してTHCを局所投与し効果があったという症例報告がある(36)。
大麻の抗癌作用については、まだ研究段階であるが、今後注目される分野である。

5.サティベックス
「サティベックス(英語表記:Sativex)」は大麻からの抽出物で、THCとCBDを主成分とし、口腔内スプレーで薬剤を投与する。GWファーマシューティカルズplc.が、米国において開発し、大塚製薬株式会社が米国における開発・販売に関するライセンス契約を締結した。多発性硬化症においては、鎮痛効果が認められており(37)、カナダで承認・販売されている。今後、米国で「オピオイド系薬剤による治療で効果の見られない末期がんの患者の疼痛治療」第Ⅱ/Ⅲ相試験が行われる予定である。日本の製薬企業も大麻製剤に注目していることから、海外の治験だけではなく日本でも行えるようにするべきである。

[結論]
以上、大麻が効果ある疾患について主なものを述べたが、他の疾患についても、神経疾患などを中心に、数多く報告されている。
副作用については重篤なものはなく、また、大麻よりも依存性の強いアヘン製剤が医薬品として問題なく扱えていることなどから、医療用大麻製剤は大きな社会問題無く管理できるものと考える。
さらに、大麻の薬効はユニークで他の薬物で代替出来ない作用を持つことから、大麻の医薬利用は患者にとって非常に有益である。
大麻を医薬品として研究・利用できるようにするべきであり、大麻取締法第四条の改正を求める。

[参考文献]
(1) 大麻取締法
(2) 依存性薬物情報研究班,依存性薬物情報シリーズNo.1 大麻(CANNABIS),昭和62年3月.
(3)
Wikipedia, Legal and medical status of cannabis.
(4) Consroe et al. The perceived effects of smoked cannabis on patients with multiple sclerosis. European Journal of Neurology 38: 44-48, 1997.
(5) Zajicek J et al. Cannabinoids for treatment of spaciticity and other symptoms related to multiple (CAMS study): multicentre randamised placebo-controlled trial. Lancet, 362, 9395, 2003.
(6) Rog et al Randomized, controlled trial of cannabis-based medicine in central pain in multiple sclerosis. Neurology 65: 812-819, 2005.
(7) Brady et al. 2004. An open-label pilot study of cannabis-based extracts for bladder dysfunction in advanced multiple sclerosis. Multiple Sclerosis 10: 425-433, 2004.
(8) Wade et al. A preliminary controlled study to determine whether whole-plant cannabis extracts can improve intractable neurogenic symptoms. Clinical Rehabilitation 17: 21-29, 2003.
(9) Consroe et al. The perceived effects of smoked cannabis on patients with multiple sclerosis. European Journal of Neurology 38: 44-48, 1997.
(10) Meinck et al. Effects of cannabinoids on spasticity and ataxia in multiple sclerosis. Journal of Neurology 236: 120-122, 1989.
(11) Ungerleider et al. Delta-9-THC in the treatment of spasticity associated with multiple sclerosis. Advances in Alcohol and Substance Abuse 7: 39-50, 1987.
(12) Denis Petro. Marijuana as a therapeutic agent for muscle spasm or spasticity. Psychosomatics 21: 81-85, 1980.
(13) Woolridge et al. Cannabis use in HIV for pain and other medical symptoms. Journal of Pain Symptom Management 29: 358-367, 2005.
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(18) Abrams et al. Cannabis in painful HIV-associated sensory neuropathy: a randomized placebo-controlled trial. Neurology 68: 515-521, 2007.
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(20) Abrams et al. Short-term effects of cannabinoids in patients with HIV-1 infection: a randomized, placebo-controlled clinical trial. Annals of Internal Medicine 139: 258-266, 2003.
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(34) Guzman m. 2003. Cannabinoids: potential anticancer agents. Nat Rev Cancer. 3: 745-755.
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