我が国では、薬物の危険性について、厚生労働省の外郭団体である「(財)麻薬・覚せい剤乱用防止センター(以下「ダメセン」と表記)」が、「ダメ。ゼッタイ。」として啓発事業を行っている。
大麻については、「社会問題の元凶ともなる大麻について、正確な知識を身に付けてゆきましょう」として、「大麻の身体的影響」や「大麻の精神的影響」など、さまざまな害悪が並べ立てられている。最近、元麻薬取締官たちがテレビや新聞で、大麻は凶暴になるなどと、既に医学的に決着しているような脅し文句で国民の反大麻感情を煽っているが、それらの言説はすべてこの「ダメ。ゼッタイ。」に書かれていることの反芻だ。
桂川氏の控訴審では、弁護側が大麻を有害と断じる根拠を求めたのに対し、検察はこの『「ダメ。ゼッタイ。」ホームページ』の印刷を提出している。弁護側が、重ねてこの情報の出典を求めたところ、検察はダメセンに照会したが回答を得られなかったと答えている。天下り財団法人の杜撰な公的大麻情報のせいで、検察は恥ずかしい思いをしちゃったのである。
●控訴審を闘って/桂川さん裁判
「ダメ。ゼッタイ。」の大麻情報は、そもそも何に基づいて記述されているのだろうか。
2004年6月。ダメセンの糸井専務理事(当時/元厚労省官僚)は、同財団法人で発行している「薬物乱用防止教育指導者読本」の抜粋だと説明した。
●薬物乱用防止教育指導者読本
取り寄せてみると、冊子の3ページに、「薬物乱用防止マニュアル使用説明」というページがあり、その最下部に、次のように書かれている。
訳注:このマニュアルは前掲「薬物乱用防止教育用キット」と一対になって米国内で販売されているもののようです。
この冊子が翻訳であることが分かるが、翻訳している人すらその出処を知らず、『このマニュアルは前掲「薬物乱用防止教育用キット」と一対になって米国内で販売されているもののようです』と、自信なさげなのである。
このページの本文に次のような説明がある。
本書に収録された主な分野及び掲載された薬物のいずれにつきましても、完璧な分析を行ったものではありません。記述はあくまで人々の注意を喚起し、問題の特定に寄与することを目的としています。従って、特定物質などに関する詳細情報をご希望の向きは直接お問い合わせ下さい。
この冊子の薬物の説明は、いずれにつきましても、完璧な分析を行ったものではない。記述はあくまで政治的な目的に寄与することを意図している。
いったいこれは何なのだ。
これは、ダメセンが、アメリカのテキサス州にあるDrug Prevention Resources, Inc.から輸入販売していた薬物標本レプリカの説明書だったのだ。
※日本の公的大麻情報はこの薬物標本キットの説明書なのであった
●スクープ!!「ダメ。ゼッタイ。」サイトの大麻に関する記述
15年以上前に翻訳された、アメリカ製薬物標本レプリカのマニュアルが、我が国の公的薬物情報なのである。厚労省から補助金を得て運営されている天下り財団法人によって、国民に周知教育されている公的大麻情報は、15年以上前のアメリカ製薬物標本レプリカのマニュアルなのである。医学的文献に裏打ちされた情報ではない。
すでにそのマニュアルの英語原本は残っておらず、コピーがあるだけだ。その原本コピーを見ても、データの出典は全く書かれていない。
以下、情報公開請求によって入手した我が国の公的大麻情報の元原稿である。
「ダメ。ゼッタイ。」大麻情報は、これをそのまま訳したものだ。
こーゆーことでいいのでしょーか。
「財団法人麻薬・覚せい剤乱用防止センター」の8つ事業のうち、1番目として、次のように書かれている。
(1)乱用薬物の精神・身体に与える影響等に関する正しい知識の普及啓発
●財団法人麻薬・覚せい剤乱用防止センターとは
ところが、多額の税金も投入して運営し、天下りの渡りまで面倒を見ている公益法人なのに、各薬物情報の医学的情報をまったくフォローしていないのである。「正しい知識」どころではない。
2006年9月、原本も残っていない、出典も確認できないような情報は改めるよう、糸井専務理事(当時)に要望したところ、糸井氏は次のように答えている。
「見直しをしなきゃいけないな、という観点は持っておりますので。確かに、ご指摘の通り、情報がだいぶ古くなってしまった点も見受けられますので、1・2年前から数値的なことに関してはいくつか修正しているところです。ただ、じゃあ全体的に一斉に見直すかということになると、大麻以外のこともございますので、なかなか一度にはできませんけれども、現在の知見に合わなくなってきている箇所については随時見直していくように検討しております。」
●「ダメ。ゼッタイ。」ホームページについて糸井専務理事から回答
そして、具体的な記述について指摘があれば、管轄の麻薬対策課とも相談し、検討すると言った。しかし、個別の記述についてというよりも、その全体が出典も不明なのだから、全体の記述を見直すよう、厚労省に要望した。
●厚労省監視指導麻薬対策課への申し入れ(1)
海外の薬物情報などを収集する担当者だった麻薬対策課の秋篠氏は、修正の必要があるかどうか課内で検討のうえ、回答すると言った。検証する時間として2・3週間ほど欲しいとのことだった。そして、秋篠氏は、全体的に見直すと言いながら、結局そのまま放置した。
「薬物乱用防止教育指導者読本」には、大麻の説明に次のような記述がある。
大麻には独特の甘いような臭いが、相当長時間衣類などに付着して臭います。(訳注:「甘い香り」とありますが、訳者の経験では、むしろ蓬を燃やした時のような一種刺激的な強い臭いで、「クサイ」と感じました)。
ところが、これが『「ダメ。ゼッタイ。」ホームページ』には、次のように書かれていた。
大麻には独特の甘いような臭いが、相当長時間衣類などに付着して臭います。(甘い香りと言われますが、むしろ蓬を燃やした時のような一種刺激的な強い臭いで、「クサイ」と感じる)
原本には、大麻は「甘い香り」と書いてあるのだが、訳者が経験した大麻は蓬を燃したようなクサイものだったそうだ。「読本」には、これは訳者の経験だと注記されているのだが、ホームページでは訳者の感想であることが分からないように改竄されている。
蓬は鍼灸でも使う艾(もぐさ)の原料だ。それを厚労省ともあろうものが、蓬を燃やしたようにクサイとは何だ、クサイとは。訳者の経験談でしかないではいか。この点を厚労省に抗議したところ、確かに不適切であると担当者は認め、次のように修正した。
大麻には独特の甘いような臭いが、相当長時間衣類などに付着して臭います。(甘い香りと言われますが、一種刺激的な強い臭いで、「クサイ」と感じる人もいます)
甘い香りと言われますが、クサイと感じる人もいます。なんのこっちゃ。
今でも、我が国では大麻を「クサイ」と感じる人もいることになっている。
●大麻常習乱用者の特徴
厚労省の担当者は、英語の原文が公的大麻情報の根拠論文だと言った。しかし、論文であるなら、勝手に書き換えては情報の改竄ではないか。そう抗議すると、当時の藤原情報係長は、「出典を示していないのだから書き換えても改竄ではない」と、言葉を失うようなロジックを構築した。ふつー、論文の出典を示さずに書き換えることを改竄と呼ぶのではなかったか。
改めて大麻に関するデータの根拠を示すよう求めたところ、麻薬対策課情報係長は、「まあ、根拠はないんでしょうね」と、あっけらかんと回答したのである。
今現在も、海外の多数の権威ある研究機関が否定している医学的に根拠のない情報が、マスコミを巻き込んで国民に周知され続け、根も葉もない大麻のイメージが国民に植え付けられ続けている。
2008年11月、元厚労省官僚で、長寿社会なんたらセンター専務理事から渡ってきた、ダメセンの現専務理事・冨澤正夫氏に、ご挨拶代わりに改めて公的大麻情報の根拠を示すよう求めたところ、な、なんと、「いやです」とのことだった。
●あまりにも無責任で横柄な天下り財団の冨澤専務理事(2)
マスコミのみなさん、これは年金や医療や福祉など、様々な問題に見られるのと同じ構造の、厚労省と天下り公益法人による、国民不在の行政そのものなのです。
海外では、驚くような大麻の医療効果が次々と明らかになっています。ところが、日本では、大麻の医学的・薬学的研究すら禁圧しているのです。あまりにも馬鹿げているとは思いませんか?
厚生労働省は、まとな大麻情報など持っていない。それは情報公開請求の回答を見ても明らかです。
●厚生労働省が持っている大麻情報の全て[情報公開請求への回答]
ハーバード大学医学部精神医学部名誉教授、レスター・グリンスプーン博士は、「大麻は21世紀のペニシリンと言われるようになろだろう」とまで評している。
大麻取締法を見直すのであれば、まず、大麻の医学的・社会学的な事実を検証すべきです。権威ある公的機関が行った大麻の医学的研究報告が海外には多数あり、大麻の医学的事実に基づいた政策を採用している国や地域も多数あるのです。
ジャーナリズムよ、目を覚ませ!起きろ!麻だ!
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