公判速記録<2005年2月8日 高松高裁>
午前11時.
裁判官
では審議を始めます。被告人のお名前、生年月日を確認します。名前からいってください。
M
MHです。昭和53年1月13日です。
裁判官
本籍を言ってください。
MH
徳島県■■■■■■■です
裁判官
住居を言ってください。
MH
徳島県■■■■■■■です。
裁判官
仕事は何をしておられますか?
MH
家業の■■■■■を手伝っております。
裁判官
で後ろの椅子に座ってよく聞いていてください。
それでは弁護士から控訴趣意書を提出して頂いております。この通りという事でよろしゅうございますね?
弁護士
はい。
裁判官
次に検察官のほうから答弁書を提出して頂いております。この通りという事でよろしいですね?
検察官
はい
裁判官
それから双方の方から訴訟あるいは被告人質問等の請求がありまして弁護人請求の書証については検察官同意という事でよろしいですね?
検察官
はい
裁判官
それから検察官請求の訴訟については弁護人いかがですか
弁護士
はい。主に書籍ですけれども、どうしても予弁ではございますが、内容も多いものですから内容を検討して次回に。
裁判官
今日はできないんですか?
弁護士
今日はできません。内容をまだ検討できていません。次回に弁論さして頂きます。内容の問題ではなくて論文であればですね、証拠能力の関係から言うと証拠事実という形にはなりませんね?
裁判官
多分ねー、そうだと思います。
弁護士
だから 内容を検討するお時間とお考え頂きたい。
裁判官
それはむしろ何といいますか、弁論とかご意見の方に反映させようとされるご趣旨じゃないかとおもうんですけどもね。訴訟同意というかあれよりは。じゃあ訴訟については同意という形でよろしいですか?
弁護士
今言いましたように意見を検討するお時間をいただきたいという事に変更します。
裁判官
じゃそれぞれ1から5号書、同意書面として採用いたしますので。まず弁護人の方から1号書から5号書まで内容などをどうぞ。
弁護人(一部速記欠落)
請求番号1番は、メルクマニュアル第17番でございまして大麻の使用は人体的な依存を引き起こさないこと等でございます。 請求番号2番は書籍になりますが、マリファナの科学でありまして起訴趣旨は大麻の成分が極めて安全な薬剤であると。第3は法学セミナーでございますが、マリファナの身体的効果については、結論として、通常の摂取量ではマリファナの毒性はほとんど無視してよいこと等でございます。
裁判官
はい、それじゃ提出していただけますか。当該文面コピーしていただいているという形になるんですかね。検察官、そういう形でよろしいですかね?
検察官
はい
裁判官
全体ではないんですね
弁護士
全体ではありません。
裁判官
それではそういうことで証文の趣旨だけ取調べするということで。
(被告人質問)
弁護人
大麻が有害かどうか、これは先ほども裁判官がおっしゃられた通り、きちんと科学的に立証すべき問題なのだけれども、あなたが大麻に対してどのような認識を持っていたか、または持つようになったか、まずこれを質問しますね。
まずあなたは、逮捕されて、警察の人や、検察官から大麻の有害性、なぜいけないのかということについてどのような説明をうけましたか?
MH
はい、今回僕は捕まったのは2回目なのですが、大麻については有害だとか、あまり害がないだとか色んな情報が流れているので、僕はまだ知らないことがあるかもしれないと思っていました。そこで今回、検察官から大麻に致死量があると聞きました。
弁護人
致死量があると、そういう説明をされたわけですね。
MH
はい。
弁護人
あなたは第一審で保釈になって、大麻が本当にそういう有害性があるのかどうか、色々文献などを見て検証しましたね。一般的に有害であるというのはどういう根拠から言われていましたか?
MH
厚生労働省が委託で運営している「ダメ、絶対」というホームページでは、大麻を使用すると幻覚や幻聴があるとか、無動悸症候群になるとか、神様が見えるとか、自分の体験と照らし合わせてみても、そんなことあるのか?というようなことが書かれてありました。
弁護人
それから最高裁判例などですね。
MH
はい。
弁護人
この最高裁判例には、特に有害性に関してこのような表現はしていませんけども、有害であることは公知の事実であるということが書かれていましたね。これに対してもあなたは色々検証してみたのですね。 その結果どうでしたか。
MH
僕も自分を正当化するために、無害性を主張する意見ばかりを都合よく考えているのではないかと思って反対の意見も色々調べてみたのですが、「ダメ絶対」などの情報もどこから来たものなのか公開されていないし、無害性を主張するものの方がきちんとした研究機関で調べてあるものがありました。
弁護人
今回裁判所に提出した文献もあなたが見た文献の中の一部ですが、この中でも大麻は害があるというものよりも、無害性を主張するものの方が科学的根拠があり説得力があるということですね。
MH
はい。
弁護人
では、あなたは今大麻を使用したり栽培することについてはどう思っていますか?
MH
法律で禁止されているかぎりは二度と手を出すことはありません。ただ大麻を使用することが、懲役刑に値するようなものかといえば、それはどうなのかと思います。大麻取締法が制定された経緯を調べても、害があるからということではなさそうですし…
弁護人
あなたが今まで調べてきた結果、大麻は法律で禁止されている、だからあなたはもう大麻は使用しない、けれども法律で規制されているということには多いに疑問が残るということですね。
MH
はい。覚せい剤などと同等にされているというのは、厳しすぎると思います。
弁護人
あなたは家業を手伝っていて、お父さんの手助けをするためにも社会復帰をしなければいけませんが、こういう大麻に関する運動は、刑とは別に、あなたは信念として持っているわけですね。
MH
はい。
弁護人
そういう意味での活動はしていきたいと。
MH
はい。もちろん生活の立て直しが先だと思いますが。
弁護人
終わります。
裁判官
検察官どうぞ
検察官
あなたは大麻を音楽との関係で吸っていたわけね。
MH
はい。
検察官
で回りの人も音楽が好きなの?
MH
はい。僕の場合逮捕されるのは2回目なのですが、一回目もまあそういった音楽仲間と一緒でした。
検察官
あなたの場合大麻を吸ってどれくらいききめがあるの?陶酔感などあるみたいだけど、時間とか。
MH
2、3時間ですね。
検察官
大麻を吸わないと音楽はできないの?
MH
そういうことではないです。
検察官
なくてもできるの?
MH
なくてもできます。
検察官
あなたはこれからも音楽を続けていくわけでしょ?
MH
先のことはわかりませんが続けていきたいと思っています。
検察官
大麻を吸わなくてもそういうことはできるの?
MH
はい。
検察官
あなたは大麻吸って車に乗ったりするの?
MH
しません。
検察官
今回大麻の有害性とか資料を弁護士さんが出しているけど、あなたもこれはインターネットなどで調べたんしょう?
MH
はい、色々調べました。
検察官
じゃあ、この5号書には、運動能力が減退するとか、精神病を発病するとか書いてあるけど、あなたはこういうのは読んでないの?
MH
例えば、「ダメ絶対」などもそうですし、調べたらこういったものにはすべて、逆の意見の、きちんとした科学的根拠があるものが存在しました。幻覚幻聴なども、まったくないものが見えることはないですし、大麻を吸って人に迷惑をかけるものでもないし、やはりなぜいけないのかと思います。
検察官
それはあなたの経験から言って? それとも本やインターネットを見て?
MH
例えばそういう、薬理作用みたいなものは、独自性のあるものじゃないですか。それぞれの精神状態があって人と比べようがないので、自分の主観的な体験と、あとインターネットなどを調べて他の体験した人はどう思っているか、体験したことない人は大麻のことをどう思っているかなども色々調べた結果です。
検察官
やっぱりインターネットとかそういうのでは、大麻を認めたらいいじゃないか、という情報が溢れているわけ?
MH
はい。例えば大麻で検索するとダメ絶対のホームページやニュースなども出てきますが、石油のかわりになるエネルギーになるとか、大麻には有用性があるといった情報などの方がどちらかというと多いです。
検察官
じゃあ大麻についてっていうのは色々議論が分かれているのはあなたも知っているわけでしょう?あなたは前に一度裁判も受けているわけだしもうそういうのをやってはいかん、という気持ちはなかったの?
MH
前回捕まったときも、具体的に何が悪いのか、刑事さんも知らなかったのです。大麻自身のことも知らなかったし。で裁判が終わって、自分で何が悪いのかなど、大麻のことを調べるようになったのですけど、まだまだ知らないことがたくさんありました。
検察官
じゃあまたやり始めた理由というのは、自分で調べたからなの?それとも誘われたから?
MH
僕の場合は音楽で、海外のアーティストでは大麻を賞賛する人もたくさんいますし、ジャマイカなどでは文化的にそういうのが根付いているのでそういうのを見たり…
検察官
じゃあ、あなたは今でも大麻をやることが悪いとは思っていないの?
MH
全部が全部悪くないとは思ってないです、法律で禁止されているのでもうやるつもりはないですし、悪いところもあると思います。しかし、身体的害薬など、タバコと比べても低いと色々な研究機関で証明されていますし。
検察官
あなたはあまり大麻を悪いと思ってないようだけど、それでは大麻をやめるつもりはないと。
MH
いえ、そうではなく、全部が全部悪くないということではなくて、それについてきちんと検証する必要があると思います。今まで大麻取締法というのが検討されずにきていると思うんですよ。ヨーロッパなどでの非犯罪化の動きも最近活発ですしきちんと検討すべきだと思います。
裁判官
今、あなたは法律で禁止されている限りは大麻を使わないと言ったけれども、どうして一番最初の裁判の前、あるいは裁判の後はそういう気持ちになっていなかったのでしょう。
MH
やはり最初の認識が薄かったと思います。 最初は音楽から興味をもったのですが、一回目の裁判の後、インターネットなどを見て、やはりそれほど悪くないのではないかと思いました。大麻で取り締まられること事体が理不尽であるというようなことも見たりして…
裁判官
君も大麻の使用や栽培を禁止するという法律はおかしいから、その法律には従わなくていいという気持ちになったんですか?
MH
いや、そこまでではないですが、理不尽だという意見があって、僕もそれに共感はしましたし、科学的根拠などもありましたし、大麻についてそんなに検討もされてないままきているのではないかと思うところもありました。
裁判官
はい、お疲れ様でした。では椅子に座って下さい。
それでは証拠調べ以上ということで、証拠調べ後の弁論ということで期日を決めたいんですがどれくらい先がよろしいですか?
弁護人
証拠調べ後の弁論と申しましてもまだ終わったというわけではなくて、新たな文書を証拠として申請して、また意見を述べたいのですがよろしいですか?
裁判官
はい、結構ですよ。
弁護人
では次回期日は一月空けてお願いします。
裁判官
3月15日10時半から11時でどうでしょう。
弁護人
結構です。
裁判官
では、証拠申請等ありましたら早めに出して頂くということでお願いします。
裁判所としましては、証拠調べ等ありましたら、それでよろしいんですけれども、一応次回終結予定ということにしておりますので、その点よろしくお願いします。
では次回は3月15日火曜日の10時半ということですので、それでは今日は以上です。
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高松高裁で開かれたMHさん控訴審第1回公判は、弁護側提出の大麻取締法違憲論を主張した控訴趣意書に対し、検察側が大麻規制の根拠を正当化する書面を提出したため、これを検証する時間が必要だとして弁護側は次回の公判での審議を求めました。
裁判官は結審したい様子でしたが、弁護側の主張が容れられ、次回は3月15日(火)に公判となりました。
MHさんの友人による傍聴記を近日中に掲載します。
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平成16年(う)第400号
被告人 ******
控訴趣意書
平成17年1月6日
高松高等裁判所 刑事第1部 御中
弁護人 藤澤 和裕
第1 結論
原審の判決には憲法の違反があり、その違反は判決に影響を及ぼすこと明らかであることから、到底破棄は免れないものと思料する
即ち、大麻取締法は憲法13条、14条、31条に違反する無効な法律であり、従って被告人の大麻取締法違反の公訴事案については無罪判決が相当である。
仮に大麻取締法が憲法に違反しないとしても、被告人に宣告された懲役1年6月という判決は重きに失するものである。以下その理由を述べる。
第2 大麻取締法の違憲性について
1 憲法13条違反について
(1) 大麻取締法は、憲法13条に規定する国民の幸福追求権を侵害するものとして違憲無効である。
最高裁は昭和45年9月16日大法廷で「喫煙の自由は第13条の保障する基本的人権の一つに含まれる」と宣言している(裁判集 刑事1412頁)。従って、公共の福祉に反しない限り幸福追求権を制限することは、憲法に定めるこの条項に抵触する。
(2) 公共の福祉に反するかどうかは大麻を規制する立法事実が現に存在するかどうか、言い換えれば大麻が人体に及ぼす悪影響があるかどうかが検証されなければならない。
(3) 大麻の依存性について
「文字通り世界の医師のバイブルとして無数の人々の治療に役立ってきた」医学書の権威である「メルクマニュアル」(第17版日本語版)によれば、「大麻の慢性的ないし定期的使用は精神的依存を引き起こすが、身体的依存は引き起こさない。」「多幸感を惹起して不安を低下させるあらゆる薬物は(精神的)依存を惹起することがあり、大麻もその例外ではない。しかし、大量使用されたり、やめられないという訴えが起きることはまれである。」「大麻は社会的、精神的機能不全の形跡なしで、時に使用できることがある。多くの使用者に依存という言葉はおそらく当てはまらないであろう。」「多量使用者は薬をやめたときに睡眠が中断されたり神経質になると報告されている。」が「この薬をやめても離脱症候群はまったく発生しない」(「メルクマニュアル」第17版日本語版第15節 精神疾患 195章 薬物使用と依存 「大麻(マリファナ)類への依存」)
したがって、大麻には耐性もほとんどなく、大麻に対する身体的依存は皆無である。
(4) 大麻の毒性について
大麻草の成分である「テトラヒドロカンナビノール(以下「THC」という)は極めて安全な薬剤である。」(「マリファナの科学」197頁)。「大麻の不正使用は広く行われているが、大麻の過量摂取で死亡した例はほんのわずかしかない。英国では、政府統計で1993年から95年までの間に大麻による死亡例が5件挙げられているが、くわしく事情を調べると、いずれも嘔吐物が喉に詰まったことが原因で、大麻に直接起因するものではない(英上院報告1998)。ほかの一般的な娯楽用薬物と比較すると、この統計は際立ってくる。英国では毎年、アルコールによる死亡者が10万人以上、タバコに起因した死亡者が少なくともこれと同数だけ発生している」(同書197頁)。「どんな基準に照らし合わせても、THCは急性効果、長期的効果で、極めて安全な薬剤だと考えなくてはならない」(同書200頁)。
マリファナの身体的効果については、マリファナ研究について最も権威のある報告書とされている「マリファナ及び薬物乱用に関する全米委員会」の1972年報告(以下「全米委員会1972年報告」という)では、「身体機能の障害についての決定的証拠はなく、極めて多量のマリファナであっても、それだけで人体に対する致死量があるとは立証されていない。また、マリファナが人体に遺伝的欠陥を生み出すことを示す信頼できる証拠は存在しない。」「結論として、通常の摂取量ではマリファナの毒性はほとんど無視してよいといっている」(「法学セミナー」1980年7月号31頁)。
「大麻の使用は薬物問題ではあるが、その毒物学的意味は不明である。」(「メルクマニュアル」)。
したがって、大麻には毒性もない。
(5) 大麻の有害性について
「マリファナを批判する人々は有害作用に関する数多くの科学的データを引き合いに出すが、重篤な生物学的影響があるとする主張の大部分は、比較的大量の使用者、免疫学的、生殖機能についての積極的な研究においても、ほとんど立証されていない」(「メルクマニュアル」)。
マリファナの吸引について、「習慣的使用者のかなりの割合で慢性の気管支炎を引き起こし、長期的に見た場合に気道の癌とのつながりが指摘される恐れがあるため、安全上長期的使用を勧めることができない。」とされるが、これはあくまでもタバコ吸引と同様、自らの健康の問題であり、他者に対する有害性はない。しかも、米国医学研究所は、その報告「マリファナと医薬」(1999)のなかで、安全性の問題について「マリファナはまったく害のない物質というわけではない。さまざまな効果を伴った強力な薬物である。だが、吸引にともなう弊害を除き、そのほかの用途ではマリファナによる副作用は許容範囲にあるといえる。」(「マリファナの科学」231頁ないし232頁)とされている。
したがって、マリファナにはその煙の吸引に関してタバコと同程度かそれ以下の有害性しかない。
(6) 大麻使用による他者に対する危険性について
前記の全米委員会1972年報告によれば「マリファナが暴力的ないし攻撃的行動の原因になることを示す証拠もない」。さらに1973年報告によればマリファナ使用と犯罪との関係について、「マリファナの使用は、暴力的であれ、非暴力的であれ、犯罪の源ともならないし、犯罪と関係することもない。」と結論している(「法学セミナー」1980年7月号31頁)。
したがって、マリファナは他者の法益を侵害する危険性もない。
(7) 大麻の医療利用について
他方、「大麻は何千年にもわたって医薬として使われてきた。」「中国で紀元前2800年頃、初めて出版された漢方薬の概説書「神農本草経」は大麻を便秘、通風、リウマチ、生理不順の治療薬として推奨している。大麻製剤はその後何世紀にもわたって中国の本草書で推奨され続けたが、特にその鎮痛効果は外科手術の際、痛みを抑えるために利用されてきた。」
「インド医学も中国と同じくらい長い大麻利用の歴史をもっている。」「古代アーユルヴェーダ体系では大麻はヒンドゥー人のための医薬品として重要な役割を果たし、今日でもアーユルヴェーダ実践者たちによって利用されている。」
「アラブ医学やイスラム系インド人の医学ではハシーシュ(大麻樹脂)や「ベンジ」(マリファナ)について多くの記述が見られる。大麻は淋病や下痢、喘息の治療薬として、また食欲増進剤、鎮痛剤として利用された。」
「大麻は中世ヨーロッパの民間療法でも広く知られ、ウィリアム・ターナー、マッティオーリ、ディオスコバス・タベラエモンタヌスの本草書でも治療効果のある植物として記述されている」(「マリファナの科学」136頁ないし137頁)。
「日本でも繊維用ばかりでなく、医薬品として用いられてきた。日本薬局方でも1886年に交付されて以降、1951年の第5改正薬局方までマリファナが「インド大麻草」、「インド大麻草エキス」、「インド大麻チンキ」という製品名で収載され、鎮痛剤、鎮静剤、催眠剤などとして用いられてきた」(「法学セミナー」1980年7月号31頁)。
「20世紀のほとんどの期間、西洋医学は大麻利用にわずかな関心しか示さず、大麻の使用が米国で1937年、法的に禁じられたのを皮切りに、1970年代には英国をはじめほとんどのヨーロッパ諸国がこれに追随する動きを見せた」が、「英国医師会(BMA)は1997年、治療現場での大麻利用についてまとめた影響力のある報告のなかで<多くの通常法を順守する市民、おそらく先進国の何千という人たちが、治療のために大麻を非合法的に使っている。」と記している。
「こうした非合法の自己治療に最も深い関わりを持つのが、他の鎮痛薬では治すことのできない慢性の痛みに苦しむ人たちである。具体的には、痛みを伴う筋痙攣を頻繁に起こす脊髄損傷や、そのほかの痙攣症状を持つ患者や、エイズ患者、多発性硬化症(MS)を患う患者などである」(「マリファナの科学」146頁)。
「大麻を使って自己治療している患者が指摘するような医療効果の一部を、そのような領域の人たちが享受できる現実的な可能性がある。自己治療の患者は通常、既存の薬が効かなかった人たちであり、症状を治すためのオルターナティヴ・メディスン(代替医療)に切り替えようとしている。大麻は多くの人たちにとって、何世紀もの間、民話や民間医療に根付いてきた自然療法・薬草療法として、付加的な魅力を備えている」(同書153頁)。
(8) 以上のとおり、大麻には有害性がなく、これを規制する立法事実も存在しない、と言わなければならない。
ところで、近時の裁判例は最高裁の60年判決を基準に大麻に有害性があることは公知の事実であるとするものが多い。しかしながら現在継続中である大阪高等裁判所平成16年(う)第835号事件においては、有害性に関し、検察官に対し主張、立証を求めている。このように現在では単に公知という事実のみではなく、具体的な立証が求められている。
2 憲法第14条、第31条違反について
(1) アルコールや喫煙は公知の事実として強い精神的、身体的依存を引き起こすと共に、肝臓や心臓血管に悪影響を及ぼすこと、更には飲酒酩酊により暴力事犯を誘引することは経験則上知られている正に公知の事実である。
その点より見れば、マリファナにはそのような悪性はどの文献報告書にも見出せない。しかるに、酒、喫煙については未成年者の使用を禁じている他、何らの法的規制はない。このように、大麻より危険性有害性が高くあるいは同程度に有害と認められる薬物や嗜好品の所持摂取が原則として各個人の自由にゆだねられていることに照らせば大麻取締法にのみ厳罰で禁圧しているのは法の下の平等を規定した憲法第14条に違反する。
(2) 更に大麻取締法の罰則規定は必要最小限のものではなく、さらにその法定刑は過度に重いから憲法第31条に反し違憲である。
第3 量刑不当について
被告人は大麻を吸引、栽培した事実により、懲役1年6月という刑に処せられたものであるが、前記述べたとおり大麻には有害性は全くなく、これを取り締まる大麻取締法には憲法違反の疑いが強いことからすれば、刑罰を科す場合であっても、悪質であることが明確に立証されない限り、実刑に処すことは妥当ではない。被告人が大麻を栽培した目的は、自ら吸引するためであり、他にこれを譲渡したりするような目的ではなかった。仮に大麻に有害性があったとしても、自らが使用するだけであり、他に影響を及ぼすことは全くなかった。
加えて被告人は父の仕事を真面目に手伝い、被告人の手助けがなければ事業が成り立っていかない状況にある。
以上のように大麻の吸引を除き、被告人は真面目な社会人として生活していたことから、被告人には執行猶予付きの判決がなされるべきであり、1年6月という実刑の判決は量刑不当である。
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MHさん裁判の控訴趣意書を掲載しました。公開はMHさん本人の希望によるものです。受任されている藤澤弁護士とも相談のうえ、引き続き公開できる情報についてはお伝えします。
藤澤弁護士ご自身は、お名前の公開も差し支えないとのご了解を頂いています。
過日、MHさんから手紙が届きました。
「控訴審の日時、決定しました。平成17年2月8日午前11時 高松高等裁判所刑事第1号法廷(6階)です」
とのこと。近隣の方、傍聴してみませんか?
藤澤弁護士の話によると、違憲論を主張した控訴趣意書に対し、検察から大麻有害論?の書類が出されたそうです。実物は拝見していませんが、「ダメ。ゼッタイ。」とか「警察学論集」とか、どうも聞き覚えがあるような・・・
公判の行方が注目されます。
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裁判レポート、一審の論告から判決までを掲載しました。
所持23.98グラム、栽培8本で、1年6月の実刑。デンマークだったら5,400円の罰金でしょうか。
何か、虚しくなります。
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(2005年1月27日着信)
前略、初めて手紙を書きます。僕は現在、タイから大麻樹脂497グラムを日本に持ち込もうとして逮捕され、大麻取締法、関税法に違反したとして、東京拘置所に収監されています。
タイから帰国して逮捕されたのが2004年6月30日、正確に書くと、樹脂を飲んで来たので腹中より出すのに、病院に入院して六日ほど過し、逮捕は7月6日です。そして、起訴されたのが7月26日、8月10日に成田空港署の留置所から、千葉刑務所内拘置区に移管され、9月24日に初公判。その時は罪状認否のみで、10月15日の二回目の公判で求刑、6年の罰金100万円。そして、11月5日に判決、実刑4年6ヶ月、罰金100万円、未決日数算入は50日というものでした。
僕の取調べに当たった空港署生活安全課の刑事も、税関の取調官もそれなりに好意的で、「被害者のいない犯罪」に対して、ある程度の理解ある調べをしてくれたように思います。大麻の効果などについても、僕が知っていることを話すと、不思議そうな顔をして「悪いところがないじゃあないか」などと言うので、「悪いのは逮捕されることだけですよ」などと答えたものです。そのヤリトリは調書に書かれることはなかったし、別にヒッカケなどではなかったと思うのです。「悪いところ(害)がない」というのは、科学的・医学的・社会的な問題であって、僕が逮捕されているのは法律の問題である。法律で禁止されているのは解っていてやった訳なので、その点は悪いと思っています。というようなヤリトリがあったことを覚えています。
しかし、理解があったのはそこまでで、検事調べで検事が、「あんた自分のやった事で世の中がどういうことになるのか解っているのか!」などと言ってくるので、純粋にどういうことになるのか知りたくなった僕は、「どうなるんですか」と言ったところ、「日本が薬物で汚染されるんだよ!」とこうくる訳です。そうはならないことだけは確かなので、聞くんじゃなかった。しかし、検事がどういうつもりなのかは解りました。
結局、僕は今まで(1995年から)四回、海外旅行をしたことがあって、二回目のタイ・ネパール旅行と四回目の今回、大麻樹脂を持ち込み、今回逮捕された訳ですが、僕の渡航歴からいって「運び」を生業とするには回数が足りないのです。もし「運び」で儲けていたのなら、もう少し頻繁に渡航している筈です。前回、200グラムほど持って来た時は、すぐなくなってしまったし、売りたくはないのです。理由は、金は働けば造ることが出来ますが、納得のいく樹脂(チャラスと書くべきでしょうか)は、なかなか手に入らないからです。「金が全て」という考え方が当り前になっているので、普通より多目のチャラスを持っていたら、すべて「営利」ということになるのでしょう。
日本で高い金を出して買うぐらいなら、自分の分は自分で、そう何度も海外には行けないし、それぐらいなら飲めるだけ飲んで、今回の497グラムです。前回のネパールがうまくいったのが悪かったのかもしれません。検事は今回の持ち込みが計画的なものだというのですが、本来、タイには大麻樹脂がないので計画など立てようがないのです。今回運良く(悪く)入手できたので、この体たらくです。
「量が多いから営利」というのも解せぬ話です。結局、黙っていると、僕の「友人関係を調べる」と言われ、法知識のない僕には検察にどこまでの権限があるのかわからなかったため、検事に言われるままに「営利」を認め、指印を押してしまいました。拘置所に移管され、僕と同じ罪状の人に聞くと、皆、検事に「友人関係を調べる」と威されて「営利」を認めています。旅先で会った人や、日常、つきあいのある人の連絡先を控えたアドレス帳を押収されており、そこに書かれているのは旅先で会っただけの人もいるし、大麻とはまったく関係のない普通の社会人もいます。大麻を嗜もうが、嗜むまいが家宅捜査などされたら迷惑だと思うのです。起訴される四日前の木曜の検事調べでのことでした。
明けて金曜日に又、呼び出されて「僕の吸い仲間の名前は言えない」というだけの調書を取り、土・日、と挟んで月曜日に起訴。始めは何故、それだけの調書を書いていたのか解らなかったけれど、初公判の検事質問で「営利」を否認し、「ではなんで指印を押したのか」の質問に、「友人関係を調べる」と威されたため、と答えたところ、「僕の吸い仲間の名前は言えない」と調書に出ているのに、なんで威しになるのだ、とのこと。なるほど、威されて「営利」を認めた、と「営利」を否定した時の用心に「僕の吸い仲間の名前は言えない」という調書を取ったのですね。それでは、僕のアドレス帳が押収され、証拠品としていまだに帰ってこないのと、営利を認めた次の日の日付で「僕の吸い仲間の名前は言えない」と書いてある事実はどうなるんだ、と思いますが、判事としては、「否認されると時間がかかるので許せん」といった感じで、めんどおくさそうに裁判を進め、初公判に続く二回目で求刑、調書を取った検事が出て来て求刑6年罰金100万円。取調べ検事と法廷検事が同じというのはよくあることなのでしょうか、僕には自分の書いた調書を否認された腹いせに、本人が自ら重く求刑してきたようにも思えます。
判決は、「営利」を否認したことが「反省してない」ととられたらしく、4年6ヶ月の罰金100万。ちなみに、千葉拘置所に移されて同じ房にいた青年(20)が強盗致傷で、内容は、彼女に援交目当ての男を呼び出させて、男六人女二人での犯行、求刑6年で実刑3年8ヶ月。自分が、いわゆる「援交狩り」よりも重罪人だとは、どうしても思えません。その為、今、東京拘置所で控訴中という訳です。
実は、友人が、「営利」はとれそうもないし、このままでは減刑の望みも薄いので、「有害性の否定(→違憲論)」も主張したらどうかと、色々と資料を入れてくれました。その資料で白坂さんのことや、桂川さんの事件のあらましを知ったのでした。桂川さんの減刑嘆願書も出そうと思っていたのですが、友人が年末に差入れてくれた用紙や資料類が、検閲などされて手元に届いたのが1月7日、その日のうちに出せば締め切りの1月10日に間に合うかどうかのところを、弁護士が面会に来て手紙を書きかけのまま、結局、出すことは出来ませんでした。
この弁護士が、違憲論どころか「有害性の否定」を主張するのさえ「ダメ。ゼッタイ」なのですね。理由は、「本人の利益にならない事は、できない(=しない、したくない)」とのことです。数年前にマリファナ関連のイベントの顧問を務めたことがあると聞き、大麻も覚醒剤も同じだと思っている両親に対して、僕を弁護してほしくて頼んだというのもあったのに、控訴の主張を「さらなる反省」と勝手に決め、両親に大麻有害論を吹き込んで僕に圧力をかける始末。なにせ、「薬物事案だからこそ、考え方の変遷が重要だと考えている」と言い、「違憲論だの、そういう考え方に陥ってしまう事自体が、大麻の弊害」と言うのだから、なにをか言わんやです。
そして今日、面会で「私(弁護人)の意見に従えないのなら、別の医者にかかればよい。私に従えないのは、私を信用できないからだ。依頼した以上、全てを信じて任せるべき。それは最初から分かっている事。私に依頼しなくても別の医者へ行けばよい、その選択は本人次第、自由な筈だ」というようなことを言ってくるので、「では解任します」と言ったところ、「解任するなら理由を言え」「自分の弁護活動に対する妨害だ」となり、もう、頼むから辞めてください状態でいたら、「名誉毀損で訴える」と言って帰って行きました。
面会から帰り、この手紙を書いているのですが、僕の事件・裁判をレポートしたいと思っています。先に書いたように、弁護人は僕の意思を無視して事を進め、裁判、僕の置かれた状況が刑務所行ベルトコンベアーに乗せられたもののように思えるので、そのことを人に伝えたいと考えたからです。
自分のことばかり長々書いてすいません。
もう手紙を出さなければならず、時間がありません。
お身体お大事に。
草々
2005年1月25日 記
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平成16年10月25日宣告 裁判所書記官 松岡 孝典
平成16年(わ)第219号,第268号
判決
本籍 ××××
住居 ××××
職業 ××××
◆◆◆◆
昭和53年1月13日生
上記の者に対する大麻取締法違反被告事件について,当裁判所は,検察官 吉田 稔出席のうえ審理し,次のとおり判決する。
主文
被告人を懲役1年6月に処する。
未決勾留日数中20日をその刑に算入する。
押収してある乾燥大麻様のもの2瓶(平成16年押第22号の符号1,2),大麻草入り紙タバコ1袋(同符号3)及び大麻草8株(同符号4)を没収する。
理由
(罪となるべき事実)
当裁判所の認定した罪となるべき事実は,起訴状2通に記載された各公訴事実と同一であるからこれらを引用する(ただし,平成16年7月9日付起訴状記載の公訴事実2行目に「被告人方」とある前に「当時の」を加え,同じ行の「グラム」とある次に「(押収してある乾燥大麻様のもの2瓶(平成16年押第22号の符号1,2)及び大麻草入り紙タバコ1袋(同符号3)はいずれもその鑑定残)」を,同年8月20日付起訴状記載の公訴事実6行目に「本」とある次に「(押収してある大麻草8株(同符号4)はその鑑定残)」を,それぞれ加える。以下,認定事実を起訴状の日付順に「判示第2事実」,「判示第1事実」という。)。
(証拠の標目)
( )内の数字は,検察官請求の証拠番号を示す。
判示全事実について
被告人の当公判廷における供述
判示第1事実について
被告人の検察官(28)及び警察官(27)に対する各供述調書
実況見分調書(15)
鑑定嘱託書謄本(16)
鑑定結果回答書(17)
押収してある大麻草8株(18,平成16年押第22号の符号4)
判示第2事実について
被告人の検察官(25)及び警察官(2通,21,23)に対する各供述調書
現行犯人逮捕手続書(甲)(1)
捜索差押調書(乙)(2)
鑑定嘱託書謄本2通(3,6)
鑑定書2通(4,7)
押収してある乾燥大麻様のもの2瓶(5,8,平成16年押第22号の符号1,2)及び大麻草入り紙タバコ1袋(9,同符号3)
(法令の適用)
被告人の判示第1の所為は,大麻取締法24条1項に,判示第2の所為は,同法24条の2第1項に,それぞれ該当するところ,以上は刑法45条前段の併合罪であるから,同法47条本文,10条により重い判示第1の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役1年6月に処し,刑法21条を適用して,未決勾留日数中20日をその刑に算入し,押収してある乾燥大麻様のもの2瓶(平成16年押第22号の符号1,2)及び大麻草入り紙タバコ1袋(同符号3)は,判示第2の,押収してある大麻草8株(同符号4)は判示第1の各罪にかかる大麻で犯人が所有するものであるから大麻取締法違反24条の5第1項本文によりこれらを没収する。
(量刑理由)
本件は,自宅で大麻草を栽培し(判示第1),自宅に大麻約20グラムを所持していた(判示第2)事案である。
被告人は,平成10年6月ころに当時DJをしていたクラブの客に勧められて初めて大麻を吸引し,そのとき五感が鋭くなり普段聞き取れない音楽の音が聞き取れたことから,その後は密売人から購入して使用していたが,平成11年11月に大麻取締法違反で逮捕され,平成12年2月23日同罪で懲役1年8月執行猶予3年に処せられ(同年3月9日確定),以後は大麻と縁を切っていた。しかし,執行猶予期間が満了した後の平成15年9月ころ,DJのイベントで知り合った××から勧められ,少しぐらいならいいだろうという気持ちと大麻が規制されている理由について得心が得られていなかったことから,再び大麻に手を出し,これが発端となって,昔覚えた感覚がよみがえり,その後は××から譲り受けては大麻を使用し,やがては自分で栽培することを考えるようになり,同年10月から判示第1の犯行に及び,また,判示第2のとおり,収穫した大麻の一部を所持し,この間頻繁に大麻を使用していたものである。以上の経緯,特に,既に一度懲役刑に処せられていながら,今回自身で栽培するまでになっている点からすると,被告人の大麻取締法違反の罪についての常習性は,かなり高いというほかない。そしてまた,本件刑責に対しては,実刑を科するのが相当といえる。
ただし,被告人は栽培した大麻を自己が使用するか捨てるか以外に用いたことはないこと,被告人が今回こそは大麻と縁を切る旨誓うなど反省していること,父親が今後の監督を証言してくれていること,被告人は父親の営む××に従事し今ではその存続に不可欠ともいえるまでの存在になっていることなどの事情を考慮すると,その刑期は,主文のそれに止めるのが相当である。
よって,主文のとおり判決する。
(求刑 懲役3年,没収)
平成16年10月25日
××地方裁判所刑事部
裁判官 杉田 友宏
これは謄本である
平成16年12月8日
××地方裁判所
裁判所書記官 松岡 孝典 〔印〕
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刑罰による大麻規制は取締当局による自作自演だった
桂 川 直 文
・大麻を有害とする証拠などどこにも存在しなかった
従来の大麻裁判では大麻使用の当否など論議されることなく、法律の条文だけを理由に量刑が科せられ、被告人が法廷で大麻の真実を述べようものなら反省の意識がないとされて刑が重くなりました。したがって被告人は「大麻は害悪があり二度と手にしない」と虚偽の証言をし、過去の判例に照らして判決が下されて公判は形式的に終了しました。
今日まで我が国では大麻取締法違反容疑で検挙されたものは、実質的に公正な裁判が受けられない状態だったのです。
私の裁判も例外ではなく、大麻取締法の不当性を主張し、取締当局を非難したため、一審では大麻の有害性を「公知の事実である」と断定されて、昨年4月14日大阪地裁にて米山正明裁判官から懲役5年という実刑判決が下されました。
私は一審判決を不服として大阪高裁に控訴し、大阪の金井塚康弘弁護士に加えて東京の丸井英弘弁護士を選任し、弁護団を構成して控訴審を闘ってきました。弁護人による控訴趣意書が奏効して、控訴審では異例の三回にわたる被告人証言をすることができました。
また弁護士の強い主張により、裁判官の勧告で検察側が大麻を有害とする証拠資料を提出したことは、問答無用だった一審からすれば大きく前進したものといえます。
ところが、この4つの文献資料からなる検察提出の証拠はとんでもないシロモノでした。
第一の資料がなんと厚生労働省外郭団体、財団法人「麻薬・覚せい剤乱用防止センター」ホームページ、いわゆる「ダメ。ゼッタイ。」ホームページの抜粋だったのです。
以前から、このホームページの内容があまりにもデタラメであることから、私を支援してくれているカンナビストの会員が、記述にある大麻摂取を原因とする心身の異常(脳障害、生殖機能障害)について厚生労働省に情報公開請求を行い「行政文書不開示決定通知書」が昨年4月、交付されました。その理由は「開示請求に係る行政文書を保有していないため」というものでした。我が国には大麻摂取を原因とする疾病など一つもないことが判明していたのです。
この事実はすでに第一回公判で弁護側から明らかにされ「行政文書不開示決定通知書」は証拠採用されていました。にも拘らず、出典が明記されておらず、その真偽を確かめようもない単なる主張を、検察は大麻を有害なものとする第一の証拠資料として提出してきたのです。しかも、弁護側の「ダメ。ゼッタイ。」ホームページ管理者の証人申請が検察側の不同意により却下となってしまいました。
その他の検察提出資料もすべて、大麻を取り締まる側の人物や組織の手によるもので、大麻を悪いものとする前提のもとに書かれたものでした。カンナビストの会員の検証によれば、検察資料の中にも、原本には大麻を肯定的に記述した部分があったのですが、検察は意図的にそのような部分を削除して裁判に提出するという悪質さでした。
そして驚くべきは、「捜査報告書」と題する大阪高等検察庁検察官検事 藤田義清 から大阪高等検察庁刑事部長 清水治 あての、この大麻を有害なものとする資料の日付けが平成16年9月28日だったことです。
国民に7年もの懲役刑を求刑する重大事犯(私の場合)にもかかわらず、その根拠となる確固たる証拠資料がここに至るまで検察の手許に無かったことになります。
・麻薬取締官の行為は憲法第15条第2項(すべて公務員は全体の奉仕者であって、一部の奉仕者では無い)に明確に違反している
私を逮捕した厚生労働省の麻薬取締官(通称マトリ)は、大麻の無害性を国民の誰よりも認識しており、海外の大麻事情にも通じています。私を担当した近畿厚生局麻薬取締部の下宮捜査官は、取り調べ開始にあたって「大麻は酒、タバコと同列である」と宣言しました。さらにマトリ達は、その経験上、大麻を好む人達の大半は普通に職業を持ち、真面目に納税している一般の国民であることも承知しています。
私は取り調べの過程において何度も、現行の大麻規制の在り方を非難しましたが、マトリ達の返答はいつもオウム返しのように「我々は法に従って仕事をしている」でした。しかし、罪の無い人を捕縛し、その社会生活を破壊するようなことが仕事なのでしょうか。
厚生労働省の役人として、大麻が酒、タバコ以上に害が無いことを認識しているなら、その事実を検察や裁判所に、そしてマスコミを通じて広く国民に知らせる義務がある筈です。
マトリ達は公僕としての本来の仕事を放棄して、あろうことか、大麻の真実を社会に知らしめている大麻自由化運動を組織的犯罪行為とみなし、私をその主魁と認定して、私の友人知人達を次々と逮捕投獄してきました。
すべての捜査と取り調べが終了して、当所マトリ達が描いていた、大麻解放を隠れ蓑にした日本最大の大麻密売組織という構図は自らの妄想だったことが判明しました。
取り調べの最後に登場した近畿麻薬の幹部は「我々にとって今回の事件は非常に特殊なケースでした。あなたの行為を裁判所がどう判断するかとても興味があり注目しています」と言い放ちました。従って私は絶対に引き下がる訳にいきません。とことん最後まで闘って、取締当局こそ犯罪者であることを証明します。
・大麻無害の証拠をこれ以上求められれば役人達に大麻を吸ってもらうしかない
昨年11月24日の第3回公判で控訴審での私の証言は終了しました。傍聴していた支援者からの手紙によると、皆 私の発言に満足していたとのことで安堵しました。3回にわたって決定的なことを述べましたが、それでも語り尽くせない点がありましたので公判後、陳述書として裁判所に提出しました。
情報化時代の今日、私が何回も法廷で話さなくても、裁判官達は大麻の無害性くらいうすうす知っている筈です。しかし、30年以上にわたりこんなことで何万人もの国民を牢屋に入れてきたのですから、役所のメンツや同僚、先輩への配慮からも、役人達はそう簡単に大麻容認にしないでしょう。だから私は1年半も拘置所に座り、公判であーでもないこーでもないと検察とやりあい、夥しい証拠書類を積み上げているのです。いわば私の裁判は一つの儀式であり、日本が精神的先進国になるための通過儀礼のようなものなのです。
もはや検察は公判を維持することができなくなっています。訳の分からない、トンチンカンな被告人質問に終始し、まるで要領を得ませんでした。
一審の公判検事には大麻吸煙について「トリップを求めていたのか?快感を得ようとしていたのか?」と質問され困ってしまいました。
控訴審では検察資料を示され「大麻にはこのような害悪があることをどう思うか?」と訊かれ、私は「それはかなり古い資料だと思います」と答えました。つぎに「LSDをやったことがあるか?」と訊かれ、「あります」と答えました。検事の質問はたったのそれだけでした。
弁護側は大麻取締法違憲の証拠、大麻使用の無害性有益性の証拠を考えられる限り、すべて提出し、私は真実を忌憚なく証言しました。これ以上大麻無害の証拠を積み上げるとするなら、検察官や裁判官に大麻を吸ってもらうしかないと思います。
現在、全国の支援者から沢山の励ましの手紙を戴いており、まだ返事を差し上げていない方々に、とりあえずサイト上で御礼申し上げます。
また私の減刑嘆願のため署名された多勢の皆様にも厚く御礼申し上げます。
本当にありごとうございました。
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論告要旨
大麻取締法違反 被告人 ××××
第1 事実関係
本件各公訴事実は,当公判廷で取り調べられた関係各証拠により,その証明は十分である。
第2 情状関係
本件は,被告人が,自宅内において,大麻草約23.98グラムを所持し,大麻草8本を栽培した大麻取締法違反の各事案である。
1 犯行に至る経緯及び動機に酌量の余地はない。
被告人は,平成10年ころから,大麻の吸引を始め,大麻取締法違反による前刑の執行猶予期間中,大麻の吸引を中断した後,平成15年9月ころから,友人に勧められたことをきっかけとして,大麻の吸引を再開し,同年10月ころからは,自宅内において,大麻草の栽培を始め,大麻の吸引を継続していた。
被告人は大麻吸引による快感を求めて,再び大麻の吸引にのめり込み,本件各犯行に及んだのであって,その犯行に至る経緯及び安易かつ短絡的な動機に酌量の余地は全くない。
2 本件犯情は悪質であり,被告人の大麻等の薬物使用に対する親和性及び常習性は根深い。
被告人は,前記のとおり,平成10年ころから,大麻の吸引を始め,密売人等から大麻樹脂等を購入して,大麻の吸引を続けていたが,平成12年2月23日,大麻の譲り受け,譲り渡し及び所持の各事実により,懲役1年8月3年間執行猶予の判決を受けた後,その執行猶予期間中は,大麻の吸引等を中断していたものの,平成15年9月ころ,友人の××に大麻の吸引を勧められたことをきっかけとして,大麻の吸引を再開し,それ以降,同人を含む数人の仲間と集まっては,××が持ち込んだ大麻の共同使用を繰り返し,そのかたわら,同人から譲り受ける大麻では満足できなくなり,自ら大麻草を栽培することを決意し,自宅内において,大麻草を水耕栽培し,収穫した大麻を自分1人で吸引するようになった。
被告人は,インターネット通信販売により,オランダで行われている大麻草品種品評会の上位入賞品種の種子を購入し,雑誌やインターネット等から得た大麻草栽培の知識を用いて,市販されているロックウール等の園芸用品等を利用して,大麻草を水耕栽培し,収穫した大量の大麻草のうち,効用の高い花弁の部分のみを乾燥させ,いつでも吸引できるように,ガラス瓶等に小分けした状態で保管し,ほとんど毎日のように大麻を吸引していた。
このように,被告人の大麻吸引の期間は長く,頻度も高い。また,被告人が所持及び栽培していた大麻は多量に及び,その所持態様も頻回使用に適した状態であった。さらに,被告人は,高品質の大麻を大量に収穫することをもくろみ,高品質の大麻草の種子を選別して購入し,少ないスペースで効率的に大麻草を栽培するため,ロックウール等を利用した水耕栽培の方法を用い,収穫した大麻草のうち,効用が高く吸引に適した部分のみを乾燥させて保存していた。被告人が,高品質の大麻を大量に収穫するために用いていた大麻草栽培及び収穫の態様は,被告人がいかに大麻吸引による快感に耽溺していたかを自ずと示している。
そして,被告人は,前記のとおり,同種事犯により,執行猶予付きの寛大な判決を受けながら,その執行猶予期間満了の約半年後には,大麻の吸引を再開し,ほどなく,大麻草の栽培も開始したのであって,これらの点に照らせば,被告人の大麻吸引に対する親和性及び常習性は極めて根深いものであることは火を見るより明らかである。
3 同種事犯の再発防止等の一般防止の見地からも,被告人に対しては,厳重な処罰が必要である。
被告人による本件各犯行は,そのほとんどが密室内で敢行されていて,密行性が高く,また,容易に入手可能な器具等を用いている点で模倣性が高い。
かかる密行性及び模倣性が高い本件同種事案の根絶を図る必要性は高く,一般予防の見地からも,被告人に対しては,厳重な処罰が必要である。
4 被告人の再犯可能性は高い。
被告人の大麻吸入に対する親和性及び常習性が根深いこと,被告人が,前刑公判において,二度と同種犯行は繰り返さない旨を誓いながら,性懲りもなく,本件各犯行に及んだことに照らせば,被告人の遵法意識は完全に鈍磨しているものと認められること,被告人による本件各犯行の密行性の高さ等からいって,被告人が本件各犯行と同種犯行を再開することは極めて容易であるといわざるを得ないことなどの点に鑑みれば,被告人の再犯可能性は,極めて高い。
5 結語
以上述べてきた諸事情を総合すれば,被告人の刑事責任は極めて重く,被告人に対しては,相当期間の施設内処遇によって,猛省を促すとともに,徹底した矯正教育を行う必要がある。
第3 求刑
以上の事情を考慮し,相当法条を適用の上 被告人を懲役3年に処し 平成16年領第507号符第1号 同符第2号 同符第5の1号 同符第19の1号 を没収するのが相当である。
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冒頭陳述要旨
大麻取締法違反 被告人 ××××
第1 被告人の身上経歴等
1 被告人は,××市内で出生し,高校卒業後,飲食店店員等を経て,犯行時は,××として働いていた。
2 被告人は,婚姻歴はなく,犯行時は,住居地において,単身居住していた。
3 平成12年2月23日,××地方裁判所において,大麻取締法違反により懲役1年8月3年間執行猶予の判決を受けた前科1犯がある。
第2 犯行に至る経緯及び犯行状況等
1 被告人は,東京都内に在住していた平成10年ころ,友人から勧められて大麻草の吸入を始め,それ以降,密売人から大麻樹脂等を購入して吸入するようになった。
被告人は,前記の前科による執行猶予期間中は,大麻の使用を中断していたが,平成15年9月ころ,同年夏ころに知り合った××から大麻草の吸入を勧められたことをきっかけとして,大麻の使用を再開し,同人から譲り受けるなどした大麻草を吸入するようになった。
2 被告人は,前記××から譲り受ける大麻草だけでは,満足することができなくなったため,自ら使用する大麻草を自宅内において栽培しようと決意し,平成15年10月ころ,インターネットによる通信販売で大麻草の種子及び栽培用の照明機材等を購入し,そのころ,自宅の押入内において,ロックウール,プタンター及び照明機材等を使用して,大麻草の栽培を開始し,発芽した大麻草の枝を別のロックウール上に移植する方法で大麻草の栽培を続けた。
3 被告人は,栽培した大麻草を収穫し,葉の部分は投棄し,効用の高い花弁の部分のみを乾燥させ,自ら使用するために,がらす瓶等に入れて自宅内に保管していた。
4 平成16年6月19日,被告人宅等に対する捜索が行われた際,被告人宅内において,被告人が所持していた大麻草及び栽培していた大麻草が発見されたため,被告人による本件各犯行が明らかとなった。
第3 その他情状等
(※省略)
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平成16年(う)第835号大麻取締法違反等被告事件
被告人 桂川 直文
最終弁論1
平成17年1月 日
弁護人 丸井 英弘
大阪高等裁判所第6刑事部 御中
記
第1.大麻取締法の違憲性1大麻取締法は、社会的必要が無いのに、占領政策として一方的に制定されたものであり、無効である。
原判決は、この無効な法律を適用して、有罪判決をしているのであるから、刑事訴訟法第380条の法令適用の誤りがあるので、破棄すべきである。
1.大麻取締法ではその1条で、「大麻」の定義として、「大麻草(カンナビス・サティバ・エル)及びその製品」と規定しており、現行大麻取締法で規制されている大麻はカンナビス・サティバ・エルと呼ばれる種のみであり、かつ大麻の薬理成分とされるTHCの含有の有無とは無関係である。なお、1961年の麻薬に関する単一条約(昭和39年12月12日条約第22号)では、第1条定義で「大麻」とは、「名称のいかんを問わず、大麻植物の花叉は果実のついた枝端で樹脂が抽出されていないもの(枝端から離れた種子及び葉を除く。)をいう。」と定義付けされている。
大麻とは、日本名でいえば、麻(あさ)のことであり、植物学上はくわ科カンナビス属の植物である。そしてカンナビスには種(しゅ)として、少なくともカンナビス・サティバ・エル、カンナビス・インディカ・ラム、カンナビス・ルーディラリス・ジャニの三種類があることが植物学的に明らかになっている。各名称の最後にあるエルとかラムとかジャニというのはその種を発見、命名した学者の名前の略称であり、サティバは1753年に、インディカは1783年に、ルーディラリスは1924年に発見、命名された。いずれも大麻取締法が制定された一九四八年以前のことである。
大麻のうち、(カンナビス・サティバ・エル)と呼ばれる種類は、日本において縄文時代の古来から主に繊維用に使われて来たものであり、特に第2次大戦前は、繊維用などに不可欠な植物として国家がその栽培を奨励してきた植物である。
そして大麻取締法は、この衣類の生産など産業用に栽培されてきた日本人にとって貴重な植物である大麻草(カンナビス・サティバ・エル)の栽培等を規制した占領米軍による占領立法である。従って、大麻を規制する社会的必要性がまったくなかったので、大麻取締法は、その立法目的を明記していないという法律として異例な形をとっている。占領米軍は、占領後の日本を石油繊維などの石油製品の市場とするために、石油繊維とその市場が競合する大麻繊維の原料となるカンナビス・サティバ・エルと呼ばれる大麻の栽培を規制したものである。
このような法制定過程そのものに疑問がある大麻取締法は、憲法第31条の適正手続き条項に反し、また同法第12条の職業選択の自由や同法第13条の幸福追求権などに違反する違憲立法であるといわざるを得ないものである。過去の判例は、大麻取締法の立法目的を「国民の保健衛生の保護」としているが、日本において、大麻の栽培使用は縄文時代の古来から行われて来たのであり、大麻取締法制定当時も含めて「国民の保健衛生の保護」上の問題はまったく起こっていなかったのであるから、その解釈は間違っているものである。(「地球維新 vol.2」70頁以下 厚生省麻薬課長証言参照)以下厚生省麻薬課長証言を引用する。
「弁護人
現行の大麻取締法ですが、途中で改正もあったようですが、これは昭和23年に制定されたものですね。
証人
ええ、現行法は23年に制定されております。
弁護人
それ以前は大麻規制はどのようになっていたんでしょうか。
証人
これは私も文献的に調べる以外に手がないんでございますけれども、ずい分古いようでございまして、一番初めは大正14年に通称第二アヘン条約と言われます条約が出来まして、それで大麻の規制をしようという条約が出来ましたのを受けまして、昭和5年に当時の麻薬取締規則というものの中にこの大麻の規制が取り込まれたと。
ですから昭和5年が一番初めということでございまして、それ以降昭和18年頃に薬事法という法律の中に法律が整備されまして取り込まれたというふうに文献は示しております。
それ以降昭和20年になりましてポツダム省令で国内における大麻を含めまして、一切禁止の措置になったと。
それでは産業上非常に困ってしまうということがありまして、昭和22年に大麻取締規則というものが出来たと。
さらにその大麻取締規則が昭和23年に至って現行の大麻取締法というものに変えられたということでございます。
弁護人
すると、昭和4年の大麻取締規則は第2アヘン条約を受けてできたものであるということですか。
証人
文献上そのような経過の記録になっております。
弁護人
そうしますと、国内的にわが国で、当時大麻の使用によってなにか弊害というものがあったから出来たのか、それとも国際条約を批准したという関係から一応作ったのかその辺はどうなんでしょうか。
証人
これは、多分当時国内において大麻の乱用がみられたということはなかったんではないかと思います。 むしろその国際的な条約を受けましてそういう規定が出来たものというふうに考えます。
」
「
弁護人
昭和5年の麻薬取締規則で規制していたのはインド大麻と言われるものだけであったんではないですか。
証人
そうでございます。インド大麻というふうになっていたと思います。
弁護人
規制内容は具体的にはどういう規則だったんでしょうか。
証人
詳細については、私、記憶ございません。
弁護人
規制内容としては、インド大麻を輸出入する場合にそれを内務大臣に届けるというような、いわば届出制のような規制じゃなかったんでしょうか。
証人
大変恐縮でございますが、私その規制の具体的な内容につきましては…。
弁護人
国内で栽培もしくは野生ではえておりますいわゆる麻ですけれども、これは規制の対象にはなっていたんでしょうか、昭和5年の規則では。
証人
当時は規制の対象になっていなかったと思います。
弁護人
ところで、昭和23年に現行法が出来たわけですが、これは具体的にはどういうようないきさつから立法されたんでしょうか。
証人
ポツダム省令というものをうけ、22年に大麻取締規則というものが出来たわけですが、当時そういった法律を更に整備していくという過程の中で、法律化されたのではないかというふうに思うんでございますが、実はその規則ができまして、それが更に法律に形を整えられていったという過程の記録等につきまして、私今回かなりいろいろ課の者達に手伝ってもらいまして捜してみたんですが、その間の経過は記録文書上かならずしもはっきり御説明できるものが見当たりませんでした。
弁護人
実は、私が読んだ資料の中では内閣法制局長官をされていた林修三さんが「法律のひろば」で大麻取締法の制定当時の事情を書いてる文献を読んだことがあるんですが、私の記憶ではいわゆる連合国占領国ですね、GHQの強い要望で出来たんだと、日本国政府としては特別に規制するという必要性というのは特別にはなかったんだ、というような趣旨ですけれども、その辺はどうなんでしょうか。
証人
私も林修三さんという方が書かれた文章は読んだ記憶がございますが、戦後ポツダム省令等に基いて作られました各諸法令をさらに整備していくという過程の中で、大麻取締法という法律がいるかどうかということについての御議論があって法制局サイドではその必要性について若干疑問を持ったと。
しかし、当時の厚生省はまだそこまでの踏ん切りがつかなかったということ、しかし今になってみるとそこまでしなかったほうが良かったんじゃないかと、いうような一つの随想といいますか、エッセイのようなものを読んだことは記憶がございます。
弁護人
昭和20年から23年当時ですけれども日本国内で大麻の使用が国民の保健衛生上問題になるというような社会状況はあったんでしょうか。
証人
20年代の始め頃の時代におきまして大麻の乱用があったということは私はないんではないかというふうに思います。
弁護人
そうしますと、この大麻取締法を制定する際に、大麻の使用によって具体的にどのような保健衛生上の害が生じるのか、ということをわが国政府が独自に調査したとかそういうような資料はないままに立法されたと考えて宜しいわけですか。
証人
これは推するほかないんでございますが、そういう資料がなかったんではないかと。
」
また、昭和38年に大麻取締法が従来あった罰金刑が廃止され、懲役刑も強化されたが、次に引用する前述の麻薬課長証言によっても、当時大麻使用による具体的な弊害というようなものは社会的に存在しなかったものである。
「
弁護人
ところで、昭和23年の制定当時の法律ですけれども、法規制の内容としましては罰金刑というものは当初ありましたか。
証人
ありました。
弁護人
内容は大体どのような…。
証人
罰金刑といたしましては、栽培等については当時の法律では3000円か5000円以下の罰金という規定があったと思います。
弁護人
所持とか譲渡の場合も大体同じですか。栽培・所持と輸出入と分けてますね。
証人
ちょっと、私今…。資料は持っておりますけれども。
裁判官
資料御覧になりながらで結構です。
弁護人
昭和23年の現行法の制定当時の刑の内容です。
証人
23年当時というふうにおっしゃられるんですが、今私が持って参りましたのは28年の改正分以降のものですから、ちょっと正確性に欠けるかもしれませんが所持・栽培につきましては38年の改正が行われる以前におきましては罰金刑がございまして、3万円以下ということが書いてございます。
弁護人
あと懲役としては、どのような内容でしょうか。
証人
3年以下の懲役または3万円以下の罰金に処するという規定でございます。この際には所持・栽培・譲り受け・譲り渡しというものがその対象となっております。
弁護人
現行は所持・譲渡・譲り受け、これは懲役5年以下ですね。栽培・輸出入が懲役7年以下というふうにかなり重くなったわけですね。
証人
はい。
弁護人
昭和38年に罰金刑を廃止するとかつ懲役刑についても3年以下のものを5年とか7年にするというふうにかなり厳しくされたわけですが、これはどういうような理由からなんでしょうか。
証人
この当時の法律改正の背景と致しましては、昭和30年代末期にわが国では御存知のとおり、ヘロインを中心と致します薬物乱用がずい分はやりまして非常に深刻な社会問題として受けとめられていた状況がございました。
それで当時の状況を記録によって見てみますと、実にさまざまな対策がこのヘロインといいましょうか麻薬撲滅という観点から行われているわけですけれども、その一環として麻薬取締法の改正も行われました。
罰則の強化だとか中毒患者につきましての措置入院の制度も作られるというような方策も講じられております。
で、当時合わせて大麻取締法も改正されておりますが、私思いますのには、当時のそういった麻薬を中心とする薬物乱用状況という物を背景にいたしまして、わが国から薬物乱用の問題を一掃しようという一種の国民的な世論の盛り上がり、そういう背景のもとに関連法規である大麻取締法についても罰則の強化がはかられた。
当時は、大麻の乱用事例というのは私はそう多くはなかったと思いますが、罰則を強化することによって薬物乱用を一掃しようということで、この法律改正がはかられたというふうに考えます。
弁護人
そうすると、昭和38年当時に大麻使用による具体的な弊害というようなものはあったんでしょうか。
証人
具体的な弊害がどの程度あるかということについては私は承知しておりません。
」
2.第2次大戦前の日本における大麻の栽培風景は、1929年の第16回二科展に発表された清水登之氏の「大麻収穫」という次の絵のとおりである。清水氏は栃木県出身であり、その絵は1920年代の栃木県鹿沼地方での大麻収穫風景を描いたものである。(「地球維新 vol.2」扉の裏参照)
(※絵「大麻収穫」)
また、中山康直氏著の「麻ことのはなし」評言社2001年10月10日発行の46頁で農業絵図文献よりの引用で「古来から日本の各地の畑で見られた麻刈りの風景」という題で次の絵が紹介されている。
(※絵「古来から日本の各地の畑で見られた麻刈りの風景」)
さらに、昭和12年9月に栃木県で発行された大麻の生産発展を目的にして発行された「大麻の研究」という文献があるが、その45頁で日本における麻の分布図を引用しているのであるが、その内容は次のとおりであり、大麻が日本全国において縄文時代の古来から栽培利用されてきたことは明らかである。なお、「大麻の研究」の末尾で著者(栃木県鹿沼在住)の長谷川氏は次のように述べている。 「斯る折に本書が発刊されこの方面に関心を持つ人達に愛玩吟味されて日本民族性と深い因縁のある大麻に対する認識を新たにし、是が生産発展上に資せられたなら望外の幸と存じます。」(「地球維新 vol.2」6~7頁参照)
(※絵図「麻の分布図」)
大麻の栽培が日本の伝統的な文化財であることは、大分県日田郡大山町小切畑で大麻すなわち麻の栽培をしている矢幡左右見さんが1996年6月26日、文化財保存技術保持者として文部大臣から認定を受けたことからも明らかである。大山町のホーム頁でその記事の要約を次のとおり紹介している。このように、大麻の栽培者が文化財保存技術保持者として文部大臣から認定を受けているのであり、大麻すなわち麻を犯罪として取り締まることが不適切であることは、明白である。
「矢幡さんは、昭和6年に栽培を始め、49年から福岡県久留米市の久留米絣(かすり)技術保存会から正式な依頼を受けて粗苧の製造を始めました。以来、矢幡さんは毎年、粗苧20Kgを出荷しています。粗苧(あらそ)とは、畑に栽培され、高さ2メートルに成長した麻を夏期(7月中旬頃)に収穫して葉を落とし、約3時間半かけて蒸し、さらにそぎ取った表皮を天日で一日半ほど乾燥させて、ひも状にしたものです。粗苧は、国の重要無形文化財である「久留米絣」の絣糸の染色の際の防染用材として使われ、久留米絣の絣模様を出すためには欠かせないものです。しかし、栽培・管理の手間に比べて利益率が低いことから生産者は減少の一途をたどり、現在では矢幡さん一家を残すのみとなりました。久留米絣の模様は粗苧なしではできないといわれており、粗苧が無形文化財の保存・伝承に欠くことのできないものであるということから、今回の認定になりました。矢幡さんは、「ただ、自然にやってきたことだけなのに、とても名誉なことです。」と話しています。」
また、「麻 大いなる繊維」と題する栃木県博物館1999年第65回企画展(平成11年8月1日~10月24日)の資料集では、次のあいさつを紹介している。
「
ごあいさつ
麻は中央アジア原産といわれ、わが国への渡来も古く、古代より栽培されています。
表皮を剥いで得られる繊維は、他の繊維に比べ強靭で、肌ざわりがよく、木綿や羊毛、化学繊維が登場するまで、衣服や漁網、下駄の鼻緒の芯縄、各種縄などに用いられてきました。その一方では麻は特別な儀礼や信仰の用具に用いられ、現在でも結納の品や神社の神事には欠かせない存在となっています。麻は実用のみならず信仰・儀礼ともかかわる、まさに大いなる繊維でした。
ここでは、質量とも日本一の「野洲麻」の産地である足尾山麓一帯で使用された麻の栽培・生産用具、麻の製品、ならびに東北地方の一部で使用された麻織物に関する用具や麻織物を展示するものです。 麻がどのように生み出され、利用されてきたか、大いなる繊維「麻」について再認識していただければ幸いです。
おわりに、本企画展の開催にあたり、御指導御協力をいただきました皆様にこころより、御礼申し上げます。
平成11年8月1日 栃木県立博物館館長 石川格
」
そして、表紙の2頁目では、次の鹿沼市立北小学校校歌が紹介されているが、このような麻が第2次大戦後の占領米軍による占領政策でもって犯罪視されてしまったのである。
「
鹿沼の里に もえいでし
正しき直き 麻のこと
世の人ぐさの 鏡とも
いざ 伸びゆかん ひとすじに
」
(「地球維新 vol.2」213~217頁参照)
4.米軍による軍事占領下の1948年(昭和23年)7月10日に大麻取締法が制定されてからすでに56年が経過した。そして、1950年に日本全国で25118名いた大麻栽培者は、1998年には102名まで減少してしまった。この減少した理由は、毎年の免許更新手続きが面倒な大麻取締法による規制のためと安価で大量に生産できる石油化学繊維の台頭によって麻製品の市場がなくなったことによると思われる。
しかしながら、大麻には、次のような有益性があるのであるから(逆に大麻にはこのような有益性があるから、日本をアメリカ系の石油系産業の市場とするために占領政策として大麻産業を規制したのが大麻取締法である)、占領政策である大麻取締法の当否を根本からみなおすべき時期に来ていると考える。
5.大麻の有益性(「地球維新 vol.2」8~11頁、189~195頁参照)
大麻は、刑事罰で取り締まる必要がないものであるばかりか、紙用・繊維用・燃料用・食用・薬用等人類にとって貴重なる植物である。
第二次大戦後、日本で大麻取締法の制定を強行したアメリカを始めオランダ、ドイツ、スイス、カナダ、オーストラリアなどでは大麻を地球環境保護の立場から見直す動きがでているが、大麻には次のような有益性があると指摘されている。なお、アメリカでは建国当時は大麻の栽培を奨励したのであるが、1930年代になって石油系の化学繊維が開発され、大麻とその市場が競合することが大麻の禁止をした社会的背景であると思われる。
(1)大麻から繊維がとれかつ土壌を改良する働きがある
大麻は栽培密度と収穫時期を調節することにより、絹に近い繊細な衣類や船や工場で使うロープまで、さまざまな品質の製品が作られる。しかも大麻の栽培には化学肥料が不要で、熱帯から寒冷地、沼沢から乾燥地帯まで多様な気候・土地条件のもとで育ち、かつ大麻の根の働きによって土壌自体を改良する働きがある。
(2)大麻から紙や建築用材、さらには土壌分解可能なプラスチック等ができる。
森林は人類に酸素を供給してくれるなど貴重な資源であるが、日本を始め先進国が紙や建築資材にするために森林の大規模な伐採を行なっており、地球環境の破壊が日々進行している。大麻は一年草であり数カ月という短期間で成長し、その茎は紙の材料になったり建築用の合板に加工でき、さらには土壌に分解可能なプラスチックも出来るため、大切な森林を守ることが出来、またゴミ問題の解決に役立つものである。「独立宣言」を起草したアメリカ第3代大統領のトーマス・ジェファーソンは、自分の農場で大麻を栽培し、製紙工場も持っていた。また、「独立宣言」の起草文は、大麻から作られた紙に書かれて、アメリカの国旗や紙幣までも大麻から作られたとのことである。なお、中国にある仏教の教典も大麻の紙から出来ているとのことである。また、1940年代にはフォード社が大麻の繊維分を使って鉄よりも軽くてかつ丈夫な車体の製作に成功している程である。
(3)大麻から燃料ができる
大麻の茎や葉を発酵させることにより、燃料(エタノール)が出来る。また、大麻の種にもオイル分が含まれている。地球の温暖化は化石燃料(石油、石炭、天然ガス)が放出する二酸化炭素が大気中に蓄積していくために生じる。しかし、大麻を燃料用に栽培すれば、成育途中で光合成により二酸化炭素を酸素に変えるので、地球の温暖化を防ぐことが出来る。
(4)麻の種の有効利用
麻の有効利用のなかで極めて注目すべきものが、種の有効利用である。この種の有効利用については、日本ではほとんど注目されていないが、医療用・食用・燃料用など多目的に利用することができるので、今後その有効利用について調査・研究・開発をする価値が大いにあると思われる。そして、大麻はどこにでも生えるので、地球規模で生じると予想される食料不足を解決する可能性がある。
1)麻の種の成分の分析
(オランダ アムステルダムにあるGREEN LANDSという麻製品を取り扱っている店が発行している資料に基づいてまとめた。この資料は、ハンガリーのブタペスト大学の調査を参考にしています。)
蛋白質 約23%
油分 34%(この油分には、人間にとって必要な必須脂肪酸であるリノール酸とα-リノレイ酸が3対1という理想的な割合で含まれている。)
繊維質 20%
栄養素としては
ビタミンB1.2.3.6,E,C
カルシウム
2)用途
1.種は、中国では5穀の一つに数えられているように、有効な食料である。
2.種に含まれる油分は燃料になる。
3.種に含まれる油分は、皮膚の健康によく、アトピー性皮膚炎や火傷、花粉症などにも有効といわれている。
また、種自体、便秘などの胃腸薬として市販されているし、七味とうがらしの中にも入っているのである。
(5)大麻から医薬品ができる。
古代から人類は、大麻を安全な医療品として使用してきた。喘息、緑内障、てんかん、食欲減退、憂鬱などに効果があるほか、ストレスの解消にもなる。日本でも印度大麻煙草が、喘息の薬として、明治以降第二次大戦後まで市販されてきたが、格別の副作用や弊害は何ら報告されていない。
小林司氏は別添「心にはたらく薬たち」一九二頁~一九三頁の中で大麻の治療効果について次の様に述べている。
「一八九五年(明治二八年)一二月一七日の毎日新聞にはこんな広告がのっている。「ぜんそくたばこ印度大麻煙草」として「本剤はぜんそくを発したる時軽症は一本、重症は二本を常の煙草の如く吸うときは即時に全治し毫も身体に害なく抑も喘息を医するの療法に就て此煙剤の特効且つ適切は既に欧亜医学士諸大家の確論なり。」
日本薬局方にも印度大麻として載っていたくらいだから薬効があると考えられていたに違いないが、大麻は本当に薬効をもっているのだろうか。
一九七四年には、フレデリック・ブラントンが大麻を使って眼内圧を下げ、緑内障の治療をした。二年後には、ミシシッピー大学でも、緑内障に有効なことが確認され、フロリダ、ニューメキシコ、ハワイ、インディアナとイリノイの各州では、マリウァナを医学に使うことが合法化された。また、その後ガンに対する化学療法に伴う副作用としての嘔吐を抑えるために、大麻が一番有効なことが確認されている。
米国保健・教育・福祉省の「マリウァナと健康」第五リポート(一九七六年)によると、マリウァナは、眼内圧降下、気管支拡張、抗けいれん、腫瘍抑制(抗ガン作用など)、鎮静睡眠、鎮痛、麻酔前処置、抗うつ、抗吐、などの作用をもっており、アルコールや薬物依存の治療などに有効だ、という。アルコール依存に効くのは、マリウァナがストレスを減らし、怒りにくくするかららしい。
もっとも古い精神薬の一つであるマリウァナが世界中に広まり、禁止される一方では、二億人もの人たちが毎日喫煙しているという歴史と現状とを私たちは見てきた。その薬理学的特性は一九七〇年代末になってやっと明確になった。その毒性は使用量と関係があるようだ。量が過ぎれば、酒でも睡眠薬でもスパイスでも毒になる。マリウァナの有毒性でなしに有益な点を明らかにして、プラスの面を活用するのが賢明な道というべきであろう。」
前述したハーバード大学医学部精神医学科のレスター・グリンスプーン氏もその著「マリファナ」「別冊サイエンス心理学特集不安の分析」の中で次の様に述べている。
「カンナビス・サテバは繊維原料として、土人が宗教的儀式に使う薬として、そしてインドでは特に薬剤として用いられ始めてから長い歴史を持つ。一九世紀に西洋では、さまざまな種類の病気や不快感、たとえばセキ、疲れ、リューマチ、ぜんそく、振戦譫妄(しんせんせんもう=ふるえや妄想)、偏頭痛、生理痛などに広くこの薬物が処方された。」
厚生省薬務局麻薬課発行の「大麻」57・58頁でも次の様に述べている。
「大麻が医薬品として使用された歴史は古く、中国では紀元前二〇〇〇年代に鎮静剤として使われていたようである。また、紀元前二〇〇年頃にも中国の魏で大麻を配合した全身麻酔剤が使用されていたとの記録がある。
インドにおいても一〇〇〇年も前から、大麻が医薬品として使われていた。即ち”アユルベダ”と呼ばれるインド古来の医薬品体系や”Unami”と呼ばれるアラビア(回教徒社会)から伝来した医薬品体系において、不眠症、神経過敏症、消化不良、下痢、赤痢、神経痛、神経炎、リューマチ、フケ、痔、らい病、便秘等に使われていた。また催淫剤としても用いられていた。アルゼンチンでは破傷風、うつ病、疝痛、淋病、肺結核、喘息等の万能薬として、ブラジルでは、鎮静、催眠剤、喘息薬として、またアフリカでは土着民の間で炎症、赤痢、マラリヤ等に用いられていた。欧米に目を転じてみると、イギリスにおいては、一八〇〇年代にインドで生活したことのあるO’shaugnessyが、心身の苦悩の治療や疼痛、筋肉痙れん、破傷風、狂犬病、リューマチ、てんかんに使用しているし、アメリカでも一八〇〇年代に破傷風から肺結核までの万能薬として使われていた。」
「わが国においても、大麻の医薬品としての応用について記した幾つかの文献がある。
一五九〇年に中国の李時珍により編さんされた「本草網目」(一八九二種の医薬品が収載されている)がわが国にも伝えられている。同書には、”麻仁酒”と云う医薬品が紹介されている。その効能、用法は「骨髄、風毒痛にして、動くこと能ざるものを治す、大麻子の仁を取り、沙香袋に盛り酒を浸してこれを飲む」と説明されている。」
「近代に入ると「万病治療皇漢薬草図鑑」に大麻を煙草に混ぜて吸うとぜんそくに効果があり、また便秘、月経不順によいと記されている。」
(6)大麻繊維には免疫力を上げ、電磁波の悪影響を防ぐ効果があるとの見解がある
萩原弘通氏著の「免疫力を上げる生活」(株式会社サンロード社刊)293頁~297頁では「絹・麻と和紙で身を守る」と題し、次のとおりの指摘がなされている。
「私は、悪い電磁波を防ぐ物質は、かねて金属よりも絹、麻といった古来の繊維にあるのではないか、そして和紙も同様ではないかと想定していました。その理由は、絹の場合、桑(桑の有効性はもっと研究され、認識されるべきです)を食べたカイコが、マユを作って中でサナギ時代は全く自分で行動することができません。動けないさなぎの安全をはかるため、口から出すマユ糸にはかれらの免疫力が与えられていると思われます。そのあたりに悪い電磁波に対抗できる何かがあるのではないかという想定です。
麻はもっと理由がはっきりしています。ただの繊維ではなく、邪気を払い除ける祓(はら)いの用具として発達し、古代の昔から神事をつかさどる忌部(いむべ)-後に斎部-が栽培、加工してきました。ご幣(へい)は和紙で作りますが、それ以前は麻の繊維を束ねていたことでしょう。また神聖な場所は必ず麻縄で囲って外部と遮断しました。ビニールではいけないのです。忌部は阿波国で式内社・大麻比古神社を中心に吉野川流域に発展し、紀州から伊勢、遠江、駿河と東進します。おそらく一~二世紀前後でしょう。伊豆で三島大社の祭神と婚姻関係を結び、伊豆七島から安房へ上陸して安房神社をつくりました。神道における祓いとは、心身にまとわりつく邪気(けがれ)を取り除く儀礼ですが、今日の人の目に見えない邪気の中にはいろいろあって、良くない霊魂(霊的エネルギー)、邪念(念波の中の邪悪なものでこれも微弱エネルギー)からも防御しようとしました。忌部たちはやがて麻作りから発展したであろう和紙の製造を担当することになります。麻を紙におきかえるようになったことは、
和紙にも麻同様の力(ここでは祓いの用具としての実行性)がある事を認識したからだと思われます。江本勝氏によって「恨み」というメンタル波動は、肉体的には腸と皮膚波動と100%共鳴同調するとともに、神経細胞がいかれるだけでなく「超短波」波動を呼び込む事がわかりました。その逆もありえるわけで「超短波」波動の障害を受けていると「恨み」を受け止めてしまうわけです。そうした「超短波」「電磁波」波動を麻、和紙には防御する力がありそうだ、と私は推測してきたのです。この想定が正しければ、コピー機の周囲を麻でくくってしまうことが、〆縄で神聖な場所を囲う事と同じ論理が成立するかもしれません。」
「和紙などは、むしろ私たちの免疫力を上げる機能さえ持っています。和紙の原料は楮(こうぞ)、ミツマタ、雁皮などで、これにマニラ麻、桑皮、麻ぼろ、木材パルプなどを加えて、古来の手すき法で作っていますが、このなかで(未分析ですが)楮(こうぞ)の波動が良いのではないかと推定しています。前に、エジプト原産のモロヘイヤの波動について述べましたが、すばらしい波動をもっていました。モロヘイヤは麻の一種です。あの繊維で紙を作る構想もあると聞いています。完成したら、その波動を調べてみたいものです。こうした事から、技術者は一笑に付すことなく、日本古来の天然繊維を使って、いい電磁波防御服を作ってもらいたいものです。そして、日本の家屋が障子やふすま、つまり和紙で仕切られていることが、寒さを防ぎ風をさえぎっているばかりではない事を再確認したいものです。」
(7)バイオマスエネルギーにおける大麻の有効性
人類が排出する温室効果ガスによる地球温暖化問題は、最も深刻な環境問題をいわれている。そして、温室効果ガスの中でCO2は最も大きな影響力を有しその排出量の7割以上は化石燃料の燃焼に起因すると考えられている。したがって、地球温暖化を抑止するためには、エネルギーシステムからのCO2排出量の大幅な削減が必要である。そして、バイオマスは生育過程においてCO2を吸収するので、燃焼に伴うCO2排出量はゼロとみなすことができるのである。
バイオマスは、植物が光合成によって、太陽光と二酸化炭素から作り出したものであるが、植物が一年間に地球上で成長した量、すなわち一次生産量は、石油換算で約800億トンに相当し、全世界で消費しているエネルギーの約8倍に相当するといわれている。
大麻は、その生育期間が約100日であり、他方木材の場合にはその生育期間が50年から100年(短期サイクルのハイブリッド・ポプラでもその生育期間は5年である)であるので、大麻をバイオマスエネルギーとして使えば、木材よりはるかに有利にバイオマスとして利用できる。また、バイオマスのために植林をすれば、食料生産のための農地が減少することが考えられるが、大麻の場合には、その種が有効な食料源になるので、そのようなことはない。逆に、麻の生産は、バイオマスエネルギーと食料が同時に生産されるという有利さがある。
また、大麻の種に含まれている有用な成分の利用や茎に含まれているセルロースの有効利用は、人類の健康とゴミ問題の解決のためにも極めて大切である。
(8)麻産業の重要性
日本における環境問題・食料問題・エネルギー問題・雇用問題に対する今後の課題としては、環境循環型で自給自足を目指した経済・エネルギー政策の確立が必要である。
そのためには、現在の環境破壊型の産業構造を転換する必要がある。具体的には、農業・漁業・林業など自然生態系に即した産業の現代的回復が必要である。その中で紙・建材・生分解性のプラスチック・食料・エネルギー・医薬品などを生産できる麻産業の果たす役割は、極めて大きい。日本では例えば、製紙会社は木材パルプから紙を生産しているが、その既存の技術と設備を生かして麻パルプから紙を生産することが可能である。また、生分解性のプラスチックをつくる技術と設備を既に日本の企業は有していると思われる。このように日本企業の有する技術と設備を生かしながら、麻産業を日本に現代的に復活することが可能である。
また、大麻から生産をすることができる製品は、紙・建材・燃料・衣類・食料・医薬品など2万5000から5万にものぼるといわれている。麻産業の活性化は、農業の育成と雇用確保にもつながるものである。
第2.大麻取締法の違憲性2
大麻取締法の保護法益が、過去の判例のように「国民の保健衛生」であるとしても、大麻には、刑事罰をもって規制しなければならない有害性がなく、大麻取締法は、憲法(第13条・第14条・第19条・第21条・第25条・第31条・第36条)に各違反する。
大麻には致死量がなく、アルコールやニコチンタバコに比べて心身に対する作用は極めておだやかであり、個人の健康上も格別に害のあるものではない。
犯罪とは人の生命・身体・財産という具体的な保護法益の侵害であるが、大麻取締法違反事件においてこの様な法益侵害はまったくみられないのである。
原判決は、このような違憲の法律を適用して、有罪判決をしているのであるから、刑事訴訟法第380条の法令適用の誤りがあるので、破棄すべきである。
前述したように、厚生省の麻薬課長は次のように証言しており、大麻取締法制定当時に大麻による「国民の保健衛生」上の被害はまったく無かったのである。
「
弁護人
昭和20年から23年当時ですけれども日本国内で大麻の使用が国民の保健衛生上問題になるというような社会状況はあったんでしょうか。
証人
20年代の始め頃の時代におきまして大麻の乱用があったということは私はないんではないかというふうに思います。
弁護人
そうしますと、この大麻取締法を制定する際に、大麻の使用によって具体的にどのような保健衛生上の害が生じるのか、ということをわが国政府が独自に調査したとかそういうような資料はないままに立法されたと考えて宜しいわけですか。
証人
これは推定するほかないんでございますが、そういう資料はなかったんではないかと。
」
また、昭和38年に大麻取締法が従来あった罰金刑が廃止され、懲役刑も強化されたが、前述したように、厚生省の麻薬課長は次のように証言しており、当時大麻使用による具体的な弊害というようなものは社会的に存在しなかったものである。
「
弁護人
昭和38年に罰金刑を廃止するとかつ懲役刑についても3年以下のものを5年とか7年にするというふうにかなり厳しくされたわけですが、これはどういうような理由からなんでしょうか。
証人
この当時の法律改正の背景と致しましては、昭和30年代末期にわが国では御存知のとおり、ヘロインを中心と致します薬物乱用がずい分はやりまして非常に深刻な社会問題として受けとめられていた状況がございました。
それで当時の状況を記録によって見てみますと、実にさまざまな対策がこのヘロインといいましょうか麻薬撲滅という観点から行われているわけですけれども、その一環として麻薬取締法の改正も行われました。
罰則の強化だとか中毒患者につきましての措置入院の制度も作られるというような方策も講じられております。
で、当時合わせて大麻取締法も改正されておりますが、私思いますのには、当時のそういった麻薬を中心とする薬物乱用状況という物を背景にいたしまして、わが国から薬物乱用の問題を一掃しようという一種の国民的な世論の盛り上がり、そういう背景のもとに関連法規である大麻取締法についても罰則の強化がはかられた。
当時は、大麻の乱用事例というのは私はそう多くはなかったと思いますが、罰則を強化することによって薬物乱用を一掃しようということで、この法律改正がはかられたというふうに考えます。
弁護人
そうすると、昭和38年当時に大麻使用による具体的な弊害というようなものはあったんでしょうか。
証人
具体的な弊害がどの程度あるかということについては私は承知しておりません。
」
さらに、前述の厚生省の麻薬課長は次のように証言しており大麻は過去有用な医薬品として認められていたものである。
「
弁護人
この大麻ですけれども、医薬品として認められていたということはなかったでしょうか。
証人
かつては、医薬品をして認められていた時期があったようでございます。
弁護人
それは、いつからいつまでですか。
証人
私ちょっとその当時は明示出来ませんですが、1950年代か60年代の初めくらいまではそういうものが認められていたということは言えるかと思いますが、そのスタートがいつになってるか、私はっきり記憶ございません。
弁護人
その医薬品として認められていたものは、インド大麻チンキと言われてるものじゃありませんか。
証人
はい、インド大麻が原料で作られていたと思います。実際のものはですね。
弁護人
そうすると、国産の麻は特に規制はなかったわけですから、特別に医薬品としてもし使うとしても民間の漢方薬程度で使っていたとこういう程度でしょうか。
証人
それは戦前においてという意味でございましょうか。
まあ、そう推定するほかはないと思うんです。現実にそういうものが国産のものが使われていたかどうかということは、私ちょっと承知致しておりません。
弁護人
証拠等関係カード、弁護人請求証拠番号16「心にはたらく薬たち(小林司)」と題する書籍の2ページを示す。
まず、証人はこの本を御覧になったことありますか。
証人
ございません。
弁護人
ここに「1895(明治28)年12月17日の毎日新聞にはこんな広告がのっている。ぜんそくたばこインド大麻煙草」として「本剤はぜんそくを発したる時、軽症は1本、重症は2本を常の巻煙草の如く吸うときは、即時に全治し毫も身体に害なく抑も喘息を医するの療法に就て此の煙剤の特効且つ適切はすでに欧亜医学士諸大家の確論なり」」とありますが、今言ったような形で宣伝されて使われていたということは御存知ないですか。
証人
私ちょっと承知しておりませんです。
弁護人
で薬局方では、昭和27年頃まで、インド大麻は医薬品として認められていたわけですね。
証人
……。
弁護人
それで宜しいですか。
証人
1950年代から60年代の初めくらいまではなかったかと思うんですが。
弁護人
1951年の第5改正日本薬局方までは収載されていたというようなことはどうですか。
証人
…。
弁護人
それで第6改正日本薬局方において削除されたと。
証人
ちょっとお答えになるかどうかあれですが、薬局方は最近では大体5年に一遍くらいずつ変えられてるようですが、歴史的に見ますと大体これは規定があるわけじゃないですが、当時は多分10年に一遍くらいずつ変えられていたと思います。
弁護人
この第6改正日本薬局方で、インド大麻が削除された理由なんですけれども、それご存じですか。
証人
私、直接承知致しておりません。
弁護人
私、今引用しました小林司さんの記事ですと、効果はあるし身体に害もないんだというような記載になっているもんですから、こういうものを削除するには、それなりの理由があったんではないかと思いますがその辺はわかりませんでしょうか。
証人
私、ちょっとそれはわかりかねます。
ただ一般論で申しますと、日本薬局方これは私も直接日本薬局方の仕事を今まで担当したこともございませんので、一般的な知識で申し上げますと日本薬局方に収載される品目というのはそもそも医療の世界でかなり使用頻度が高い非常に汎用されるものだということが一つの条件でかつその有用性が高いともうしましょうかそういうものが重要な医薬品として日本薬局方に収載されるというのが一般的な考え方だと思います。ですから、新たに入って来るものも勿論ございますし、削除されるというようなものにつきましては大体有用性が低いということその有用性と申しますのは効果とか副作用をあわせまして評価した場合に有用性が低くなって来たと或いは使用頻度が非常に低くなってきたというような場合にはずされるというようなことは一般論としては申し上げられることと思います。
弁護人
この薬局方で認められていたインド大麻草エキスとかチンキとか言われるものですけれども、喘息の薬とか鎮痛・鎮静剤で使われていたようですが、その使用による具体的な弊害というものが何かあったわけでしょうか。
証人
そういう用途での弊害がどの程度あったかということについて、私今までデーターを見たことはまったくございません。
弁護人
そうしますと、インド大麻草が医薬品として使われる際に副作用とかその乱用が問題となってこれは取り締まらなくちゃいけないというような証拠というものはないと考えて宜しいわけでしょうか。
証人
当時医薬品として使われていたものが、正規の用途以外に横流れしまして乱用されたということはないんじゃないかと思います。もしそういうことがあったとすれば何らかの形でやはり一つの薬物乱用の歴史として残るんじゃないかと思うんでございますがそういうものを私今まで読んだことはございませんです。
弁護人
このインド大麻チンキを治療で使ってる際にその為にその患者さんに悪い影響がでるといいますか禁断症状が出るとかそれを使った為に判断力を失って人に危害を加えるかもとかそういうような事例というものはあったんでしょうか。
証人
私承知致しておりません。
」
第3.大麻取締法の違憲性3(大麻取締法第4条4号・第25条の違憲性について)
大麻取締法第4条4項は、大麻に関する広告を禁じているが、右規定は大麻に関して公に意見を発表することを刑事罰(同法第25条で1年以下の懲役または20万円以下の罰金に処される。)でもって一律に禁止するものであり、憲法第13条・第19条・第21条に明白に違反するものである。
このような明白な違憲規定を有する大麻取締法は、法律それ自体の保護法益が不明確なこととあいまって、大麻取締法全体が違憲と評価されるべきである。
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〔桂川さん裁判〕
レポート/丹波童心
地元関西を中心に全国から集まった支援者で、約40名の傍聴席は満席となり、中に入れない人が出る状態でした。
10分ほど遅れて開廷したのですが、その待ち時間に丸井弁護士が検察官に対し、話しかけました。「証拠・証人の採用に不同意のみでは、大麻が有害・無害の実質的論議ができない」という趣旨の発言で、検察官の誠意の不足をたしなめる場面がありました。
最初は丸井弁護士からです。
そもそも大麻取締法の成立過程に疑問があり、米国の間違った思い込みで、戦後占領米軍の意向によって成立したこと。大麻栽培は産業として必要であり、有益であること。大麻取締法の成立以前の日本では産業として定着しており、大麻取締法(栽培の免許制)により職業選択の自由が奪われ、違憲である。
大麻取締法で大麻に関する公告を禁止するのは、憲法で認められている思想表現の自由を侵している。
国民の保健衛生の為とされているが、大麻取締法がそれらの保護法益と結びつかないこと、保健衛生の問題で言えば大麻はタバコなどより問題が小さいこと、それらの嗜好を制限するのは幸福追求権を侵害し違憲である。
丸井弁護士自身が昭和61年に長野地裁伊那支部で行った当時の厚生省麻薬課長への証人尋間の公判資料などを論拠として、大麻取締法違憲論が述べられました。
次は金井塚弁護士からです。
検察側から大麻有害の根拠として提出されていた、以下4点の資料に対し具体的に多くの点に関して反論がありました。
資料1は厚生労働省外郭団体、財団法人「麻薬・覚醒剤乱用防止センター」の薬物乱用防止「ダメ。ゼッタイ。」ホームページの抜粋。
資料2は「薬物事件執務提要(改訂版)」最高裁判所事務総局刑事局監修、法曹会発行の352P~403P抜粋である。
資料3は「薬物事犯に関する裁判例」警察庁生活安全局薬物対策課編で、昭和31年から平成9年までの大麻と覚醒剤事犯の判例集。
資料4は「欧米諸国における薬物解禁論の非論理性と危険性」警察学論集第50巻5号で香川県警察本部長の手になる。
これら4点の資料は、ある資料で肯定されたことが、別の資料では否定されたりと、資料間相互の整合性を欠いており、それでは、大麻の作用について正しく把握していることにはなりません。資料の矛盾点は指摘しきれないほどです。
「ダメ。ゼッタイ。」ホームページの大麻に関する記述が、真実と大きくかけ離れた内容であることは皆様もご存知の通りです。
弁護側弁論で終了し、被告人発言の機会はありませんでしたが、被告席の桂川さんは長期勾留にもかかわらず、健康そうに見えました。
次期判決公判を3月11日にすると決めて、閉廷となりましたが、退廷する桂川さんに恒例の拍手は高く鳴り、裁判官からも検察官からも拍手に対してお咎めはありませんでした。もちろん私も力いっぱい手を叩きました。
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レポート/バング
丹波童心さんの投稿にあるように1003号法廷の傍聴席は満席で、開廷前の通路はイギリスで行われた大麻非犯罪化デモをほうふつとさせる雰囲気がしていました。
桂川さんは入廷の際、満員の傍聴席に軽く会釈し、手錠に腰ひも姿ではありましたが穏やかな表情での入廷です。若い裁判官が、耳を傾けるように聞いていた場面が印象に残ったので話したいと思います。
丸井弁護士の弁論で、大麻取締法の見直しを含む、一歩踏み込んだ見解が示された(61年)長野地裁伊那支部の平湯真人裁判長が述べた判決理由を代弁した時の事です。
「人への作用はそれまで考えられていたほど強くなく、他の薬物、ことにヘロイン、コカイン等の麻薬や覚せい剤に比較すればかなりの程度作用の弱い薬物であること、 また、慢性的使用の人格荒廃、凶悪犯罪等の弊害はアルコールの方が具体的に危険である事」
「アルコール、ニコチン煙草と比べて大麻の規制は著しく厳しい」
「刑事責任は行為の違法性と合理的な均衡を保たれるべきであり、右観点からは少量の大麻を私的な休息の場で使用し、かつその影響が現実に社会生活上害を生じなかったような場合にまで懲役刑をもって臨むことに果たしてどれほどの合理性があるかは疑問はなしとせず、少なくとも立法論としては再検討の余地があると解される」
との弁論に、若い裁判官が頷いている様に感じました。
最後に丸井弁護士は裁判長に対し、刑の均衡を保つ為などという理由で逃げていると強い口調で語られていました。
次回公判は3月11日PM4時、大阪高等裁判所1003号法廷で「判決」となります。
一人でも多くの傍聴支援者で集い、日本の大麻裁判に対する国民の関心の高さを裁判所に見せつけてやりましょう。
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(わ)第219号
起訴状
平成16年7月9日
××地方裁判所 殿
××地方検察庁 検察官事務取扱副検事 岩濱 邦年
下記被告事件につき公訴を提起する。
記
本籍 ××××
住居 ××××
職業 ××××
勾留中求令状 ××××
昭和53年1月13日生
公訴事実
被告人は,みだりに,平成16年6月19日午前7時14分ころ,××所在の被告人方において,大麻23.98グラムを所持したものである。
罪名及び罰条
大麻取締法違反 同法第24条の2第1項
(わ)第268号
起訴状
平成16年8月20日
××地方裁判所 殿
××地方検察庁 検察官検事 吉田 稔
下記被告事件につき公訴を提起する。
記
本籍 ××××
住居 ××××
職業 ××××
××××
昭和53年1月13日生
公訴事実
被告人は,みだりに,平成15年10月ころ,××所在の被告人方において,プランター内のロックウール上に大麻草の種子をまいて発芽させた上,平成16年4月ころ,同所において,発芽した大麻草の枝を別のロックウール上に移植して,平成16年6月19日までの間,同所において,これを育成させ,もって,大麻草8本を栽培したものである。
罪名及び罰条
大麻取締法違反 同法第24条第1項
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昨日締めでお願いしていた2回目の署名集約、181名の方から寄せて頂きました。前回の127名の分と合わせて、累計308名の方から自筆による署名をお預かりしたことになります。重みを感じています。ありがとうございました。頂いた署名は今日午前中、弁護士事務所宛に送付しました。
署名活動の継続については、次回公判などの様子を確認したうえで改めてお伝えします。
桂川さんの次回公判は14日(金)午後3時30分から大阪高等裁判所です。傍聴レポートをお伝えする予定です。ご都合のつく方はぜひ傍聴にお出かけ下さい。
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MHさんは平成16年6月19日午前7時25分、6名の捜査員による家宅捜索を受け、大麻所持の現行犯で逮捕された。
「現行犯人逮捕手続書(甲)」によると、「被疑者に対し逮捕する旨伝えたところ、「わかりました」と申し立て素直に応じた」そうだ。
自室で栽培していた大麻8株も同時に押収され、拘留中に栽培で再逮捕された。
MHさんには大麻取締法での前科があり、執行猶予期間は終えていた。だが、所持23.98グラム、栽培8本の再犯は重いとして、平成16年10月25日、1年6月の実刑判決を受け、現在収監中である。
一審では執行猶予の可能性に期待もあったので、敢えて違憲論を主張することもなかったが、実刑判決を受け、違憲論を前面に立てて控訴することを決め、友人を介してTHCに協力要請があった。
再犯とはいえ、所持23グラム栽培8本で実刑1年6月はあまりに重いのではないだろうか。営利目的でもなく、一切の譲渡もなかった。彼に実刑を科して刑務所に服役させる社会的な必要があるだろうか。
弁護人は、MHさんが前回逮捕された際に国選弁護人として担当した弁護士を、今回は私選として選任した。
THCは弁護士と連絡を取り、MHさんの意思を確認し、大麻についてはあまりご存知ないという弁護士に各種資料を提供し、控訴趣意書は大麻取締法違憲論を前面に出し、大麻の有害性について法廷の場で検証するため大麻の有害性についての鑑定請求も行うことになっている。
MHさん本人は、お元気な様子。正月はお菓子やお節料理が出され、堪能したとの手紙が届いた。
大阪拘置所に拘留中の桂川さんとも手紙のやりとりを始めた様子。
桂川さんからもMHさんの支援をよろしくとの手紙が届いた。
THCがMHさん宛に送った前回の手紙に、桂川さんの減刑嘆願署名の用紙を入れておいたところ、MHさん自筆で署名のうえ、手紙と一緒に送ってくれた。獄中からの減刑嘆願署名。
MHさんについても、THCは減刑嘆願署名を裁判所に提出する予定です。
その節は、皆様のご協力をよろしくお願いします。
MHさんの裁判について、THCは弁護士に資料提供や意見を提示するとともに、裁判の様子を継続的にレポートします。
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