大麻、欧州「容認」へ傾斜
朝日新聞 2001年(平成13年)3月27日 8面「世界発2001」
ヘロインやコカイン、覚せい剤などに比べ、中毒性が低いとされる大麻。個人が使う限り罰しないというオランダの先駆的な施策が有名だが、他の欧州諸国でも最近、これに追随する流れが定着してきた。取り締まりでは根絶が難しい現実を「容認」する動きだ。しかし、やみ市場や密輸といった問題もはらむ。欧州連合(EU)の中で、大麻を含めた「麻薬ゼロ社会」を掲げる国はスウェーデンぐらいになってしまった。(ハーレム〈オランダ北部〉=山本敦子)
「少量所持、訴追免除」オランダにならえ
ハーレム氏のノル・バンシャイクさん(46)は、大麻愛好家の世界ではちょっとした有名人だ。大麻を客に販売する「コーヒーショップ」を三店と大麻博物館を経営する。目下、ブリュッセルにも、栽培指導や吸引コーナーがある博物館をつくる計画を進めている。ベルギーがこの一月、大麻の少量所持や個人使用を、他者に迷惑をかけないなどの条件つきで訴追しないことを閣議で決めたからだ。
他のEU諸国も同じような動きをみせている(※表)。シラク大統領の「オランダの政策は欧州にとって害悪だ」という発言が外交問題に発展したフランスでさえ、訴追免除に転じた。ドイツは州によっては、販売を認めている。
背景には、大麻を完全には駆逐できないというあきらめがある。ベルギーの新政策づくりにかかわったバート・レマンス氏は「1990年代の世界規模での大麻使用の増加は、30年以上の厳しい取り締まりが失敗だったことを物語っている」という。
「麻薬と麻薬中毒の欧州監視センター(EMCDDA)」によると、EU内で「少なくとも一度は大麻を試した」人は約4千5百万人。若年層に特に多く、18歳では4割、15~16歳では25%に達した。
個人使用を取り締まろうにも、警察や検察の陣容が追いつかない。しかも、厳しく取り締まってきた国の経験者数が、寛容なオランダより少ないわけではない(※グラフ)。
難しい駆逐、やみ市場・密輸に問題
また、ベルギー・アントワープ市の依存症専門医、スベン・トッズ氏は「吸引使用が多い大麻はたばこ同様、肺などに負担をかける。だが禁断症状は少なく、週に数回ぐらいなら、ヘビースモーカーよりずっとましだ」と説明する。こうした大麻の害の認識が容認派の根拠となっている。
大麻を入り口に、より強い刺激を求めて他の麻薬に移行するという説も、医学的には立証されていない。オランダ保健省依存症対策課のボブ・カイザー課長は「身体的な誘惑よりは、大麻と他の麻薬が市場で混在することによる社会的誘惑の方が危険だ」と語る。例えば、やみ市場の売人は依存者を増やすため、大麻を求める若者に他の麻薬を無料で与えたりする。オランダが大麻販売を認める目的の一つは、若者をやみ市場から遠ざけることだ。
だが、「容認」は「合法化」ではない。EU諸国は、大麻を規制する国際条約を批准しているため、合法化には踏み切れない。オランダの販売も訴追されないだけのことだ。栽培も原則禁じられている。
栽培と輸入が禁止されると、コーヒーショップは仕入れをやみ市場に頼る。大麻は依然として犯罪組織の大きな収入源だ。
一方、ベルギーは使用は認めたが、売買は禁じたままだ。代わりに少量の栽培を認めた。だが、少量の定義が明確でなく、売人が出現するのは時間の問題とみられている。「完全禁止も合法化もできない。われわれは矛盾のとりこになっている」。カイザーさんは自嘲気味に語る。
根絶めざすスウェーデン、麻薬の授業/強制収容措置も
「大麻使用が減らないから、受け入れるというのは敗北主義です」。スウェーデンのマロウ・リンドホルムさんの口調は厳しい。麻薬問題に取り組む非政府組織「ハッセラ北欧ネットワーク」の事務次長。昨年まで欧州議会の議員でもあった。98年、欧州議会に大麻の個人使用容認へ向けた加盟国の政策調和が提案された。反対の急先ぽうに立ち、提案を撤回させたのがリンドホルムさんだった。
60年代前半、米国の反戦運動とともに大麻と覚せい剤が、スウェーデンに流れ込んできた。麻薬欲しさの強盗などが社会問題化した65年、政府は医療保険での麻薬処方を始めた。だが、依存者が薬をほかに回すなどして中毒がかえって激増し、70年代から厳しい対策へと再転換した。
麻薬についての授業を学校に取り入れ、友人の誘いをどう断るかなどを具体的に教えている。麻薬使用がわかった場合、裁判所の判断で自治体が使用者を強制的に更生施設に収容する措置がとられている。その結果、70年代初めに15%近かった15歳の麻薬体験率が、80年代後半には5%以下に減った。
だが、90年代に入り、再び増加に転じている。リンドホルムさんは「政府と自治体が更生施設を減らすなど手を抜いてしまったからだ。麻薬との戦いには終わりがないのに」と残念がる。「何世紀も吸われ続け、文化の一部であるたばこでさえ、禁煙が叫ばれる時代。歴史が浅く、害もある大麻をなぜ今、受け入れなければならないのですか」。
※資料‐表(EMCDDAなどの調べ)
■大麻:
中央アジア原産のアサ科の植物。古代から繊維として利用されたほか、高揚感や酩酊感などをひきおこす物質を含むため儀式や治療にも用いられた。1960年代、米国の若者の間で流行、世界中に広がった。■オランダの大麻政策:
1976年に薬物法を改正し、社会が看過できない危険があるヘロインやコカインなどの麻薬と大麻を区別。18歳以上の30グラム未満の大麻所持は訴追されない。コーヒーショップでの大麻販売は、(1)一回の販売量が5グラム以下、(2)18歳未満への販売禁止、(3)公共の秩序を乱さない、などの条件を満たせば認められる。■欧州の主な国の大麻政策:
【デンマーク】 少量の大麻所持については警告のみで対応するよう、検察長官が警察に勧告。
【ドイツ】 すべての麻薬の少量所持は、「第三者に迷惑をかけない」、「未成年者が関与しない」、「個人使用目的である」、などの条件を満たせば訴追を免れる。一部の州では販売を容認。
【スペイン】 公共の場などでの個人使用は罰金の対象だが、実際はほとんど取り締まりは行われていない。
【フランス】 1999年、個人使用は訴追しない方針を政府が発表。
【イタリア】 一回目は警告、二回目以降は運転免許証没収など行政罰だが、実際はほとんど適用されていない。
【ポルトガル】 今年一月、法改正案が議会を通過。すべての麻薬の個人使用を罰則の対象としない代わりに、麻薬使用者は依存症の程度に応じて治療を受ける義務を負う。
【英国】 少量使用は警告か罰金刑。政府は最近、大麻使用者が雇用主に警告を犯歴として報告する義務を廃止すると発表。
【スイス】 個人使用容認へ政府が法改正案を提出。
※資料‐グラフ(1999年、オランダ保健省調べ)
■15歳~16歳で大麻を一度でも体験したことがある割合:
米国 41%
フランス 35%
英国 35%
アイルランド 32%
オランダ 28%
イタリア 25%
デンマーク 24%
フィンランド 10%
ギリシャ 9%
ポルトガル 8%
スウェーデン 8%
※写真のキャプション: バンシャイクさんは昔、ボディービルの選手だった。右の人形は大麻博物館のマスコット(=ハーレムで、山本写す)
【補足】
■ノル・バンシャイク氏の名前(Nol van Schaik)は、日本語表記では「ノル・ヴァン・シャイク」、「ノル・ファン・シャイク」などと書かれる場合が多いようです。
■オランダの薬物政策について:
概略は、オランダ外務省から英語版の小冊子が発行されており、オランダ外務省のサイトにPDFファイルで公開されています。2003年版の日本語訳が「青少年の薬物問題を考える会」のサイトに掲載されています。
「青少年の薬物問題を考える会」による日本語訳:
『Q&A薬物 2003 オランダの政策へのガイド』
オランダ外務省のサイトにある英語版:
『Q&A DRUGS 2003 A guide to Dutch policy』
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国選弁護人が決まったとの通知が大阪高裁からあり、挨拶の電話を入れた際、先生の第一声は「やっても無駄ですよ」であった。大麻取締法が憲法違反であるという主張は既に判例があり、違憲ではないと確定しているから。
だが、私は判例の前提が既に古いことなどを話し、判例当時はどうあれ、現時点では明らかに憲法違反の状態にあると自説を述べた。先生は「主張するだけはしたいってことですね」と、電話口で乗り気なさ気であった。
その後、資料として手に入れたい大麻裁判の判例などがあり、先生にお願いしたところ、まったく嫌な気配もなく、即日のうちにファックスで入れて下さった。
プライベートでのご旅行の途上、時間を割いてご面会頂き、短い時間ではあったけれど、真意をお伝えすることができた。
下記、弁護人が提出して下さった補充書です。
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平成16年(う)第57号大麻取締法違反被告事件
被告人 白坂和彦
控 訴 趣 意 補 充 書
平成16年3月18日
大阪高等裁判所第4刑事部 御中
弁護人弁護士 葛 井 重 雄
1. 被告人は最近に至って、息子が入院し、妻が過労で倒れたため、本日出廷ができませんが、去る3月7日長野県松本市のホテルで弁護人は被告人と面談し、被告人から大麻草(THC)の薬理と、それを必要とする患者が多くいること、せめて大麻の薬物利用のための栽培は是非認めてもらいたいとの熱意ある主張を聞きましたので、法廷に出廷できない被告人のために、控訴の趣意補充として、以下に論述する。
2. 大麻製剤はある種の疾患には有効であることは広く認められている。THC製剤のドロビナールとナビロンは外国ではがん治療などに市販されている。(原審記録505丁)
3. しかるにわが国では、その種の製剤は製造は元より販売もされていない。そのことは、最新の薬剤の総覧である「実践服薬説明ガイド第2版」や「疾患と治療薬・改訂第5版」を総覧してもTHC製剤に分類されるものには一切の記載がないので、わが国では発売も製造もされていないことは明らかである。
4. 前出の原審記録505頁から510頁にはホジキンス病の患者やエイズ患者等に対して有効な医療効果が認められるということである。従ってこのようにTHCを求める患者が存在する限りせめて、大麻草の栽培ぐらいは認める必要がある。
5. わが国の製薬会社では国内で大麻の医療用栽培の許可を受けている会社は存在しないし、国内で研究するところもない。聞くところによると、外国に研究を委託しているのが実情だそうである。容易に大麻栽培を認めない厚生労働省の態度にも問題があるが、大麻取締法の厳罰主義が、これら研究を阻害している。
6. 薬として利用したい患者の要求に応じられない大麻取締法は、国民の生存権を侵す憲法違反であり、この点も十分配慮していただきたい。
以上
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先生、最初は(やっぱり国選ってのは・・)と、正直言って、ほんの少しだけ、ちょっと、かすかに、確かに、思いました。
が、今はそんなことはありません。
お会いできて、お話しできて、本当に良かったと思っています。
補充書まで出して頂いて、ありがとうございました。
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平成16年(う)第57号大麻取締法違反被告事件
被告人 白坂和彦
控 訴 趣 意 補 充 書
平成16年3月15日
大阪高等裁判所第4刑事部 御中
被告人 白坂和彦
平成16年2月19日付提出の控訴趣意書を下記の通り補充する。
記
1. 大麻の事実について
率直に言って、私は虚しさを感じている。
悪法の執行が、平穏に暮らす人々の生活を破壊している現実、
それが憲法違反であることを、
これ以上、どのように証明しろというのだろう。
原審で、弁護人は下記の項目について論証した。
1.大麻の危険性・有害性について
(1)大麻の依存性
大麻には耐性もほとんどなく、大麻に対する身体的依存は皆無である。
(2)大麻の毒性
「大麻の使用は薬物問題ではあるが、その毒物学的意味は不明である。」。大麻には毒性もない。(報告書1)
(3)大麻の有害性
「マリファナを批判する人々は有害作用に関する数多くの科学的データを引き合いに出すが、重篤な生物学的影響がある とする主張の大部分は、比較的大量の使用者、免疫学的、生殖機能についての積極的な研究においても、ほとんど立証 されていない」。マリファナにはその煙の吸引に関してタバコと同程度かそれ以下の有害性しかない。(報告書1)
(4)大麻使用による他者に対する危険性
「マリファナが暴力的ないし攻撃的行動の原因になることを示す証拠もない」
「マリファナの使用は、暴力的であれ、非暴力的であれ、犯罪の源ともならないし、犯罪と関係することもない。」
マリファナは他者の法益を侵害する危険性もない。(報告書3)
2. 大麻の医療利用
大麻は何千年にもわたって医薬として使われてきた。
中国で紀元前2800年頃、初めて出版された漢方薬の概説書「神農本草経」は大麻を便秘、通風、リウマチ、生理不順の治療薬として推奨している。
アラブ医学やイスラム系インド人の医学ではハシーシュ(大麻樹脂)や「ベンジ」(マリファナ)について多くの記述が見られる。大麻は淋病や下痢、喘息の治療薬として、また食欲増進剤、鎮痛剤として利用された。
大麻は中世ヨーロッパの民間療法でも広く知られ、ウィリアム・ターナー、マッティオーリ、ディオスコバス・タベラエモンタヌスの本草書でも治療効果のある植物として記述されている。
日本でも繊維用ばかりでなく、医薬品として用いられてきた。
日本薬局方でも1886年に交付されて以降、1951年の第5改正薬局方までマリファナが「インド大麻草」、「インド大麻草エキス」、「インド大麻チンキ」という製品名で収載され、鎮痛剤、鎮静剤、催眠剤などとして用いられてきた」(報告書3)。
付け加えて言うなら、
オランダ
イギリス
カナダ
ドイツ
ギリシャ
スペイン
フランス
イタリア
ポルトガル
スイス
アメリカの12州
オーストラリア
ニュージーランド
インド
ジャマイカ
ベルギー
ルクセンブルク
デンマーク
(順不同)
以上のような数多くの国や地域で、大麻の個人使用目的での少量所持や栽培は逮捕しないか、あるいは、医療目的でも安心して、
「お医者さん、大麻を下さい」
と言える社会が実現しています。
私は、最終意見陳述で、医療目的ですら認めないのはおかしい、司法としてどうお考えか、と聞いたのに、お答えはありませんでした。
裁判官すら答える言葉を持たない現状を、一刻も早く改善しましょう。
これ以上、悪法による被害者を出すのはやめましょう。
大麻を、自己消費用の薬草として栽培・所持すること。
それを厳罰をもって禁圧するのはどう考えてもおかしい。
それが今や世界の常識であり、世界的に公知の事実です。
医療目的の大麻利用を、現在の社会に無理なく調和的に取り込む必要があることを認めて下さい。
現実に、必要としている病人がいるのです。
医療的利用はもちろん、嗜好目的での所持・栽培で逮捕勾留するのもやめて下さい。
アルコールが放置されているのに、遥かに安全な大麻をなぜこうまで差別的に処遇するのですか?
ビールを飲みながら本を読む愉しみと何が違うというのでしょう。
原審は判例として、「最高裁-小法廷昭和60年9月10日決定」を引いています。
19年前を根拠にしているのです。それ以降の研究成果を報告書でご参照下さい。
その次に引いているのが、「東京高裁平成6年2月23日判決」。8年前。
大麻取締法の罰則規定に関する評価は次のようなものです。
「現行の大麻取締法による規制及び処罰の範囲・程度が合理的根拠を欠き、立法における裁量の限界を逸脱しているものと認めることはできない。」
今は平成16年。2004年です。
新世紀の現在、「現行の大麻取締法による規制及び処罰の範囲・程度」は、非人間的、非人道的極まりない、日本の恥です。
大麻の事実を、研究の上で確認し、容認している先進各国の基準からも大いに立ち遅れ、埃を被った判例を引っ張りだして拘泥し、罪もない者を犯人として仕立て上げ、昨年はなんと2000人超をも逮捕し、その生活を破壊しています。法の名の下に、あなたたちが。
立法が、何の罪もないところに犯罪をでっちあげ、
行政が、無実の者に手錠をかけて連行し、
司法が、非人間的な過剰な罰を与え続けているのです。
罪もない者を犯罪者にし、社会的・経済的制裁を加え、その家族や近親者にも言いようのない精神的苦痛を与えているのです。
こんなデタラメな法は、とっくの昔に「合理的根拠を欠」いています。
そもそも、立法当初から合理的根拠などなく、敢えて合理的な根拠と言えば、ただ単に占領国・米国の都合で制定されたに過ぎません。
その米国でさえ、大麻を日本ほど禁圧はしていないし、クリントンさんは肺までは入れなかったそうですが、今や民主党の大統領候補には医療大麻の容認を公約する人や、大麻喫煙の経験を明らかにしている人も複数います。
麻は、我が邦では、古来より米と並ぶ大切な栽培作物です。
戦争に負けて米国に大麻の取り締りを押し付けられるまで、二千年以上ものあいだ、我が祖先たちは悠久と麻を育ててきました。
伊勢神宮で配布する天照大神のお札を「神宮大麻」と呼ぶように、麻は、我が邦にとって、神につながる道でもあります。
ひとびとのこころが荒れ、邦が混沌としてしまった今こそ、本物の大幣で穢れを払う必要も増しています。
この悪法には立法目的も書かれておらず、使用罪もありません。
使用罪もないのに、「その使用につながる所持や栽培の規制には合理的な根拠がある」と、司法自らが法外の解釈を加え、さらに、この法の非合理性を主張するのは態度がよくないと、司法自身が、思想と良心の自由を平然と侵害しているのです。
現在、大麻に関する研究報告は、報告書でも示した通り、大麻取締法とその執行実態が、極めて違憲性の高いものであることを、ますます浮き彫りにしています。
それを司法が認めないのでは、三権分立など、絵に描いた餅です。
司法の判断放棄が、大麻取締法による人権蹂躙を増長している現実を、この際、裁判官諸兄にはよく認識して頂きたいと存じます。
大麻を栽培して、人にもお裾分けしたり、薬草としても使う。
ただ、それだけのことで、なぜ7年も刑務所に入らなければならないのか。
なぜ人殺し並みの罪を負わなければならないのか。
裁判官には、一人の人間として、冷静な判断を願うばかりです。
あくまでも現行のような扱いで良いのだとするなら、原審で提出した報告書を否定するデータを示して下さい。
原審で指摘した「生存権の侵害」についても、お答え下さい。
そもそも、研究すら禁止しておいて、有害も無害もないものです。
裁判官諸兄は、吸ったことはあるのでしょうか?
検証が必要ではないでしょうか。
そうすれば、きっとはっきりと分かります。
大麻取締法は憲法違反です。
こうして発言できることに感謝をこめて。
以上
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平成16年(う)第57号大麻取締法違反被告事件
被告人 白坂和彦
控 訴 趣 意 書
平成16年2月19日
大阪高等裁判所第4刑事部 御中
被告人 白坂和彦
頭書被告事件の控訴趣意は下記の通りである。
記
原判決には事実誤認の判断があり、その誤認は明らかに判決に影響を及ぼしているから破棄されるべきである。
1. 大麻の事実について
原審で弁護人が提出した「報告書(1)」、「報告書(4)」、「報告書(6)」でも明らかなように、大麻にはアルコールやタバコほどの害もなく、大麻の使用それ自体は、他者の生命や財産を侵害する危険を持たない。
英国においても、本年1月29日から個人使用目的の大麻少量所持は逮捕しない改正法が施行された。
それにも関わらず、原判決は、大麻の持つ薬理作用が、あたかも「国民の生命、精神の安全」に対して危険なものであるかのように立論し、取締を合理化している。
原判決は次のようにいう。
「国家が国民の生命、精神の安全に対する危険を防止する見地から、法律をもって大麻の使用につながる所持や栽培等の行為を規制し、その違反に対して罰則をもって臨むことは、十分合理的であり、大麻取締法の保護法益が極めて抽象的であるとか、その法定刑が過度に重いということもできない。」
その立論は、原審において弁護人が提出した報告書でも明らかな、大麻についての現代の科学的知見をまったく無視した独断と偏見に立脚するものでしかなく、大阪ちほう裁判所内でしか通用しない、井の中の「公知の事実」である。
「マリファナを批判する人々は有害作用に関する数多くの科学的データを引き合いに出すが、重篤な生物学的影響があるとする主張の大部分は、比較的大量の使用者、免疫学的、生殖機能についての積極的な研究においても、ほとんど立証されていない」(報告書(1)「メルクマニュアル」)。
また、一般に大麻の有害性が誇張捏造されて「公知の事実」化しているのは、公教育の場においてさえ「ダメ、ゼッタイ」として事実誤認に基づく情報を流布している教育効果・宣伝効果であって、大麻の現実に基づくものではないことも、報告書に明らかである。
以上のように、原判決は、大麻の事実について明白に事実を誤認しており、その判断は何ら根拠を持たない。だから、全く受け入れることはできない。お話にならない。破棄すべきである。
「1.大麻の事実について」は補充書で補足説明する。
2. 大麻の医療使用について
私が無償譲渡していた大麻の医療的利用について、弁護人は、大麻の医療利用の世界的現実や有効性、また低毒性について、報告書の資料で明らかにしたうえ、原審弁論で次のように述べた。
「大麻が医療利用され、大麻を使って自己治療している患者が医療効果を享受しているにもかかわらず、大麻取締法を持ってこれを禁ずることは患者の生存権を侵害するものである。よって、大麻取締法の罰則規定は、幸福追求権(憲法13条)、生存権(憲法25条)を侵害し、その制約は必要最小限のものではなく、さらにその法定刑は過度に重いから憲法13条、25条及び31条に反し違憲である。」
それに対し、原判決は、「弁護人の主張」として憲法13条、31条について触れながら、25条の生存権を侵害している点について全く触れず、判決においても何の判断も示していない。
大麻が医療利用され、大麻を使って自己治療している患者が医療効果を享受しているにもかかわらず、大麻取締法を持ってこれを禁ずることは患者の生存権を侵害するものである。そうでないと判断するなら、司法はその理由を示すべきである。
「大麻取締法は生存権を侵害している」という主張を認めない理由すら示さずに黙殺するのは、司法の判断放棄であり、司法自身による三権分立の否定である。到底受け入れることはできない。
証拠に基づいた弁護人の主張を黙殺した原判決は破棄されるべきである。
3. 予断と偏見に基づく判断について
「被告人が大麻についていかなる考え方を持とうと被告人の自由であり、大麻取締法の違憲性を主張してその改廃を求める運動を展開するのも何ら非難されるべきことではない」。
原審論告で検事は上記の通り述べている。
ところが、原判決は「量刑の理由」として、
「被告人は、捜査、公判を通じて、大麻取締法の非合理性を主張するなど、その態度はよくなく」
と述べている。
大麻取締法の非合理性を主張することそれ自体は、まったく非難されるべきことではないにも関わらず、原判決はそれを「態度はよくなく」と「量刑の理由」としている。これは思想と良心の自由に対する無自覚な侵害である。
従って、「大麻取締法の非合理性を主張するのは態度がよくない」という、思想と良心の自由を侵害した、予断と偏見に根ざした原判決は、破棄されるべきである。
4. 大麻の使用と思想の自由について
大麻の使用は、それ自体がひとつの思想である。
大麻とさまざまな宗教が密接に関係していることは、公知の事実である。
大麻の宗教性を確信する者にとって、大麻の使用は、思想の自由、表現の自由、良心の自由の具体的行為に他ならない。
大麻の使用が、アルコールやタバコ以上には、他者や社会の保護法益を侵害する危険性を持たないことが科学的にも明らかな以上、大麻を取り締ることは、思想の自由を取り締ることと同義である。
大麻取締法は、憲法19条に定めた「思想及び良心の自由」を侵害している。
上記4点の通り、大麻取締法は憲法違反であり、原判決は破棄されるべきである。
以上
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平成16年(う)第57号大麻取締法違反被告事件
被告人 白坂和彦
控 訴 趣 意 書
平成16年2月16日
大阪高等裁判所第4刑事部 御中
弁護人弁護士 葛 井 重 雄
頭書被告事件の控訴趣意は下記の通りである。
記
第1
原判決には憲法の違反があり、その違反は判決に影響を及ぼすこと明らかであるから破棄されるべきである。
即ち、大麻取締法は憲法13条、14条、31条、36条に違反する無効な法律であり、従って被告人の大麻取締法違反の公訴事案については無罪判決が相当である。
しかるに原判決は弁護人のかかる主張を排斥して、被告人に対し大麻取締法24条1項、24条の2第1項を適用して被告人に対し懲役3年この裁判確定の日から5年間その刑の執行を猶予するとの有罪判決を言渡したのは違憲無効な法律を適用して処断したものであり、原審判決は破棄されるべきである。
以下にその理由を詳述する。
1.
大麻取締法は、憲法13条に規定する国民の幸福追求権を侵害するものとして違憲無効である。
(1)
最高裁は昭和45年9月16日大法廷で「喫煙の自由は憲法13条の保障する基本的人権の一つに含まれる」と宣言している。(裁判集 刑事1412頁)
従って、公共の福祉に反しない限り幸福追求権を制限することは、憲法に定めるこの条項に抵触する。
(2)
原判決は「大麻が、人体に対し、個人差があるものの、嗜好分裂、時間、空間感覚の錯誤、離人体験等をもたらし、長期の常用により、無気力・無感動を呈し、判断力・記憶力の低下をもたらすなど、精神薬理効果を有することは、公知の事実である。それゆえ、国家が国民の生命、精神の安全に対する危険を防止する見地から、法律をもって大麻の使用につながる所持や栽培等の行為を規制し、その違反に対して罰則をもって臨むことは、十分合理性がある。」と断じているが、上記は最新の大麻に対する医学的薬理、薬効について甚だ無理解があり、公知の事実というのは真実ではない。
(3)
大麻に有毒性がないこと、あっても極めて低いことのほうが近時における公知の事実である。
(4)
即ち、マリファナの身体的効果については、マリファナ研究についてもっとも権威のある報告書とされている「マリファナ及び薬物乱用に関する全米委員会」(以下全米委員会という)の1972年報告では次のように述べている。
「身体機能障害についての決定的証拠はなく、極めて多量のマリファナであってもそれだけで人体に対する致死量があるとは立証されていない(ちなみにアルコールの場合には泥酔状態が致死量に近いといわれている)。また、マリファナが人体に遺伝子的欠陥を生み出すことを示す信頼できる証拠は存在しない。マリファナが暴力的乃至攻撃的行動の原因になることを示す証拠は存在しない。」「マリファナ摂取による身体的機能の変化は、次のような一時的なわずかな変化である。脈拍が増加し、最低血圧が上昇し、最高血圧が低下する。眼充血し、涙の分泌が少なくなり、瞳孔がわずかに狭くなり、眼の液圧が低下する。そして結論として、通常の摂取量では、マリファナの毒性はほとんど無視してよいといっている。」
また、全米委員会の1973年報告でも、「マリファナ使用と犯罪の関係について、マリファナの使用は、暴力的であれ、非暴力的であれ、犯罪の源ともならないし、犯罪と関係することもない。」と結論付けている。
(5)
即ち、原判決が、公知の事実と称するものは何ら科学的根拠のない偏見的な非科学論であり、これを公知の事実であるというのは経験則に明らかに反するものであって、マリファナに原判決が言うような精神的、肉体的、更には社会的適合性が、数々の社会的な研究の成果として公認されてきていることを思えば、マリファナはタバコやアルコールとともに国民が自由に享受できる幸福追求権であること明白であるから、これを認めない原判決は上記のとおり違憲であるといわざるを得ない。(原審記録485頁以下)
2. 第2に大麻取締法は法の下の平等を定めた憲法第14条に反する
第1で述べた如くアルコールや喫煙は公知の事実として強い精神的、身体的依存を引き起こすと共に、肝臓や心臓血管に悪影響を及ぼすこと、更には飲酒酩酊により暴力事犯を誘引することは経験則上知られている正に公知の事実である。
その点より見れば、マリファナにはそのような悪性はどの文献報告書にも見出せない。しかるに、酒、喫煙については未成年者の使用を禁じている他、何らの法的規制はない。このように、大麻より危険性有害性が高くあるいは同程度に有害と認められる薬物や嗜好品の所持摂取が原則として各個人の自由にゆだねられていることに照らせば大麻取締法にのみ厳罰で禁圧しているのは法の下の平等を規定した憲法第14条に違反する。
3. 第3に大麻の所持、栽培を禁止している大麻取締法第3条などの違反者に対する罰則を定めている同法第24条、同条のニの各規定は、罪刑の法定が適正であることを要求している憲法第31条及び残虐な刑罰を禁止している憲法36条に違反する。
大麻取締法によれば大麻の所持、譲渡、使用等については5年以下の懲役。栽培、輸入については7年以下の懲役を科すことになっている。いずれも罰金刑はない。しかし、大麻に有害性のないこと、あっても極めて低いことは、すでに縷々述べたように近時において公知の事実である。
(1)
麻薬とは定義として「強い精神的及び肉体的依存と使用量を増加する耐性傾向があり、その使用を中止すると禁断症状が起こり、精神並びに身体に障害を与え、更には種々の犯罪を誘発するような薬物」(原審記録490頁)となっている。
(2)
しかし大麻には薬理的にも社会的にもこのような麻薬でないこと既に詳述した。このように大麻に有害性のないこと、もしくは低いことが明らかにあると共に、近時USAの多くの州で大麻取締りのための刑罰が緩和され、これが世界的な傾向となっていることは正に公知の事実である。(原審記録487頁)
(3)
しかるにわが国のおいては前記の如く厳しい処罰が依然維持されていて、これらは大麻の持つ有害性の低さに比較してあまりにも残虐な刑罰であり、刑罰に均衡を失するといわなければならず、このような意味で大麻取締法は憲法36条、同31条に違反するものである。
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開廷数分前、廊下の長椅子で弁護士と話していると、検事が通りかかったので立って声をかけた。
「こんにちは。」
素通りしてしまうかと思ったが、こちらに歩み寄って、
「この間、会っちゃいましたね」
と、憎めない笑顔で言葉を返してくれた。
前回の公判翌日、桂川さんの第2回公判を傍聴した後、
近くの喫茶店で知人と一休みしていると、テーブルを3つ隔てた席に検事氏が着席した。
こちらも気づいたが、前日に懲役4年を求刑された仲。
なんと挨拶したら良いやら、結局、言葉も視線も交わさなかった。
その時のことを言っているらしい。
「あ、お気づきでしたか、私も検事さんがいらっしゃるのは気が付いてはいたんですけど」
「ああいうとき、困っちゃうんだよね」
と、検事さんはにこやかだ。
「私もね、行って挨拶しなけゃと思ったんですけどね、このォ、よくもまぁ4年も求刑してくれましたねって。」
検事氏、尚も温厚な笑顔のまま言った。
「え、いやぁ、あれは、だって、僕が4年て決めたわけじゃないんですからね。」
「そうですか?」
「そうですよ、あれはもう起訴されてきた時に決まってるんですから。」
「それにしたってずいぶん重いじゃないですか。」
「ええ?そりゃ、まぁ、仕方ないですよ、そう決まっちゃってるんですから・・」
これ以上の会話はヤバイと思ったのか、検事はそそくさと法廷に入って行った。
続いて入り、俺は被告席に座った。
すぐに裁判官が入ってきて、全員が起立着席の儀。
裁判官、
「では、判決を言い渡しますから被告人は前に出てきて下さい。」
証言台の前に立つ。裁判官がぼそぼそとした声で言う。
「理由から言います。
犯罪事実
被告人はみだりに、
第1 平成15年4月中旬ころから同年6月下旬ころまでの間、長野県北安曇郡■■村****番地所在の被告人方及び同村■■****番地所在の畑地において、大麻を播種して発芽させるなどした上、同年7月30日までの間、同畑地において、発芽した大麻草339株(平成15年領第6212号の符号127ないし132)を育成させて、大麻を栽培した。
第2 同年7月30日、上記被告人方において、大麻草107.726g(同号符号1ないし3,37,74,75,87,402,103,110,111,125,126は鑑定後の残量である。)を所持した。
証拠の標目-かっこ内の数字は検察官請求番号を示す。
全事実について
被告人の公判供述
捜査関係事項照会回答書
第1の事実について
被告人の検察官調書(乙21)、麻薬取締官調書(乙11,15)
捜査報告書(甲12ないし14)
領地調書(甲41)
鑑定嘱託書謄本(甲17)
鑑定書謄本(甲18)
第2の事実について
被告人の検察官調書(乙18)、麻薬取締官調書(乙3ないし5,9)
現行犯人逮捕手続書
差押調書(甲36)
鑑定嘱託書謄本(甲4,6)
鑑定書謄本(甲5,7)
写真撮影報告書(甲8,11)
法令の適用
罰条
第1の行為 大麻取締法24条1項
第2の行為 同法24条の2第1項
併合罪の処理 刑法45条前段、47条本文、10条(重い第1の罪の刑について加重)
刑の執行猶予 刑法25条1項」
(ああ、執行猶予が付くらしい、と思った。)
「没収 大麻取締法24条の5第1項本文
弁護人の主張に対する判断
1 弁護人の主張
大麻は、耐性もほとんどなく、身体的依存は皆無であり、毒性もなく、たばこと同程度かそれ以下の有害性しかなく、他者に対する危険性もない。しかるに、大麻取締法は、所持や栽培についてそれぞれ重罰を規定している。同法は、国民の保健衛生を保護法益としていて、保護法益が極めて抽象的である上、その制約は必要最小限度のものではなく、その法定刑は過度に重いから、憲法13条、31条に違反する。
2 当裁判所の判断
大麻が、人体に対し、個人差はあるものの、思考分裂、時間・空間感覚の錯誤、離人体験当をもたらし、長期の常用により、無気力・無感動を呈し、判断力・集中力・記憶力の低下をもらたすなど、一定の精神薬理作用を有することは、公知の事実である。それゆえ、国家が国民の生命、精神の安全に対する危険を防止する見地から、法律をもって大麻の使用につながる所持や栽培等の行為を規制し、その違反に対して罰則をもって臨むことは、十分合理的であり、大麻取締法の保護法益が極めて抽象的であるとか、その法定刑が過度に重いということもできない。したがって、大麻取締法の違憲をいう弁護人の主張は、前提を欠くものであって、採用し得ない。(最高裁-小法廷昭和60年9月10日決定・裁判集(刑事)240号275頁、東京高裁平成6年2月23日判決・高裁時報(刑事)45巻1-12号7頁等)。
量刑の理由
本件は、被告人が自宅及びその周辺で大麻を栽培し、自宅で大麻を所持したという事案である。本件で被告人が所持ないし栽培していた大麻の量は多量である上、被告人は、これらの大麻を自ら使用していたばかりでなく、他人にも譲渡していたものであって、本件は軽視できない事案である。また、被告人は、大麻解放論者である桂川の主張に共鳴して、大麻解放運動に携わり、大麻取締法を事実上無効化しようとの考えから、公然と本件犯行を敢行したものである。しかも、被告人は、捜査、公判を通じて、大麻取締法の非合理性を主張するなど、その態度はよくなく、その刑責は到底軽視し得ないものである。
しかしながら、被告人は、今回の逮捕、勾留、訴追を経て、今後は家族のためにも2度と同様の行為に及ばないと述べている上、前科・前歴もない。
以上の事情を総合考慮すると、被告人に対しては、今回に限り、刑の執行を猶予し、今後の戒めとするのが相当であると判断した。
主文
被告人を懲役3年に処する。この裁判が確定した日から5年間その刑の執行を猶予する。大阪地方検察庁で保管中の大麻草(平成15年領第6212号の符号1ないし3,37,74,75,87,102,103,110,111,125ないし132)を没収する。
分かりましたね?」
「はい。」
「もう一度主文を言います。」
そう言って裁判官が同じぼそぼそ声で読み返して、付け足すように言った。
「あなたの罪は懲役に値するけれども、あなたが法廷で二度と違法行為を行わないと証言していることや、家族のために頑張ると話していることを考慮して、今回に限り、刑の執行を5年間猶予しましょうというものです。いいですね?」
「はい。」
「それではこれで終わります。」
あら?終わり?終わっちゃったらしい。
俺としては、これから裁判官に対して反対弁論を行いたい思いだった。
裁判官は、弁護人の主張として、憲法13条(幸福追求権)と31条(適正手続の保障)について触れ、判例を示して違憲論を退けている。
だが、弁護人が同時に主張した「生存権(憲法25条)の侵害」という点については一言も触れていない。そこがこの裁判の味噌なのに。判例にないのかな?
最終意見陳述の際、日本では病人ですら大麻を利用できないことを司法としてどう考えているのか聞きたい、とまで言ったのに。裁判官は黙秘権を行使した。
俺には「裁かれた」という感覚が全くなかった。「当裁判所の判断」についても、予想通りだとはいえ、全く納得がいかない。相変わらずの古い判例を引いているだけ。
法廷を出て、弁護士控え室でちょっと打ち合わせ。
控訴期限は12月17日だけど、その日に言われても手続きできないから、早めに連絡を。保釈金300万が返還されたら諸費用を差し引いて指定口座に返金。費用明細はメールと郵便で送るとのこと。
控訴すると弁護費用が70万。最高裁まで考えると、裁判費用を合わせて150万はかかりそう。
大麻取締法は生存権(憲法25条)を侵害している。その主張に裁判所は全く何も答えなかった。
それでいて、「その態度はよくなく」懲役3年執行猶予5年?
それでいて、控訴するとまたカネかかるの?
ちゃんと答えなかったのは裁判所の責任なのに。
しかし、本当に、この世の沙汰って、カネ次第。
今回の逮捕で痛感しています。
どうしたものか。
12月12日までに連絡することにする。
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明日、判決公判がある。
もう判決文は書き終わっているだろう。
周囲の方が心配している。
ありがとう。すまないね。
求刑四年というのは、
検察としては執行猶予なしの実刑にして下さいという数字だそうだ。
弁護士も、
「念のため冬用の服を持ってきたほうがいいね」
と言う。
初犯は、営利目的でなければ、ほぼ執行猶予が付く。
但し、量が多かったり、
反省の態度がなく、
今後も大麻を吸い続けると宣言したりすれば、
実刑。
初犯で実刑になった例もある。
何が悪いと言い張って、
懲役5年を務めた先人もいる。
俺の場合、栽培の339本が多いらしい。
でも、半分は雄だぜ?
しかもF2やF3だよ?
それに、俺、数えてなかったし。
そんなにあるなんて知りませんでした。
初犯だし、
病人に無料で提供してたんだし、
栽培免許の申請もしてたんだし、
営利目的じゃないし、
大麻に害はないし、
いきなり実刑はないでしょう。
求刑は懲役4年。
「懲役4年、執行猶予5年」ってとこかな。
甘い?
明日行ってみれば分かる。
去年の12月。
桂川さんのサイトに桂川さん自身の文章を掲載することになったとき、
原稿を読んで、ビビった。
これは逮捕につながるかもしれないと思った。
それでなくても、カタログのごとく、大量の大麻写真を掲載していた。
それはカタログよりも詩的だったけど。
桂川さんの文章は、本質を突き、洒脱で、味がある。
だから、サイトを作ってる俺としても文章原稿を掲載したいと思っていた。
しかし、ノートパソコンのモニターで見たそのタイトルは、
<大麻を吸ってこの国の役人達の欺瞞を見抜こう>
・・・・・・な、なんつう思い切った・・・
しかも、サブタイトルが
<もはや大麻しかない>
それは、まったくその通りだ。
一読して言葉を失った。
<だから私達はより多くの人に大麻を教え、より多くの人と大麻を吸っている。>
「・・・・こ、こんなこと、書いちゃっていいんですか?パクられますよ」
「言論の自由だろう」
「言論だけなら自由だろうけど、そのままじゃないですか。」
「・・・・来るかなぁ?」
「来ますよ。きっと。」
俺はビビッたまま、いろいろと不安の材料を提供した。
桂川さんは腕組みして目を瞑り、考えていたが、やがて目をあけ、
「いいじゃん。いいよ。やろう。そのまま出しといてくれよ。」
権力と真っ向から対峙する姿勢だった。
権力の愚劣を哂う意思の表現だった。
そうなりゃ、肝試し。
ここで逃げるわけいかないでしょ。
散々吸ってるし。
(これは俺も腹を括ってかかるしかないな)
いつか逮捕されることになるな、と予感しながら、そう思った。
「逮捕につながるかもしれませんね。」
逮捕歴のない俺がそう言うと、
師、曰く、
「いいじゃねぇか、一辺くらい。経験しとくもんだ。」
放り出すように言った。
(そうだな、ま、一辺くらいいいか。人生の余興みたいなもんか。)
そう思った。
桂川さんは、二回目の、まだ中にいる。
7月14日に逮捕。
長いよなぁ。
あの原稿にビビってから1年。
もちろん、パクられたらどう供述するか、考えていた。
考えながら、実践していた。
必要としている病人がいることはもともと知っていた。
桂川さんの麻を比較的近郊の病人たち仲介している大酒呑みは、
自分では麻を吸わないが、
その効果を言い触れて回った。
麻を吸わないのに、麻がいいと、どう確かめたのか?
「そりゃ、おめぇ、ジジィとババァに飲ませただよ。お茶にしてだよ。寝る前に。
もうとっくに90過ぎちゃってるし、死んだらまぁ、仕方ねぇじゃねぇか。」
そしたら、それまで夜中に数回だった便所通いがなくなり、
朝までぐっすり眠れるようになり、
食欲が出て、顔色が良くなった。
そこで確信を深めた男は癌を患った友人たちに麻の効能を触れて回り、
桂川さんが無償でくれるのをいいことに、
言えば断らないのをいいことに、
けっこう持ち出していたらしい。
調べでも、法廷でも話したが、その男の名前は言えない。
まぁ、きっと調べはついているのだろうが。
病人たちが感謝したのは言うまでもない。
それと、麻が効くことに驚いたらしい。
麻なんて、この辺は戦後しばらくまで産地だった。
その麻がマリファナだと知らない人もいたらしい。
痛みが和らぐ。
食欲が出る。
よく眠れるようになる。
副作用は、質が良すぎると、けっこう酔います。
笑いが止まらなくなっちゃうほど効くときもあります。
でもぐっすり眠れるでしょう。
心地よい眠りです。
噂は当然広がります。
病人たちの麻が足りない。
需要は高まりました。
そんじゃ、俺作るよ。
それだけの話です。
そういえば、再入院した癌の人、
食事が自分で取れなくなって、
栄養チューブがつながれたそうです。
もし、これでその人が不幸にも亡くなったとき、
麻を奪われたこととの因果関係が証明できれば、
厚生労働省(近畿厚生局麻薬取締部)を、
殺人罪で訴えたいところです。
権力が刑罰を以って病人から薬を取り上げているのです。
現場の麻取りさん、
俺の調べを担当したオシキさん、クラハシさん、
あんたにとって正義とは何かと聞いたら、
「一般常識だね」
と答えて俺を爆笑させてくれたコバヤシケイジロー君、
自分だけにエアコン向けて、
足を机の上に放り出して、
朝から夕方まで居眠りしてたミズノさん、
麻が悪くないってことは分かってるんだろ?
職務で、やむなく大麻で逮捕するときは、
せめて、また愚法の執行で不幸な人を生み出したって、
こころのどこかで自覚してくれよ。
明日の、俺の裁判の判決については、
大麻取締法は憲法違反だから被告人は無罪。
それ以外の判決は、
執行猶予が付こうが、
不当判決です。
検事が論告で引いた昭和60年の最高裁決定なんぞ古い。
大麻の無害性が科学的に証明され、
難病にも効果があることが臨床的に実証されている21世紀の現在、
もはや通用しないと言うべきであ~る。
ですが、実際問題として、地裁が最高裁の判例を覆すことなどないでしょう。
最高裁まで争いたい。
その思いは強いのですが、費用的なこともあるので、
控訴するかどうかは、判決文を読んで、
よく考えたいと思っています。
実刑にならなければ、今週中にここで結果を報告します。
実刑になったら、控訴して、保釈請求の手続きを取ります。
寒くなってきました。
これを読んで下さってる皆さんも、お大事に。
ではまた。
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弁護人の弁論要旨
<1>総論
弁護人としては、大麻取締法は違憲であり、被告人は無罪であると考える。仮に、大麻取締法が違憲ではないとされる場合、本件公訴事実記載の犯罪事実については被告人もこれを認めており、弁護人としてもこれを争わないが、弁護人は、諸般の事情に照らし、被告人については刑の執行を猶予するのが相当と考える。
<2>大麻取締法の違憲性
1.大麻の危険性・有害性について
(1)大麻の依存性
「文字通り世界の医師のバイブルとして無数の人々の治療に役立ってきた」医学書の権威である「メルクマニュアル」(第17版日本語版)によれば、「大麻の慢性的ないし定期的使用は精神的依存を引き起こすが、身体的依存は引き起こさない。」「多幸感を惹起して不安を低下させるあらゆる薬物は(精神的)依存を惹起することがあり、大麻もその例外ではない。しかし、大量使用されたり、やめられないという訴えが起きることはまれである。」「大麻は社会的、精神的機能不全の形跡なしで、時に使用できることがある。多くの使用者に依存という言葉はおそらく当てはまらないであろう。」「多量使用者は薬をやめたときに睡眠が中断されたり神経質になると報告されている。」が「この薬をやめても離脱症候群はまったく発生しない」(報告書1「メルクマニュアル」第17版日本語版第15節 精神疾患 195章 薬物使用と依存 「大麻(マリファナ)類への依存」)
したがって、大麻には耐性もほとんどなく、大麻に対する身体的依存は皆無である。
(2)大麻の毒性
大麻草の成分である「テトラヒドロカンナビノール(以下「THC」という)は極めて安全な薬剤である。」(報告書4「マリファナの科学」197頁)。「大麻の不正使用は広く行われているが、大麻の過量摂取で死亡した例はほんのわずかしかない。英国では、政府統計で1993年から95年までの間に大麻による死亡例が5件挙げられているが、くわしく事情を調べると、いずれも嘔吐物が喉に詰まったことが原因で、大麻に直接起因するものではない(英上院報告1998)。ほかの一般的な娯楽用薬物と比較すると、この統計は際立ってくる。英国では毎年、アルコールによる死亡者が10万人以上、タバコに起因した死亡者が少なくともこれと同数だけ発生している」(同書197頁)。「どんな基準に照らし合わせても、THCは急性効果、長期的効果で、極めて安全な薬剤だと考えなくてはならない」(同書200頁)。
マリファナの身体的効果については、マリファナ研究について最も権威のある報告書とされている「マリファナ及び薬物乱用に関する全米委員会」の1972年報告(以下「全米委員会1972年報告」という。)では「身体機能の障害についての決定的証拠はなく、極めて多量のマリファナであっても、それだけで人体に対する致死量があるとは立証されていない。また、マリファナが人体に遺伝的欠陥を生み出すことを示す信頼できる証拠は存在しない。」「結論として、通常の摂取量ではマリファナの毒性はほとんど無視してよいといっている」(報告書3「法学セミナー」1980年7月号31頁)。
「大麻の使用は薬物問題ではあるが、その毒物学的意味は不明である。」(報告書1「メルクマニュアル」)。
したがって、大麻には毒性もない。
(3)大麻の有害性
「マリファナを批判する人々は有害作用に関する数多くの科学的データを引き合いに出すが、重篤な生物学的影響があるとする主張の大部分は、比較的大量の使用者、免疫学的、生殖機能についての積極的な研究においても、ほとんど立証されていない」(報告書1「メルクマニュアル」)。
マリファナの吸引について、「習慣的使用者のかなりの割合で慢性の気管支炎を引き起こし、長期的に見た場合に気道の癌とのつながりが指摘される恐れがあるため、安全上長期的使用を勧めることができない。」とされるが、これはあくまでもタバコ吸引と同様、自らの健康の問題であり、他者に対する有害性はない。しかも、米国医学研究所は、その報告「マリファナと医薬」(1999)のなかで、安全性の問題について「マリファナはまったく害のない物質というわけではない。さまざまな効果を伴った強力な薬物である。だが、吸引にともなう弊害を除き、そのほかの用途ではマリファナによる副作用は許容範囲にあるといえる。」(報告書4「マリファナの科学」231頁ないし232頁)とされている。
したがって、マリファナにはその煙の吸引に関してタバコと同程度かそれ以下の有害性しかない。
(4)大麻使用による他者に対する危険性
前記の全米委員会1972年報告によれば「マリファナが暴力的ないし攻撃的行動の原因になることを示す証拠もない」。さらに1973年報告によればマリファナ使用と犯罪との関係について、「マリファナの使用は、暴力的であれ、非暴力的であれ、犯罪の源ともならないし、犯罪と関係することもない。」と結論している(報告書3「法学セミナー」1980年7月号31頁)。
したがって、マリファナは他者の法益を侵害する危険性もない。
2.大麻の医療利用
他方、「大麻は何千年にもわたって医薬として使われてきた。」「中国で紀元前2800年頃、初めて出版された漢方薬の概説書「神農本草経」は大麻を便秘、通風、リウマチ、生理不順の治療薬として推奨している。大麻製剤はその後何世紀にもわたって中国の本草書で推奨され続けたが、特にその鎮痛効果は外科手術の際、痛みを抑えるために利用されてきた。」
「インド医学も中国と同じくらい長い大麻利用の歴史をもっている。」「古代アーユルヴェーダ体系では大麻はヒンドゥー人のための医薬品として重要な役割を果たし、今日でもアーユルヴェーダ実践者たちによって利用されている。」
「アラブ医学やイスラム系インド人の医学ではハシーシュ(大麻樹脂)や「ベンジ」(マリファナ)について多くの記述が見られる。大麻は淋病や下痢、喘息の治療薬として、また食欲増進剤、鎮痛剤として利用された。」
「大麻は中世ヨーロッパの民間療法でも広く知られ、ウィリアム・ターナー、マッティオーリ、ディオスコバス・タベラエモンタヌスの本草書でも治療効果のある植物として記述されている」(報告書4「マリファナの科学」136頁ないし137頁)。
「日本でも繊維用ばかりでなく、医薬品として用いられてきた。日本薬局方でも1886年に交付されて以降、1951年の第5改正薬局方までマリファナが「インド大麻草」、「インド大麻草エキス」、「インド大麻チンキ」という製品名で収載され、鎮痛剤、鎮静剤、催眠剤などとして用いられてきた」(報告書3「法学セミナー」1980年7月号31頁)。
「20世紀のほとんどの期間、西洋医学は大麻利用にわずかな関心しか示さず、大麻の使用が米国で1937年、法的に禁じられたのを皮切りに、1970年代には英国をはじめほとんどのヨーロッパ諸国がこれに追随する動きを見せた」が、「英国医師会(BMA)は1997年、治療現場での大麻利用についてまとめた影響力のある報告のなかで<多くの通常法を順守する市民、おそらく先進国の何千という人たちが、治療のために大麻を非合法的に使っている。>と記している」
「こうした非合法の自己治療に最も深い関わりを持つのが、他の鎮痛薬では治すことのできない慢性の痛みに苦しむ人たちである。具体的には、痛みを伴う筋痙攣を頻繁に起こす脊髄損傷や、そのほかの痙攣症状を持つ患者や、エイズ患者、多発性硬化症(MS)を患う患者などである」(報告書4「マリファナの科学」146頁)。
「大麻を使って自己治療している患者が指摘するような医療効果の一部を、そのような領域の人たちが享受できる現実的な可能性がある。自己治療の患者は通常、既存の薬が効かなかった人たちであり、症状を治すためのオルターナティヴ・メディスン(代替医療)に切り替えようとしている。大麻は多くの人たちにとって、何世紀もの間、民話や民間医療に根付いてきた自然療法・薬草療法として、付加的な魅力を備えている」(同書153頁)。
3.大麻取締法の違憲性
(1)大麻取締法の規定とその問題点
大麻取締法は、大麻の栽培、輸出入について懲役7年以下、所持、譲渡について懲役5年という重罰が規定され、選択刑として罰金刑が予定されていない。
この大麻取締法の保護法益は、毒物及び劇物取締法1条や麻薬取締法1条のような目的規定がないため法文上明確ではないが、通常国民の保健衛生であるといわれている。
しかし、国民の保健衛生といった抽象的な観念が保護法益とされていること自体が問題である。
また、アルコールやタバコが大麻の吸煙以上に保健衛生上害があることは前述の通り明白であり、なぜ大麻がより強く規制されなければならないかという点は全く不明確である。
(2)大麻取締法の違憲性(法令違憲)
基本的人権は「公共の福祉に反しない限り」最大限尊重されなければならない。とりわけ刑事罰、特に懲役刑は人の身体、行動の自由に対する重大な制約であり、人権保障の観点からして必要最小限のものでなければならないことは当然である。
したがって、大麻取締法が憲法13条や31条(適正手続の保障)に適合するためには、その保護法益が具体的で明確であり、かつ法定刑も適正なものでなければならない。
ところが、大麻取締法の保護法益はきめわて抽象的であり、しかも大麻は他人にも自らの健康にもアルコールやタバコ以上には害を与える危険すらないのである。むしろ、アルコールやタバコの方が有害かつ危険なのである。
また、大麻が医療利用され、大麻を使って自己治療している患者が医療効果を享受しているにもかかわらず、大麻取締法を持ってこれを禁ずることは患者の生存権を侵害するものである。
よって、大麻取締法の罰則規定は、幸福追求権(憲法13条)、生存権(憲法25条)を侵害し、その制約は必要最小限のものではなく、さらにその法定刑は過度に重いから憲法13条、25条及び31条に反し違憲である。
(3)大麻取締法の違憲性(適用違憲)
また、本件の場合、栽培及び所持は主に医療利用目的、一部自己使用であるところ、少なくともかかる医療目的及び他者に迷惑をかけない自己使用の栽培および所持に大麻取締法の罰則規定を適用することは、その限りで憲法13条、25条、31条に反する。
<3>情状
1.前科・前歴について
被告人には、21年前、19歳のときに業務上過失傷害により罰金の略式命令を受けた以外に前科前歴は一切ない。
被告人は、大麻取締法を除けば、およそ犯罪とは無縁の真面目な社会生活を営んできたものである。
2.薬物使用歴
被告人は、約20年前、21歳のころから約2年間米国に滞在していた間に大麻を経験した。そのころ、コカインやクラックと呼ばれる薬物も勧められて試したことがあるが、危険を感じてすぐにやめた。
米国から帰国したあと、友人が海外から持ち帰った大麻を少量譲り受けて使用したことが数回あるが、それ以上に密売人から入手しようとしたことはない。
7年前に桂川と知り合ってからは、同人から譲り受けた大麻を使用していたが、密売人等からの入手はない。使用量は大量ではなく、使用による悪影響は一切ない。
4・5年前に桂川宅でLSDを一度だけ使用したことがあるが、一度限りである。
したがって、被告人には、大麻を除く薬物に対して親和性も依存性もない。もとより、大麻には身体的依存がないことは前述の通りである。
3.栽培状況及び栽培免許申請
(1)栽培状況
被告人は以前にもわずかな株数は自己使用目的で栽培していたことがあるが、本件のような株数を栽培したのは本年4月以降の栽培が初めてである。
本件で栽培していた339株のうち、自己使用目的のものはハイブリッド2株である。残りは品質の落ちるF2・F3で、いずれも医療用としてこれらを必要としていた病人に無償で譲り渡す予定であった。
(2)栽培免許申請
被告人は合法的に栽培することを意図して、本年5月30日頃、長野県知事に対して大麻栽培者免許の交付申請をしている。この申請は同年6月27日付で却下処分になっているが、その後も異議申立、医療利用研究目的での再申請などを予定していた。
申請却下後も栽培していたのは、行政上の最終的な判断が出るまでは決着がついていないと考えて公然と栽培していた。
<4>医療目的
大麻は前述のように古くから医薬として使用されてきたのであり、現在も多くの国で合法ないしは少なくとも事実上の医療的利用が認められている。このことを知った被告人は数年前より大麻の医療目的利用に関して研究し、大麻について政府が医療利用について合法化するよう活動してきたものである。
(・・・俺は医療目的に関して何も活動してないよ、そんなコト言ってない・・・)
その一環として本件栽培に及んだもので、もとより営利目的などはない。
<5>譲渡状況
(1)医療目的の譲渡
押収された339株のうち、ハイブリッド2株を除く大半の株は皮膚癌、ヘルニア、メヌエル氏病、神経痛などで苦しむ病人の痛みを緩和する薬草として無償で提供される予定であった。本年5月上旬頃にはすでに60株につき知人を通じて病人に無償で提供している。
(2)その他の譲渡
被告人は大麻少量を2・3人に譲渡したことはあるが、いずれも桂川氏から譲り受けた大麻の一部であり、本件栽培によるものではない。対価を得て譲り渡したものはない。
<6>大麻及び大麻取締法に対する考え方
「大麻は無害であるから個人的な使用は認められるべきである。」さらに「大麻の医療効果は広く認められているのであるから医療利用も認められるべきである。」「大麻取締法は悪法であり、違憲である。」といった考え方は今も変わるところはない。
但し、悪法であっても、法治国家においてはこれを遵守しなければならないことは今回の逮捕により真摯に自覚している。
4.結論
以上に述べた通り、大麻取締法は違憲であって被告人は無罪であるが、違憲でないとする場合には、諸般の情状に照らし、被告人に対しては刑の執行を猶予されたく弁論する次第である。
弁論が終わり、裁判官が俺を証言台に招く。最終意見陳述。
裁判官が厳かな感じで、「最後に言いたいことがあったら言って下さい」と促す。
「法治国家である日本で法を公然と犯したことについては深く反省しています。二度と法を踏み外すようなことをするつもりはありません。ただ、本当に病気で大麻を欲しいと言っている人が、今、日本では手に入れることができないということを、司法としてどのようにお考えであるか、ぜひ伺いたいと思っています。ありがとうございました。」
裁判官、俺にチラっと一瞥くれた。
反省の色が薄かった?
も少し濃いほうが良かった?
これにて結審。
判決は12月3日午後1時15分から。605号法廷で。
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弁護士による被告人質問が終わり、裁判官が検事を促す。
検事による論告求刑。
1.事実関係
本件各公訴事実は、既に取調べ済みの関係各証拠により、いずれも証明十分である。なお、弁護人は、大麻取締法の違憲性を主張するものの、同法が憲法13条等に反しないことは、東京高裁昭和54年7月19日判決、大阪高裁昭和56年12月24日判決、最高裁第1小法廷昭和60年9月10日決定をはじめとする多数の裁判例において繰り返し確認されているところである。
2.情状
被告人は「大麻はタバコやアルコールより依存性等の害悪が少なく、医療分野での活用や個人使用は認められるべきだ」との信念から犯行に及んだ旨供述しているところ、被告人が大麻についていかなる考え方を持とうと被告人の自由であり、大麻取締法の違憲性を主張してその改廃を求める運動を展開するのも何ら非難されるべきことではない。
しかしながら、国会における大麻取締法の改廃がないにもかかわらず、前記主張を実践し、大麻を吸煙し、許可なく大麻を栽培する行為は代表民主制及びそのもとでの法治主義に敵対して社会秩序を破壊せんとする傲慢かつ悪辣な犯罪であり、長年にわたり本邦内で大麻を吸煙したばかりか、メール仲間に宅急便で大麻を送付してやるなどして大麻を社会に拡散した挙句、許可なく、吸煙目的等で大量の大麻を栽培するとともに、一部を収穫・所持して本件犯行に及んだ被告人の刑事責任は極めて重大であり、このような被告人に対しては、峻厳な法の裁きを以って報い、相当期間、刑事施設に収容する以外に処遇の方途はないと言わざるを得ない。
3.求刑
以上の情状のほか、被告人が業務上過失傷害の罰金前科1犯のほか前科を有さないことなども考慮し、相当法条を適用のうえ、被告人を懲役四年に処し、大阪地方検察庁において保管中の大麻草を没収するのが相当であると思料する。
(おいおい、ずいぶん重いじゃない。議論はしません、軽くもしません?俺、誰に迷惑かけた?柔らかい物腰して、懲役四年て、あんた自分で入ってみ。)
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開廷前、廊下の椅子に座っていると、検事が通りかかった。
検事にしては珍しく、物腰の柔らかい印象の小柄な男だ。
「こんにちは。お手柔らかにお願いします。」
と声をかけた。
すると検事さん、にこにこした表情で会釈を返し、
「いやぁ、そういう議論はあまりしませんから・・」
と先手を打つように言い、法廷に入って行った。
午後3時開廷。
弁護士による被告人質問の続き。
-免許の申請が却下されたあとも栽培を続けていますね?-
「嗜好目的での却下のあと、異議申立てを行うつもりだったのと、医療目的で別途の申請を予定していたので、そのこともホームページで公言しながら、栽培も続けました。」
-大麻はどのように使っていましたか?-
「嗜好目的としての大麻の吸引は、お酒を好きな人が晩酌するのと似たような感覚で、寝る前とか、仕事のアイディアを練るときに一服とか、そんな使い方をしていました。他の人を巻き込んだことはなく、一回の使用量は1グラムから2グラムの間くらいだと思います。アルコールは意識が朦朧としますが、大麻にはそういうことはなく、普段気が付かなかったことに気が付いたり、音楽がきれいに聴こえたりする効果がありました。乱暴になることもなく、むしろ穏やかな気持ちになります。」
-医療的に大麻が使えるというのをいつどのように知りましたか?-
「医療的な効果があるらしいということは5・6年前に本を通じて知りました。大麻が禁止になっている根拠も本やインターネットなどで探しました。最近ではオランダやベルギーで医療大麻は合法化され、必要としている患者が大麻を手に入れることができます。アジアでもインドでは文化として根付いているものだし、そういう地域は世界中にあります。世界中にそうやって大麻を尊重しているところがあることも知りました。厚生労働省が覚醒剤などと同列に大麻を扱っているのは、厚生労働省の怠慢、研究不足だと思います。日本でも戦前までは薬として市販されていました。」
-栽培の目的は?-
「医療目的と自己使用目的です。栽培で押収された大麻のうち、麻の酔いが強烈に得られる自己使用目的のハイブリッドは2株で、それを人にあげたことはありません。まだできてませんでしたし。残りの337株は医療目的で、知り合いの知人が病人で必要としており、無償で提供する予定でした。すでに50株ちょっと、提供しました。無償です。間に入った人の名前はちょっと言えません。取調べでも聞かれましたけど、私が病人の名前を言えばあなたたちが行く、それで逮捕しないと約束できるかと聞いたら、逮捕することになるだろうと言ってました。ああ、ひどい国だなぁと思いました。知人から病人の名前は聞いていますが、年齢は50過ぎから80過ぎまでの年寄りです。病状は、皮膚癌、ヘルニア、メヌエル氏病、神経痛です。大麻を使用すると痛みと不眠、食欲不振を緩和すると聞いています。間に入った知人は大麻を吸いません。F2やF3はハイブリッドより酔いが弱く、病人は酔うのが目的ではないので、そのくらいでちょうどいいと聞きました。
-自分のやったことをどう思っている?-
「法治国家である日本で、公然と違法行為を行ったことについては反省しています。方法論として間違っていたと思います。今後、違法行為を行うつもりはありません。ただ、大麻取締法については、やはり、誰にも迷惑をかけていないのに、自分の病気を治そうと思ってですら逮捕されてしまうあり方は間違っていると思います。病気の人にとっては生存権の侵害で、幸福追求権の侵害です。法のあり方そのものがちょっとおかしいのではないかと思っています。
-逮捕についてはどうでしたか?-
「ネットで公言しながら公然と栽培していましたので、逮捕は覚悟していました。免許申請の際、私は、あえて社会に問題提起するつもりでやっていましたので、防犯の項目にはパトロールを警察に依頼する、盗まれないように、ということで申請していました。で、実際に申請してみたらどうなるのか。行政的に手続中であれば指導や呼び出しの上、没収くらいで終わるのか、逮捕されるのか、それを確かめてみたいと思っていました。」
-実際に逮捕されてみてどうですか?-
「もう、こりごり、です。妻や子たち、両親にもひどい思いをさせました。ある程度、逮捕は予測していましたが、それでも大切な人たちに大きなダメージを与えてしまいました。精神的にも、経済的にも、迷惑をかけました。父は、大麻については、話したところ、分かったと言ってくれましたが、家族を大切にするよう強く叱られました。会社も私がいないとできません。アルバイト的に手伝ってもらう人はいますが、社員というのはいません。顧客も減りましたし、現在も非常に厳しい状況です。」
-桂川さんの「麻の復権をめざす会」との関係は?-
「桂川さんの調書に出てくる麻の復権をめざす会は、実体としてはないと思っていました。私も麻の復権をめざす会の会員としては活動をしていません。私は、大麻愛好者を増やして法律を破綻させようと思っていたのでもありません。大麻で逮捕するのはおかしいと主張していました。愛好者は免許を取って合法的に扱えるようにしようと主張していました。」
-今後について-
「今後は、法治国家である日本で法律を公然と犯すとこういう目にあう、ということが十分に分かりましたので、あくまでも合法的に大麻取締法はおかしいと主張していきたいと思います。」
-でも当面は?-
「当面は、、、生活の建て直しが一番です。法律が変わらない限り、今後は一切大麻の所持や栽培はしません。」
弁護人と検事が質問者交代。俺もずっと立ったまま。腰が痛い。ズボンがきつい。
検事
-あなたは大麻で「酔う」という表現をしましたけど、大麻を吸うとどうなるんですか?-
「(吸ってみりゃ分かるんですけど)私の場合、穏やかに酔っぱらう作用があると思います。」
-あなたが大麻を渡した患者さんの医師は、大麻の使用についてどう判断しているんですか?-
「私が譲り渡した患者の医者が、大麻の使用について知っているのかどうか、知りません。」
-大麻が必要な患者は勝手に作っていいってことを主張してるの?-
「大麻を必要としている患者が手に入れることのできる制度が必要です。そういう制度を作ろうという主張です。大麻が有効視されている病気もあるので、処方が制度的に認められるべきだと思っています。制度を待たずに栽培したことは反省しています。逮捕されて、子たちとの夏休みの約束も守れなかったし、思ったより待遇がひどくて反省しましたし、あくまでも合法的に自分の考えを表現しないといけないな、と思いました。
大麻の有害性の議論以外に法制度の議論があるのは知っていましたが、現に必要としている患者がいましたので、栽培を続けました。・・そういえば、患者の一人は病状が悪化して再入院したそうです。冗談で、なんで大麻を持ってきてくれないのかと言っているそうです。こういう状況になっていることを知ったうえで。他の人も、通院して化学療法を受けてはいるけど、副作用がキツくて、それで逆に体が参っているという話も聞きました。」
検事の質問はこれだけだった。もっと激しく糾弾調で詰問されることを予想していた。開廷前に廊下で「そういう議論はしない」と言っていたのはそういうことだったのか。
裁判官
-あなたは、勝手に栽培していいと思っているの?制度が必要だと思っているの?-
「大麻を処方される制度があればそれが一番望ましいと思っています。・・嗜好目的ということまで踏み込んで言えば、その辺に元々生えてる草ですし、日本では古来から栽培されていた、神聖な、天与の草でもありますので、それを取り締るっていうのは、やはりどうなんだろうと今でも思っています。」
-逮捕を覚悟していたっていうけど?-
「いや、でも、実際はこんなにすぐ逮捕だとは思っていませんでした。却下されてはいましたけど、免許の申請手続き期間中でしたし(秋には来るだろう、早めに収穫しなけゃと思ってました)。実験だと思っていましたが、実験としても失敗しました。」
-また病人が大麻が欲しいと言って来たらどうするの?-
「もうありませんと答えます。今後は、違法行為を行うとどうなるか実感しましたので、あくまでも合法的に、法の範囲内で主張していきたいと思っています。」
被告人質問が終わり、やっと長椅子に戻って座る。
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11月5日。大阪地裁605号法廷で午後2時から第2回公判が開かれる予定だった。が、弁護士が遅刻して開廷時刻が20分少々遅れた。
裁判官が開廷を告げて、被告人の私は長椅子に着席したまま。
裁判官が、
「弁護人は憲法違反で無罪を主張するんですね?」
と確認の言葉を向ける。
「はい、その弁論は後でやりますけれども、報告書といたしましては、」
と、報告書を説明した。
報告書(1)
「文字通り世界の医師のバイブルとして無数の人々の治療に役立ってきた」(「メルクマニュアル第17版日本語版総監修者序より)」医学書「メルクマニュアル」(第17版日本語版)のweb版中、「大麻(マリファナ)類への依存」(第15節精神疾患195章「薬物と依存」)に大麻の有害性・危険性についての記載があるのでこれを抜粋して報告する。
報告書(2)
1982(昭和57)年11月第二東京弁護士会司法制度調査会において「大麻取締法見直しについて」とする意見書が採択され、「大麻には従来考えられていたような強い有害性はないと認識されるようになってきており、・・・大麻取締法を見直す必要があると考えられる」としているので、これを弁護士丸井英弘作成のホームページより引用して報告する。
報告書(3)
マリファナの有害性、大麻取締法の問題点等について、弁護士丸井英弘の論文を法学セミナー(日本評論社1980年7月号「マリファナ解禁と大麻取締法」、同12月号「薬物使用と非犯罪化」)から引用して報告する。
報告書(4)
大麻問題で英国上院委員会顧問を務め、これをきっかけに文献の総括的検討に着手したレスリー・L・アイヴァーセン博士が書いた「マリファナの科学(伊藤肇訳 築地書館)」より「マリファナの医療利用」及び「マリファナの安全性」に関する科学的・学術的記載があるのでこれを抜粋して報告する。なお、長文に亘るが、重要部分に下線を付した。
「大麻取締法が憲法違反であること」、「医療大麻が認められないのは生存権の侵害であること」を証明するための報告書は、俺がネット上の情報や文献などを紹介したなかから、弁護士が抜粋し、組み合わせて作った。
論文を裁判のデータに使用することについては、丸井弁護士にはメールでお願いし、ご了解頂いた。
「マリファナの科学」著者のレスリー氏には連絡してないが、発行元の築地書館には了解を頂いた。
メルクマニュアルについては事前の了解を得ていない。そのことを思い出した。
頼んだはずの、オランダなどの医療的な扱いに関するデータが落ちている。先生、忙しくって、当日ギリギリにならないと書類が間に合わない。
報告書の説明が簡単に終わり、証人への尋問。
情状証人として妻が傍聴席から廷内に入り、証言台へ。
開廷前に署名した宣誓書を読まされる。
「宣誓、良心に従って真実を述べ、何事も隠さず、偽りを述べないことを誓います。」
裁判官が着席を勧める。証人は座っていいようだ。
弁護士の質問に妻が答えてゆく。
証人の妻が傍聴席に戻り、俺への質問が始まった。
弁護士
-今までに逮捕されたりしたことはありますか?-
「19歳のときにバイクで人にちょっとケガをさせてしまって、業務上過失傷害で罰金2万円を払ったことがあります。それ以外はありません。」
-あなたが大麻を知ったのいつですか?-
「21歳から23歳くらいまでアメリカ内を放浪していましたが、ニューヨークのハーレムに住んでいた頃、周囲の黒人に勧められて吸ってみたら、酒とは違って意識が混濁することもなく、逆に人と人のつながりを大切にするような酔いかたでしたので、そんなに悪いもんではないと思いました。暴力的になることもありませんでした。
-大麻以外の薬物に関しての使用歴は?-
「アメリカにいる間、それ以外の薬物、クラックとかコケインなどを一度だけやったことがありますが、大麻とは違い、意識が違うところへ行ってしまうものもあるので、一度きりにしました。LSDは、4・5年前の野外のパーティーのときに一度、あります。桂川さんの調書によると、何回か渡したとなっているようですが、勘違いだと思います。それ以外に、違法なドラッグの経験はありません。」
-帰国後の大麻との関わりはどうでしたか?密売人から買ったことは?-
「海外から戻った友人から少し貰って吸うことはありましたが、密売人から買ったこはありません。違法だと分かっていたし、そこまでして欲しいとは思いませんでした。何年かは大麻とはノータッチでした。」
-桂川さんと知り合ったのは?-
「「マリファアX」という本で桂川さんを知ったのは7・8年前で、その本を読んでコンタクトを取りました。桂川さんとは、人生論とか、大麻については日本古来の、縄文時代からの栽培作物であったことや、御札のこと、もともと日本にとっては麻は神聖なものであることなどを教えて頂きました。桂川さんからは、その知識の深さ、麻についての知識だけでなく、人生論、宇宙論、いろいろと教えを受けることが多かったです。桂川さんのところで大麻を吸ったり、持ち帰ったこともあります。」
-栽培の経験は?-
「アメリカから帰国してすぐ、向こうで知り合った友人を泊めたときに、その友人から貰った中に一粒の種が入っていましたので、栽培したことがあります。桂川さんから貰ったなかにも種付きがありましたので、、、4・5年前に一度、以前の住所で栽培しかけたことがありますが、大家さんに見つかったようで、マズイかな、と思い、抜いて捨てたことがあります。300株以上の栽培は今回が初めてです。以前に栽培して、人に売ったとか、あげたことはありません。」
-桂川さんからはどのくらい貰っていた?-
「いちいち正確に量っていたわけではありませんが、月に一度くらい遊びに行って、一度に10グラムから20グラムくらいの量をもらっていたと思います。」
-あなた自身が栽培していた目的は?-
「ハイブリッドについては私自身の嗜好目的です。残りのF2とかF3は酔っぱらう効果は薄いので、欲しがっていた病人にあげるつもりでした。」
-大麻取扱者免許を申請していますね?-
「はい。4月に栽培を始めたあと、5月に長野県知事宛に大麻取扱者免許の申請をしたのは、合法的に栽培したいと思ったのと、栽培免許を申請してもほとんどくれない、行政の窓口でも申請書すらくれないと聞いていましたので、それはおかしいのでは、という思いもあり、ホームページでその経過を公表しながら、あえて社会的に問題提起したいというつもりで嗜好目的で申請しました。6月27日に却下されていますが、却下は予想していましたし、それに対して異議申立てをして、何がいけないのか明確にしていきたいとも公表しています。医療目的での免許申請も考えていました。医療目的ですら認めてくれないというのは、世界的に、大麻が医療的に効果があるというのは、科学的に証明されている事実ですので、それすら認めないというのは、明らかに生存権の侵害であると思っていました。そういう意味で、こちらから訴訟を提起していくことを考えていました。」
-なぜ最初から医療目的にしなかったのですか?-
「最初から医療目的にしなかったのは、自分自身が病気ではないから医療目的にはならないと思っていたのと、医療目的をわざわざ出すのも偽善的かなという気があったので、あえて嗜好目的で申請しました。」
被告人に対する弁護士の質問はまだ続きがあったが、裁判官が時間切れを告げた。
第3回となる次回は11月18日午後3時から1004号法廷にて。
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大阪地方裁判所605号法廷。午前10時ちょっと前。
傍聴席に座っていた私は、既に弁護人席に就いていた弁護士の手招きで被告人席に移動した。
保釈が認められていなければ、今朝、大阪拘置所の独房を出て、手錠と腰縄をされて、裁判所行き被告人たち多数と数珠繋ぎにされて、マイクロバスで護送されてくることになったのだろう。
被告人席は長椅子だった。拘置所から来る場合は被告人の両隣に官吏が付く。
検事席で書類に目を落としている検事は物腰の柔らかそうな小柄な男で、歳は俺より少し上くらいだろうか。
突如、正面の高い所、裁判官席の壁にあるドアが開いて裁判官が入ってくる。全員起立。着席。
朝山芳史裁判官が「被告人は前に出てきてください」と促し、俺は証言台に立つ。氏名、生年月日、本籍、現住所、職業などを問われ、問われるまま答える。
村岡正三検事による検察の冒頭陳述
1.被告人の身上経歴
2.犯行の経緯等
被告人は、合衆国内を放浪していた際、大麻の吸煙を始め、帰国後は友人が密かに外国から持ち帰った大麻を吸煙したり、友人からもらった大麻の種子を生育させて収穫し、その葉を週1回ほどの頻度で約1年半にわたり吸煙したが、やがて「マリファナX」なる本の著者であり、大麻使用人口を増加させて大麻取締法を無効化することを目指して活動している桂川と面識ができ、■■市内に転居した後は月に一度ほどの頻度で同人宅を訪ね、一度に20グラムほどの大麻をもらい、平成15年4月末ころからは十数回前記桂川方に出かけ、一度に5グラム前後の大麻をもらってこれを吸煙していたほか、メール仲間に宅急便で大麻を送付してやるなどしていた。
その一方、被告人4年ほど前に当時の借家の庭で大麻を栽培したほか、前記桂川の思想に共鳴し、平成15年には自宅大家から使用を許された■■郡■■村****番地の畑地において、4月中旬ころから大麻草の栽培を始めた。
3.犯行状況
本件犯行状況は各公訴事実記載のとおりであるが、平成15年8月19日付け公訴事実における大麻草の所持量は、株状の大麻草以外の大麻重量18.906グラムと、株状の大麻草の茎を除いた重量88.82グラムを合計したものである。
準備が間に合わないとかで現物339本は登場しなかった。
起訴事実を認めるか、と裁判官。俺は認めた。
俺に対する質問などはそれだけだった。
次回、弁護側の弁論等を含めて1時間を予定することになった。
約30分。初公判はそれで終わった。
傍聴席には裁判見学ツアーらしき一団がいたが、どう思って聞いていたのだろう。
聞いてみたい気がした。
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