カナビスの成分が
転移性乳癌の拡大を止める
Source: Forbes Magazine
Pub date: 19 Nov 2007
Subj: Cannabis Compound May Stop Metastatic Breast Cancer
http://cannabisnews.com/news/23/thread23489.shtml
カリフォルニア州サンフランシスコの研究チームが発表した新しい研究によると、カナビスの含まれる毒性のない非精神活性成分カナビジオール(CBD)が転移性乳癌の拡大を抑えることがわかった。
この研究のリーダーを務めるカリフォルニア太平洋医学研究センター(CPMCRI)のシーン・マカリスター次席研究員は、「これは、化学療法や放射線治療のような毒性をともなわない新しい治療法につながると思います。転移性の癌に対処する新しいアプローチと言えます」 と語っている。
原発巣のガン細胞を体内に拡散するするのはId-1と呼ばれる遺伝子の働きによるものと考えられているが、カナビジオールがその活動を抑制するのだと言う。
オーケストラの指揮者を狙い撃ち
ピエール・デスプレッツ主席研究員はオーケストラに例えて、「遺伝子のId-1は指揮者に相当します。その銃でバイオリニストを撃ってもオーケストラは演奏を続けることができますが、指揮者を狙い撃ちすればオーケストラ全体を演奏不能にしてしまうことができます。カナビジオールでId-1を狙い撃ちできるのです」 と説明している。
「Id-1は転移性の癌の中だけに見られる遺伝子で、誕生前の胎児の発達にともなってその元が出現するのです。誕生後は何の活動もせずに休眠状態になっていますが、転移癌が発生すると眠りから覚めて大変な悪さをするようになるのです。細胞を胎児の細胞のように変えて成長し、狂ったように増殖して転移していくのです。」
「私たちの研究では乳癌の末期の状態に焦点を当てています。癌細胞そのものは手術で取り除けますから問題ではないのですが、問題は、指揮者のId-1が転移細胞を発達させることなのです。カナビジオールはそれを阻止するのです。」
だが両研究員は、ホルモン非依存の転移性乳癌患者が普通のカナビスを吸っても、十分なカナビジオールの量が摂取できないのでやらないほうがよいとも忠告している。
マカリスター氏は、「研究は、カナビスとその化合物で行っていますが、カナビジオールについては特に長い時間をかけています。その結果、カナビジオールには精神活性がなく毒性も極めて低いことがわかっています」 と加えている。
この研究が癌治療に使えるようになれば、転移癌を持った人はカナビジオールを数年間にわたって処方することになるが、それには毒性が低いことが重要になると説明している。
今回の研究結果は、分子癌治療ジャーナル(Molecular Cancer Therapeutics)の11月号に掲載される。
12年間探し求めてきた
また、マカリスター氏は、「Id-1は、多くの転移するタイプの癌の細胞の中で非常に重要な役割を果しているので、乳癌以外の癌にも適応できる可能性もあります」 と語っている。
今回の発見が「ある意味では偶然の結果」だったと謙遜しているが、デスプレッツ氏によると、彼の研究室では12年前からId-1研究に取組んで侵襲的な乳癌や腫瘍の進行にキーになっていることを突き止め、今回それを阻止する方法を見つけたと話している。
カナビノイドの専門家であるマカリスター氏は2年前に、癌の研究者であるデスプレッツ氏の研究室に加わった。二人は力を合わせて、「私が12年間懸命に探し求めてきた物質を見つけたわけです。」
しかし、人間での臨床実験はこれからで、カナビジオールが治療オプションとなるかどうかの結論を出すためにはさらなる研究が必要とされている。マカリスター氏は、「私たちは二人とも基礎研究者なので、今後はチームに医学研究者にも加わってもらわなければなりません」 と語っている。
初期的だが面白い
癌とカナビノイドの専門家として名高いスペイン・マドリッドのコンプルテンセ大学分子生物学部のマニュエル・グズマン博士は、今回の発見について、また予備実験の段階だがとても興味を惹かれると感想を述べている。
「乳癌の転移遺伝子を狙ってカナビノイドを使うことができることが示されたのは今回が初めてです。この重要な発見は、転移性乳癌の臨床治療にカナビジオールが使えるのかというこれまでの疑問を解く第1歩になるのではないかと思います。」
「ですが、論文に出ている実験はすべて培養細胞で行われていて、乳癌モデル動物を使った実験は含まれていませんので、研究を次の段階に進める必要があります。また、Id-1は、転移性乳癌に含まれる多くの遺伝子の一つに過ぎませんので、さらに研究を進めて、他の転移遺伝子にカナビジオールがどう作用するかもを調べる必要があります。」
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今回の発見についてはアメリカの主要マスコミもこぞって速報で伝えているが、カナビスが乳ガンの成長を抑えるという研究は今回が初めてというわけではなく、すでに1974年には発見されている。だが、この研究は アメリカ政府によって隠蔽された ために忘れさられてしまった。
1998年から2000年にかけてスペインのグズマン博士によって再び発見されたが、アメリカのマスコミは政府の意向に沿って(?)この大ニュースも無視し続づけてきた。しかし、この数年で研究が一気に加速しマスコミも無視できなくなってきていた。
今度の研究では遺伝子をターゲットにしてカナビノイドの効果を実証した点では新しいが、カナビスが乳癌を抑えること自体はアメリカ以外の研究者たちによってこれまで何度も確かめられている。今回アメリカのマスコミがこぞって取り上げたのは、やはりアメリカの研究だからだろうか?
いずれにしても、今年に入ってからアメリカの研究者たちによるカナビスの医療効果を実証する研究の発表が 相次いおり、いよいよアメリカ政府の 「カナビスの医療効果は証明されていない」 という主張も通じなくなってきている。
アメリカ政府は1974年には知っていた、隠蔽されたカナビスの抗癌作用発見 (2000.5.31)
Anandamide inhibits human breast cancer cell proliferation (1998,7.7)
Inhibition of Human Breast and Prostate Cancer Cell Proliferation1 (2000)
Antitumor Activity of Plant Cannabinoids (2006.5.25)
カナビノイドが乳ガン細胞の増殖を劇的に抑える (2006.6.1)
カナビノイドが脾臓ガンや乳ガンの成長を抑える (2006.7.6)
今回の実験では、アメリカでは研究用のカナビスの入手が難しい ために、化学合成したカナビジオール(CBD)を使っている。記事では、普通のカナビスを吸っても十分なカナビジオールの量が摂取できないのでやらないほうがよいと書いてあるが、合性カナビノイドは値段が高いので、将来的な実用面ではやはり医療カナビスが欠かせないのではないか?
現在オランダで栽培されている医療カナビスでは、THCほぼ100%の品種からCBDほぼ100%の品種まで、どのような比率のものも生産できるようになっている。
オランダ保健省医療カナビス事務所(OMC) は、今年の2月、従来のベドローカン(THC18%)、ベドノビノール(THC11%)に加えて、多発性硬化症患者向けにハイになりにくいベディオール(THC6%、CBD7.5%)の販売も開始して医療カナビスの 品揃え を強化しているが、今後CBDが適している疾患の利用が見込まれればCBD品種も提供される可能性がある。
また、エコー製薬 が開発しているカナビス・ベースの舌下錠剤でも、CBD主体のものが製造されるようになれば安価で吸収効率のよい医薬品が出てくると思われる。
カナビス・ドクター・コネクション、ホルタパームの歴史とGW製薬との接点 (2004.2.11)
The Inheritance of Chemical Phenotype in Cannabis sativa L. (Genetics, Vol. 163, 335-346,2003.1)
オランダ、カナビス・ベース医薬品の開発を推進 (2007.11.7)