カナビスの医療価値議論

研究は明白に治療効果を認めている


ポール・アルメンターノ

Source: Hawaii Reporter
Pub date: 18 Oct 2007
Subj: Research Leaves No Cloud In Medical Pot Debate
Author: Paul Armentano, NORML Senior policy analyst
Web: http://cannabisnews.com/news/23/thread23420.shtml


私はこの1年に、カナビスの最新の医学研究の動向をまとめた、『噴出するカナビスとカナビノイドの臨床応用、最新科学文献レビュー 2000〜2008』 というパンフレットを書いたが、その著者としては、政治家や行政当局者たちが最新の情報を知ろうともせずいまだに 「喫煙カナビスは医薬品ではない」 と言い続けていること憤りを感じざるを得ない。

つい最近立ち上げられたDEAのサイト 「ジャスト・シンク・トワイス (JustThinkTwice.com)」 でも同じ主張を繰り返しているが、その内容は単純と言ってよいほど明からさまに間違っている。

上のパンフレットを書くのにあたって、私は、カナビスやカナビノイドの医療価値を評価した150件以上の臨床および臨床前研究の論文に目を通したが、そこでは、多発性硬化症、アルツハイマー、骨粗鬆症、糖尿病、ルーゲリック病をはじめとするさまざま病気で症状の緩和や進行を遅らせる効果のあることが示されている。

このパンフレットを作成した後も、医学雑誌には毎日にように新しい科学研究が掲載され続けている。例えば、国立衛生研究所の研究者たちは、2006年後半に、「薬物療法で注目を集めるエンドカナビノイド・システム」 という膨大な レビュー を発表し、カナビスの成分には、運動障害、精神障害、心臓血管障害などを始めとする重度の疾患や症状に対して幅広い治療可能性があると報告している。

この2月に発表された神経学ジャーナルには、サンフランシスコ総合病院とカリフォルニア大学ペインクリニック研究センターの研究チームが、カナビス吸引によるHIVに伴う神経感覚障害の治療効果について調べた 論文 が掲載されている。そこでは、低グレードのカナビスを1日3回喫煙した患者で、痛みが平均34%も軽減したと書かれている。

こうした俗に神経痛とも呼ばれる神経因性疼痛には全世界の1%の人々が苦しんでいると推計されているが、オピオイドや非ステロイド系の抗炎症剤といった典型的な鎮痛薬が効かないことが知られており、それだけにこの研究結果は非常に大きな意味を持っている。

この夏に発表された後天性免疫症候群ジャーナルに掲載されたニューヨーク州のコロンビア大学の研究チームの臨床実験では、「カナビスの喫煙によって・・・HIV陽性の患者の食事の摂取量が増加し、気分が改善され、客観的にも主観的にも睡眠の指数が向上した。カナビスの喫煙には明らかな医療メリットがある」 と 結論 づけている。

この研究では、カナビスの喫煙と合成THC製剤のマリノールの効果の比較も行っている。DEAはマリノールがカナビスよりも効果的な医薬品だと盛んに宣伝しているが、この研究では、カナビスを2、3服して得られるのと同等の効果をマリノールで得るためには1日の推奨服用量の8倍もの摂取が必要で、実際にははるかに効果が低かったと報告している。

つい先月発表されたイギリス薬理学ジャーナルでは、アイルランドのトリニティ・カレッジの研究チームが、「アルツハイマー病、カナビノイドが新たな道を拓くか?」という 論文 の中で、アルツハイマー病の治療法として、カナビスをベースにした治療薬がこれまでのどの医薬品よりも大きな見込みがあると主張している。

「カナビノイド治療には、アルツハイマー病に対して多面的な効果が備わっている。神経防護作用や神経性の炎症を抑える効果などに加えて、ニューロトロフィンの発現量を増やすことで脳本来の修復機能を支援し、新しい脳の神経細胞の新生を促すようにも働く。」

このような研究結果に対して、DEAは、同じような効果の備わった植物や医薬品が他にあるとでも言うのだろうか? 

私は大半の政治家や行政当局者たちとは違って、頻繁に医療カナビス患者さんと情報のやり取りをしているが、毎日のように患者さんや主治医の方々から次のようなメールを受け取っている。
最近、左側頭葉に悪性の脳腫瘍があると診断され手術を受けました。現在は、化学療法と放射線治療を開始したところです。担当してくれた執刀医の方は、自分ではカナビスの推薦証が書けないがと言いながらも、カナビスを吸っても安全だと言ってくれました。

現在処方されている薬では、目眩や吐き気がひどく、最高につらい二日酔いのときのような頭痛に絶えず悩ませられています。頭は依然として腫れ上がたままで悪い状態が続いています。膨れ具合は悪くなっているようで、放射線治療でいっそう悪化します。

それでも、今ではカナビスが私の生命を支えてくれています。発作や吐き気や目眩を抑えて、頭痛を鎮めてくれます。

もし、カナビスが自分の抱えているこうした問題の助けになってくれて、さらに腫瘍を小さくしてくれる可能性や自分の人生を広げてくれる可能性を持っているとしたら、一体全体、政府がどんな理由で私に対してカナビスを使ってはならないなどと命令できると言うのでしょうか?

全くこの患者さんの訴えている通りだ。今こそDEAは現実を見つめて自ら 「ジャスト・シンク・トワイス」 すべき時ではないのか?

噴出するカナビスとカナビノイドの臨床応用、最新科学文献レビュー 2000〜2008
カナビスの害削減パラドックス、エンドカナビノイド・システムによる体内の害削減

エンドカナビノイド、その機能と治療薬の可能性  (2007.10.14)
カナビノイド治療研究最前線、第4回国際カナビノイド医薬品学会カンファレンス  (2007.10.14)
医療カナビス新研究、政府の嘘を暴く、カナビスの喫煙はマリノールよりも優れている  (2007.7.13)

カナビスの医療価値を否定し続けるアメリカ政府は、その必要性から研究を妨害するだけではなく、研究成果そのものを隠蔽することさえ行ってきた。

1974年、連邦政府の依頼でカナビスの研究を進めてきたバージニア医科大学のチームは、培養液とマウスを使った実験でカナビスが悪性腫瘍細胞の成長を抑えることを発見したが、政府当局はこの研究を無視し、その後いかなる追認研究に対しても資金を提供することを拒んだ。

さらに1983年には、ドラッグ戦争をさらに徹底させるために、レーガン/ブッシュ政権は、アメリカの大学や図書館や研究者たちに対して、1966年から1976年までに発表されたカナビス関係の研究論文および概要をすべて破棄するように要請し、きわめて多くの情報が失われている。

アメリカ政府は1974年には知っていた、隠蔽されたカナビスの抗癌作用発見  (2000.5.31)
カナビノイド、ガン治療薬への期待、アメリカの偏見と立ち遅れ

「カナビスは医薬品ではない」 あるいは 「喫煙カナビスは医薬品ではない」 という主張は、DEAのタンディ局長が2005年に書いた 「マリファナ、神話が人を殺している」 という文に端的に表れている。内容は、自分たちに都合のよいところだけをあちこちから引用してきて誇張して書かれている。

文章の始まりからして、エクスタシーを飲んでおかしくなった14才の少女に、友人がカナビスを与えたけれども死んでしまったという新聞記事を引用して、カナビスが薬になるという誤解が生んだ悲劇だと書いている。しかし、 実際の記事 を読めば、この主張がとんでもない誇張だということがすぐわかる。こんな調子で、それ以後も主観的で感情的な文が続いている。

IOM報告 の引用もあるが、実際には報告書自体を読まずに、さも本当に読んで書いたように装っている。これは、2002年にDEAが発表した文章 をそっくり孫引きしていることからもわかる。全体がこのような具合で、医学的な問題を扱っているのに、引用文献には肝心の医学論文はほとんど載っておらず、あっても政府の刊行物の孫引きか新聞記事の引用ばかりだったりする。

また、喫煙カナビスには医療価値がないという根拠については、カリフォルニア大学医療カナビス研究センター (CMCR) に喫煙カナビスを使った研究を許可しているが、医療効果があることを見出した研究はひとつもない、と主張している。

しかしこれも全くの嘘で、CMCRの プレスリリース や完了した研究のリスト を見れば簡単にわかる。特に、動物実験や基礎研究が一段落した今年になってからは、喫煙カナビスの医療効果を認めた人間での臨床研究が相次いで発表されており、もはやDEA局長の主張には何ら根拠がなくなっている。

カナビスの喫煙でHIVの神経障害疼痛が顕著に軽減  (2007.2.15)
喫煙カナビス、神経疼痛に治療効果  (2007.10.24)