喫煙カナビス、神経疼痛に治療効果

THC摂取量、中程度が治療域、過度は逆効果


Dose-dependent Effects of Smoked Cannabis on Capsaicin-induced Pain

Source: Newswise
Pub date: 24 Oct 2007
Subj: Smoked Cannabis Proven Effective in Treating Neuropathic Pain
Web: http://cannabisnews.com/news/23/thread23431.shtml


カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)医療カナビス研究センター(CMCR)の研究によると、健康な被験者対象に行った実験で、カナビスの喫煙が痛みを緩和することが確認された。しかしながら、過度のカナビス摂取では逆に痛みが強くなることも明らかにされている。

実験では、15人の健康な志願者に対してプラセボと効力の異なる3種類のカナビスを使って、強制的に引き起こした痛みの度合の時間変化を比較したところ、低濃度のカナビスでは痛みの緩和効果は認められなかったが、中濃度のカナビスでは痛みが緩和することが示された。だが、高濃度のカナビスでは逆に痛みが強くなった。

こうした結果について、この研究のリーダーでUCSDペイン研究センターのプログラム・ディレクターを務めるマーク・ワレンス薬学部教授は、カナビスの鎮痛効果には 「治療濃度域(therapeutic window)」 があることを示していると説明している。

今回の研究論文は麻酔学ジャーナル11月号に掲載されたもので、CMCRの同種の研究とすれば今年2番目のものになる。CMCRは、病気の治療に使う医療カナビスの安全性と効果を詳しく研究するために1999年に州の資金で設立された。本部はUCSD内に置かれているが、カリフォルニア大学サンディエゴ校とサンフランシスコ校が共同で運営している。

この研究では、ホット・チリペッパーのアルカロイド成分であるカプサイシンを使って皮膚を刺激して痛みを起こしている。カプサイシンの痛みは、HIV/エイズ、糖尿病、帯状疱疹などの神経因性の痛みを実験的に再現したもので、短期間の強い痛みの後に二時的な長い痛みが続く。

被験者には、まずカナビスを喫煙してもらってから、一定の時間後にカプサイシンを注射して痛みの度合を2分半ごとに報告してもらっている。カナビスのTHC濃度は、0%(プラセボ)、2%(低濃度)、4%(中濃度)、8%(高濃度)の4種類で、喫煙の順番はランダムに設定され、またカプサイシン注射は、カナビス喫煙後それぞれ20分後と55分後に行って痛みの経過を測定している。

CMCRのディレクターを務めるイゴール・グラント精神医学部教授は、「被験者たちは中濃度で痛みは軽減すると報告しているわけですが、THCの血漿中濃度と痛みの軽減の間には著しい関連も認められます。また、興味深いことに、鎮静効果は喫煙後すぐに出てくるのではなく、効いてくるまでに45分ほどかかっています」 と言う。

今回の結果は、今年の2月にCMCRの最初の論文として神経学ジャーナルに掲載されたカリフォルニア大学サンフランシスコ校のドナルド・アダムス教授の研究結果を追認するものになっている。アダムス教授の研究では、HIVに伴う感覚神経疼痛患者に中濃度(THC4%)のカナビスを使い、痛みが34%軽減することを見出している。この率はプラセボの2倍になっている。

グラント教授は今回の研究について、「少なくともある状態では、カナビスの治療効果は中程度の摂取量が適当で、摂取量を多くする必要がないことを示しています。これは抗うつ剤などの医薬品と同じです」 と語っている。

研究者たちは、普通の鎮痛剤が効かなかったり、イブプロフェンやオピオイドなど強力な薬に耐えられなかったりする患者にとって医療カナビスが重要な役割を果たす可能性があり、さらに多くの実験や大規模な研究を繰り返してカナビスの効能を調べる必要があると述べている。

ワレンス教授は、「この研究の結果は、今後の痛みの管理の臨床研究のガイドとして役立つはずです」 と話している。



鎮静効果は喫煙後すぐに出てくるのではなく、効いてくるまでに45分ほどかかる。(クリックで拡大)



副作用は中濃度では出ていないが、40分後のハイは高濃度と同じになっている。(クリックで拡大)

この実験結果では、カナビスの鎮静効果はTHCが4%の場合が良いとされているが、これは必ずしもTHC濃度の高いカナビスが医療目的に適していないことを示しているわけではない。

この実験ではTHCの摂取量を標準化するために、喫煙法について、5秒間吸引してから10秒間息をホールドした後に煙をゆっくりと吐き出すように統一され、それを3回以上繰り返すことになっている。

オランダの医療カナビス・ベドローカン はTHCが18%になっているが、軽く吸ってすぐに煙を吐き出すのが普通で、この実験のような吸い方はしない。問題は摂取するTHCの量で、カナビスのTHC濃度が問題なわけではない。高濃度のカナビスを軽く1、2服するほうが煙の量も少なくタールなどの害も少なくなる。

一般に、カナビスを医療目的で使う場合にはハイになるまで吸う必要はなく、リクレーション目的の場合の半分程度の量で効果が得られる。医療カナビスの研究で著名なレスター・グリンスプーン博士は、医療目的でのカナビスの吸い方について次のように指導している。

「まず最初に、経験者にジョイントの巻き方を教わって、最初の何回かは付き添ってもらって吸ってみてください。一服したら少なくとも2、3分はそのまま待って、何も感じないようでしたらさらに一服してください。繰り返すうちに、何か違って感じられるようになるはずです。不快で不安な感じになるかもしれなせんし、症状が緩和していることに気付くかもしれません。いずれにしても、そこで吸うのは中断してください。」 (医療カナビスとサティベックスを語る

また、吸い方を自己調整するのではなく、最初から一定量のTHCを摂取することもできる。効力の安定したカナビスを ボルケーノ・バポライザー で処理すれば常に一定の量のTHCと蒸気を作ることができる。また、チョコレート などにして食べたり、カナビス・ティー などにして飲んでも一定のTHC量を摂取できる。

今回の結果は医療カナビス・コミュニティでは割りと常識的なことで、以前から、うつなどの場合でも中程度の使用では症状が緩和するが、量が多過ぎると逆に症状が悪化すると言われている。最近、それを動物実験で確認したとするカナダの研究も発表されている。

欝と痛み、カナビスは両刀の剣  (2007.10.24)