カナビノイド、ガン治療薬への期待
アメリカの偏見と立ち遅れ
Source: NORML & NORML Foundation
Pub date: 14 Febrary 2006
Subj: Cannabinoids As Cancer Hope
Author: Paul Armentano, Senior Policy Analyst
Web: http://www.norml.org/index.cfm?Group_ID=6814
「カナビノイドには抗ガン作用があり、・・・ガンの成長を遅らせたり、血管形成とガン細胞の転移による拡大を抑制したりする新しいタイプの抗ガン剤として登場してくる可能性がある。」 科学雑誌メディカル・ケミストリー・ミニレビュー2005年10月号に、このような結論を書いた総合検証レビューが掲載された。
「カナビスに、ガンの増殖を押さえつける能力があると言う研究が目白押しだって?」 普通の人なら、「本当?」 と首を傾げても当然かもしれない。30年前にはじめてカナビスに制ガン作用があることを示す研究が発表されて以来、アメリカの政治家や官僚たちはこうした科学研究を事あるごとに隠蔽してきたからだ。
1974年、連邦政府の依頼でカナビスの研究を進めてきたバージニア・医学カレッジのチームは、培養液とマウスを使った実験で、カナビスが悪性腫瘍細胞の成長を抑えることを発見した。1974年8月18日にこの結果が公表されると、ワシントン・ポストは、マリファナの主要成分THCを投与すると 「マウスの肺ガン、乳ガン、ウイルス性白血病の増殖が遅くなり、生存期間が36%も延びた」 という記事を掲げた。
このような有望な臨床前発見がなされたのにもかかわらず、アメリカ政府当局はこの研究を無視し(1975年になってやっとアメリカ・ガン研究所ジャーナルに掲載されたが)、その後いかなる追認研究に対しても資金を提供することを拒んできた。しかし、1990年代半ばに、カナビスの毒性を見付けるために200万ドルを投じたアメリカ毒物学研究プログラムで、マウスとラットに長期間にわたり高濃度のTHCを投与して無投与の対照群と比較した研究が行われ、カナビスには悪性腫瘍に対して大きな防御作用のあることが再び見出された。
しかしこの実験結果も秘密扱いにされた。政府の研究者たちは発見を公表することなく再びお蔵入りさせたが、1997年に研究の草稿コピーがリークされ、その話が全国メディアに取り上げられて発覚した。
それから10年も経っているにもかかわらず、いまだアメリカ政府は、ガン腫瘍増殖を抑える可能性を秘めたカナビノイドの追認研究を奨励しようとせず新たな資金も拠出しようとしていない。
しかし幸いなことに、アメリカの研究者たちがほぞを噛んでいるあいだに、外国の科学者たちはこぞって研究に取り組んでいる。例えば,1998年には、700年の伝統を誇るスペインのマドリード・コンプルテンセ大学の研究チームは、THCが脳の腫瘍細胞に対して、隣接した健康な細胞に悪影響を及ぼすことなく選択的にアポトーシス(細胞の自然死)させることを発見し、2000年には、ネイチャー・メディシン・ジャーナルで、合成THCを注射するとラットの3分の1で悪性の脳腫瘍が根絶され、別の3分の1では生存期間が6週間延びる、と報告している。
また、2003年には、イタリアのミラノ大学ナポリ校の研究者たちは、カナビスの非精神活性成分が投与量に比例して選択的にガンの悪性細胞を死亡させて、グリオーマ細胞の成長を抑制すると発表している。次の年には、アメリカ・ガン研究学会ジャーナルで、カナビスの成分が人間の腫瘍検体で脳のガンの増殖を抑えるという報告も行っている。
アメリカの南フロリダ大学の研究チームは、この研究をさらに発展させて、THCがガンマヘルペスウイルスの活動を選択的に抑制して増殖を抑えることを発表している。このウイルスは、白血球の内部に何年も潜伏した後で活性化し、他の細胞に広がっていくもので、カポジ肉腫やバーキットリンパ腫、ホジキン病などのガンに発展する可能性が指摘されている。
さらに最近発表された臨床前研究では、カナビノイドが、結腸ガンや皮膚ガン、乳ガン、前立腺ガンなどの細胞の成長を抑える役割を果たしている可能性も示されている。研究者たちは、天然のカナビノイドの効果と合成アゴニストの効果を比較し、天然のTHCのほうがはるかに効力があり、健康な細胞を害することなく、より悪性細胞の増殖を選択的かつ迅速に減少させることを見出している。
こうした事実にもかかわらず、いまだアメリカの政治家たちは態度をほとんど変えず、研究資金の拠出は言うに及ばず、こうして出てくる臨床研究の結果すら頑に拒み続け、カナビスがガンを引き起こすという科学的に実証もされていない嘘を繰り返している。残念ながら、こうした偏見がなくならない限り、カナビノイドを利用した制ガン剤の研究開発は外国にしか期待できず、アメリカでは公の場で語られることもない。
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