ヒト免疫不全ウイルス(HIV)
Source: NORML & NORML Foundation
Pub date: updated: Jan 18, 2008
Subj: Human Immunodeficiency Virus
Author: Paul Armentano, Deputy Director
Web: http://www.norml.org/index.cfm?Group_ID=7485
ヒト免疫不全ウイルス は、人間の免疫システムにある細胞に侵入するレトロウイルス (遺伝情報としてRNAを持つウイルス) で、感染症に非常に被患しやすくなる。WHOによれば、アメリカでは、50万人以上の人がHIV/エイズで死亡しているほか、100万人以上がこの病気とともに生きている。
調査データのよれば、HIV/エイズの北アメリカ人の3人に一人は、病気の症状と各種抗レトロウイルス医薬品の副作用の治療にカナビスを使っていることが示されている[1-4]。また、最近発表された研究の一つでは、60%以上のHIV/エイズ患者が自ら医療カナビス・ユーザーであることを認めていると報告している[5]。
カナビスを使ってHIV/エイズ患者の大半は、不安、食欲不振、吐き気の症状に対処することをその理由に上げている。また、一つだけではあるが、抗レトロウイルス治療プログラムを最後まで続けることのできた患者では、カナビス・ユーザーのほうが非ユーザーの3.3倍も多かったと報告している研究もある[6]。
臨床試験のデータでは、CD4およびCD8のT細胞数はカナビスの使用によって悪影響を受けることはなく[7]、むしろ免疫機能を改善することさえ示されている[8-9]。
2007年には、サンフランシスコ総合病院とカリフォルニア大学ペインクリニック研究センターの研究チームが、神経学ジャーナルで、カナビスの吸引によってHIVにともなう神経障害がプラサボよりも著しく軽減したと報告している。一日3回のカナビス吸引で、患者の痛みのスコアは34%減り、「HIVに伴う神経障害に起因する慢性的な神経疼痛に対して、カナビスの喫煙は耐性も良好で、経口投与型の薬と同じような経過で効果的な軽減をもたらした」 と報告している[10]。
また、2007年に発表されたコロンビア大学の臨床試験でも、1日4回カナビスを吸引したHIV/エイズ患者は、「食物の摂取量が大幅に増え・・・一方では、不快症状や認知能力への悪影響を示すエビデンスはほとんどなかった」 として 「カナビスの喫煙には・・・HIV陽性患者の食事量を増加させ、気分を改善し、客観的にも主観的にも睡眠量を増やす、といった明らかな医療メリットがある」 と結論付けている[11]。
こうした研究が相次いだこともあって、現在では多くの専門家が、HIV/エイズ患者にとって 「カナビスが、健康を維持する上でもう一つの治療オプション」 と考えるようになっている[12]。
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[1] Woolridge et al. 2005. Cannabis use in HIV for pain and other medical symptoms. Journal of Pain Symptom Management 29: 358-367.
[2] Prentiss et al. 2004. Patterns of marijuana use among patients with HIV/AIDS followed in a public health care setting [PDF]. Journal of Acquired Immune Deficiency Syndromes 35: 38-45..
[3] Braitstein et al. 2001. Mary-Jane and her patients: sociodemographic and clinical characteristics of HIV-positive individuals using medical marijuana and antiretroviral agents. AIDS 12: 532-533..
[4] Ware et al. 2003. Cannabis use by persons living with HIV/AIDS: patterns and prevalence of use. Journal of Cannabis Therapeutics 3: 3-15..
[5] Belle-Isle and Hathaway. 2007. Barriers to access to medical cannabis for Canadians living with HIV/AIDS. AIDS Care 19: 500-506.
[6] de Jong et al. 2005. Marijuana use and its association with adherence to antiretroviral therapy among HIV-infected persons with moderate to severe nausea. Journal of Acquired Immune Deficiency Syndromes 38: 43-46.
[7] Chao et al. 2008. Recreational drug use and T lymphocyte subpopulations in HIV-uninfected and HIV-infected men. Drug and Alcohol Dependence. (E-pub ahead of print).
[8] Abrams et al.2003. Short-term effects of cannabinoids in patients with HIV-1 infection: a randomized, placebo-controlled clinical trial. Annals of Internal Medicine 139: 258-266.
[9] Fogarty et al. 2007. Marijuana as therapy for people living with HIV/AIDS: social and health aspects 19: 295-301.
[10] Abrams et al. 2007. Cannabis in painful HIV-associated sensory neuropathy: a randomized placebo-controlled trial. Neurology 68: 515-521.
[11] Haney et al. 2007. Dronabinol and marijuana in HIV-positive marijuana smokers: caloric intake, mood, and sleep. Journal of Acquired Immune Deficiency Syndromes 45: 545-554.
[12] Fogarty et al. 2007. op. cit.