アムステルダムのコーヒーショップ

学校隣接の43店舗を閉鎖へ

Source: DutchNews.nl
Pub date: 21 Nov 2008
Amsterdam 'forced' to shut cannabis cafes
http://www.dutchnews.nl/news/archives/2008/11/
amsterdam_forced_to_shut_43_ca.php


つい先ごろ約30自治体が参加してアルメールで地方自治体カナビス・サミットが開催されたが、各新聞が一斉に伝えたところによると、アムステルダム市は国の基準に従って、現在ある228軒のコーヒーショップのうち43店舗を強制的に閉鎖することになった。

この措置は、中高等学校から250メートル以内で営業しているコーヒーショップが対象で、2011年末までに閉鎖を完了する予定になっている。

その中には、ライツェ広場の有名なブルドック・パレス・コーヒーショップも含まれている。このショップは、かつての警察署の建物を買い取って20年以上も前にオープンして営業を続けてきたが、市の有名校であるバルレウス・ギムナジウムにあまりにも近いために閉鎖されることになった。

アムステルダムのコーヘン市長は、新聞社のインタビューに対して、学校に隣接するショップの閉鎖を政策とする政府からの強い要請を受け入れることにしたと答えている。


栽培合法化・規制によるコントロールを求める

しかしこうした措置の一方で、コーハン市長は、現在のソフトドラッグ政策をさらに進めて、カナビスの栽培も含めて取引全体を規制してコントロールすることも求めている。

現在のソフトドラッグ政策では、カナビスの販売と使用については黙認するものの、カナビスの大規模栽培やコーヒーショップへの流通は禁止されている。コーヒーショップを持つ自治体の多くの市長は現行の政策でも満足を表明しているが、コーハン市長をはじめ半数以上の市長は、カナビスの生産までを合法化することに賛成している。

合法化と厳しい規制によって犯罪組織を介入を減らすことができるので、自治体はより容易にカナビスやコーヒショップをコントロールできるようになるとしている。

アムステルダムのツーリストのおよそ25%がコーヒーショップを訪れるとされているが、コーハン市長によれば、コーヒーショップのツーリストは、アルコールを飲む外国人観光客に比較すれば迷惑行為はずっと少ないという。

またコーハン市長は、オランダのソフトドラッグに対する寛容政策には各国から非難もあるが、恐れるべきではないと主張している。「われわれは、鉄の塊のような議論を投げかけているのです… コーヒーショップをすべて禁止しても、絶対にカナビスの使用はなくならないし減らないのです。」

学校に隣接するコーヒーショップの閉鎖については、10年以上も前から各地で行われてきたもので、アムステルダム以外では最後まで残っていたロッテルダムも2008年末に完了する予定になっている。

アムステルダムでもかなり前から44店舗が閉鎖されるという噂が出ていたが、最終的には43店舗になって今回の発表になった。20%近く減ることになるが、それでも1店舗あたりの人口密度は4500人で、観光客のことを考慮しても非常に高いままに維持されている。

また、アムステルダムでは、1995年4月以前にカナビスとアルコールを同時販売していた店舗(ハシシ・カフェ)が昨年まで44店舗残されていたが、今回と同様に全国的な規制に合わせるために2007年4月1日からアルコールとソフトドラッグを 同一の場所で販売することを禁止 した。これに伴って44軒のハシシ・カフェのうち4軒がカフェとして残り、その他の40軒はコーヒーショップに移行している。

コーヒーショップ数の変遷

中高等学校に隣接するコーヒーショップの閉鎖については、未成年者とカナビスを切り離す政策の一環として考えられているが、その効果については疑問視する向きもある。

同じような措置としては、1996年にコーヒーショップへの入店可能年齢を16才から18才に引き上げている。確かにこの変更によって、16〜17才の未成年によるコーヒーショップでのカナビス購入は1996年の45.2%から1999年には25.7%に減っている。

しかし一方では、友達などから入手した未成年は、1996年の47.6%から1999年には66.5%に増えている。結局、コーヒーショップから買えなくなってもすぐに他のルートが出現して、コーヒーショップのない他の国の流通と同じようになるだけに過ぎない。

Dirk Korf, An open front door: the coffeeshop phenomenon in the Netherlands, A cannabis reader: global issues and local experiences, EMCDDA , 166p

コーヒーショップへの18未満の入場については、違反すると即刻営業停止になるので、店側でも非常に厳しく管理している。別の記事 によれば、そうした現実を踏まえて、バルレウスのマルグリッド・ボスマン校長もブルドックの閉鎖には反対している。

「閉鎖によって、特別の効果があるなどと思っていません。今回の措置は実際には単なる政治ショーです。子供たちはカナビスが欲しければいくらでも別の方法で手に入れることができるのです。ブルドックのように徹底的に管理された店を閉鎖しても、問題解決には何もつながりません。」

今回のコーハン市長の決定と会議での発言は、カナビス問題を合法化して規制と管理によってコントロールしようとする新しい時代の取り組みを象徴している。

オランダ政権の第1政党であるCDAは、コーヒーショップの全面閉鎖を主張しているが、こうした何の展望もない政策は全体的には少数派に過ぎず、地方自治体のCDAの意見すら割れている。アムステルダムのコーヒーショップの閉鎖ばかりを注目していると全体を見失う。

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ブルドック・コーヒーショップ のオープンの様子は、 ダッチ・エクスペリエンス 第3章 ハシシはいかにしてビジネスになったか に詳しく紹介されている。

ライツェ広場のブルドックは、かつての警察署の建物だったので内部に留置場(本物?)も残っており、中でカナビスを吸うことができるようになっている。だが、建物のすべてがコーヒーショップというわけではなく、バーやレストラン、ギフトショップなどもあるので全体が完全に閉鎖されるのかどうかはわからない。

現在は、この7月から始まった禁煙法の影響で数百店舗のカフェが営業不振で潰れるのではないかと言われており、それに比較すればコーヒーショップはずっと恵まれているとも言えるかもしれない。