コーヒーショップ数の変遷


(アイントホーヘンは2000年以前は住民数が20万以下)  The Netherlands Drug Situation 2006


最近はあまり減少していない

しばしば、オランダ政府の締め付けが厳しくコーヒーショップの数が激減しているという報道を見かけるが、明らかな誇張で間違っている。

2005年時点では、オランダ全体のコーヒーショップ数は729軒で、確かに1997年に比較すると38%の大幅な減少になっているが、これは1999年までの2年間にロッテルダムを中心とした地域で28%減ったためで、それ以降では、1999年が4%、2000年1%、2001年3%、2002年4%、2003年2.3%で、2004年から2005年にかけては1%で、比較的小幅にとどまっている。(2007年は702軒)

コーヒーショップの過半数(52%)は人口20万人以上の大都市に集中しているが、小幅減少はこれらの地域を中心としたもので、人口20万以下の自治体では2000年以降あまり変化していない。


1997年に激減した理由

カナビスを販売している店が最も多かったのは1990年ころで、スナックやミュージック・ストア、スタンドなどの兼業店舗も含めて1400軒以上が営業していた、しかし、過当競争で淘汰が起こり、また、警察も取締りを強めたことから1995年ころには1300軒以下に減った。


1980年と1999年のアメステルダムのコーヒーショップの分布状況

1997年から99年にコーヒショップ数が急激に減少したのは、ロッテルダムで、カナビスとアルコールを同時販売していた店舗(ハシシ・カフェ)に対して、どちらか一つを選ぶように徹底した結果、半数がアルコールを選択 したことが主要な理由になっている。

また1997年に、アムステルダム市が、余りにも増えすぎたコーヒーショップを整理するために、税金をきちっと納めることを条件に認定シールの発行を始めたことも大きく影響している。このために、税金の払えない弱小店舗が多数脱落し、コーヒーショップ数が減った。

2000年以降の減少は、ほとんどが経営不振や違反販売によるもので、競争が激しく犯罪も多い大都市で起こっている。これは、人口10万以下の自治体ではコーヒショップの数がほとんど変化していないことからもわかる。

最近は、新規に認可を得ることが難しくなっているので、今後も経営不振や違反販売の他にオーナーの死亡や火災の消失などで少しずつ減り続けていくことになる。

また、アムステルダムに関しては、1995年4月以前にカナビスとアルコールを同時販売していた店舗(ハシシ・カフェ)が44軒残されていたが、2003年に国会で、2007年4月1日からアルコールとソフトドラッグを 同一の場所で販売することを禁止 することになった。

これに伴って44軒のハシシ・カフェのうち4軒がカフェとして残り、その他の40軒はコーヒーショップに移行した。有力な大型店舗などでは、店内を仕切って分離したり、近くにレストランなどを開店してアルコールを提供すると同時に、持ち込んだカナビスを吸えるようにしたりしている。


コーヒーショップの運用基準

確かに、オランダ政府はコーヒーショップ全体の数を減らしていく政策をとっているが、実際にコーヒーショップをどうするかについては、市町村などの地方自治体の決定に委ねられている。

全国500あまりの自治体の中でコーヒショップを持っているのは約21%で、ほとんどの小自治体にはもともとコーヒーショップはない。また、コーヒーショップを持つ自治体でも、最大軒数を定めて規制しているところが多い。(たいていは、人口1万5000人当たり1軒程度で、それ以下の小自治体の場合は、そもそも商売としてコーヒーショップが成り立たない。)

各自治体のコーヒーショップ政策運用の基本になっているが、政府の決めたAHOJG基準(広告禁止、ハードドラッグの販売禁止、迷惑禁止、18才未満の入場禁止、1日1人5グラムを越える販売の禁止)と500グラム在庫制限で、これに、学校の隣接地域への出店禁止、開店時間の制限、店頭での駐車禁止、などを定めている自治体もある。


コーヒーショップの閉鎖

コーヒーショップが閉鎖されるのは、営業不振やオーナーの死亡などで自主撤退する場合を別にすれば、各自治体の定めた運用ルールに違反した場合で即座に営業停止処分が科せられる。一般には、1回目の違反では最低で3ヶ月の停止、2回目になると6ヵ月、3回目で永遠に停止され店は閉鎖させられるが、ハードドラッグの販売違反では即刻閉鎖になる場合もある。

違反の最も多いのが、未成年への販売で、次いで周囲への迷惑、在庫オーバーとなっている。また、1人1日5グラム以下という規則違反は、実際問題として検知しにくいという事情もあり、どの程度遵守されているかについては疑問視する向きもある。

このために、コーヒーショップ入店時にコンピュータによる指紋認証を義務づける動きなどもある。指紋認証は、未成年の入場や、1日に何回も来店して5グラムを越えて購入されることを防ぐ目的を持っている。

政府や自治体がコーヒーショップを強制的に閉鎖しているという噂もあるが、実際には何の理由もなく閉鎖することはない。基本的には、政府側が求めているのは、AHOJG基準を徹底して、コーヒーショップは何ができて何ができないのかをより明確にする規制の強化で、それ以外は自治体側の決定に委ねている。


学校の隣接地域のコーヒーショップの閉鎖

自治体が行っている最も強制的な措置は、学校の隣接地域(200〜250メートル)のコーヒーショップの閉鎖措置だが、すでに多くの都市では実施済みで、ロッテルダムやアムステルダムが残されている。

この2都市は、もともとコーヒーショップの密度が他の都市よりも非常に高い。ロッテルダム(人口60万)では、2008年末までに62軒のコーヒーショップのうち27軒を閉鎖する計画を立てており、完了すれば密度は1万7000人に1軒で、他の都市並みかやや低い程度になる。(2009年2月現在では43店舗)

また、アムステルダム(人口80万)ではまだ計画はないが、高校の250メートル以内を閉鎖すれば44軒が対象になり、全体では約20%が減って190軒になると 試算 されている。それでも密度は非常に高いが、他の都市に比較すれば観光客が特に多いという事情もある。

いずれにしても、学校の隣接地域の閉鎖は全体の一部で、一度実施されてしまえばそれ以後は閉鎖理由としては使えなくなくなる。


国境都市のドラッグ・ツーリスト迷惑問題による閉鎖

しかし、2009年春に、市内のコーヒーショップ全店を閉鎖することを計画しているところもある。ローゼンタール(8万人、4軒)とベルヘン・オプ・ゾーム(6.5万人、4軒)で、ベルギーと国境を接しているために、交通渋滞や危険・違法駐車・立ち小便などのドラッグ・ツーリストによろ迷惑問題が深刻化している。

この措置については、人口10万人以下の都市では2000年以降あまりコーヒーショップ数に変動がなく閉鎖はほとんどなかったことなどもあって驚きを持ってむかえられた。

しかしながら、近隣の都市からは、自分のところの問題を他の市に押し付けるだけだとして 強い非難の声 が上がっている。また、売買が地下に潜ってしまうので、かえって取締りが困難で費用負担も大きくなるという指摘もあり、他の自治体が簡単に追随することは難しい。

実際のところ、2008年11月に30余りの自治体の市長が集まって開催された  『カナビス・サミット』 では、「単純で透明な政策を採用して、ヨーロッパ諸国とも協力できるようなコーヒーショップへの合法的な供給システムの確立」 を呼びかける声明を発表しているが、この提案にはローゼンタールとベルヘン・オプ・ゾームの市長も署名している。

このように、両市のコーヒーショップの閉鎖計画が単に文字通り閉鎖すると言うよりも、国会の努力を求めることのほうに力点が置かれていることが明らかになってきている。2009年2月現在では、ベルヘン・オプ・ゾームの1軒(サハラ)が通常の在庫オーバー違反で営業停止されているが、現在までのところ閉鎖されたところはない。


根本はバックドア問題

しかし、最も根本的な問題は、カナビスの栽培を禁止しておく一方で販売を認めるという、いわゆるバックドアの問題で、議会内部や自治体で、栽培を許可制で認めてギャングの介在をなくすべきだという主張と、国際法遵守の上から認められないという主張が対立し、さまざまな問題を引き起こしている。