オランダ市長の『カナビス・サミット』

犯罪組織によるカナビス供給の遮断を

Source: DutchNews.nl
Pub date: 24 Nov 2008
Mayors want to licence growing marijuana
http://www.dutchnews.nl/news/archives/
2008/11/mayors_want_to_licence_growing.php


オランダのアルメールで21日、カナビス政策について意見を交わすためにコーヒーシヨップを持つ33の自治体の市長が集まって 「カナビス・サミット」 が開催されたが、オランダ政府は、現在違法になっているコーヒーショップへのカナビス供給をライセンス化して、栽培を合法化べきだとする結論をまとめた。

オランダでは、コーヒーショップでのカナビスの少量販売については容認され、自治体当局によて厳しく管理されているが、商品となるカナビスの供給源については違法のままで犯罪組織による供給が大半を占めている。

今回のサミットで注目を集めたのは、この問題に対処するための計画を発表したアイントホーフェン市のファン・ヘイゼル市長で、「監視の行き届いたパイロット・スキーム」 にもとづいて特定のライセンス栽培者にカナビスを生産させてコーヒーショップへの供給を確保することで、どの程度犯罪組織の関与を減らせるか調べたいとしている。

このアイントホーフェンのライセンス・カナビス栽培実験計画については、日曜日のTV番組でアブ・クリンク保健大臣は、基本的なドラッグ政策の変更は行わないとする連立政権の協定を破ることになると牽制しながらも、計画については詳しく検討して他の閣僚とも相談する用意があるとも語っている。


コーヒーショップを閉鎖しても問題は解決しない

今回のサミットは、地方自治体協議会とマストリヒト市のリーアス市長の呼びかけで開催されたものだが、1か月程まえに、南部国境にあるローゼンタール市(8万人)とベルヘン・オプ・ゾーム市(6.5万人)来年の春までにすべてのコーヒーショップ(4軒づつ計8軒)を閉鎖するという決定を下したことが契機になっている。

両市はその理由として、ベルギーやフランスからカナビスを求めてやってくるドラッグ・ツーリストが多過ぎて、交通渋滞や危険・違法駐車・立ち小便、さらに路上の密売などの迷惑が大きくなっていることを上げている。

これに対して、サミットに参加した市長たちは、コーヒーショップを閉鎖してもドラッグ・ツーリズムの問題が解決するわけでもなく、犯罪組織によるカナビスの供給という事実が変わるわけでもないと口を揃えている。マーストリヒトのリーアス市長も、「さらなる犯罪を招くだけです。閉鎖すればカナビスの使用が減るなどういのは幻想に過ぎません」 とインタビューに語っている。

また、オランダ東部国境にあるヘンロー市のフーベルト・ブルス市長は、オランダ国籍を持っている人だけがコーヒーショップでカナビスを買うことができる会員パスの導入を提唱している。「ヘンローのコーヒーショップには1日およそ6000人が訪れますが、パスの導入によって80〜90%の人を削除することができます。」


連立政権内の対立

カナビスの生産の合法化を求めたサミットの要請は、連立政権内で対立を生んでいる。政権与党第1党のキリスト教民主連盟(CDA)と第3党のキリスト教連合(CU)は、生産の合法化が連立政権の協定に反するとして反対しているのに対して、連立与党の第2党である労働党(PvdA)は、この問題を議会で話し合うことを呼びかけている。

労働党のレア・ボーミースター議員は、たとえ連立協定で現在の政策を変更しないことになっているにしても、CDAのメンバーも含んだ市長たちの今回の呼びかけを無視することはできないと語っている。

今回の会議については、同時に アムステルダムの学校隣接コーヒショップの強制閉鎖 が伝えられてそちらばかり注目が集まることになってしまったが、もっと重要で注目すべきなのが、カナビス政策の根本にあるコーヒーショップへのカナビス供給の合法化問題で、社会・健康・教育・経済・犯罪などばかりではなく、国内・国際法などにも深く係わっている。

コーヒーショップへのカナビス供給をどうするかという バックドア問題 は、カナビスが容認された1970年代からずっと続いている。

この会議では、アイントホーフェン市のファン・ヘイゼル市長の「パイロット・スキーム」が注目を集めたが、同じような提案は、マーストリヒトのリアーアス市長もずっと以前から繰り返し行っている。  ( カナビスとコーヒーショップに関する13の誤解と1つの結論

マーストリヒトの混迷、オランダ・コーヒーショップに過去最大の試練  (2005.12.26)
司法相と自治相、カナビスで衝突、オランダ、栽培の合法化をめぐり  (2005.5.26)
カナビス栽培合法化に前向き、オランダ20大都市  (2005.5.28)
コーヒーショップへの供給を合法に、マーストリヒト市長  (2005.3.14)

ヘンロー市ブルス市長の会員パスの提案については、過去にマーストリヒトでも同じような試みが行われたが、裁判で、コーヒーショップへの外国人入店を拒むように強制する市の命令を 無効とする判決 が下っている。

また、ドラッグ・ツリストが一日に2000〜3000人訪れるオランダ南部テルヌーセン市にあるオランダ最大のコーヒーショップ、チェックポイントでも、ベルギーやフランス人なども含めた会員カード・システム を導入してお客さんの入場を制限する試みを行っている。現在、店舗は在庫制限違反で閉鎖中だが、ヘンロー市のやり方よりも現実的かもしれない。

テルヌーセン市長 オランダ寛容政策の限界、栽培合法化を  (2008.6.10)
カナビス政策の「欺瞞」に翻弄されるオランダ・テルヌーセン市の苦悩  (2007.6.7)

オランダ与党CDA議員代表、コーヒーショップの全面閉鎖を主張  (2008.11.10)
オランダの市長 半数以上がカナビス合法化を支持  (2008.11.19)
オランダ国境の都市がドラッグ・ツーリスト対策サミットを計画  (2008.10.29)
オランダのカナビス生産、年間500トン25億ユーロ、輸出が80%  (2008.10.20)

オランダの司法関係者調査、半数以上がカナビスを合法化すべき  (2008.10.10)
オランダ警察協会会長 カナビス栽培を合法化すべき  (2008.4.23)
観念論ではなく実務的なドラッグ政策を オランダの3市長と2議員が共同声明  (2008.3.4)
オランダ、もっと柔軟なドラッグ政策が必要、元首相、現市長らがバルケネンデ首相に書簡  (2007.12.12)

オランダ、これ以上の緩和なし、司法大臣、議会のカナビス栽培計画を拒否  (2006.6.23)
ドラッグ・ツーリストはベルギーへどうぞ、マーストリヒトのコーヒーショップ移転計画  (2006.5.29)
栽培合法化めぐりラップ対決、オランダ法相とマースリヒト市長  (2006.2.27)
オランダは素面、正面からカナビス法のあり方を議論  (2006.1.1)