オランダの裁判所

コーヒショップの外国人制限は憲法違反

Source: NIS News
Pub date: 2 April 2008
Dutch Court Rules: COFFEESHOPS MAY SELL TO FOREIGNERS
http://www.encod.org/info/COURT-RULES-COFFEESHOPS-MAY-SELL.html


オランダ・マーストリヒトにある地方裁判所は、コーヒーショップへの外国人入店を拒むように強制している市の命令を無効とする判決を下した。これで、フランス人やベルギー人、ドイツ人でも問題なく入店できるようになった。

この判決では、オランダの法律では、カナビスの販売がライセンスを受けたショップで一人5グラムという制限の中で実質的に合法になっていることを指摘して、国籍によって間接的に人を法的に区別することは、合理的で客観的に正当化できる根拠がなければ差別を禁じた憲法第1条で許されないとした上で、今回のケースは正当な根拠がないことには疑問をはさむ余地がないという判断を示した。

外国人のコーヒーショップへの立ち入りを制限する計画は、2005年に、当時のピエット・ハイン・ドナー司法大臣が提唱してマーストリヒトで実験的に導入されていた。2006年には、外国人規制を守らなかったという理由で1軒のコーヒーショップが3ヶ月間閉鎖されたが、その後、再オープンしている。

コーヒーショップの外国人締め出し計画は、2004年に第3次バルケネンデ保守政権の 目玉政策の一つ として掲げられたものだが、当初より憲法やEU条約に違反するのではないかと見られていた。政権では全国展開することを前提にしていたが、観光客の多いアムステルダムなどではすぐに反対の声があがり、当初はドラッグ・ツーリズムが大きな問題になっているマーストリヒトで実験的に行うことで妥協がはかられた。

マーストリヒトでも一応は受け入れたが、実際には、(1)中心部のコーヒーショップを国境周辺に移転すること、(2)カナビス栽培を合法化して違法栽培を追放することを 政策の柱 にしていたので、特に外国人排斥は(1)と相容れない関係にあり、成り行きが注目されたが、マーストリヒト市では、政府の外国人政策を受け入れる代わりに(2)を認めさせようとする働きかけを強め、結果的に政府と対立する構図が鮮明になった。

栽培の合法化をめぐっては、2月に、司法大臣と市長がラップで対決 するまで発展して話題になった。

このように、当初よりマーストリヒト市は外国人締め出し計画には熱心だったわけではなく、この記事にあるようにずっと締め出しが続いていたわけではない。実際には、実行されなかったという指摘もあるほどで、行われたにしてもごく短期間で店舗も限定的だったと思われる。少なくとも、パスポートの提示を求められたが、入店してカナビスを購入したという体験談がいくつも報告されている。

最近オランダ政府はコーヒーショップに厳しい政策を取っており、そのうちオランダからコーヒーショップがなくなるだろうとする論調を掲げる マスコミ が必ず出てくるが、今回の裁判の結果を見てもわかるように、いくらオランダ政府といえども、簡単にはコーヒーショップ政策を変えることはできないことを示している。

と言うよりも、外国人締め出しなどという陳腐な政策を掲げること自体、実際には、政権党内の強行派や外国からの圧力をかわすための政府のリップサービスという側面が強いのではないか。

また、マーストリヒト市は、かねてより懸案になっていたコーヒーショップの 移転計画を今年の1月に実施 に移すと発表したが、ベルギー側の自治体の訴えで起されていた 裁判の判決 が3月にあり、建設許可が下りずに暗礁に乗り上げている。

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