カナビスを守るために戦うアムステルダム
Source: NORML's Daily Audio Stash
Pub date: 4 Dec 2008
Amsterdam fights marijuana crackdown
Author: Toby Sterling, AP
http://stash.norml.org/2008/12/05/ amsterdam-fights-marijuana-crackdown/
2週間ほど前に、アムステルダム市は政府の強い要請もあって、現在ある228軒のコーヒーショップのうち中高等学校から250メートル以内で営業している43店舗を強制的に閉鎖すると発表していたが、政府から十分な理由や条件が提示されていないとして説明を求めることにした。市側は、すでにコーヒーショップの運営については厳格な管理を行っており、政府の学校に隣接する店舗の禁止政策に従う必要は必ずしもないと主張している。
この問題についてはアムステルダム市議会が、コーヒーショップはすでに厳しい監視下に置かれており、子供を引き離すために今更新しいルールを作る必要はないという決議を圧倒的な多数で成立させた。これを受けて、ジョブ・コーハン市長もアムステルダムに例外措置を認めるように司法大臣と交渉することを約束した。
コーハン市長は全国放送のNOSで、「完全な禁止措置のほかにも別の可能性があれば、検討したい」 と話している。市議会議員たちは、学校から250メートル以内の店舗禁止提案を緩和することを求めているが、コーハン市長は、次のステップに進む前に、政府からもっと明確な禁止理由と指針が示されることを待ちたいとしている。
オランダでは12月1日からマジック・マッシュルームが正式に禁止されたが、今回のアムステルダム市の決定はそのちょうど1日後に行われた。市では、以前からマジック・マッシュルームを禁止することにも反対していたが、政府から禁止理由や執行方法について十分な説明がないとして実際の禁止までにはまだ至っていない。
市のバス・ブルーイン広報官は、「マジック・マッシュルームを禁止するという政府の決定に逆らうつもりはありませんが、コミュニティへの情報や警察の訓練もなしで法執行できると期待するのは現実的ではありません。確かに200キロのスピードでの運転は禁止しなけれななりませんが、誰がどうやって取り締まるのかについても明確に決められている必要があります」 と指摘している。
オランダでも正式にはカナビスは違法になっているが、認可を受けたコーヒーショップで少量のカナビスを購入することについては容認され、逮捕される恐れもない。全国には700軒あまりのコーヒーショップがあるが、アムステルダムにはその4分の1以上が集中している。観光客にとってはコーヒーショップを訪れることが主要目的の一つになっている。
アムステルダムをはじめとする主要都市の大半は、実際には、カナビスに対する規制を強めることよりも容認政策を拡大することを求めている。先月21日にコーヒーシヨップを持つ33の自治体の市長が集まってアルメールで開催された「カナビス・サミット」では、犯罪組織の介入を排除するために、現在違法になっているコーヒーショップへのカナビス供給をライセンス化して栽培を非犯罪化するように政府に申し入れることが決められた。
オランダ議会でも2005年に栽培者を規制管理する提案が行われたこともあるが、その時は、それを認めれば結局合法化をみとめることにもなり、EUとの対立を招くことになるとして政府側が拒否している。
1200人を対象に実施されたADニュースの世論調査でも大半の人がカナビス栽培の非犯罪化に賛成しているが、連立政権の第1党である保守キリスト教民主党(CDA)は反対している。これに対して、コーハン市長も所属する連立第2党の左派労働党(PvdA)は、さらにリベラルなスタンスを取ることをどの党よりも熱心に求めている。
キリスト教民主党のヒルシュ・バーリン司法大臣は、国のカナビス政策を変更するつもりはないとしながらも、コーヒーショップの学校隣接政策については柔軟に対応する用意があることもほのめかしている。
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レッドライト地区には約200の飾り窓と30軒のコーヒーショップがあるとされているが、飾り窓の半数が閉鎖の対象になっている。また、コーヒーショップはかなり広い範囲に分布しているので今回の対象軒数についてははっきりしていない。レッドライト地区も含めて東部セントラム地区全体で20軒ほどという 報道 や76軒中の半数という 記事 もある。
レッドライト地区では、いずれの店舗も犯罪組織が関与していることが多いとされており、市は今後10年間をかけて地区の再開発を行い、それらを一層することを狙っている。この点では、学校隣接のコーヒーショップの閉鎖問題とはその内容が全く違っている。
一貫していることは暴力組織の関与を排除するという方針で、暴力組織がらみの店舗は閉鎖する一方で、コーヒーショップ用のカナビスの栽培については非犯罪化を求め、学校隣接のコーヒーショップの閉鎖やマジック・マッシュルームの禁止には抵抗するというような違いになって表れている。
こうしたアムステルダム市の政策は、政府のモラル指向の政策と違って現実的ではあるが、しかしなぜ全面閉鎖しないのか、あるいは世界中どこにでもあるような魅力のない場所になってしまうのではないか、といったことも含めていろいろな要素が複雑に絡み合っているために分かり難にくくもなっている。
アムステルダム最新報告 NORML・センシブル・アムステルダム・ツアー2008 (2008.1.28)
マジック・マッシュルームの禁止は1年ほど前に決められていたが、実際に実施されたのはこの12月1日になってからだった。
ほぼ1年の準備期間があったことになるが、開始早々、アムステルダムのコーハン市長も含めて何人もの市長が、どのように禁止法を実施したらよいのか全く明確にされていないと政府に苦情を申し立てていた。
政府はあわてて、関係大臣であるテル・ホルスト国務大臣、アブ・クリンク厚生大臣、ヒルシュ・バーリン司法大臣が集まって協議することになった。ヒルシュ・バーリン司法大臣は、マジック・マッシュルームがオピアム法のもとで禁止されているので、取り締まりは食品安全局ではなく警察で行うべきだと主張している。
これに対してアブ・クリンク厚生大臣は同調しているが、警察関係の担当であるテル・ホルスト国務大臣は同意していない。その理由の一つには、禁止対象のマッシュルームが170種類もあって形状もさまざまで、素人の警察官では簡単に見分けることができないという事情もあると思われる。
Confusion on magic mushroom ban
NL: BAN ON PADDO’S IS INSANE
いずれにしても、この件で明かになった重要なことは、オランダのCDA政権のドラッグに対する政策がもっぱらモラル的な発想から出てきていることで、実際にドラッグ問題にどのように対応したらよいのか具体的な政策を持っていないことが露になった点にある。
これは、ドラッグにモラル的に反対している人たちに共通していることだが、禁止することだけが目標になっているために、実際にはドラッグのことについては何も知らないし、知ろうとも考えようともしていないことが背景になっている。それは、1年の準備期間がありながら具体的な実行方法は何一つ決めていなかったことからもわかる。
オランダ市長の『カナビス・サミット』 犯罪組織によるカナビス供給の遮断を (2008.11.24)
アムステルダムのコーヒーショップ、学校隣接の43店舗を閉鎖へ (2008.11.21)
オランダ・マーストリヒト カナビス栽培をめぐる現実主義と教条主義の闘い 本格的カナビス合法化論議が始まる (2006.7.4)
オランダ、これ以上の緩和なし 司法大臣、議会のカナビス栽培計画を拒否 (2006.6.23)
レッドライト地区
Amsterdam Coffeeshop Directory: Centrum District of Amsterdam
上の写真の Coffeeshop Highway は23番
この地区で最も有名なのが、ブルドック1号店(33番)