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大麻取締法違憲論裁判 > KYさん事件簿
420KY裁判初公判傍聴の報告
KYさん事件簿 : 投稿者 : 白坂@THC主宰 投稿日時: 2010-04-20

今日4月20日、420という縁起の良い日に、KYさんの初公判が開かれた。
開廷時刻は午前11時。7・8分前に801号法廷の傍聴席に入ると、すでに満席に近い状態で、私と友人が着席すると定員となった。傍聴席の数を確認し忘れたが、YOSHIYOSHI04さんによると20席ではないかとのこと。直後にvainicさんも駆けつけてくれたが、立ち見はダメだとのことで、事務官の指示で追い出されてしまった。
腰縄と手錠で拘束されたKYさんが二名の刑務官に挟まれて入廷し、腰縄と手錠を外されて弁護側の机の前に着席。黒基調に太く白い線の入ったジャージ上下。青いサンダル。長い髪を後ろで束ねている。

裁判官が正面の大きな扉から入廷し、11時少し前に開廷。型通りに裁判官による人定尋問と、検察官による起訴状の朗読。容疑は大麻取締法違反と関税法違反。裁判官による黙秘権の告知。
裁判官に問われ、KYさんは起訴事実を認めたうえで、事実関係については争わないが、大麻について「罪悪感を持っていない」と答える。

検察官による冒頭陳述では、KYさんの生い立ちや前科について説明され、今回の事件についての供述調書などが証拠として提出される。KYさんがタイから送ったパケ入りの大麻3グラムも示されて、これはあなたのものに間違いないかという検察官の問いに、「間違いありません」と答えるKYさん。そのパケを覗きこもうとする傍聴席の人たち。ちと、そのパケを開けて臭いを嗅いでみたい私。

争いのある場合、一般的にはここで弁護側の冒頭陳述となるのだが、今回はKYさんの強い希望により、証拠調べの一環としてKYさん自身による意見陳述が行えるよう、原弁護士が予め裁判官と調整して下さっていた。
証言台の前に立ち、KYさんが、滔々と、淡々と、その意見陳述の原稿を読み上げる。以下、KYさんから既に届いていた意見陳述の原稿。

私が大麻所持で裁判を受けるのは平成10年(1998年) そして平成13年(2001年)に続いて今回が3度目です 平成13年の時と同様に 今回もわざと捕まっています 前回裁判の有罪判決に納得していないからです
大麻を所持使用する私のどこが悪いのか 何がいけなくて有罪とされるのか 納得できる回答をいただきたくて そのためにわざと捕まり裁判に臨んでいます

平成13年の裁判で左近寺映子裁判官は被告人の私を大麻と親和していると認定し そのことを非難していましたが 私には納得できかねます
私が大麻と親和しているのは間違いありません その通りです しかしそのどこが悪いのでしょうか? 私は大麻と親しみ和んでいます それはつまり大麻使用によって私の心身は何の害悪も受けていないということです 私が初めて大麻を使いだしたのは昭和63年(1988年)です 以来これまでの間に大量の大麻を摂取していますが 私の身体は何の健康被害も被っておりません
また精神面においても 大麻によって好い影響を与えられこそすれ 悪い影響は与えられておりません

大麻と出会う以前の私は二度の自殺を図るなど 自分を否定的に捉える傾向がありましたが 大麻使用をはじめてより もっぱら自分を肯定的に捉えられるようになりました 私は私でいいのだ 人をうらやむ必要などないのだ 自分が納得できるように生きればよいのだ と思うようになりました

大麻を使うことで自分の深層の意識が見えてきました 自分は何を望んでいるのか 何をしたいのか そういうものがはっきりと見えるようになりました

私は自身のブログで自分の思うところ 考えるところをいろいろ書いておりますが それらは表層のものではないつもりです

大麻の使用を続けてきたことによって 自分自身の捉え方や世界の見方が大きく変化することになり その結果 今 ここにこの私がいるのです

この私のどこが悪いのでしょうか? どこに問題があるのでしょうか?

大麻が法律で禁止されているのは知っています 法律を否定するつもりはありません 法律は社会を平和で秩序ある状態に治めるために必要不可欠なものと考えています けれども法律がすべてだとは思っておりません 法律が必ずしも正しいとは思っておりません 法律が万能であるとは思っておりません

私には意思があります 意思があるゆえに私は考えることができます 意思は私の原点です 私は法律を尊重します しかし「法律を尊重する」ということをするのは 私の意思がそうするべきと思うからです もしも意思が介在せず ただ法律通りに動いているのであれば そこに私という人格は存在せず 単なるロボットにすぎなくなる

「法律を尊重する」はひとつの例です 私のすべての言動の源には私の意思が在るのです 『我思う ゆえに我在り』というものですね これは私だけでなく すべての人間に共通する法則としてあてはまるはずです
日本国憲法は我々が個として在ることを次の言葉で保証しています

すべて国民は個人として尊重される(憲法13条)

法治主義を否定するつもりはありません 大麻所持が法律で禁止されているのは知っていますから 私が大麻を持っていると知った警察が 法律に従い 私を逮捕拘束したのは彼らにとっては当然の行為でしょう そのことに不平を言うものではありません しかしながら 逮捕されたから有罪であるなどとは思っておりません なぜなら 私は法律違反はしても そのことで誰も傷つけてはいないし 誰にも迷惑をかけた覚えもないからです

私は大麻が大好きで 大麻の薬理効果が自身にとって無害であるだけでなく とても有益なものであると知って使っています(これはいわゆる自決の権利と呼ばれるものですね) もし法律があるからというそれだけの理由で有罪にするなら 憲法で保証された個人の尊重は雲散霧消してしまう

さて 私の人権と大麻取締法のどちらが優先されるべきかをあきらかにしていただきたくて わざと捕まってこの法廷に来ています

検察官殿にお願いいたします 私の人権を制して大麻取締法の適用を主張される理由を示して下さい
私は大麻取締法より自身の人権が優先するゆえ 無罪だと考えています しかし人は時々考え違いをします それは私も例外ではないでしょう
もし私に考え違いがあるようなら どこがそうなのかを御指摘くださいますようお願いします 私は論理が分からない子供ではありません 筋道を立てて分かりやすい言葉で話していただければ理解もいたします 自身の間違いを納得したならば 罪を認め おとなしく刑務所にもいくでしょう
検察官殿 よろしくお願いいたします。

裁判官殿にお願いいたします 事件の真実真相を見極めることで適正な法令適用をするのが裁判官の仕事であろうかと私は思っています
本件では事実関係の争いはありません 本件は論理の争いです
私は大麻が大好きで自身の目的のために これからも大麻を使うつもりです
この私と 私の大麻所持を非とする検察官の どちらの主張が優先されるべきなのか それぞれの主張の細部まで確かめてください 主張に疑問の点があれば 私 あるいは検察官に どんどん問いただしてください そして適正な法令適用に向けて 真実真相の解明に全力を尽くしていただきたいと願っています

なお 争うのは検察官と被告人の私であって 裁判官殿は争う当事者ではないことをくれぐれも忘れずに訴訟を指揮していただければ幸いです

平成22年4月20日

KY一夫

KYさんの意見陳述に続いて、裁判官が今後の立証方針について原弁護士に訊ねる。原弁護士は、大麻取締法の法令違憲と、大麻取締法の罰則を今回のKYさんの事件に適用することの誤りを主張する予定であることを述べる。その立証に関しては、書証として提出する海外の文献などを翻訳する必要もあり、一定の時間を要することを原弁護士が説明する。
ほぼ11時半頃に閉廷。次回、第2回公判は、5月25日(火)午前10時から。

閉廷後、私は裁判長に声をかけ、次回はもう少し傍聴席の椅子を増やしてほしいとお願いした。裁判官は、その話は預かっておくとのこと。
薬物事犯の被告人を前にして、あからさまに見下したような表情を見せる裁判官や検察官もいるが、この公判を担当する裁判官と検察官は、淡々と事務的に職務を遂行しているといった様子で、KYさんに対する悪感情のようなものは感じられなかった。

裁判所を出て日比谷公園内の飲食店に移り、傍聴した7名(だったかな?)と、傍聴できなかったvainicさんと、原弁護士にもご同席頂いて、今後の立証方針について協議する。立論の細部については詰めが必要だが、大筋で原弁護士と認識を共有できたと思う。書証として提出する文献のリストアップとその翻訳、証人尋問を可能にするための方法など、これから20日間程度のうちに準備をする必要がある。

原弁護士にお話を聞くと、実にたくさんの案件を同時に抱えておられ、多忙を極めておられる様子。そのようななか、今日も午後1時まで打ち合わせに同席して下さった。先日の日曜日にも、休日返上で仕事をされている原弁護士から電話を頂き、打ち合わせをしたところだった。国選弁護人の立場で、しかもなかなか気難しいKYさんの気持を汲んで、このような手間のかかる公判に真摯に取り組んで下さる原弁護士に、敬意と感謝の気持を表したい。原弁護士は、私選の弁護人として依頼する場合にも信頼できる方だと、今日初めてお会いして、改めて私は感じた。

個人的には、傍聴に来てくれた方とのいい出会いも複数あり、書き起こしや翻訳をお願いできそうな方たちとも知り合うこともできた。感謝。

ねぇ、KYさん、いい初公判だったね。

さぁ、これからだ。引き続き、みなさんの支援をお願いしたい。

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