■大麻の精神的影響
引用元:http://www.dapc.or.jp/data/taima/3-2.htm
[本文]
『大麻を摂取すると、五感に異常が起こり、いつもより感覚が鋭くなったような錯覚に陥ります。その状態には独特の心地好さやリラックス感があり、からだもほぐれるような気分になります。しかしそれは真のリラックスではなく、ただやる気がなくなったり、物事がどうでもよくなる、などの投げやりな気分になっているに過ぎません。』
[検証]
・大麻によりやる気がなくなったり、物事がどうでもよくなる、などの投げやりな気分になる。
この文章は、俗に言われる無動機症候群のことを指しているものと思われる。無動機症候群という概念は、米国で若者の大麻使用が増加した1960年代終わりごろから言われ始めたもので、大麻によりやる気が無くなり非生産的で無責任となるという説である。
WHOレポートでは、無動機症候群という「仮説」の病態は調整因子を考慮していない臨床観察から言われていることであり、大量に大麻を使用している者ではやる気を失うと言う自己申告によるエビデンスはあるものの、無動機症候群は明確に定義されないとしている(1)。
大麻によりやる気を失い生産性が低下するという説を否定する報告も幾つかある。大学生を対象とした長期調査で大麻使用者のほうが使用していないものよりも成績がよく、ほとんど同じように学業を達成している(2)(3)。ジャマイカ、コスタリカ、ギリシャで実施されたフィールド研究でも、無動機症候群を示す証拠は見つかっていない(4)。大麻を使用し94日間観察した研究で学習や成績あるいは意欲に目立った悪影響は何もなかった(5)。別の31日間の研究では、マリファナを与えた被験者のほうが対照群よりも長時間働いた(6)。
大量使用者においてはやる気がなくなるとされているが、WHOレポートでは大量使用による慢性の酩酊状態と明確に区別されないとしている。アルコールと同様で大麻の効果があり酩酊している間は他の活動が低下するということはあると思われるが、通常の使用においては短期間のもので永続しないと考えられる。また、通常は大麻をレクリエーションの目的で使用する事を考えると、酩酊の間にやる気がなくなることが社会的問題につながるとは考えられない。
大量、長期使用者においてやる気が無くなる可能性がある、と言う内容に訂正する事を推奨する。「真のリラックスではない」との記載があるが、「真のリラックス」の定義が不明である。「真のリラックス」とはどのようなものを指すのか、また、大麻のリラックスが「真のリラックス」では無い根拠を示す必要がある。
[参考文献]
(1) Division of Mental Health and Prevention of Substance Abuse, World Health Organization: Programme on substance abuse Cannabis: a health perspective and research agenda. 1997.
(2) Mellinger, G.D. et al, "Drug Use, Academic Performance, and Career Indecision: Longitudinal Data in Search of a Model," pp 157-77 in D.B. Kandel (ed), Longitudinal Research on Drug Use: Empirical Findings and Methodological Issues, Washington, DC: Hemisphere (1978).
(3) Mellinger, G.D. et al, "The Amotivational Syndrome and the College Student," Annals of the New York Academy of Sciences 282:37-55 (1976).
(4) Carter, W.E. (ed), Cannabis in Costa Rica: A Study of Chronic Marijuana Use, Philadelphia: Institute for Study of Human Issues (1980); Rubin, V. and Comitas, L., Ganja in Jamaica, The Hague: Mouton (1975); Stefanis, C. et al, Hashish: Studies of Long Term Use, New York: Raven Press (1977).
(5) Cohen, S., "The 94-Day Cannabis Study," Annals of the New York Academy of Sciences 282:211-20 (1976).
(6) Mendelson, J.H. et al, "The Effects of Marijuana Use on Human Operant Behavior: Individual Data," pp 643-53 in M.C. Braude and S. Szara (eds), The Pharmacology of Marijuana, Vol 2, New York: Raven Press (1976).
[本文]
『大麻にはそれほどの依存性がないとの誤解から、繰り返し乱用する人も多くみられます。』
[検証]
・大麻にそれ程の依存性が無いというのは誤解か。
米国での報告では、精神障害診断基準(DSM-IV)による統計で、大麻使用者の10%が依存症状を経験したことがあるが、一方でアルコールは15%、コカインは17%、タバコは32%もの人が依存症状を示している(1)。また、2002年にカナダ上院によって発表された報告では、大麻の依存性は、アルコールやタバコなど他の向精神物質に比較して深刻なものではないとしている(2)。
また、1993年に米国で行われた疫学調査によると、12才以上の米国人で過去に1度でも大麻を使用したことがある人が34%なのに対して、過去1年で使用率9%、過去1ヵ月で4.3%、1週間前までだと2.8%であった。これは、体験した多くの人が繰り返し乱用しないという事を示す(3)。
アルコール・タバコ依存は社会的な問題であることを考慮しても、大麻はそれ程依存性が無いという意見は出て当然である。これを誤解と言い切るのは言いすぎである。
[参考文献]
(1) National Academy of Sciences, Institute of Medicine. 1999. Marijuana and Medicine: Assessing the Science Base. pp. 92-96.
(2) Canadian House of Commons Special Committee on the Non-Medical Use of Drugs. 2002. Policy for the New Millennium: Working Together to Redefine Canada's Drug Strategy. p. 17.
(3) Preliminary Estimates from the 1993 National Household Survey on Drug Abuse, Rockville, MD: U.S. Department of Health and Human Services (1994).
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