2.大麻使用の社会や健康への影響
近年の大麻使用の社会や健康への影響に関する研究には著しい進歩があった。現在の科学的知見は、大麻が「麻藥と同様な害毒をもつている」と考えられていた大麻取締法制定時とは大きく異なり、信頼性の高い複数の研究によって、大麻の有害性は、ヘロインやモルヒネ、コカインのみならず、現在は規制の対象外であるアルコールやたばこより低いことが報告されている。さらに、大麻の適切な使用が様々な疾病や不快な症状に対して治癒的な効果を示すことが明らかにされている。世界で最も権威ある臨床医学雑誌の一つ、英国医師会のランセットは、「大麻の喫煙は、たとえ長期にわたる場合でも健康に害はない。…大麻は、それ自体は社会へのハザードではないが、さらに続けて非合法な状態に追いやるならばハザードとなり得るであろう。」と結論づけ、大麻の規制の改正を支持する内容の文章を掲載している〔6〕。
このような大麻に関する最新の科学的な研究の結果の示す事実に基づき、政府は大麻のリスクを過大評価しすぎている現在の政策から、リスクとベネフィットの比較を通した大麻のリスクの正当な評価を反映する、使用者の人権に最大限配慮した政策へと方針の転換を図るべきである。大麻に関する最新の知見に鑑みれば、現在の大麻使用の最大のリスクは逮捕・拘禁されることである。
(1)大麻のリスク
大麻はアルコールやタバコよりも害が少ない
http://asayake.jp/modules/report/index.php?storytopic=34
より転載
(2)大麻のベネフィット
大麻の適切な使用が、ストレスや精神の緊張の緩和を促し、体内の様々な器官での恒常性維持機能を高める働きをもたらすことは広く知られている〔7,8〕。大麻は、多発性硬化症に伴う神経因性の疼痛[9]やオピオイド系薬剤による治療で効果の見られない末期がんの患者の疼痛[10]、AIDS患者の進行性食欲減退や体重減少などの症状を伴う消耗症候群[4]、アルコール依存症[11]など、様々な疾病の治療に有効であり、各種運動障害などの治療、依存性薬物の依存症[12]、神経保護作用薬[13]、精神疾患治療[14]などへの応用が期待されている。実際に、大麻や、大麻からの抽出物を主成分とした薬剤が治療薬として認められ、処方されている国もあり、2007年2月14日、大塚製薬株式会社は、イギリスGW製薬で臨床研究され、カナダで医薬品として認可・使用されている大麻からの抽出物を主成分とした薬剤「サティベックス(Sativex?)」の米国における開発・販売に関するライセンス契約を締結している。
大麻の治癒的な効果が報告され、臨床適用が調査されている症例には、吐き気と嘔吐、多発性硬化症とその他の神経疾患、がんやエイズの食欲減退と体重減少、疼痛、眼圧の上昇、不眠症、不安や抑うつ状態、 てんかん、喘息、オピオイドの退薬、原発性腫瘍、解熱性や抗炎症性の活性、駆虫性、抗片頭痛、分娩誘発などがある。このうち、大麻といくつかのカンナビノイドは、制吐薬と鎮痛薬、眼圧を下げる薬剤として有効である。特定の神経疾患、エイズとある種のがんにおいて、症状の緩和と幸福感(well-being)の向上のエビデンスがある。カンナビノイドは不安を減少させ、睡眠を改善する可能性がある。抗けいれん薬としての活性は解明を必要とする。基礎研究によって特定されたその他の特性は評価を待つ。多くの関連した疾患に対する標準的な治療は不十分である。大麻は過量投与については安全であるが、一般的に、鎮静作用、陶酔、不器用さ、めまい、口渇、血圧の低下あるいは心拍数の増加などの不必要な効果をしばしば生じさせる。特定のレセプターや天然のリガンドの発見は薬剤の発展を導くかもしれない。投薬の用量と経路を最適化し、治癒的な効果と望ましくない作用を定量化し、相互作用を調べるために研究が必要である〔15〕。
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