20日に掲載した「若ノ鵬とロシアの薬物政策と日本のマスゴミ」に、「なぜこんな微量の大麻所持が大騒ぎするほどのニュースになるのか。他の先進国から見ると、そのほうがニュースとして意味がありそうな話だ」と書きましたが、フランスの通信社、AFPから、若ノ鵬の事件に関して取材がありました。AFPは、Wikipediaによると、「世界最古、フランス最大の報道機関で、現在 AP通信 、ロイターに次ぐ世界第3位の規模を持つ」そうです。
取材は英文のメールであり、日本語で回答したところ、フランス人の記者の方から電話を頂きました。当方の回答は日本人スタッフが訳して下さったそうです。記事は数日中にフランス語で配信され、英語の要約も出すそうです。その記事を当方にも送って頂けるとのことなので、頂き次第掲載しますが、取材の生原稿としてメールでのやりとりを、了解を得て公開します。(原文意訳は白坂)
Hi,
I am a French journalist based in Tokyo, working for Agence France-Presse (AFP) worldwide news agency. I found your mail adress on your interesting web site. I am preparing an article this week on the restriction against cannabis in Japan, following the case of Wakanoho, the Russian sumo wrestler who has been under arrest since a cigarette of cannabis has been found in his wallet. It seems that Wakanoho will even be expelled from the sumo association.
I would like to ask you some for my article:
(私は東京を拠点とするAFPのフランス人ジャーナリストです。あなたの興味深いウェブサイトでメールアドレスを見つけました。私は今週、日本における大麻規制、財布の大麻タバコが発覚して逮捕されたロシア人力士、若ノ鵬についての記事を準備しています。若ノ鵬は相撲協会からも追放されそうです。記事を書くにあたり、いくつか聞かせて下さい。)
- What do you think about the case of Wakanoho ?
(若ノ鵬の事件についてどう思われますか?)
若ノ鵬に限ったことではありませんが、前途ある若者が、自己使用目的の大麻を0.368グラム!所持していたというだけで、逮捕し、勾留し、裁判にかけ、前科者とし、勤務先を解雇され、人生を破壊される現在の日本の現実は、実に馬鹿げており、悪夢のようです。大麻の事実を知る日本人の一人として、とても悲しく、また、海外から夢を持って日本を訪れてくれた人たちには、申し訳なく、恥ずかしく思っています。
- Why do you think Japanese society is so intolerant with the use of cannabis ?
(なぜ日本社会はこれほど大麻使用について不寛容なのだと思いますか?)
日本における大麻取締法は、先の敗戦後に占領軍GHQの指令によって制定されたものです。それまでも、日本では国際的な取り決めによって大麻を規制する規則はあったものの、事実上は全く規制されておらず、大麻が日本社会で問題になったこともありませんでした。
GHQに大麻の栽培を全面的に禁止するよう求められたとき、日本の政治家たちは抵抗し、一定程度の栽培を認めるようGHQと交渉し、栽培を免許制とすることで辛うじて大麻を守りました。
当時、日本では繊維としての麻が不足していましたが、GHQは繊維となった、薬物とは関係のない大麻までを厳しく規制してきました。
私たちは、大麻取締法は実は薬物政策ではなく、産業政策であったと考えています。その後、麻繊維が廃れ、代わりに石油製品が市場を占めるようになったことは戦後史が証明しています。
日本では、大麻は縄文時代からの栽培作物であり、縄文の「縄」とは大麻のことです。大麻は神道とも深い関わりがあり、神聖なものとして扱われてきました。「大麻」を国語辞書で引くと、伊勢神宮などで頒布するお札のことだと書かれています。大麻は神とヒトを媒介するものとされていたのです。神社で使われている注連縄も麻で作られ、相撲では横綱が締める綱もまた麻であり、それは横綱が神であることの象徴です。
しかし、大麻に限らず、敗戦後の日本は、アメリカの支配下であらゆる政策決定が行われ、薬物政策もアメリカに従ってゼロトレランスを採り続けています。日本では、大麻取締法を所管する厚生労働省の天下り財団法人「麻薬・覚せい剤乱用防止センター」が公的な薬物情報を国民に周知教育していますが、その大麻情報には医学的根拠がありません。日本で「ダメ。ゼッタイ。」として国民に教えられている大麻情報は、天下り財団法人が15年前までアメリカ・テキサス州にある反薬物団体から輸入していた薬物標本の説明書を翻訳しただけのものであることが、私たちの調査で明らかになりました。私たちの指摘に対し、天下り財団の専務理事(厚生労働省の元官僚)は昨年3月に、「情報が古くて見直す必要がある」と認め、厚生労働省の担当者である麻薬対策課の情報係長も「まあ、根拠はないんでしょうね」と回答しています。しかし、未だに誤った情報が見直されることなく、国民にリーファーマッドネス情報が植え付けられ続けているのです。
なぜ、日本が大麻だけでなく、薬物全般について、非寛容政策を採用し続けているかというと、未だに日本が実質的にはアメリカの占領下にあり続けているからです。「ダメ。ゼッタイ。」という日本の薬物政策の標語は、アメリカの「Just say No!」を翻訳しただけのものなのです。
- I understood you sent some petition to the United Nations, but have you sent some similar request to the Japanese authorities ?
(国連に提言を提出されたようですが、同じような要望を日本の国家機関にも出したのでしょうか?)
日本の薬物政策は、内閣府に設置された「薬物対策推進本部」が統括しています。本部長は内閣総理大臣で、本部員には厚生労働省や警察庁など関係各省庁の大臣が就いています。私たちは、今年3月の第51会期国連麻薬委員会にご指摘の提言を提出し、同時に、内閣総理大臣を含む、「薬物対策推進本部」の全構成省庁にも同じ内容の提言を提出しています。しかし、それが検討されることはありませんでした。
それどころか、「薬物対策推進本部」は、これまで規制されていなかった大麻の種についても厳しく取り締まる方向で具体的な検討に入っており、今月中に方針を出すとのことです。私たちは、それについても意見書を提出する予定ですが、日本政府が私たちの意見書や提言に、真摯に耳を傾けることはおそらくないでしょう。
(中略)
お問い合わせ頂き、ありがとうございます。ぜひ、日本のこの馬鹿げた状況を、フランスや世界に向けて発信して頂きたいと願っています。
私たちは大麻で逮捕された人や家族の相談に対応していますが、以前、日本在住のフランス人の方の相談もありました。その手記を日本人の奥さんに書いてもらい、公開していますので、ご参考になさって下さい。
小包から1.2gの大麻/Qさん(フランス人)
近日中に記事として配信されるとのこと。日本の恥を晒すようで忍びない思いもありますが、何らかの外圧になればと願っています。
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- AFPが配信した若ノ鵬の大麻事件 (2008-08-23)
- AFPから取材を受けました (2008-08-21)
- AFPの大麻報道との対話 (2008-08-01)
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